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第二章
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「そうか。それは心配かけたな。だが大丈夫だ。問題ないよ。そうだろう?B・B」
俺はそう言って、B・Bに向き直った。
B・Bはまだ俺を目を細めて凝視していたが、ようやく諦めたのか、軽く肩をすくめながら溜息を吐いた。
「ああ。問題はない」
B・Bはそれだけ言うと、俺の横をすり抜け、馬車へ向かって歩き出した。
俺は内心ほっとしつつ、その背を見送った。
その様子を見て、レノアが俺に顔を近づけ、耳打ちした。
「本当に大丈夫だったの?」
俺はB・Bが遠ざかるのを待ってから、ささやくように言った。
「あとで話す」
レノアは一瞬目を大きく見張って驚いた顔をするも、すぐに元通りの顔になり、すっと俺から離れた。
そして踵を返して馬車に向かって歩き出した。
「さあ、ぼくらも馬車へ戻ろう」
レノアは何事もなかったかのように平静を装い、そう言った。
俺はそれを聞いて応じた。
「そうだな。まだ旅はこれからだ」
「そういうこと。君には手綱を取ってもらわないといけないからね。何度も言うけど、怪我しないでよかったよ」
「レノアじゃ、御者役は無理だからな」
「僕だって馬車位扱えるよ」
「短距離ならともかく、長距離だと絶対に無理だろ」
「そんなことないさ。長距離でも大丈夫。問題は超長距離だよ」
「長距離と超長距離の差はどの辺だ?」
「まあそうだねえ、一日以上が超長距離かな」
「そうかい」
俺はそう言うと、軽く笑った。
それにつられるようにレノアも笑った。
俺たちは軽口を言い合いつつ馬車に戻ると、何事もなかったかのように出発した。
俺たちはそれから半日の距離を馬車で駆け抜け、ついにギアルナ国境を抜けた。
国境はすんなりと通過出来た。オルダナとギアルナが友好関係を保っているからだろう。さしたる検査もなく、通行が許可された。
「ああ、あれかな」
俺は、遥か彼方に浮かび上がった人工の建造物を、確認して言った。
「レスゴーの街並みが見えたの?」
御者席の横に座るレノアが、俺に問いかける。
俺は横を向き、レノアの顔を見ながら答えた。
「ああ。どうやらかなり大きな街のようだ。地平線いっぱいに横に広がっている」
「なら間違いないね。そうか、ようやくレスゴーについたんだ」
「どうする?レスゴーで休むか?」
レノアは腕を組み、右手の人差し指と親指で顎を挟み込みながら少し考え込んだものの、すぐに結論を出した。
「そうだね。少し休んだ方がよさそうだから、ホテルがあったら入ってくれるかな?」
「わかった。無理すると後がつらいからな。休めるうちに休んでおこう」
俺はそう言って、B・Bに向き直った。
B・Bはまだ俺を目を細めて凝視していたが、ようやく諦めたのか、軽く肩をすくめながら溜息を吐いた。
「ああ。問題はない」
B・Bはそれだけ言うと、俺の横をすり抜け、馬車へ向かって歩き出した。
俺は内心ほっとしつつ、その背を見送った。
その様子を見て、レノアが俺に顔を近づけ、耳打ちした。
「本当に大丈夫だったの?」
俺はB・Bが遠ざかるのを待ってから、ささやくように言った。
「あとで話す」
レノアは一瞬目を大きく見張って驚いた顔をするも、すぐに元通りの顔になり、すっと俺から離れた。
そして踵を返して馬車に向かって歩き出した。
「さあ、ぼくらも馬車へ戻ろう」
レノアは何事もなかったかのように平静を装い、そう言った。
俺はそれを聞いて応じた。
「そうだな。まだ旅はこれからだ」
「そういうこと。君には手綱を取ってもらわないといけないからね。何度も言うけど、怪我しないでよかったよ」
「レノアじゃ、御者役は無理だからな」
「僕だって馬車位扱えるよ」
「短距離ならともかく、長距離だと絶対に無理だろ」
「そんなことないさ。長距離でも大丈夫。問題は超長距離だよ」
「長距離と超長距離の差はどの辺だ?」
「まあそうだねえ、一日以上が超長距離かな」
「そうかい」
俺はそう言うと、軽く笑った。
それにつられるようにレノアも笑った。
俺たちは軽口を言い合いつつ馬車に戻ると、何事もなかったかのように出発した。
俺たちはそれから半日の距離を馬車で駆け抜け、ついにギアルナ国境を抜けた。
国境はすんなりと通過出来た。オルダナとギアルナが友好関係を保っているからだろう。さしたる検査もなく、通行が許可された。
「ああ、あれかな」
俺は、遥か彼方に浮かび上がった人工の建造物を、確認して言った。
「レスゴーの街並みが見えたの?」
御者席の横に座るレノアが、俺に問いかける。
俺は横を向き、レノアの顔を見ながら答えた。
「ああ。どうやらかなり大きな街のようだ。地平線いっぱいに横に広がっている」
「なら間違いないね。そうか、ようやくレスゴーについたんだ」
「どうする?レスゴーで休むか?」
レノアは腕を組み、右手の人差し指と親指で顎を挟み込みながら少し考え込んだものの、すぐに結論を出した。
「そうだね。少し休んだ方がよさそうだから、ホテルがあったら入ってくれるかな?」
「わかった。無理すると後がつらいからな。休めるうちに休んでおこう」
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