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35 勝者は?
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「ここね。さて、どんなもんかな?」
俺は何の躊躇もなく洞窟に足を踏み入れた。
スケルトンは、スライムやゴブリンよりは強めだが、いってもたかが知れている。
ハッキリ言って雑魚だ。今の俺からしたら問題は何もない。
近所の人も困っていると言ったが、恐怖を感じているという程でもない。
つまりはそういう相手だ。
俺は軽い気持でどんどん進んだ。
「うん?いないな?」
まだ先の方かな?
さらに進む。
どんどん進む。
……いた。一杯いた。三十匹くらいか。
皆一様に骸骨をカタカタいわせている。
弱そう。
さっさと片付けよう。
俺がさらにどんどん進んだため、スケルトンたちが気づき、一斉に襲いかかってきた。
俺は落ち着いて魔法を繰り出した。
「紅蓮の炎」
凄まじい炎が唸りを上げて、スケルトンを襲う。
さすがは炎熱魔法の最上級らしく、圧倒的な火力でもって、そのまま敵を骨まで焼き尽くそうとしていた。
「あ!いけね」
俺はそこであることを思い出し、大慌てで別の魔法を繰り出した。
「氷結地獄!」
最上級の氷結魔法によって、一瞬のうちに洞窟内が凍り付いた。
さながら青き氷の洞窟である。
「ふう……危ない危ない。全部燃やしちゃったらダメなんだよな」
そう。この依頼を完遂したという証拠に、魔物の一部を切り取って持ち帰らないといけないのだ。
そのため完全に燃やし尽くそうものなら、せっかく退治したというのに、依頼完了とはならない。
つまりはただ働きとなってしまう。
しかも今はリリーサとの競争中だ。
なんとしても持ち帰らなければならなかった。
俺は、無事だったスケルトンの一部を切り取ると、満足げにうなずき、洞窟を後にするのであった。
ギルドに戻った俺は、真っ先におっさんの所に行き、魔物の欠片を手渡しながら問い掛けた。
「どう?リリーサは戻ってきた?」
おっさんは受け取った魔物の欠片をしげしげと眺めながら答えた。
「いや、まだですよ」
「よっしゃーー!」
「はい。本物ですね。間違いないです」
するとその時、もの凄い勢いでリリーサが入って来た。
「どう!?アリオンは……」
リリーサは俺の姿を見つけてガックリと肩を落とした。
「いたのね」
俺はにんまりと笑った。
「わるいね。というわけで、お先に!」
言うなり俺は駆けだした。
リリーサが地団駄を踏みながら叫ぶ。
「ちょっと待ちなさいよ!」
俺はリリーサの叫びを背中で受けつつ、気持ちよく飛び出すのであった。
その後、二つ目の依頼もあっさりとクリアした俺は、ちょっぴりドキドキしながらギルド内へと足を踏み入れた。
「リリーサは?」
少し息を切らせてギルドのおっさんに聞く。
おっさんは笑みを浮かべ答えた。
「まだですよ」
「よっしゃーーーーー!!俺の勝ちだーーーーー!!」
俺は余裕でゆっくりと歩いておっさんに魔物の欠片を手渡すと、カウンターに置かれた水差しを手にしてコップに水を注いで飲んだ。
「ぷはーーーー!美味い!勝利の水ほど美味いものはないね!」
俺はもう一杯水差しから水を注ぐと、近くの椅子に腰掛けた。
するとおっさんがカウンター越しに言った。
「間違いないです。ご苦労様でした」
俺は笑顔でうなずき、コップを手にした。
そしてしばらく悠々とした時間を過ごした。
すると俺に遅れること十分ほどで、ようやくリリーサが姿を現した。
リリーサは入ってくるなり、この世の終わりかと思うくらいに落ち込んだ。
「嘘でしょ?滅茶苦茶急いだのに……」
「悪いね。どうやらまた俺が勝っちゃったみたいで」
リリーサは俺の方を睨み、歯ぎしりをしながら、ギルドのおっさんに後ろ手で魔物の欠片を放り投げた。
おっさんは慌てて空中でキャッチし、肩をすくめてリストと照合した。
「あ、大丈夫です。問題ないです」
するとリリーサが、俺の方を睨み付けたまま怒鳴りつけた。
「当たり前でしょ!問題ないに決まっているわ!」
おっさんはとばっちりを受け、今度は大きく首をすくめたのだった。
俺は苦笑し、慰めた。
「勝負は時の運って言うよ?今回は俺に運があったってだけさ」
するとリリーサは腰に手をやり、胸をそびやかして傲然と言い放った。
「その通りよ!最初から知ってたわ!」
いや、何を?何を知ってたって言うの?
自分が負けることを?それとも勝負が時の運っていう言葉を?
だが俺は当然このことについて、リリーサに問い質したりしなかった。
代わりに俺は立ち上がりながら言ったのだった。
「うん、そうだね。それよりFランク最後の依頼を一緒に受けようよ」
するとリリーサは、頬を膨らませながらも言ったのだった。
「いいわ。一緒に行ってあげるから、さっさと選びなさい!」
やれやれ。でもまあ、いいか。
俺は何の躊躇もなく洞窟に足を踏み入れた。
スケルトンは、スライムやゴブリンよりは強めだが、いってもたかが知れている。
ハッキリ言って雑魚だ。今の俺からしたら問題は何もない。
近所の人も困っていると言ったが、恐怖を感じているという程でもない。
つまりはそういう相手だ。
俺は軽い気持でどんどん進んだ。
「うん?いないな?」
まだ先の方かな?
さらに進む。
どんどん進む。
……いた。一杯いた。三十匹くらいか。
皆一様に骸骨をカタカタいわせている。
弱そう。
さっさと片付けよう。
俺がさらにどんどん進んだため、スケルトンたちが気づき、一斉に襲いかかってきた。
俺は落ち着いて魔法を繰り出した。
「紅蓮の炎」
凄まじい炎が唸りを上げて、スケルトンを襲う。
さすがは炎熱魔法の最上級らしく、圧倒的な火力でもって、そのまま敵を骨まで焼き尽くそうとしていた。
「あ!いけね」
俺はそこであることを思い出し、大慌てで別の魔法を繰り出した。
「氷結地獄!」
最上級の氷結魔法によって、一瞬のうちに洞窟内が凍り付いた。
さながら青き氷の洞窟である。
「ふう……危ない危ない。全部燃やしちゃったらダメなんだよな」
そう。この依頼を完遂したという証拠に、魔物の一部を切り取って持ち帰らないといけないのだ。
そのため完全に燃やし尽くそうものなら、せっかく退治したというのに、依頼完了とはならない。
つまりはただ働きとなってしまう。
しかも今はリリーサとの競争中だ。
なんとしても持ち帰らなければならなかった。
俺は、無事だったスケルトンの一部を切り取ると、満足げにうなずき、洞窟を後にするのであった。
ギルドに戻った俺は、真っ先におっさんの所に行き、魔物の欠片を手渡しながら問い掛けた。
「どう?リリーサは戻ってきた?」
おっさんは受け取った魔物の欠片をしげしげと眺めながら答えた。
「いや、まだですよ」
「よっしゃーー!」
「はい。本物ですね。間違いないです」
するとその時、もの凄い勢いでリリーサが入って来た。
「どう!?アリオンは……」
リリーサは俺の姿を見つけてガックリと肩を落とした。
「いたのね」
俺はにんまりと笑った。
「わるいね。というわけで、お先に!」
言うなり俺は駆けだした。
リリーサが地団駄を踏みながら叫ぶ。
「ちょっと待ちなさいよ!」
俺はリリーサの叫びを背中で受けつつ、気持ちよく飛び出すのであった。
その後、二つ目の依頼もあっさりとクリアした俺は、ちょっぴりドキドキしながらギルド内へと足を踏み入れた。
「リリーサは?」
少し息を切らせてギルドのおっさんに聞く。
おっさんは笑みを浮かべ答えた。
「まだですよ」
「よっしゃーーーーー!!俺の勝ちだーーーーー!!」
俺は余裕でゆっくりと歩いておっさんに魔物の欠片を手渡すと、カウンターに置かれた水差しを手にしてコップに水を注いで飲んだ。
「ぷはーーーー!美味い!勝利の水ほど美味いものはないね!」
俺はもう一杯水差しから水を注ぐと、近くの椅子に腰掛けた。
するとおっさんがカウンター越しに言った。
「間違いないです。ご苦労様でした」
俺は笑顔でうなずき、コップを手にした。
そしてしばらく悠々とした時間を過ごした。
すると俺に遅れること十分ほどで、ようやくリリーサが姿を現した。
リリーサは入ってくるなり、この世の終わりかと思うくらいに落ち込んだ。
「嘘でしょ?滅茶苦茶急いだのに……」
「悪いね。どうやらまた俺が勝っちゃったみたいで」
リリーサは俺の方を睨み、歯ぎしりをしながら、ギルドのおっさんに後ろ手で魔物の欠片を放り投げた。
おっさんは慌てて空中でキャッチし、肩をすくめてリストと照合した。
「あ、大丈夫です。問題ないです」
するとリリーサが、俺の方を睨み付けたまま怒鳴りつけた。
「当たり前でしょ!問題ないに決まっているわ!」
おっさんはとばっちりを受け、今度は大きく首をすくめたのだった。
俺は苦笑し、慰めた。
「勝負は時の運って言うよ?今回は俺に運があったってだけさ」
するとリリーサは腰に手をやり、胸をそびやかして傲然と言い放った。
「その通りよ!最初から知ってたわ!」
いや、何を?何を知ってたって言うの?
自分が負けることを?それとも勝負が時の運っていう言葉を?
だが俺は当然このことについて、リリーサに問い質したりしなかった。
代わりに俺は立ち上がりながら言ったのだった。
「うん、そうだね。それよりFランク最後の依頼を一緒に受けようよ」
するとリリーサは、頬を膨らませながらも言ったのだった。
「いいわ。一緒に行ってあげるから、さっさと選びなさい!」
やれやれ。でもまあ、いいか。
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