【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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28 公爵の間の戦い

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 ここアルト州を代々治める為政者は必ず公爵を叙任し、この絢爛豪華な公爵の間を居室としていた。

 故に今この居室の主は、メリッサ王国の第二王女にしてアルト公爵たる、リリーサ・アルト・メリッサであった。

 だがその公爵の間に、リリーサ以外の者の姿が月光の元に照らし出されている。

 その者は全身を黒ずくめに覆っており、目を爛々と輝かせて、リリーサ・アルト・メリッサが眠る天蓋付きのベッドにゆっくりと音を立てずに忍び寄っていた。

 見るとその黒ずくめの者は一人ではなかった。

 後ろにもう一人連なるように続いている。

 いや、その後ろで、さらに別のものが上から音もなくスーッと降りてきた。

 さらに続けてもう一人が降りてくる。

 どうやらこの者たちは天井からロープを伝って、この公爵の間に侵入してきたのだろう。

 その数、十人。

 彼らはゆっくりと時間をかけ、決して音を立てずに王女の眠るベッドを取り囲んだ。

 そして、一人離れたところにいる黒ずくめの者が大きくうなずくと、リリーサ王女の枕元に陣取っていた者が腰の小刀をギラリと抜き放ったのだった。

 王女は天蓋のレースの向こうで、すやすやと寝息を立てていた。

 小刀を逆手に持った黒ずくめの者は、衣擦れの音を出さないよう苦心しながらゆっくりとレースをめくる。

 月明かりによって王女の顔が見えた。

 間違いなく王女本人だ。

 男はそう確信し、小刀を勢いよく振り下ろした。

 刹那、雷の如き一陣の閃光が煌めいた。

 黒ずくめの者たちが、初めて音を出してどよめく。

 その時、ベッドの天蓋レースが斬られて落ちた。

 だが斬られたのはレースだけではなかった。

 逆手に小刀を構え、王女を襲った者も、驚きの表情を浮かべながら血飛沫を上げて床に崩れ落ちたのであった。


「リリーサ王女、気付いていたのか」

 先程少し離れたところから合図をしたリーダー格であろう男が呟いた。
 
 その視線の先には、細身の剣を構えてツンとあごを上げ、傲然とベッドの上に立つリリーサ王女の姿があった。

「ふん、よくもこんなところまで入って来られたものね?褒めてやるわ」

 リリーサは上から黒ずくめの者らを見下ろし、傲岸不遜に言い放った。

 リーダー格の男が腰の小刀を抜き放つ。

 それに倣い、他の者たちもギラリと刀身を光らせながら、抜き放った。

 そしてリーダー格の男が言う。

「リリーサ・アルト・メリッサ、そのお命、頂戴する!」

 その瞬間、リリーサが飛んだ。

 先手必勝とばかりに真っ直ぐ前に凄まじい勢いで飛び退った。

 次の瞬間、ベッドの上に黒ずくめの者らが殺到した。

 だがすでにそこにリリーサの姿はない。

 リリーサは一直線に突き進み、リーダー格の男を一気に狙う。

 リリーサの凄まじい斬撃が、男を襲った。

 だが敵もさる者、リリーサの剣を小刀で見事に受けきった。

「ちっ!やる!」

 リリーサが思わず敵を賞賛する。

 だが同時に二撃、三撃と次々に繰り出した。

 しかし男はこれまた見事に受けきった。

 そうこうする内に他の男たちが体制を整え、リリーサの元へ殺到した。

 リリーサが真横に素早くステップしてかわす。

 次々にかわしていく。

 だが如何せん、敵の数が多い。

 次々に黒ずくめの者たちが襲いかかってくる。

 リリーサが二合、三合と切り結ぶ。

 五合、十合、二十合。

 するとその時、一本の剣がキラリと刀身を輝かせながら、主の手元を離れて宙を舞った。

 リリーサの剣であった。

 リリーサはすかさず剣を拾おうとするも、その進路は遮られた。

 仕方なくリリーサは壁際に逃げる。

 万事休す。

 壁を背にするリリーサに対し、黒ずくめの者らがじりじりと近付いていく。

 その退路を絶とうと少しずつ、狭めていく。

 するとリリーサの目の前、リーダー格の男が不敵に笑った。

「では、お命、頂戴」

 その刹那、リリーサが叫んだ。

「撃て!!」

 瞬間、公爵の間の大扉が凄まじい爆発音と共に吹き飛んだ。

 もうもうと室内に立ちこめる煙。

 その煙の中から、可愛らしいフリルのついたメイド服を着込んだ者が現れた。

「何者だ、あのメイド!?」「あのメイドがやったのか!?」「このメイドは魔導師なのか!?」

 それまで無言で行動していた者たちが、驚きのあまり思わず次々に声を上げた。

 すると一人の男があることに気付いた。

「うん?よく見ればこいつ男か!」

 その発言にメイドが何やらドキリとした。

 思わず仰け反り、頬を引き攣らせている。

 だがそこでメイドは気を取り直し、あごを傲然と上げて言い放った。

「ここからは、俺が相手だ!」

 そこにはフリルの付いた可愛らしいカチューシャを頭に付け、レースたっぷりに彩られたメイド服を着込んだ、メイクばっちりのアリオンの姿があったのだった。
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