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【4話】ぜんぶ南国のせいだ
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木枝の表面を歯でかじり、引き剥がすようにして、尖らせていく。
魔法の炎で表面を炙ってから、その先端を傷口に挿し込んだ。
めちゃくちゃ痛い。ぐりぐりと木の枝をかき回し、金属の破片をえぐりだしていく。
「ふぅ……ふぅ……もうないか……」
薪になりそうな木の枝を集め終わったミャンに身体を見てもらう。
「大丈夫です。ぜんぶ取れてると思います」
ミャンまで泣きそうな顔になっていた。
だめだだめだ。師である自分が女々しい一面を見せてどうする。
俺は口を固くむすび、平気なふりをした。
「よし飯にするぞ」
「でも、その傷。放っておいて大丈夫ですか?」
「強い酒でもあればよかったんだがな。とりあえず食いながら回復魔法をかけておくさ」
「回復ならあたしが!」
「大丈夫。自分のことは自分でしないと。お前も同じだぞ。これからは過酷な旅が待っているんだ。もう俺を頼りにはできないからな」
「は、はぃ……」
ミャンはしゅんとして積み上げた薪に目を落とした。
ん~、しょんぼりした顔もかわいい~!
甘やかしてあげた~い!
はっ!
何を考えているんだ俺は。
俺としたことが。師にあらざる思考に取り憑かれてしまうなんて。
おかしい。今までこんなことはなかったはずだ。どんな時もミャンとは一定の距離を保ってきた。弟子として目はかけることは当然あっても、特別扱いはしてこなかった。ましてやひとりの女の子として見てしまうなんて。
俺は青い空を見上げた。少し傾いた太陽。美しい海。白い砂浜。カラフルな南国の植物たち。
まるで異世界に来たみたいだ。頭がぽわ~んとして、心を固く結んでいたひもがつい緩んでしまう。
つらく過酷なこれまでの旅とは何もかもが断絶している。
そう。まるでこの島のように。
「島?」
自分のことばに反論したくなる。
まだ島とは決まっていないだろ。半島や大陸の一部という可能性だってある。
「ミャン、食ったら海岸沿いに歩いてみよう」
「やった! 腹ごなしのお散歩ですね!」
「違う」
眉をひそめてミャンを見る。またもや、しょんぼりしていた。
……ごめんね、ミャンちゃん。そんな悲しそうな顔しないでぇ。
はぁ、だめだこりゃ。
※
木に含まれる水分が多いのかもしれない。思ったほど火力が出ず、食べ物が生焼け状態になってしまった。
塩もなく。味気のない食事になってしまった。俺はともかくも、案の定、ミャンの手はあまり進んでいなかった。
「食える時に食っとけよ。次に加わるパーティでは雑な食事しかでないかもしれないぞ。むしろそんなとこがほとんどだ」
俺が食にうるさいぶん、日々の食事内容には気を使っていた。たいていの冒険者は、食えればOKという粗暴な奴らばかりだ。そうでなくては過酷な旅は続けられない。
舌は肥やそうと思えばいくらでも肥やせるもので。最初は俺の選んだめしの豪華さに驚いたり不満をぶつける者でも、しばらく旅をともにしている内に元には戻れなくなる。一定レベル以下の食事は受け付けなくなるのだ。
「これまでミャンには、ちょいと美味いもんを食わせすぎたかもしれないな」
「そうだと思います。あたしは恵まれてたんだなって気づかされました」
ミャンは覚悟を決めたように、生焼けのホタテやサーモンにがっつきはじめた。
彼女は荒々しく噛み砕きながら、目に涙を浮かべていた。
「なにより、アル様と一緒に食事ができるのもこれが最後かもしれないってのに……」
「別れの涙はまだ早いぞ。とにかく人里を探すのが先だ。現在地を確認し、あのパーティに戻る手配を」
「もうあの人たちはいやですっ」
「……そうか。そうだよな」
仲間を見捨てるパーティというのは論外だ。考えれば誰でもわかる。次は自分が捨てられるかもしれない。その疑念が、メンバーの士気を下げ、結束にひびを入れる。
環境としては申し分ないのは確かだが、なによりあいつらは俺を捨てた。心情としては、ミャンを送り返すなんて大反対だ。
「まぁ、パーティは他にもある。ミャンの実力ならどこへ加入しても超一流になれるだろう」
「そうでしょうか……」
ミャンは何か言いたげだった。俺は気にしないふりをして立ち上がる。
「さぁ、そろそろ探索に出ようか」
日が暮れるうちに、見てまわっておきたい。ここが島なのか陸続きの一部なのかはっきりさせるのは最優先事項だ。
「回復薬のレシピは言えるか?」
俺たちは海岸沿いに歩きながら、錬金術の知識をおさらいすることにした。
ミャンはつまることなく、さらさらと答える。
「はい。セージ系ハーブと乾燥キノコ、特にハリタケ科の相性がいいとされています」
「グリーンセージと毒草のセージモドキの見分け方は?」
「葉の裏をさわって確かめます。ツルツルしているのがグリーンセージ、もけもけしてるのがセージモドキです」
「ふむ、簡単すぎたな」
「アル様のおかげです!」
「正直、俺に教えられることなんてたかが知れてる」
「そんなことないです! もっともっと色んなことを教えてください」
「本当に教わるべき相手は自然だ。錬金術の道のりは長く、そして孤独だ。俺もまだ道の途中だが、ここいらで降りさせてもらうよ」
俺はふっと笑ってミャンの反駁をかわした。
話題を変えるように、海岸の先を指差す。
「わかるか。もう少しでだいたい出発地点の反対側あたりだ」
「つまり、ここは島……ということですか?」
「その可能性は大だ。おまけに近隣に他の島らしきものもなかった。要するにここは、絶海の孤島というやつかもしれない」
出発して四時間ほど経過しただろうか。この様子だと島一周するのに半日も必要ないだろう。海岸はどこまでも白い砂浜が続いていて、島の中心には小高い山がそびえている。
孤島かどうか確かめるには山に登るのも手だが、その必要性はあるだろうか。
むしろこの海岸に残って船が近くのを待った方がいいかもしれない。
あるいは陸続きでないことの確証を得るため、出発地点に戻るのは賛成だが、もうじき日も暮れる。どちらにせよ今うかつに動くのは懸命な判断ではないだろう。
「ここで夜を明かすかもしれない。覚悟していてくれ」
「あの、アル様。ひとつ気になっていたのですが。その傷、どうしたんですか」
「これか。そういえば、まだ説明してなかったな」
俺は立ち止まり、砂浜の上に腰をおろした。
海岸には怪人系の魔物が相変わらずうようよしているが、こちらから手を出さなければ戦闘になることもない。見慣れれば景色の一部になってしまうものだ。
「その前に教えてくれ。昨夜、俺は手足を縛られて海に捨てられた。この島にたどり着いた時、縛っていたはずの縄はなかった。助けたのはミャン、お前だろ?」
「……やはり気づきましたか」
「俺はそこまで間抜けじゃない。どうしてそんな無謀なことを」
「あの人たちに薬で眠らされることはわかっていました。だから眠ったふりをしてたんです。今までも、アル様やあたしが眠った後、あの人たちが陰口を言っているのを知っていました」
「そんなことは知っている」いつの間にか俺の口調は強くなっていた。
「嫌だったんです。アル様の悪口言われるの。それでも昨夜は様子が違った。今までにない感じがしました。だから眠ったふりをして、遠くからアル様を見てました」
「俺が言いたいのはそういうことじゃない!」
「途中であたしが止めても結果は変わらないと思っていました。だからアル様が海に落とされたのを見て、助けようとあたしも海に飛び込んだんです」
「俺のことはどうだっていい。下手をすればミャン、お前が死んでたんだぞ!」
いのちの恩人に対する感謝の気持ちとミャンを心配する気持ちがぶつかりあい、後者が勝った。結果として、俺がミャンを怒鳴りつける形になっていた。
「今回はよかった。だが、それは結果論だ。もう二度とあんなことはするな。いのちを捨ててまで仲間を守ろうとするな。自分のいのちをなによりも大切にしろ」
俺は長年ずっと仲間を守ろうとしてきた。その結果、昨夜の仕打ちだ。
人は裏切る。年月を費やし高い授業料を支払って、そのことをようやく学んだのだ。
ここまで言えば、ミャンは理解してくれると思った。最悪このことだけでも、教えてやれればいい。師として、なんとしてでも理解して欲しかった。
「これが俺のラストレッスンだ」
なんてちょっとカッコつけて言ってみたりもして。
だが、ミャンの返事は思惑とまるで違った。彼女は俺と張り合うように大きな声で、
「嫌です! なんどだって飛び込みます!」
「なに⁉ バカなこというな、昨夜の俺を見ただろ。他人のためにいのち張ったって、結局損するのは自分だ」
「だとしても。あたしは構いません。アル様のためなら」
「やめろ。他人を信用するな。もちろん俺も含めて。これはルールだ。復唱してみろ」
「他人は信用しません。アル様をのぞいて」
「違う! なぜだ⁉ わからない奴だな!」
「だって……だって……アル様のことが……す……すぅ……」
ミャンは唇を尖らせて、ぷるぷる震え始めた。みるみる顔が赤らんでいく。
一瞬なんのことかと思った。だってそんな話の流れじゃなかったじゃない。
しかし、いや、しかし。うそだろ?
「いや、待て。ミャン! 違うよな。違うよな?」
「す……す……」
「大丈夫だ。やめろ。言わなくていい。なにも言うな!」
俺は飛びつくようにその唇へと手を伸ばしたのだが。
「好き。好きなんです。どうしようもないんです」
指の隙間から言葉がこぼれた。
言ってしまった。言われてしまった。こんなに顔を赤くして、苦しそうな顔になってまで、胸をぐっと両手で抑えて。一体なにが彼女をそこまでさせたのか。
まさかこんなことになるなんて。
思い返せば、俺もミャンもなんだかおかしかった。
透きとおる青空、やわらかな海。ぜんぶぜんぶ南国のせいだーー。
魔法の炎で表面を炙ってから、その先端を傷口に挿し込んだ。
めちゃくちゃ痛い。ぐりぐりと木の枝をかき回し、金属の破片をえぐりだしていく。
「ふぅ……ふぅ……もうないか……」
薪になりそうな木の枝を集め終わったミャンに身体を見てもらう。
「大丈夫です。ぜんぶ取れてると思います」
ミャンまで泣きそうな顔になっていた。
だめだだめだ。師である自分が女々しい一面を見せてどうする。
俺は口を固くむすび、平気なふりをした。
「よし飯にするぞ」
「でも、その傷。放っておいて大丈夫ですか?」
「強い酒でもあればよかったんだがな。とりあえず食いながら回復魔法をかけておくさ」
「回復ならあたしが!」
「大丈夫。自分のことは自分でしないと。お前も同じだぞ。これからは過酷な旅が待っているんだ。もう俺を頼りにはできないからな」
「は、はぃ……」
ミャンはしゅんとして積み上げた薪に目を落とした。
ん~、しょんぼりした顔もかわいい~!
甘やかしてあげた~い!
はっ!
何を考えているんだ俺は。
俺としたことが。師にあらざる思考に取り憑かれてしまうなんて。
おかしい。今までこんなことはなかったはずだ。どんな時もミャンとは一定の距離を保ってきた。弟子として目はかけることは当然あっても、特別扱いはしてこなかった。ましてやひとりの女の子として見てしまうなんて。
俺は青い空を見上げた。少し傾いた太陽。美しい海。白い砂浜。カラフルな南国の植物たち。
まるで異世界に来たみたいだ。頭がぽわ~んとして、心を固く結んでいたひもがつい緩んでしまう。
つらく過酷なこれまでの旅とは何もかもが断絶している。
そう。まるでこの島のように。
「島?」
自分のことばに反論したくなる。
まだ島とは決まっていないだろ。半島や大陸の一部という可能性だってある。
「ミャン、食ったら海岸沿いに歩いてみよう」
「やった! 腹ごなしのお散歩ですね!」
「違う」
眉をひそめてミャンを見る。またもや、しょんぼりしていた。
……ごめんね、ミャンちゃん。そんな悲しそうな顔しないでぇ。
はぁ、だめだこりゃ。
※
木に含まれる水分が多いのかもしれない。思ったほど火力が出ず、食べ物が生焼け状態になってしまった。
塩もなく。味気のない食事になってしまった。俺はともかくも、案の定、ミャンの手はあまり進んでいなかった。
「食える時に食っとけよ。次に加わるパーティでは雑な食事しかでないかもしれないぞ。むしろそんなとこがほとんどだ」
俺が食にうるさいぶん、日々の食事内容には気を使っていた。たいていの冒険者は、食えればOKという粗暴な奴らばかりだ。そうでなくては過酷な旅は続けられない。
舌は肥やそうと思えばいくらでも肥やせるもので。最初は俺の選んだめしの豪華さに驚いたり不満をぶつける者でも、しばらく旅をともにしている内に元には戻れなくなる。一定レベル以下の食事は受け付けなくなるのだ。
「これまでミャンには、ちょいと美味いもんを食わせすぎたかもしれないな」
「そうだと思います。あたしは恵まれてたんだなって気づかされました」
ミャンは覚悟を決めたように、生焼けのホタテやサーモンにがっつきはじめた。
彼女は荒々しく噛み砕きながら、目に涙を浮かべていた。
「なにより、アル様と一緒に食事ができるのもこれが最後かもしれないってのに……」
「別れの涙はまだ早いぞ。とにかく人里を探すのが先だ。現在地を確認し、あのパーティに戻る手配を」
「もうあの人たちはいやですっ」
「……そうか。そうだよな」
仲間を見捨てるパーティというのは論外だ。考えれば誰でもわかる。次は自分が捨てられるかもしれない。その疑念が、メンバーの士気を下げ、結束にひびを入れる。
環境としては申し分ないのは確かだが、なによりあいつらは俺を捨てた。心情としては、ミャンを送り返すなんて大反対だ。
「まぁ、パーティは他にもある。ミャンの実力ならどこへ加入しても超一流になれるだろう」
「そうでしょうか……」
ミャンは何か言いたげだった。俺は気にしないふりをして立ち上がる。
「さぁ、そろそろ探索に出ようか」
日が暮れるうちに、見てまわっておきたい。ここが島なのか陸続きの一部なのかはっきりさせるのは最優先事項だ。
「回復薬のレシピは言えるか?」
俺たちは海岸沿いに歩きながら、錬金術の知識をおさらいすることにした。
ミャンはつまることなく、さらさらと答える。
「はい。セージ系ハーブと乾燥キノコ、特にハリタケ科の相性がいいとされています」
「グリーンセージと毒草のセージモドキの見分け方は?」
「葉の裏をさわって確かめます。ツルツルしているのがグリーンセージ、もけもけしてるのがセージモドキです」
「ふむ、簡単すぎたな」
「アル様のおかげです!」
「正直、俺に教えられることなんてたかが知れてる」
「そんなことないです! もっともっと色んなことを教えてください」
「本当に教わるべき相手は自然だ。錬金術の道のりは長く、そして孤独だ。俺もまだ道の途中だが、ここいらで降りさせてもらうよ」
俺はふっと笑ってミャンの反駁をかわした。
話題を変えるように、海岸の先を指差す。
「わかるか。もう少しでだいたい出発地点の反対側あたりだ」
「つまり、ここは島……ということですか?」
「その可能性は大だ。おまけに近隣に他の島らしきものもなかった。要するにここは、絶海の孤島というやつかもしれない」
出発して四時間ほど経過しただろうか。この様子だと島一周するのに半日も必要ないだろう。海岸はどこまでも白い砂浜が続いていて、島の中心には小高い山がそびえている。
孤島かどうか確かめるには山に登るのも手だが、その必要性はあるだろうか。
むしろこの海岸に残って船が近くのを待った方がいいかもしれない。
あるいは陸続きでないことの確証を得るため、出発地点に戻るのは賛成だが、もうじき日も暮れる。どちらにせよ今うかつに動くのは懸命な判断ではないだろう。
「ここで夜を明かすかもしれない。覚悟していてくれ」
「あの、アル様。ひとつ気になっていたのですが。その傷、どうしたんですか」
「これか。そういえば、まだ説明してなかったな」
俺は立ち止まり、砂浜の上に腰をおろした。
海岸には怪人系の魔物が相変わらずうようよしているが、こちらから手を出さなければ戦闘になることもない。見慣れれば景色の一部になってしまうものだ。
「その前に教えてくれ。昨夜、俺は手足を縛られて海に捨てられた。この島にたどり着いた時、縛っていたはずの縄はなかった。助けたのはミャン、お前だろ?」
「……やはり気づきましたか」
「俺はそこまで間抜けじゃない。どうしてそんな無謀なことを」
「あの人たちに薬で眠らされることはわかっていました。だから眠ったふりをしてたんです。今までも、アル様やあたしが眠った後、あの人たちが陰口を言っているのを知っていました」
「そんなことは知っている」いつの間にか俺の口調は強くなっていた。
「嫌だったんです。アル様の悪口言われるの。それでも昨夜は様子が違った。今までにない感じがしました。だから眠ったふりをして、遠くからアル様を見てました」
「俺が言いたいのはそういうことじゃない!」
「途中であたしが止めても結果は変わらないと思っていました。だからアル様が海に落とされたのを見て、助けようとあたしも海に飛び込んだんです」
「俺のことはどうだっていい。下手をすればミャン、お前が死んでたんだぞ!」
いのちの恩人に対する感謝の気持ちとミャンを心配する気持ちがぶつかりあい、後者が勝った。結果として、俺がミャンを怒鳴りつける形になっていた。
「今回はよかった。だが、それは結果論だ。もう二度とあんなことはするな。いのちを捨ててまで仲間を守ろうとするな。自分のいのちをなによりも大切にしろ」
俺は長年ずっと仲間を守ろうとしてきた。その結果、昨夜の仕打ちだ。
人は裏切る。年月を費やし高い授業料を支払って、そのことをようやく学んだのだ。
ここまで言えば、ミャンは理解してくれると思った。最悪このことだけでも、教えてやれればいい。師として、なんとしてでも理解して欲しかった。
「これが俺のラストレッスンだ」
なんてちょっとカッコつけて言ってみたりもして。
だが、ミャンの返事は思惑とまるで違った。彼女は俺と張り合うように大きな声で、
「嫌です! なんどだって飛び込みます!」
「なに⁉ バカなこというな、昨夜の俺を見ただろ。他人のためにいのち張ったって、結局損するのは自分だ」
「だとしても。あたしは構いません。アル様のためなら」
「やめろ。他人を信用するな。もちろん俺も含めて。これはルールだ。復唱してみろ」
「他人は信用しません。アル様をのぞいて」
「違う! なぜだ⁉ わからない奴だな!」
「だって……だって……アル様のことが……す……すぅ……」
ミャンは唇を尖らせて、ぷるぷる震え始めた。みるみる顔が赤らんでいく。
一瞬なんのことかと思った。だってそんな話の流れじゃなかったじゃない。
しかし、いや、しかし。うそだろ?
「いや、待て。ミャン! 違うよな。違うよな?」
「す……す……」
「大丈夫だ。やめろ。言わなくていい。なにも言うな!」
俺は飛びつくようにその唇へと手を伸ばしたのだが。
「好き。好きなんです。どうしようもないんです」
指の隙間から言葉がこぼれた。
言ってしまった。言われてしまった。こんなに顔を赤くして、苦しそうな顔になってまで、胸をぐっと両手で抑えて。一体なにが彼女をそこまでさせたのか。
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思い返せば、俺もミャンもなんだかおかしかった。
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