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第1章 迷宮創生編
第62話 嬢王ディアドラ
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「宮代様どうぞこちらへ」
レッドドラゴンを倒し、先に進む俺たちを待ち構えていたのはサキュバスたちだった。3人衆? いや雰囲気が違う、別の個体だ。
戦闘の意思はないようで、サキュバスの案内のもと第10層へとやってきた。
10層は、貴族の住むような洋館の雰囲気が漂うエリアだった。
高そうな調度品を眺めながら先に進み、案内された部屋に入ると彼女がいた。
部屋の中にはテーブルがあり、テーブル上には豪華な料理が並んでおり、テーブルを挟んでひとりの女性が優雅に座っていた。
そう彼女こそ、このプレジールの塔の主、ダンジョンマスターであり、サキュバスクイーンディアドラだ。
「ホントにこの10層まで来るなんて見直しましたわ。改めまして、ようこそ我がプレジールの塔最上階へ」
「こいつがディアドラ・・」
「そんなに怖い顔しなさんな。まずはおかけください。食事でもしながらお話しましょう♡ お飲み物は何がいいかしら? 紅茶? それともお酒がいいかしら?」
「なっ! 貴様なんのつもりだ!?」
「リュネールさん落ち着いて! ここは彼女の言うとおりにしよう」
俺は血気盛んなリュネールさんを落ち着かせて、ディアドラの対面となる席に座ると、他のメンバーもそれに倣ってそれぞれ椅子に座った。
「私はお紅茶を頂こうかしら」
「シルエラさん! ここは敵地だぞ。もし毒でも入っていたらどうするんだ?」
堂々と紅茶を頼むシルエラに、警戒を解かないリュネールさん。
「大丈夫さ! そんな姑息な手段を用いるような相手じゃない。そうだろ? ディアドラさんよ」
「ふふっ♡ そのとおりよ。毒なんて無粋なことはしないわ。安心して良いわよ」
「ならアタイは酒をもらおうか」
「では良い葡萄酒があるのでそれをお持ちしましょう。貴方はどうかしら?」
「俺はシルエラと同じ紅茶でいい」
「そう、つまらないのね。いいわ。用意させましょう」
暫くすると、それぞれの飲み物を用意した配下のサキュバスが現れ、俺の前には良い匂いの紅茶が置かれた。
「では頂きましょう」
ディアドラの挨拶とともに、料理に飛びつくロザリーとミスティ。落ち着いて紅茶を楽しむシルエラ。ディアドラとリュネールさん、ステラさんはそれぞれ葡萄酒を飲んでいる。
「ここまで来た貴方は見込みがあるわ。もう一度聞くわね。私の配下になる気はないかしら?」
「くどいなお前も、前にも断っただろ。お前こそ俺の軍門に降ってもらおうか」
「そう、残念ね」
優雅に葡萄酒を飲み、そのグラスをテーブルに置くと、表情が険しくなり圧力が一気に膨れ上がった。
「なら力づくで従わせちゃおうかしら♡」
「やれるものならやってみろ!」
ディアドラの殺気に反応して皆も立ち上がり、抜刀こそしていないがそれぞれの武器に手を伸ばして、何時でも抜ける体制になっている。
「いいわ。やるなら相応しい場所に移動しましょう。ついてらっしゃい」
ディアドラの後ろに付いて廊下を歩いている。
しかし・・・後ろ姿が・・・なんともエロい♡ 括れたウエストにスラリと伸びた脚、そして何と言っても肉付きの良いプルンプルンのお尻。紐のような下着を着用しているせいで歩くたびに小刻みに揺れている。見えないだけできっと胸も揺れていることだろう。
俺の股間はディアドラの後ろ姿を見ているだけで、既に臨戦態勢に入っている。
「ここよ。さっ中へどうぞ。」
案内された場所は、豪華な細工のされた扉の前。きっとここが10層のボス部屋なのだろう。
部屋の中も他と同じような建築様式、いや更に豪華な造りになっていおり、床も高級そうな赤い絨毯だった。
ディアドラは部屋の中心部で佇むと、その力を解放する。何という力だろうか? まるで大気が震えているようだ。対峙するそれだけで冷や汗が流れてくる。
「さあ、始めましょうか? 早くしないとそちらのお方に視姦されちゃうわ♡」
「なっ!?」
ディアドラが悪戯っぽく笑い、皆が一斉に俺に白い目を向けてくる。ディアドラに見惚れていたことは事実なのだが、そんな目で俺を見ないでくれよ・・・
『ディアドラ・ミラ・アイリーン』
種別:淫魔族
性別:♀
属性:闇
クラス:迷宮主
LV:38
HP:7605/5070(7605)
MP:7050/4700(7050)
SP:7305/4870(7305)
STR:A VIT:B AGI:A
DEX:A INT:A LUK:C
サキュバスクイーン
さすがに強い、だが以前は見れなかったステータスも見れるようになり、その差も詰まっているはずだ。
俺は愛用の長剣を構えると、ディアドラの両手の爪がまたたく間に伸びてゆく。
「準備はいいかしら?」
「おう!」
「なら、これはどうかしらっ!」
ディアドラがそう言った瞬間、離れていたはずのディアドラが一瞬で俺の眼前に現れ、その鋭利な長爪が襲ってきた。
「くっ!」
とっさに剣で受けるが、連打を受け止めることはできずに、体のあちこちに切り傷を作ってしまう。
「ヤマト殿!」「ヤマト様!」
いきなりの先制攻撃に慌てるリュネールさんたち。彼女らはディアドラの動きに反応すらできていなかったのだ。
「俺は大丈夫だ! だが気を付けろ! 凄まじく早いぞ!」
ヤバいな。その踏み込みスピードは、以前対峙した紗弓様を上回っているぞ。瞬きすら許されない驚きのスピードだ。
とてもじゃないが全てを見切ることなどできない。
「このおぉ!」
ディアドラめがけて剣を振り下ろすリュネールさん。だがその剣は空を切り、逆に蹴り飛ばされてしまう。
「がはっ!」
「邪魔よ、雑魚は引っ込んでいなさい!」
「リュネールさん!」
倒れたリュネールさんに駆け寄ろうとしたところに、複数の魔弾が雨のように襲いかかってくる。
魔法障壁を簡単に突き破り襲いくる魔弾、それは俺だけでなくロザリーやシルエラたちも同様だった。
あちこちで爆発音と悲鳴が聞こえてくる。
「シルエラ! ぐはっ!!」
俺も数発の魔弾を喰らってしまった。頑丈なはずの魔法障壁がこうも簡単に破られるなんて、これでは俺はともかく皆が心配だ。ダメージは思っていたより大きく、回復するまで体を思うように動かせそうにない。
魔弾が止み辺りが静かになると、そこには地獄絵図が広がっていた。
「みんな大丈夫か!?」
だが、いくら待っても返事は返ってこない。
「あらあら、これくらいでくたばるなんて、所詮人間なんてこんなものね。その点、貴方は良いわ♡ 今からでも私のモノになりなさい」
「断る!」
「貴方も強情ねぇ」
「そうだわ。良いことを思いついたわ」
ふわりと宙に浮き上がったディアドラは、倒れているミスティに近寄り、怪しい光を放った。
「ミスティ!」
俺の声が届いたのか、ミスティがゆっくりと立ち上がった。よかった無事だったのか? だがどこか様子がおかしい。瞳に光はなく虚ろな目になっている。
「ディアドラ、ミスティに何をした?」
「何って、ただ魅了しただけよ♡」
「魅了だと?」
「そそ、今のこの子には貴方はどう映って見えているのかしらね? 恋人かしら? それとも敵かしら? 楽しみだわぁ♡」
「うぅうぅぅ・・・」
「ミスティしっかりしろ!」
ミスティに駆け寄ろとした時だった。その手に持つ弓を俺に向け、即座に矢を放ってくる。
魔力の込められた矢は、俺の眉間を正確に捉えている。
とっさに剣で矢を叩き落とすと、2発目3発目の矢が間髪入れずに飛んでくる。
「くっ! ミスティ! 何をするんだ正気に戻れ!」
声をかけても返事もなく、連射される矢にたまらず後ろに後退する。
どうする? ミスティをどうやったら正気に戻せる? 考えろ。声をかけ続ける? ショックを与える? どの程度だ? ミスティを傷つける訳にはいかない・・・ダメだ全然考えがまとまらない。
「これは楽しい余興ね。貴方がこの子をどうするのか、楽しみにしてるわ♡」
「ディアドラ貴様! 絶対に許さない!」
そうだ。ミスティより先にディアドラを倒せば解決するんじゃないか? そうすればミスティも正気に戻るはず!
◇ ◇ ミスティの深層心理 ◇ ◇
ううん・・ここはどこ? そうだサキュバスクイーンと対峙していたはず。戦いはどうなっているの?
えっ!? 待って、なんで私がヤマト様に弓を向けているの? 止めて! そんなこと私はしたくない! お願いだから止めて・・・
私の心とは別に、体が勝手に動いている。
愛しのヤマト様に弓を向けるなんて、ああっ! あんなにボロボロになって・・・ごめんなさい・・・無力な私でごめんなさい。
ヤマト様がサキュバスクイーンに突っ込んでいく。あっ止めて! それ以上ヤマト様を攻撃しないで・・・
私の意思とは裏腹に、私の体はショートソードを抜き放ち、サキュバスクイーンと対峙しているヤマト様に剣を突き立てている。
止めて! 私の願いを余所に、その剣はヤマト様の腹部を貫いている。ヤマト様は苦痛の表情を浮かべながら私を抱きしめてくれる。
ああ、ヤマト様そんな悲しそうな顔しないで・・・
悪いのは私なのに、私に力がないばかりにヤマト様に迷惑をかけてしまって、そればかりかヤマト様に剣を刺してしまった。
剣を伝い、ヤマト様の血が流れてくる。
温かい血、温かい言葉、抱きしめられた体は温もりを覚えている。
ああっ愛しのヤマト様、ごめんなさい。
不出来な私をお許しください・・・・・
「ミスティ・・・」
私の名を呼ぶヤマト様の声が、私の魂を揺さぶり動かすのが分かる。
ヤマト様♡ もっと私の名前を呼んで欲しい。もっと抱きしめて欲しい。もっと愛して欲しい。
ヤマト様が私を抱きしめながら、キスをしてくれる♡ ああっ嬉しい♡ 私のヤマト様♡
いつしか私の身体は涙を流し、ヤマト様を抱きしめ返していた。
◇ ◇ ◇
「ミスティ? 正気に戻ったのか?」
「はいっ♡ その・・ごめんなさい・・ヤマト様にご迷惑をおかけしてしまって、もう大丈夫です」
「そうか。よかったミスティが無事でいてくれて・・・グフッ」
「や、ヤマト様・・すぐに手当てを、いや剣を先に抜かなくちゃ!」
正気に戻ったミスティが、慌てて腹に突き刺さったままの剣を抜いてくれる。これくらいの傷ならじきに治る。だが少し血を流しすぎてしまったようだ。
傷は治っても、血の量は回復しない・・意識をしっかり持たないと気絶してしまいそうになる。
「あら残念。その子正気に戻ったのね。でもそのボロボロの体で私に勝てるかしら?」
「ディアドラ! 貴様だけは許せない! よくもミスティを弄んでくれたな!」
「ヤマト様・・・」
「ミスティ、シルエラたちを頼む!」
「わ、わかったわ。ヤマト様ならきっと。いえ必ず勝てると信じています」
「ああ、任せろ!」
とわ言ったものの、どうすれば勝てる? 圧倒的な力の差になすすべがない。
一旦退却するか? いや逃がしてくれるような生温い相手ではない。
降参して軍門に降るか? そんなことしてどうする? 彼女たちはそんなことを望んではいないはずだ。
ぐうっ・・ディアドラの長爪が俺を切り刻んでいく。
俺は膝をつき、剣を杖代わりにしている・・・・はぁ はぁ 立っているのがやっとの状態であり、絶対絶命の大ピンチだ。
「なかなかしぶといわね。なら次の子はどうかしらね」
「や、やめろディアドラ!」
「どの子が良いかしらね。そうだわ食堂で貴方の隣に座っていた子、ピンク色の髪の毛の子がいいわね」
ディアドラが、シルエラとそのシルエラを介抱しているミスティに近づいていく。
「ひっ!・・来ないで!」
「逃げろミスティ!」
「邪魔よ、どきなさい!」
シルエラをかばおうとしたミスティを吹き飛ばし、シルエラに狙いを定めるディアドラ。
「やめろおぉぉ! シルエラに手を出すなぁぁ!」
俺は最後の力を振り絞ってディアドラめがけて、全力で突進する。
どこにこんな力が残っていたのだろうか?
怒りの力なのか? 火事場の馬鹿力なのか? シルエラを救えるならこの際どうでもいい。今まで以上の力を込めた一撃が初めてディアドラに通った。
身体の底からでる力でなんとか戦えるようになった。
「おおおおおおっ!!」
俺は叫びながら、必殺の剣を繰り出す。長剣の攻撃を長爪で受け止められるが、初めてディアドラを押し切ることができた。
よしっ、このまま攻勢にでれば何とかなる!
俺は再度踏み込むと、長剣を突き立てる。
残念ながら剣は躱されてしまうが、踏み込みの勢いに任せて拳をディアドラの腹部へと打ち込んだ。
「ぐっ」
始めてディアドラが苦悶の表情を浮かべた瞬間だった。
「この、調子に乗るなぁ!」
ぶつかり合う剣と爪、蹴りも混ぜ合わせて一進一退の攻防が続く。
持久戦になるとこちらが不利だ。
何か隙をつくことができれば・・・どうする。
そう思った瞬間だった。
突然腹部に熱い痛みが走る。
嘘だろう・・・・奴の攻撃は見えていたはずだ。
・・・・だが・・・・
ディアドラの長爪が、いや腕が俺の腹部を貫いていた。
レッドドラゴンを倒し、先に進む俺たちを待ち構えていたのはサキュバスたちだった。3人衆? いや雰囲気が違う、別の個体だ。
戦闘の意思はないようで、サキュバスの案内のもと第10層へとやってきた。
10層は、貴族の住むような洋館の雰囲気が漂うエリアだった。
高そうな調度品を眺めながら先に進み、案内された部屋に入ると彼女がいた。
部屋の中にはテーブルがあり、テーブル上には豪華な料理が並んでおり、テーブルを挟んでひとりの女性が優雅に座っていた。
そう彼女こそ、このプレジールの塔の主、ダンジョンマスターであり、サキュバスクイーンディアドラだ。
「ホントにこの10層まで来るなんて見直しましたわ。改めまして、ようこそ我がプレジールの塔最上階へ」
「こいつがディアドラ・・」
「そんなに怖い顔しなさんな。まずはおかけください。食事でもしながらお話しましょう♡ お飲み物は何がいいかしら? 紅茶? それともお酒がいいかしら?」
「なっ! 貴様なんのつもりだ!?」
「リュネールさん落ち着いて! ここは彼女の言うとおりにしよう」
俺は血気盛んなリュネールさんを落ち着かせて、ディアドラの対面となる席に座ると、他のメンバーもそれに倣ってそれぞれ椅子に座った。
「私はお紅茶を頂こうかしら」
「シルエラさん! ここは敵地だぞ。もし毒でも入っていたらどうするんだ?」
堂々と紅茶を頼むシルエラに、警戒を解かないリュネールさん。
「大丈夫さ! そんな姑息な手段を用いるような相手じゃない。そうだろ? ディアドラさんよ」
「ふふっ♡ そのとおりよ。毒なんて無粋なことはしないわ。安心して良いわよ」
「ならアタイは酒をもらおうか」
「では良い葡萄酒があるのでそれをお持ちしましょう。貴方はどうかしら?」
「俺はシルエラと同じ紅茶でいい」
「そう、つまらないのね。いいわ。用意させましょう」
暫くすると、それぞれの飲み物を用意した配下のサキュバスが現れ、俺の前には良い匂いの紅茶が置かれた。
「では頂きましょう」
ディアドラの挨拶とともに、料理に飛びつくロザリーとミスティ。落ち着いて紅茶を楽しむシルエラ。ディアドラとリュネールさん、ステラさんはそれぞれ葡萄酒を飲んでいる。
「ここまで来た貴方は見込みがあるわ。もう一度聞くわね。私の配下になる気はないかしら?」
「くどいなお前も、前にも断っただろ。お前こそ俺の軍門に降ってもらおうか」
「そう、残念ね」
優雅に葡萄酒を飲み、そのグラスをテーブルに置くと、表情が険しくなり圧力が一気に膨れ上がった。
「なら力づくで従わせちゃおうかしら♡」
「やれるものならやってみろ!」
ディアドラの殺気に反応して皆も立ち上がり、抜刀こそしていないがそれぞれの武器に手を伸ばして、何時でも抜ける体制になっている。
「いいわ。やるなら相応しい場所に移動しましょう。ついてらっしゃい」
ディアドラの後ろに付いて廊下を歩いている。
しかし・・・後ろ姿が・・・なんともエロい♡ 括れたウエストにスラリと伸びた脚、そして何と言っても肉付きの良いプルンプルンのお尻。紐のような下着を着用しているせいで歩くたびに小刻みに揺れている。見えないだけできっと胸も揺れていることだろう。
俺の股間はディアドラの後ろ姿を見ているだけで、既に臨戦態勢に入っている。
「ここよ。さっ中へどうぞ。」
案内された場所は、豪華な細工のされた扉の前。きっとここが10層のボス部屋なのだろう。
部屋の中も他と同じような建築様式、いや更に豪華な造りになっていおり、床も高級そうな赤い絨毯だった。
ディアドラは部屋の中心部で佇むと、その力を解放する。何という力だろうか? まるで大気が震えているようだ。対峙するそれだけで冷や汗が流れてくる。
「さあ、始めましょうか? 早くしないとそちらのお方に視姦されちゃうわ♡」
「なっ!?」
ディアドラが悪戯っぽく笑い、皆が一斉に俺に白い目を向けてくる。ディアドラに見惚れていたことは事実なのだが、そんな目で俺を見ないでくれよ・・・
『ディアドラ・ミラ・アイリーン』
種別:淫魔族
性別:♀
属性:闇
クラス:迷宮主
LV:38
HP:7605/5070(7605)
MP:7050/4700(7050)
SP:7305/4870(7305)
STR:A VIT:B AGI:A
DEX:A INT:A LUK:C
サキュバスクイーン
さすがに強い、だが以前は見れなかったステータスも見れるようになり、その差も詰まっているはずだ。
俺は愛用の長剣を構えると、ディアドラの両手の爪がまたたく間に伸びてゆく。
「準備はいいかしら?」
「おう!」
「なら、これはどうかしらっ!」
ディアドラがそう言った瞬間、離れていたはずのディアドラが一瞬で俺の眼前に現れ、その鋭利な長爪が襲ってきた。
「くっ!」
とっさに剣で受けるが、連打を受け止めることはできずに、体のあちこちに切り傷を作ってしまう。
「ヤマト殿!」「ヤマト様!」
いきなりの先制攻撃に慌てるリュネールさんたち。彼女らはディアドラの動きに反応すらできていなかったのだ。
「俺は大丈夫だ! だが気を付けろ! 凄まじく早いぞ!」
ヤバいな。その踏み込みスピードは、以前対峙した紗弓様を上回っているぞ。瞬きすら許されない驚きのスピードだ。
とてもじゃないが全てを見切ることなどできない。
「このおぉ!」
ディアドラめがけて剣を振り下ろすリュネールさん。だがその剣は空を切り、逆に蹴り飛ばされてしまう。
「がはっ!」
「邪魔よ、雑魚は引っ込んでいなさい!」
「リュネールさん!」
倒れたリュネールさんに駆け寄ろうとしたところに、複数の魔弾が雨のように襲いかかってくる。
魔法障壁を簡単に突き破り襲いくる魔弾、それは俺だけでなくロザリーやシルエラたちも同様だった。
あちこちで爆発音と悲鳴が聞こえてくる。
「シルエラ! ぐはっ!!」
俺も数発の魔弾を喰らってしまった。頑丈なはずの魔法障壁がこうも簡単に破られるなんて、これでは俺はともかく皆が心配だ。ダメージは思っていたより大きく、回復するまで体を思うように動かせそうにない。
魔弾が止み辺りが静かになると、そこには地獄絵図が広がっていた。
「みんな大丈夫か!?」
だが、いくら待っても返事は返ってこない。
「あらあら、これくらいでくたばるなんて、所詮人間なんてこんなものね。その点、貴方は良いわ♡ 今からでも私のモノになりなさい」
「断る!」
「貴方も強情ねぇ」
「そうだわ。良いことを思いついたわ」
ふわりと宙に浮き上がったディアドラは、倒れているミスティに近寄り、怪しい光を放った。
「ミスティ!」
俺の声が届いたのか、ミスティがゆっくりと立ち上がった。よかった無事だったのか? だがどこか様子がおかしい。瞳に光はなく虚ろな目になっている。
「ディアドラ、ミスティに何をした?」
「何って、ただ魅了しただけよ♡」
「魅了だと?」
「そそ、今のこの子には貴方はどう映って見えているのかしらね? 恋人かしら? それとも敵かしら? 楽しみだわぁ♡」
「うぅうぅぅ・・・」
「ミスティしっかりしろ!」
ミスティに駆け寄ろとした時だった。その手に持つ弓を俺に向け、即座に矢を放ってくる。
魔力の込められた矢は、俺の眉間を正確に捉えている。
とっさに剣で矢を叩き落とすと、2発目3発目の矢が間髪入れずに飛んでくる。
「くっ! ミスティ! 何をするんだ正気に戻れ!」
声をかけても返事もなく、連射される矢にたまらず後ろに後退する。
どうする? ミスティをどうやったら正気に戻せる? 考えろ。声をかけ続ける? ショックを与える? どの程度だ? ミスティを傷つける訳にはいかない・・・ダメだ全然考えがまとまらない。
「これは楽しい余興ね。貴方がこの子をどうするのか、楽しみにしてるわ♡」
「ディアドラ貴様! 絶対に許さない!」
そうだ。ミスティより先にディアドラを倒せば解決するんじゃないか? そうすればミスティも正気に戻るはず!
◇ ◇ ミスティの深層心理 ◇ ◇
ううん・・ここはどこ? そうだサキュバスクイーンと対峙していたはず。戦いはどうなっているの?
えっ!? 待って、なんで私がヤマト様に弓を向けているの? 止めて! そんなこと私はしたくない! お願いだから止めて・・・
私の心とは別に、体が勝手に動いている。
愛しのヤマト様に弓を向けるなんて、ああっ! あんなにボロボロになって・・・ごめんなさい・・・無力な私でごめんなさい。
ヤマト様がサキュバスクイーンに突っ込んでいく。あっ止めて! それ以上ヤマト様を攻撃しないで・・・
私の意思とは裏腹に、私の体はショートソードを抜き放ち、サキュバスクイーンと対峙しているヤマト様に剣を突き立てている。
止めて! 私の願いを余所に、その剣はヤマト様の腹部を貫いている。ヤマト様は苦痛の表情を浮かべながら私を抱きしめてくれる。
ああ、ヤマト様そんな悲しそうな顔しないで・・・
悪いのは私なのに、私に力がないばかりにヤマト様に迷惑をかけてしまって、そればかりかヤマト様に剣を刺してしまった。
剣を伝い、ヤマト様の血が流れてくる。
温かい血、温かい言葉、抱きしめられた体は温もりを覚えている。
ああっ愛しのヤマト様、ごめんなさい。
不出来な私をお許しください・・・・・
「ミスティ・・・」
私の名を呼ぶヤマト様の声が、私の魂を揺さぶり動かすのが分かる。
ヤマト様♡ もっと私の名前を呼んで欲しい。もっと抱きしめて欲しい。もっと愛して欲しい。
ヤマト様が私を抱きしめながら、キスをしてくれる♡ ああっ嬉しい♡ 私のヤマト様♡
いつしか私の身体は涙を流し、ヤマト様を抱きしめ返していた。
◇ ◇ ◇
「ミスティ? 正気に戻ったのか?」
「はいっ♡ その・・ごめんなさい・・ヤマト様にご迷惑をおかけしてしまって、もう大丈夫です」
「そうか。よかったミスティが無事でいてくれて・・・グフッ」
「や、ヤマト様・・すぐに手当てを、いや剣を先に抜かなくちゃ!」
正気に戻ったミスティが、慌てて腹に突き刺さったままの剣を抜いてくれる。これくらいの傷ならじきに治る。だが少し血を流しすぎてしまったようだ。
傷は治っても、血の量は回復しない・・意識をしっかり持たないと気絶してしまいそうになる。
「あら残念。その子正気に戻ったのね。でもそのボロボロの体で私に勝てるかしら?」
「ディアドラ! 貴様だけは許せない! よくもミスティを弄んでくれたな!」
「ヤマト様・・・」
「ミスティ、シルエラたちを頼む!」
「わ、わかったわ。ヤマト様ならきっと。いえ必ず勝てると信じています」
「ああ、任せろ!」
とわ言ったものの、どうすれば勝てる? 圧倒的な力の差になすすべがない。
一旦退却するか? いや逃がしてくれるような生温い相手ではない。
降参して軍門に降るか? そんなことしてどうする? 彼女たちはそんなことを望んではいないはずだ。
ぐうっ・・ディアドラの長爪が俺を切り刻んでいく。
俺は膝をつき、剣を杖代わりにしている・・・・はぁ はぁ 立っているのがやっとの状態であり、絶対絶命の大ピンチだ。
「なかなかしぶといわね。なら次の子はどうかしらね」
「や、やめろディアドラ!」
「どの子が良いかしらね。そうだわ食堂で貴方の隣に座っていた子、ピンク色の髪の毛の子がいいわね」
ディアドラが、シルエラとそのシルエラを介抱しているミスティに近づいていく。
「ひっ!・・来ないで!」
「逃げろミスティ!」
「邪魔よ、どきなさい!」
シルエラをかばおうとしたミスティを吹き飛ばし、シルエラに狙いを定めるディアドラ。
「やめろおぉぉ! シルエラに手を出すなぁぁ!」
俺は最後の力を振り絞ってディアドラめがけて、全力で突進する。
どこにこんな力が残っていたのだろうか?
怒りの力なのか? 火事場の馬鹿力なのか? シルエラを救えるならこの際どうでもいい。今まで以上の力を込めた一撃が初めてディアドラに通った。
身体の底からでる力でなんとか戦えるようになった。
「おおおおおおっ!!」
俺は叫びながら、必殺の剣を繰り出す。長剣の攻撃を長爪で受け止められるが、初めてディアドラを押し切ることができた。
よしっ、このまま攻勢にでれば何とかなる!
俺は再度踏み込むと、長剣を突き立てる。
残念ながら剣は躱されてしまうが、踏み込みの勢いに任せて拳をディアドラの腹部へと打ち込んだ。
「ぐっ」
始めてディアドラが苦悶の表情を浮かべた瞬間だった。
「この、調子に乗るなぁ!」
ぶつかり合う剣と爪、蹴りも混ぜ合わせて一進一退の攻防が続く。
持久戦になるとこちらが不利だ。
何か隙をつくことができれば・・・どうする。
そう思った瞬間だった。
突然腹部に熱い痛みが走る。
嘘だろう・・・・奴の攻撃は見えていたはずだ。
・・・・だが・・・・
ディアドラの長爪が、いや腕が俺の腹部を貫いていた。
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高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました
チー牛Y
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残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。
完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。
【捕食】
それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。
ゴブリンを食べれば腕力を獲得。
魔物を食べれば新スキルを習得。
レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。
森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。
やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。
これは――
最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
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戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
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