【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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34 一つ目の依頼

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「い、い、い、い、いや、そ、そ、その、あ、あの」
 
 俺は人生最大に慌てふためいていた。

 おそらくだが、俺の顔はきっと真っ赤に染まっていたに違いない。

 だがリリーサはキョトンとした顔で、というか何やら無表情で俺のことを見つめていた。

 ちょっと待ってくれ。

 この表情にはどんな意味があるんだ?

 リリーサは何を考えている?

 先程の言葉には、それほどの意味はなかったとでもいうのか?

 わ、わからない。リリーサの考えがわからない。いや、俺にはリリーサがわからない。

 俺はその時、女という生き物の恐ろしさを垣間見たような気がした。

 幼くとも女。少女といえど女なのだ。

 男など、ましてや俺のような14歳の未熟な少年になど、女を理解することなど到底不可能!

 そうなのか?そういうことなのか?

 俺は一瞬のうちに途轍もない敗北感を味わい、疲れ果ててうなだれるのであった。

 
 するとリリーサが満を持したように言った。

「どうかしたの?」

 お、恐ろしい。完全に俺を手玉に取っている。

 だが見るとリリーサは、本当に不思議そうな顔をして首を傾げている。

 もしや、俺の考えすぎか?そうなのか?俺が一人で暴走しているだけなのか?

 俺がそんなことを頭脳を高速回転させて考えていると、リリーサがさらに笑みを浮かべて言ったのだった。

「ねえ、早く書いてよ」

 俺はもう考えるのを止めた。
 
 そして従順に従い、登録用紙へと記入したのであった。

 リリーサ=レイスと。


 俺は書き終えると、その字面を見てあることに気付いた。

 そうか。姉弟ってこともあるか。

 ていうか普通そうか。

 俺は納得した。

 これにより、ようやく俺の妄想アワーは終わりを迎えたのだった。

 ああ、しんど。

 するとリリーサが突然、ギルドのおっさんに向かって言った。

「この依頼って、別にいっぺんに受けてもいいのよね?」

 ギルドのおっさんがうなずく。

「ええ、もちろんですとも」

 リリーサは満足げにうなずくと、俺の方を向いた。

「じゃあ手分けして片付けちゃいましょう?」

 なるほどね。

 確かにその方が手っ取り早い。

 だが最低条件は連続5回でクリアだ。

「つまり、とりあえずはそれぞれ2つずつ片付けるってことかな?」

「そう。それで5つ目は先にここへ戻ってきた方が受ける」

 な~るほど。

 つまり。

「競争ってことか!」

 リリーサは満面の笑みでうなずく。

「そう!どっちが早いか勝負よ!」

「面白い!受けて立つよ。まだFランクだから単独でも危険はないしね」

「そういうことよ!」

「わかった。じゃあそれぞれ依頼を2つずつ選ぼう」

「わかったわ」

 俺たちは依頼リストを目を皿のようにして見た。

 そしてそれぞれ2つずつ、依頼を選んだのであった。

「準備はい~い?」

 リリーサが楽しくて仕方がないといった様子で、リズミカルに跳ねるように言った。

 俺はうなずき、返答した。

「もちろん。いつでも問題ないよ」

「それじゃあいくわよ?よ~い、ドン!」

 言うなりリリーサが、ギルドの出口に向かって凄まじい勢いで飛び出した。

 驚く冒険者たち。

 だが俺だって負けてはいなかった。

 リリーサよりかは足は遅いけど、俺だってこの二ヶ月間の修行でかなり速くなったんだ。

 俺はリリーサに続いてギルドを飛び出すと、右に進路を取った彼女とは異なり、左方向に舵を切って全速力で駆けていったのであった。




「う~んと。この辺のはずなんだけどなあ」

 俺はギルドでもらった地図を頼りに、一つ目の依頼の場所を探していた。

 依頼内容は、洞窟内に巣食うスケルトンを退治すること。

 だがその肝心の洞窟が見当たらなかった。

 あの山肌の何処かだと思うんだけど。

 俺は百メートルほど先にそびえ立つ山の岩肌を眺めて探した。

 ふとその時、すぐ目の前の畑を耕す農民が目に入った。

「あのう~すみませ~ん」

「うん?何だ?」

「あ、ちょっと伺いたいんですけど、この辺にスケルトンが出る洞窟って聞いたことありませんか?」

「おお、おお。あるで。すぐそこの洞窟や~。どうも最近住み着いたらしくてなあ。困っとるもんがおるでよ」

「ああ、そうですか。え~と、何処ですか?」

「ほれ、そこの。見えんかの?」

「ああ、あれですか。あれ」

「そう、あれよ。あれ」

「どうもありがとうございます。助かりました」

「うんにゃ。どういたしまして」

 俺は洞窟の場所が判ったため、そこへ向けて駆けだした。

 うん。近い。さっさと片付けよう。

 俺はそう決めると、より一層速度を上げたのであった。
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