オオエード物語

つきこ

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風の段

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  ―――まったく、お前は素直だなぁ。
  喧嘩で疲れはてて地べたに寝っ転がりながら、座長はよくそう言ったものだった。
  ―――お前ってヤツは、その素直さで敵も味方も作るんだから、器用だよなぁ。あぁでも、やっぱり不器用だな。お前の握り飯は全て形も大きさもバラバラで、そのくせ全部ボロボロ崩れてマトモに食べれた試しがないんだからよ。
  余計なお世話だ。どんなに無惨な見た目でもいいんだ。食べるのは自分なんだから。
  むくれるあたしを、座長は優しく細めた目で見やったものだった。
  ―――そう言いなさんな。お前の不器用さを引っ括めて受け入れてくれる野郎がそのうち現れる。きっと現れる。その時まで、今のまま、素直に不器用に真っ直ぐでお節介であってくれよ。
  そう言って豪快に笑う姿が好きだった。別れを予感させるような言葉は嫌だったけど。


  ふっと目を開けるとやけに高い所に無駄に細かな細工が施された天井が見えた。寝かせられていた布団もやけにフカフカ柔らかいし、とりあえずここはお金持ちの屋敷の類いらしい。
  起き上がってみて、肌触りの良い寝間着を着せられていることに気付く。
  気を失っている間に着替えさせられたのだろう。身に付けていた荷物も見当たらない。
  舌打ちをしながら布団の上に立ち上がり手の甲で目の周りを擦った。少しベタベタしていたのが取れたので一応満足だ。
  何度か深呼吸をしてから、気を落ち着けて気配を探る。大体の方角を探ったあたりで、こちらに一人近付く気配に気が付いた。
  殺気や闘気がなく歩き方も気配に気を配っていない。侍女や使用人だろうか。
  廊下から見えないように襖に近付いて身を屈めて息を殺す。
  スゥっと襖が開き、侍女が一人足を踏み入れる。
  「……………っ!!?」
  あたしが寝ていた布団がもぬけの殻であることに気付いて声をあげようとしたところを、当て身で止める。崩れた身体を支えて部屋の中に引きずり込み、襖を閉めた。
  「ごめんねー………良い布団だから、代わりにゆっくり寝ててねー………」
  小声で謝りながら着物を拝借する。手早く着付けると、侍女さんを布団に寝かせて掛け布団で身体を覆う。
  最後に身振りだけで謝って、部屋を出ると背筋をしゃんと伸ばして歩き出した。

  他の侍女や侍などに行き合って誰何されるかとも思ったが、誰ともすれ違うこともなく姿を見かけることもない。
  好都合ではあるが何とも不気味だ。かといって進むほかないのだが。
  気配を探り探り歩き、ある小部屋に辿り着く。
  中を覗くと、物置きの一種なのだろうか、書き付けが収められた棚に挟まれた小机の上に、私の獲物がぞんざいに置いてあった。
  改めてみると、何か妙な具合に弄くられた形跡もないのでホッとしながら身に付ける。
  近くの棚に立てかけてあった三味線を掴むと部屋を出る。少し歩いたところで振り返り様に獲物を振るった。

  ィィィンっ

  金属音が響く。
  目の前の暗闇を見据えても何も気配を感じない。
  気配を探りながらゆっくり歩くと、時折何かが暗闇を裂いて飛んでくる。
  正体の解らないそれを獲物で弾き飛ばして駆け出す。

  ビュッ………ュュュュュンっ………

  数が多いと判断したあたしは迷わず近くの障子に体当たりする形で部屋に飛び込んだ。
  「なっ………何だ………って、おめぇ!」
  身を起こしながら男があたしの顔を指差す。
  その下にいた侍女さんが素早く抜け出し、胸元を合わせながら部屋を駆け出る。
  あたしは男の顔面に足をめり込ませた。
  「へめぇっ。ふぁにふぅぐっ」
  何か言っているが、それに取り合う暇はなかった。
  すぅっと隣続きの障子が静かに開き、無駄に豪奢な着物に身を包んだ男があたしを見てにこりと笑ったからだ。

  「困りますね、勝手に歩き回っては迷子になりますよ」
  男は言い聞かせるような口調で言った。あたしの足の先を見て平然と笑えるところを見ると、ただのとんちんかん坊やではなさそうだ。
  「手荒な真似でお出で頂きましたが、至極元気のようで良かったです。貴女は我々の切り札ですので、怪我などされると困るのですよ」
  切り札、の一言にあたしは片眉を上げた。
  「貴女には我々の志の為に同行していただかねばなりません。我々が無事にお送り致しますので、今夜は部屋でお休みください」
  エスコートでもするかのように片手を広げてこちらに静かに歩み寄る男の足を止めたのは。
  「お待ちを。若様」
  硬質な女の声に、男は足を止めて柔和な作り笑いを引っ込めた。
  「その女、さすがにアレの縁の者とあって、どんな牙を隠しているやもしれません。それ以上は御近づきになられませぬよう」
  「そうか。しかし、所詮渡り鳥風情とはいえ特別枠等と持ち上げられている女だ。金や地位で繰るのは難があるのではないか?」
  ご安心を、と姿が見えない女の声が答えた。
「蔵ほどもある獣すら行動不能にするという薬を手に入れてございます。そちらを」
「ぐぇぇっ」
  無機質な女の声を遮ったのは、下手な蛙の物真似だった。
「一座乗っ取ってまで披露する芸が蛙の鳴き真似とはね。本当、下半身だけで生きてるんだね」
  踏みつける足に力を入れすぎたか、蛙の鳴き真似はふぐふぐと気持ち悪い鼻息になった。足の所々がたまに温い空気に当たって気持ち悪いことこの上ない。
  衝動のままについ顔面を踏みつけたが、喉に切り替えることにした。
「ぐぁぁっ」
  素直に畳に縫いつけられた男に、あたしは極自然に話しかけた。
「ねぇ教えて。コイツらについてあんたが知ってること、全部」
「しっ、てること、て」
  ため息をついて足の力を元に戻すと、ぐぇぇと鳴く。
「決まりきったやり取りなんてやってる暇ないのよ。あんただってさっさと別の部屋に籠って綺麗な女中さんとお楽しみしたいんでしょ。さっさと吐きなさいよ。コイツら、何?何を企んでんの?」
  質問を投げる度にぐいと踏みつけるとぐぇっと鳴きながらも、知らねぇよ!と男は喚いた。
「おメェが居なくなってからロクなことがねぇ!今までの興行先がみーんな手の平返したように断り入れてきたりすんなり通れた筈の関所はやたら手間取るようになったし!興行が打てねぇってんで女たちも離れていきやがっげぇっ!」
  思い切り喉仏を踏んづけたので、男は目を白黒させて口から涎を飛ばす。汚い。
「どうせ本人に聞いたってわざわざ白状なんてしないだろうからダメ元で聞いてあげたのに。やっぱ下半身本体のヤツに話すほど甘くはないか」
  まぁいいや。
  足を放し様呟いて、御丁寧に待っていてくれた男に向き直る。
「あたしには関係ないことだし」
  帰るから退いてくれる?
  笑顔で聞くと相手も上品だけど黒く笑った。
「言った筈ですよ。貴女は切り札です。ここに居て頂きます」
「それは頂けないな。でもいいよ。勝手に帰るから」

  ―――――ィンっ

  振るったあたしの一撃はあっさり防がれた。
  たぶん、あの女に。
  舌打ちするあたしの前で、男が驚愕に目を見張った。
「なっ!なんだ、今のは!」
  古よりとある一族に伝わる暗器です。
  答えたのは女だった。
  相変わらず落ち着き切った声に更に苛つく。
「暗器使いなんて、聞いてないぞ!渡り鳥風情、見るのも不愉快だというのに、危なくて触れないじゃないか!」
「ご安心を。薬で動けなくすればただの小娘です。一時の我慢です」
「そ、そうか………?なら」
  男が要らん覚悟を決めたところで、遠慮のない大笑いが辺りに響き渡った。
「なっ!何者かっ」
  お決まりのように狼狽えながら誰何する男に思わずため息をついてから、あたしは静かに声をかけた。
「男は下半身本体のととんちんかん坊やとでもうカブってるし、姿見せないで存在感アピールすんのももう居るから、あんまり劇的な登場になってないわよ」
「そりゃ残念」
  そう言って男―――昨日発生したあたしの自称兄はあっさり部屋の隅に現れた。
「全くお前は捕まったんなら大人しく捕まっておけよ。ナニのこのこ逃げ出してこんなとこで軽口叩きながら戦闘してるんだ」
  現れるなり小言を垂れる自称兄にあたしは眉を寄せた。
「なんで大人しくしてあげなきゃいけないのよ。それに、戦闘なんてしてないわよ。向こうが飛び武器投げてくるから弾いてるだけじゃない」
「いや、防戦一方なのをなんでそこまで胸張って言えるんだ、お前は」
  自称兄は呆れた表情でため息をついた。
「だって防がないと当たるし。怪我するじゃない。あいつら、意識がある状態のあたしは怖くて触れないから薬盛る、とか言ってんのよ?そんな危ない発言するヤツの投げる武器を身に受けるとか大人しく囚われの身を楽しむとか、少なくともあたしの趣味じゃないわ」
  ほほぅ?と唸った自称兄の目がスッと冷たく細められた。
「それはちょっとオイタが過ぎるな」
  どれ、と一声かけると自称兄の姿がフッとかき消える。
  女の声が途切れ途切れに聞こえたかと思うや、天井からドサリと色鮮やかな塊が落ちてきた。
  この着物の柄には見覚えがある。
  やはり、街道沿いでご丁寧に仮病であたしを誘い出した女だった。
  その側に降り立った自称兄は、落ちたまま動かない女を無表情に見下ろしながら脇差を納めた。
「死んだの?」
  頼りにしていた女が落ちてきたことで更に狼狽するとんちんかん坊やを無視して聞くと、まさか、と自称兄は首を振った。
「証人だからな。生かしておくさ」
  気軽に言った自称兄は、さて、ととんちんかん坊やに向き直る。
  ひぃぃっと解りやすく狼狽えるとんちんかん坊や。
「次はお前さんだな。大人しく世襲を待てば良いものを」
「貴様っ!身分を弁えよっ。僕はーーーひっ!」
  とんちんかん坊やがキレたが、ロクに喋る間もなく短く悲鳴を上げて身を強張らせる。その頭からは髷が無くなっていた。
「お前さんこそ、立場を弁えろよ?」
  納刀したばかりの脇差をすぐさま構えたその顔は、それまでの気安い雰囲気を一切消していた。
「野望持つのも女の尻追いかけ回すのも個人の自由だけどな。自分の番に手を出されて黙っている程、俺は優しくないんでな」
  聞き慣れない言葉に引っ掛かったのは、あたしだけではなかった。
「番っ!?まさか貴様―――っ!!!」

  あ、マズい。
  ツガイという謎の言葉が解ってないのはあたし一人?
  それはかなり気まずい。
  しばらく会話には参加しないでおこう!

  心の中で決意してから、はた、と思いつく。

  いるじゃん!
  絶対知ってる筈がないヤツがもう一人!

  慌てて辺りを見渡すが、下半身の男は影も形もなかった。
「………くそぅ………せっかく下半身以外の存在理由を見つけてやったというのにっ………」
「ナニをそんなに喜んでいるんだ、お前は」
  心底悔しがっているあたしを何やら面白くなさそうに見詰めて的外れなことを言う、自称兄。
「喜んでるように見えてるってんなら、あなた眼鏡でもかけた方が良いわ」
「嫌だね。あんなクソ重いモン着けて歩き回るなんて、面倒で仕方ねぇや」
  あたしの助言はあっさり却下されたが、軽口を叩いたお蔭で少し気が紛れた。
「ねぇ、さっき言ってた」
「ハハハハハハハハハハハぁっ」
  さりげない会話の流れで謎の言葉についてさらっと聞き出そうというあたしの機転を台無しにしたのは、とんちんかん坊やの笑声だった。
  ナニが可笑しいのか、片手で額を押さえケラケラ笑っている。乱れた髪の毛が不規則に揺れていてかなり異様な見た目だ。
「あーぁ。いぢめるからキレちゃったんじゃない?」
「お前、夫の前で他の男を気にかけるとはいい度胸だな」
  壊れたとんちんかん坊やを指差すあたしに、自称兄はジト目を向ける。
「やーだぁ、お兄ちゃん。冗談下手過ぎてウケるんですけどぉ?」
「その喋り方ヤメロ。兄妹装ったのは謝っただろうが。番にそんな口利かれたら心臓が痛くて敵わん」
「そのツガイって何なの?海の向こうにある国の扉についてるヤツなら知ってるけど」
  どさくさに紛れて聞いてみると「そういやお前は知らないよな」となぜか納得したように頷かれた。
「番とはな」
  自称兄に正面から向き合って真面目に聞こうとしたあたしの意気込みを邪魔したのは。

  キェキェキェキェギェギェギェギャァァァッ

  人間の声帯では絶対発音出来ない音を出している、とんちんかん坊やだった。
「なっ!なにあれなにあれっ!せれぶのイメチェンってあれがフツーなのっ!!?」
「んなわけあるか」
  冷静にツッコみつつ、格段驚いた様子もなく「あぁぁ」と呆れ返った声を出す自称兄。
「クーデターをやらかす前提条件すらクリア出来ないクセに駄々捏ねやがって。これだから温室育ちのボンボンは甘くて困る」
「いや、駄々捏ねるとかそんな可愛らしいレベルの話じゃないでしょ、これ。何が起こってんのよ?」
  暢気に喋る間にも、とんちんかん坊やの身体は変化を続ける。鼻と口がやたら飛び出し、首が太く長く伸び、腕が身体に妙に引っ付いて手がやたら筋張る。
  聞き慣れない音に訝しむ間もなく質の良かった織り物が無残に裂け、人間の肌とは思えない形状と色の何かが宙に伸びていく。
「き。気のせいかな。なんかものすごく成長期入ったと思うんだけど。アホのようにバカでかく育ってるんだけど」
  あくまであれは人間だと思いたいあたしの抵抗を、自称兄はため息一つで吹き飛ばし放置していた女の身体を小脇に抱えた。
「ショックなのは解るが、今はここから出るぞ。いくら贅を凝らした屋敷とはいえ、そろそろ崩れるだろう―――お前も運んでやろうか?」
「アホ言ってないで走るわよっ」
  伸びてきた手を叩き落とすと外に向かって駆け出す。
  屋敷の外に広がる森に駆け込む背後で、轟音を撒き散らして屋敷が崩れる。その破れ目から現れた人でない巨大な何かが夜空に向かって咆哮を放つ。
  あぁぁ、と呆れたような声が隣で上がった。
「国民の皆さんからお預かりした税金を無駄遣いして建てた屋敷をあぁも簡単に壊しやがって」
「それは後からもうちょい上の役職の人を締め上げるネタにすることにして。結局あれは何なのよ。なんで自分の家壊してまでバカでかくなるわけ?」
  咆哮を上げながら尚も巨大化を続け周囲の瓦礫だの蔵だのを凪ぎ払うそれを見つめて呟く。
  うーんと目前のそれに大して動揺もせずに自称兄はポリポリと首を掻いた。
「クーデターだ新時代だと宣う割には、歴代の帝に通じるモンが欲しかったんじゃないか?ただのボンボンが新しい帝を名乗るよか、ちったぁ説得力ってモンが生まれて受け入れてもらえるだろうっつー浅はかな悪足掻きというか。モノホンとドーピングの違いなんて、今の治世じゃ判別つかないもんな」
「いや、全然解んないだけど。あれ、さらにでかくなってるけど大丈夫なの?あんなのが暴れたら町どころか領一つ軽く潰れるんじゃない?」
  ふむ、と唸った自称兄はやおら真面目な目付きで異形のそれを睨み「不味いな」と呟いた。
「なまじ多少正統な血筋であることが災いしたか。ちみっとだが人間だった時の意志が残ってるらしい」
  どういうことよ、と聞く自分の声が掠れて聞こえたのは気のせいか。
  隣の男はやたら冷静に、翔ぶ気だ、と言った。
「天下取るっつー意志だけが本能にこびりついてんだな。たぶん、翔んで目指すは王都、狙うは帝の御命ってとこじゃねぇか」
  軽い口調で言うが、表情は険しい。
  舌打ちしながら得物を握りしめ森を飛び出し―――かけたところで思い切り襟首を掴まれた。
「っにすんのよっ!息止める気っ?」
「何すんのはこっちの台詞だ。飛び出してナニやらかすつもりだ」
  険しい顔であたしをぶら下げた自称兄に蹴りを入れようと身体を振るが、いかんせん敵のリーチが長くてムダに終わった。
「ちょっとあの羽切り飛ばそうとしただけでしょ!急がないとマジで翔ぶわよ、あれ!」
  暴れながら背後で蛾の羽をバカでかくしたようなそれをぶぁんぶぁん羽ばたかせているあれを指差す。
  自称兄は目前のなぜか異常な光景を無視してあたしの目をじっと見つめた。
「止めたいか」
  は?と眉を寄せるあたしを、真面目な目付きで静かに見つめる。
「あれが帝を殺すのを、止めたいか」
「いるかどうかも知らないおエラいさんなんて知ったこっちゃないわよ!あたしは!あれが翔ぶのを防ぎたいの!」
  睨み合うこと暫し。
  はぁ、とため息をつくと「解った」と自称兄は呟いた。
「なら、俺が行ってきてやるから。お前、ここで待ってろ」
  買い出しに行ってくる、と言った時とまるで同じ言い方で言う。
「ちょっと待ちなさいっ。行ってくるって、刀一本でどうにか出来る大きさじゃないでしょ、あれはっ」
「そこはお前も同じだっつーのに説教咬ますとか、お前は気遣いの仕方までとんでもなくぶきっちょで可愛いな」
「なぁぁぁっ……!っ、にを言ってんのっ!この非常時にっ」
「しっかり動揺しているくせに隠すな。意地っ張り」
「動揺なんかしてないっ」
「あー、もう良いからちょっと黙れ」
  面倒くさそうに言うと、自称兄はひょいとあたしの身体を横抱きに抱え直した。
  え。ナニこの体勢。とか思うより前に。
  藍に光る瞳が近づいた、と同時に唇をやたら柔らかく温かいものが覆った。
「っっっ」
「良いか、そこで大人しく待ってろよ。あんな紛い物、モノホンがしっかり砕いてやるからな」
  いつの間にかあたしを地面に下ろした自称兄はゆっくり森から出ていく。
  その身体が淡く光ったと思うや。
  さっきから翔ぼうともがいているあれよりはるかに綺麗に光る銀色の巨体が現れた。
  あたしはたぶん、呼吸を忘れていたのだろう。
  あれのと違って確かに翼といえるものを優雅に羽ばたかせた銀色の巨体が咆哮を放つのを最後に、ぶつんと音を立てて意識が暗転していった。
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