異世界宝くじで一等を当てた俺は日本に転生して盲目の少女と気ままな旅をする

LABYRINTH

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宝探し

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 俺は一つ深呼吸してから、道路の方へ向き直った。

 駅前に比べれば閑静な場所だが、車の通りはそれなりにある。


「どうしたの? お話聞かせてよ」


 詠海は階段をのぼりきると、ぴたりと俺の横に並んだ。

 俺は彼女が目の車を通り過ぎていく車に接触しないかと、ひやひやして見守りながら、


「タクシーを捕まえてやる。ちゃんと家まで送らせるからな」

「あなたは?」

「俺も別のタクシーで駅に向かうから何も心配しなくていい」

「それならタクシーなんて要らないよ。ここら辺なら目をつむっても分かるし」

「……笑えない冗談はよせ。それにだ。こっちゃあ金なら腐るほどあるんだ。土産話であんたの家にタダ泊するぐらいなら、ちゃんと金を払ってアバ社長の世話になった方がましだな」

「ねぇ、あなたの名前を教えてよ」

「さっ、タクシーが来たぞ。これでお別れだな」


 俺は腕を高々と上げ、近づいてくるタクシーを停めた。

 詠海の腕を掴み、放り込むようにタクシーに乗せる。

 詠海は暴れこそしなかったが、つまらなそうな顔で反抗の意思を表していた。


「自宅の住所、言えるか」と訊いても、口をつぐむ詠海は首を横に振った。


 まあいい。車が走り出せば、観念して帰宅しようとするだろう。

 俺は気の良さそうなタクシーの運転手に向き直って、とりあえず車を出してもらうよう告げた。


「金は俺が出します。釣りはこの子に渡してください」


 俺はリュックのポケットをまさぐった。

 しかしそこで、予想外の展開が俺を待ち受けていたのだ。


「財布はええと……確かここに入れたはずで……あれ……」

「どうしたの?」


 俺の声音から焦りを察知したのか詠海がたずねてきた。

 どうしたもこうしたも財布がなかった。

 俺は気にするなと言い放ってから、リュックを地面におろして徹底的に財布を探すことにした。


「嘘だろ。なんでないんだ。どっかに落としたのか……」


 全財産が入った財布だ。旅を続ける俺にとっては生死を分かつ最重要アイテムである。失くしたなんて洒落にもならない。


「まさかお財布なくしたの?」

「お前には関係ない。静かに座ってなさい」

「盗られたの? 落としたの?」


 それは確かに問題だ。だが、とりあえず彼女とは別れた方がいいだろう。

 一人になって俺自身が落ち着く必要がある。冷静になって来た道をたどり、それでも駄目なら警察に行く。それしかない。

 そう考えることで、混乱する頭をむりやりに落ち着かせる。


「私、探すの手伝ってあげようか?」

「その必要はない。運転手さん、行ってもらってもいいですか? お金ならこの子が出しますから」

「でもあたし、お金なんて持ってないよ」

「……え?」俺は目を見開いた。「い、いや。家に戻ればいくらかはあるだろ。親に出してもらえ」

「今は家に誰もいない」

「それでも……」

「鍵待ってないんだ、あたし。いつもはおばあちゃんが家にいるから必要ないの。でもおばあちゃんは今の時間は仲間たちとお茶してる」

「ぐ……」


 運転手さんは少し首を傾けて、どうするのかとでも言いたそうに渋面を向けている。


━━ブロロロロ。


 タクシーが過ぎ去っていく。

 俺の横には謎の少女がにこにこ面で立っている。

 ますます苛立ちが募った。


「何がそんなに愉快なんだ?」

「これで宝探しができるね」


 詠海は鼻歌でも歌いだしそうな調子で言った。顔を左右に揺らしてさえいる。

 間違いなく。コンクリートの上に座っていた頃よりもいきいきとしていた。


「ねえ、冒険もこんな感じだったの?」

「宝じゃない。紛失物だ。盗難物かもしれない。それに冒険がこんな呑気なわけないだろ」

「すごい。何度も死にかけた?」

「当たり前だろ。実際に死んだ奴だって数え切れないほど見てきた。ってこんなこと話してる場合じゃないんだよ」

「じゃあ、さっそくレッツゴー」

「……お、おい」


 目の見えない少女は白杖を器用に操りながら、今来た階段をくだり始めた。


「先に行くなって。危ないだろ。どこへ行くかも決めてないのに」

「とりあえず来た道を戻る。そんなの当たり前じゃない」

「……いっとくが俺だってそれぐらい考えついてたからな」

「なら早くついてきなよ。ぼけっとしてると置いて行くよ」

「いつからお前がリーダーになったんだよ。あぁ、くそっ!」


 仕方なく後を追って、階段を駆け下りだした。
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