俺TUEEEの【転生魔術師】~ほのぼの暮らしながらも陰から仲間の復讐を支援します~

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第2章 魔術学園編

11話 特別試験への初動

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 ホームルーム終了後。一限目は自習となった。
 特別試験は一週間後に行われるのだが、試験の初動は今、始まったと言える。このわざとらしく与えられた自習時間がそれを物語っている。

 サーシャが教室から退出すると、D組生徒たちはこれまでに確立されたグループに別れだした。
 マリアは席から動こうとしない。いや、孤立している彼女は動けないのだ。
 俺はそれを横目にしながら席を立つ。

「……どこへ行くの?」

 マリアの問いかけに、

「トイレだ」と嘘をついた。

「……グラッド君。あなたも理解していると思うけど、次の試験、初動が大事だと思うけど?」
「分かってる。でも尿意には勝てないからな。……お前も一緒に行くか?」
「……いってらっしゃい」

『行くか』と訊けば、『行かない』と答える。天邪鬼の少女は無表情でそっぽを向いてしまった。 
 俺はそんな彼女を流しみてそのまま教室を出た。

 それにしても……。
 さっきのマリアの様子は何処かぎこちなかった。もしかしたらアイツなりの試験の初動だったのかもな。仲間になって欲しいならそう言えばいいのに。どうにもコミュニケーション能力が低いらしい。

 誰もいない廊下。C組の教室の前を通り過ぎる。やはり他のクラスも自習のようだ。教壇に一人の男子生徒が立っているのがチラリと視えた。
 D組とは違い、統率されているように見受けられる。ほとんどの生徒は大人しく席に座っている。

 そして──、

「どうした、グラッド・シス。私に何か用か?」

 つきあたりの廊下を曲がると、担任のサーシャが声をかけてきた。有難いことに、俺が来ることを予見して待っててくれたようだ。その見透かしたかのような不敵な笑みに、

「ただのトイレですよ……ティーチ先生」と、サーシャの横を通り過ぎた。

「いいのか訊いておかなくても?」

 担任の言葉に足をとめる。

「何をですかね?」

 ふてぶてしく言葉を返す。

「今回行われる特別試験の落第率を訊きに来たのだろう?」

 全てお見通しのようだが、

「それなら、訊きましたよ。さっきキリトが質問してましたからね」

 試験についてサーシャが質問を受け付けた際、D組のリーダー格であるキリトが質問していた。サーシャの答えは『落第率10パーセント』
 一クラス40人と考えると、各クラスに4人の退学者がでることになるが……。

「そうか。こちらの勘繰りが過ぎたようだな。では、私も忙しい、退散させて貰うぞ」
「……」

 サーシャ・ティーチ……実に食えないやつだ。
 俺とサーシャは、D組生徒5人を進級させると密約を結んでいる。
 俺が質問せずとも、彼女は俺へ伝えたいはずだ。今回行われる特別試験──落第率を。

 年度によって生徒の質が異なる以上違いは出るが、おおよその目安にはなる。『落第率10パーセント』。これは俺たちD組生徒にとって意味を持たない。何故なら、推薦組みである優秀な生徒が集まるA組からC組と、D組の落第率が同じであるはずがないからだ。

 極端な話。A組からC組の落第率がゼロの場合どうなる。同じ10パーセントでも意味合いは一気に変わる。
 1年生の総数160人で考えると、16人が退学となる。これが全てD組の可能性もあるのだ。

 サーシャとの腹の探り合い。
 訊けば簡単だが、彼女から言わすことで主導権を取りたかったのだが。信頼させれているのか、それとも……お手並み拝見といったところか。

 サーシャはそのまま踵を返し、教員室へと戻っていった。
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