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21話
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数週間前、俺は家を追い出された。
父の会社が倒産したので、家自体も売り払われることになったのだ。
家族で安アパートに住むという選択肢もあったが、親の方が気を遣ってそれを断った。
本気でトリエステが俺の恋人だと思っているらしい。夢の同棲生活ね、なんて母親は呑気なことを言っていた。
ともかくも。新しい住居は、『血盟の兄弟』が用意してくれたものだった。住宅街にあるのだが、駅からさほど近いわけでもなく、これがまた文句の一つも言いたくなるほどボロいアパートだった。
「ここが俺の家だ。これでわかったか、委員長。ご覧の通り、俺は真面目にまっすぐ帰宅した。生徒指導にはそう伝えろ」
「私をスパイみたいに言わないでよ!」
如月委員長は慌てふためくように答えた。
結局のところ俺の自宅まで委員長とは同じ帰宅ルートだった。
「豪邸過ぎて言葉もでないか?」
皮肉も言いたくなる。委員長は驚きの顔で我々の安アパートを見上げていたのだ。
信じられないとでも言うように口をぽかんと開けている。
「俺と妹を見て、勝手に華やかな生活を想像していたんだろ」
「ほ、ほんとにここに住んでるの?」
「そんな言い草はないだろ。屋根だってあるし、扉もちゃんと閉まる。四畳半の一部屋だが、今どき畳で生活するのも悪くない。ちなみにトイレも風呂も別々だからな」
「そんなの知ってるわよ!」
「知ってる?」俺は眉をひそめた。
「あっ、いや。アパートの外観見ればそれぐらい想像できるって意味よ!」
俺はトリエステが自転車を駐めるのを確認してから、如月氏に視線を戻した。
「なるほどな。で、委員長は?」
「はっ⁉」如月氏は目を丸くした。
「家だよ。まさか家ないのか?」
「あるに決まってるでしょ!」
「ここから遠いのか?」
「別に遠くなんてないし。それになんでそんなこと教えなきゃいけないのよ!」
「そろそろ日も暮れてきた。なんだか顔色も悪いみたいだし」
俺は青ざめたようにも見える如月氏の顔をのぞき込んだ。目の下のクマも濃い。光の加減のせいではなさそうだ。
疲れかどうか聞きたかったが、相変わらず委員長は俺と目を合わせてくれなかった。
元々コミュ障な俺はその気持ちがよく理解できるから、悪く受け取りはしないが、少し寂しかった。
「心配されるなんて世も末ね。あんたのせいで気苦労が絶えないってのに」
如月氏は深くため息を吐きながら道路を歩き出した。
「それより自分の心配したら?」
「心配は人の為にするものだ」
「名言のつもり? それなら私があんたの心配してあげるわ」
「え?」
「ばか! 嫌味に決まってるでしょ。心配して後ついてきたら承知しないから」
如月氏の身体が夕日に溶けていく。俺は、「委員長!」とその背中に呼びかけた。
彼女はがくりと肩を落とし、身体の半分だけこちらに向けた。
「まだ何かあるの。俺が家まで送るよ、とか気色悪い台詞言わないでよね」
「俺はそんな気取ったことができる奴じゃない。気をつけてって言おうとしただけだ」
「私をからかってるの? おちょくって楽しい? もう、さよならとか言わないから」
夕日に向かって進む如月氏の姿が小さくなり、やがて消えた。
ざっと足音がして、振り向くと、トリエステが横に立っていた。
「後一歩というところじゃな?」
「馬鹿言うな。完全に嫌われてるよ。親のかたきのように敵視されてる。あの態度見ただろ?」
「ラブコメの主人公なみに鈍いやつじゃな」
トリエステはにやりと微笑むと、建物の外に設置された階段をたんたんと登って行った。
俺は肩をすくめて、その後を追った。
父の会社が倒産したので、家自体も売り払われることになったのだ。
家族で安アパートに住むという選択肢もあったが、親の方が気を遣ってそれを断った。
本気でトリエステが俺の恋人だと思っているらしい。夢の同棲生活ね、なんて母親は呑気なことを言っていた。
ともかくも。新しい住居は、『血盟の兄弟』が用意してくれたものだった。住宅街にあるのだが、駅からさほど近いわけでもなく、これがまた文句の一つも言いたくなるほどボロいアパートだった。
「ここが俺の家だ。これでわかったか、委員長。ご覧の通り、俺は真面目にまっすぐ帰宅した。生徒指導にはそう伝えろ」
「私をスパイみたいに言わないでよ!」
如月委員長は慌てふためくように答えた。
結局のところ俺の自宅まで委員長とは同じ帰宅ルートだった。
「豪邸過ぎて言葉もでないか?」
皮肉も言いたくなる。委員長は驚きの顔で我々の安アパートを見上げていたのだ。
信じられないとでも言うように口をぽかんと開けている。
「俺と妹を見て、勝手に華やかな生活を想像していたんだろ」
「ほ、ほんとにここに住んでるの?」
「そんな言い草はないだろ。屋根だってあるし、扉もちゃんと閉まる。四畳半の一部屋だが、今どき畳で生活するのも悪くない。ちなみにトイレも風呂も別々だからな」
「そんなの知ってるわよ!」
「知ってる?」俺は眉をひそめた。
「あっ、いや。アパートの外観見ればそれぐらい想像できるって意味よ!」
俺はトリエステが自転車を駐めるのを確認してから、如月氏に視線を戻した。
「なるほどな。で、委員長は?」
「はっ⁉」如月氏は目を丸くした。
「家だよ。まさか家ないのか?」
「あるに決まってるでしょ!」
「ここから遠いのか?」
「別に遠くなんてないし。それになんでそんなこと教えなきゃいけないのよ!」
「そろそろ日も暮れてきた。なんだか顔色も悪いみたいだし」
俺は青ざめたようにも見える如月氏の顔をのぞき込んだ。目の下のクマも濃い。光の加減のせいではなさそうだ。
疲れかどうか聞きたかったが、相変わらず委員長は俺と目を合わせてくれなかった。
元々コミュ障な俺はその気持ちがよく理解できるから、悪く受け取りはしないが、少し寂しかった。
「心配されるなんて世も末ね。あんたのせいで気苦労が絶えないってのに」
如月氏は深くため息を吐きながら道路を歩き出した。
「それより自分の心配したら?」
「心配は人の為にするものだ」
「名言のつもり? それなら私があんたの心配してあげるわ」
「え?」
「ばか! 嫌味に決まってるでしょ。心配して後ついてきたら承知しないから」
如月氏の身体が夕日に溶けていく。俺は、「委員長!」とその背中に呼びかけた。
彼女はがくりと肩を落とし、身体の半分だけこちらに向けた。
「まだ何かあるの。俺が家まで送るよ、とか気色悪い台詞言わないでよね」
「俺はそんな気取ったことができる奴じゃない。気をつけてって言おうとしただけだ」
「私をからかってるの? おちょくって楽しい? もう、さよならとか言わないから」
夕日に向かって進む如月氏の姿が小さくなり、やがて消えた。
ざっと足音がして、振り向くと、トリエステが横に立っていた。
「後一歩というところじゃな?」
「馬鹿言うな。完全に嫌われてるよ。親のかたきのように敵視されてる。あの態度見ただろ?」
「ラブコメの主人公なみに鈍いやつじゃな」
トリエステはにやりと微笑むと、建物の外に設置された階段をたんたんと登って行った。
俺は肩をすくめて、その後を追った。
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