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第二章
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めまいがした。
ぐるぐると視界が揺れる。
心臓の鼓動が、うるさいほどに激しく打ち鳴らされる。
ふらふらする。
足元までおぼつかなくなってきた。
今にも倒れそうだ。
さっきからバランスを取るのがやっとだ。
膝ががくがくと震え出す。
だめだ。このままでは、僕は倒れてしまう。
上半身が前後に激しく揺れ出した。
ああ、だめだ。もうだめだ。
首が前に激しく倒れ込んだ。
と同時に腰が折れる。膝もだ。
足首もぐにゃりと折れ曲がる。
だが僕は倒れなかった。
どうしたんだろう?何故僕は倒れなかった?
どうやら何かが、僕の顔や身体に触れているようだ。
あたたかい。熱を感じる。
これは――。
「大丈夫かい?まさかこうなるとはね。予想外だったよ」
エニグマがささやくような声で僕に語り掛けている。
そうか、僕はエニグマに支えられたのか。それで倒れなかったというわけか。
「立てるかい?」
エニグマの問いかけを受け、僕は全身に力を込める。
あまり力が入らない。何か変な感じだ。さながら穴の空いた浮き輪に空気を入れ続けているような感覚だ。
だけど、まったく力が入らないってわけじゃない。
これなら――。
僕はふらふらと揺らぎながらも、なんとか自力で立つことに成功した。
「まだ、ダメなようだね。なんならお互いに座って話そうか?」
僕は、ふらつく身体をなんとか安定させようと努力する。
時間の経過と共に、身体の揺れが収まってきた。
大丈夫。大丈夫だ。こんなことで倒れたりしない。
僕はようやく身体の安定を得て、大きく息を吐き出した。
「もう、大丈夫。このままで……いい」
「そうは見えないけど?」
すかさずエニグマが、僕をからかうように言った。
僕もまた瞬時に反発する。
「大丈夫だって言っているだろう。もう、問題ないよ」
エニグマは両手を広げて肩をすぼめるいつものポーズをした。
「そうかい。ならいいよ。でもこの話はもう、これ以上はやめておくかい?」
エニグマが優しさを装って言った。
僕は覚悟を決める。
「僕は……殺戮者なんかじゃない」
エニグマがフッと鼻で笑う。
「見方はそれぞれさ。立場によって異なる。君たちサイドから見れば、君はもちろん英雄だけど、ベルガンサイドからしたら、君はとんでもない殺戮者だと思うがね」
「ベルガンからの見方なんて、知るものか。僕の知ったことじゃない」
「まあ、そういう見解もありだね。だけど、僕が言った見解も同じさ。どう?認めるかい」
エニグマは左手を前に出し、掌を上に向けて僕に回答を促す。
僕は、必死に絞り出すようにして答えた。
「そんなの……僕は知らないよ」
ぐるぐると視界が揺れる。
心臓の鼓動が、うるさいほどに激しく打ち鳴らされる。
ふらふらする。
足元までおぼつかなくなってきた。
今にも倒れそうだ。
さっきからバランスを取るのがやっとだ。
膝ががくがくと震え出す。
だめだ。このままでは、僕は倒れてしまう。
上半身が前後に激しく揺れ出した。
ああ、だめだ。もうだめだ。
首が前に激しく倒れ込んだ。
と同時に腰が折れる。膝もだ。
足首もぐにゃりと折れ曲がる。
だが僕は倒れなかった。
どうしたんだろう?何故僕は倒れなかった?
どうやら何かが、僕の顔や身体に触れているようだ。
あたたかい。熱を感じる。
これは――。
「大丈夫かい?まさかこうなるとはね。予想外だったよ」
エニグマがささやくような声で僕に語り掛けている。
そうか、僕はエニグマに支えられたのか。それで倒れなかったというわけか。
「立てるかい?」
エニグマの問いかけを受け、僕は全身に力を込める。
あまり力が入らない。何か変な感じだ。さながら穴の空いた浮き輪に空気を入れ続けているような感覚だ。
だけど、まったく力が入らないってわけじゃない。
これなら――。
僕はふらふらと揺らぎながらも、なんとか自力で立つことに成功した。
「まだ、ダメなようだね。なんならお互いに座って話そうか?」
僕は、ふらつく身体をなんとか安定させようと努力する。
時間の経過と共に、身体の揺れが収まってきた。
大丈夫。大丈夫だ。こんなことで倒れたりしない。
僕はようやく身体の安定を得て、大きく息を吐き出した。
「もう、大丈夫。このままで……いい」
「そうは見えないけど?」
すかさずエニグマが、僕をからかうように言った。
僕もまた瞬時に反発する。
「大丈夫だって言っているだろう。もう、問題ないよ」
エニグマは両手を広げて肩をすぼめるいつものポーズをした。
「そうかい。ならいいよ。でもこの話はもう、これ以上はやめておくかい?」
エニグマが優しさを装って言った。
僕は覚悟を決める。
「僕は……殺戮者なんかじゃない」
エニグマがフッと鼻で笑う。
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「ベルガンからの見方なんて、知るものか。僕の知ったことじゃない」
「まあ、そういう見解もありだね。だけど、僕が言った見解も同じさ。どう?認めるかい」
エニグマは左手を前に出し、掌を上に向けて僕に回答を促す。
僕は、必死に絞り出すようにして答えた。
「そんなの……僕は知らないよ」
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