【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

文字の大きさ
38 / 138

38 ホテル襲撃

しおりを挟む
 ギィ……という音が、俺のドアを通り過ぎた先で鳴った。

 今だ!

 俺は勢いよくドアを開け放ち、魔法を繰り出そうと右手を前に出す。

 ホテルの廊下は狭い。

 被害を最小限に抑えるためには、もっとも早く直進する雷属性の魔法がベスト。

「ボルテ……」

 だが俺が魔法を繰り出そうとしたその瞬間、目の前に金属の煌めきが!

 俺は咄嗟に身体をよじって、それをなんとかかわした。

 だがそれによって俺は身体のバランスを失い、よろめいた。

 だが俺は、構わず放つ!

雷撃戦槍ボルテックスピアー!」

 すると倒れ込む俺の右手から、凄まじい雷光が発せられた。

 それはまるで武芸の達人が放つ必中の槍撃の如く、未知の敵に向かって真っ直ぐに突き進んだ。

 だがそれは敵には当たらなかった。

 黒き敵は眼前に押し寄せる雷撃を、すんでの所で身体をひねってかわしたのだ。

 結果、雷光は敵の身体ではなくホテルの反対側の壁をぶち破って、空中に飛散したのだった。

「ぐっ!」

 俺は受け身が取れない状態で床に身体を打ち付け、思わずうめき声を上げた。

 だがそんなことに構っては居られない。

 俺はそのままの体勢で右手を前に突き出した。

「くらえっ!もう一発!雷撃戦槍ボルテックスピアー!」

 瞬間、雷光が煌めく。

 黒ずくめの敵に向かって、猛然と襲いかかる。

 だがこれもまた、ほんのわずかという所でかわされてしまった。

 すると敵が後退し始めた。

 俺がぶち破った壁に向かって全速力で駆けていく。

 俺は必死で立ち上がり、その背に三発目の雷撃をぶち込もうと右手を前に出した。

「ボルテックス……」

 俺はそこで慌てて止めた。

 何故ならば俺の目の前に、リリーサが扉を開けて飛び出してきたからだった。

「リリーサ!邪魔だ!」

 俺は咄嗟に叫び、開いた扉の向こうに出る。

 驚くリリーサを尻目に、廊下の先を見やる。

 だがそこにはもう敵の姿は見られなかった。

 そこには、満月に煌々と照らされた町の姿があるだけだった。

「ちっ!逃がしたか……」

 俺は舌打ちをして悔しがった。

 するとリリーサが言った。

「今の黒ずくめ、この前の敵とはちょっと違うわね?」

「そうだね。以前の敵も、皆かなりの腕利きだった。でも今回のは、かなりヤバい相手だと思うよ」

「敵は一人?」

「ああ。たぶんね。いや、わからないな。もしかしたら他にもいる可能性はある」

「本当に?」

「だからわからない。とにかくこのホテルには居られない。ひとまず宮殿に戻ろう」

 するとさすがのリリーサも観念した。

「仕方がないわね。戻りましょう」

 だがそこで物音を聞きつけ、恐る恐るといった様子で、階下から人がわらわらと現れた。

 その中の一人が、人々をかき分け前に出た。

「こりゃあ一体……壁がないじゃないですか……」

 宿主である。

 俺は一度思いっきり息を吐き出し呼吸を整えると、宿主に向かって歩き、言ったのだった。

「ああ、すみません。修理代はお支払いします。これで足りますか?」

 俺は懐から袋を取り出し、その中から金貨を一枚取り出した。

 宿主は目を爛々と輝かせ、うんうんと大きくうなずいた。

「足ります。足りますとも。ありがとうございます」

 俺は笑みを浮かべて金貨を手渡した。

 ギルドで稼いだお金をこんな形で使うとはね。

 俺は心の中でぼやくと、リリーサに向き直って言ったのだった。

「さあ、ひとまず帰るとしようか」




 深夜ながら馬車を雇い、宮殿に戻った俺たちは、メイド長のマデラを筆頭にこっぴどく叱られた。

 そうはいってもリリーサは王女様。

 キツ~い説教を受けたのは、必然的に俺ということになる。

 俺は警戒のために王女の居る公爵の間と扉一つ隔てたところにある次の間において、マデラからのいつ終わるともわからない説教を延々と受けていた。

 あ~あ、やっぱ行くんじゃなかったよなあ~。

 そりゃあそうだよ。こうなるよ。

 しかもまた暗殺未遂事件だもんなあ。

 マデラが激怒するのも当然だ。

 ごめん、マデラ。本当に反省しているよ。

 俺はそんなことを思いつつ、鬼の形相で何やら怒鳴りまくっているマデラを無表情で見つめていた。

 するとそこで、扉をノックする音が聞こえた。

 瞬間的にマデラの怒鳴り説教が止まる。

 神の助けか?

 別のメイドが扉を開けるとそこから現れたのは、王女暗殺未遂の急報を受けて駆けつけた剣聖と大賢者の二人であった。

「まったく、貴方としたことが困ったものですね」

「まったくだ。お前ともあろう者が何をしている」

 二人は呆れた様子で部屋へ入ってきた。

 俺は面目次第もございませんといった顔で二人を出迎えた。

「いや、本当に申し訳ない。こんなことになるとは……」

 俺が心底申し訳なさそうに言うと、ネルヴァが笑った。

「いや、冗談ですよ。我々もまさかまた襲ってくるとは正直思っていませんでしたから」

 するとレイナも笑った。

「うむ。二ヶ月前に百人倒したからな。さすがにこんな早くにまた来るとは思ってなかった」

「なんだ。それじゃあ……」

 そう言おうとしたところでマデラが横から釘を刺した。

「だからといって王女様を連れ出した罪からは免れないよ!」

 いや、決して俺が連れ出した訳ではないのですが。

 言っても聞きませんよね?王女様には怒鳴れませんものね?はい。わかります。

 ここは俺が大人になって罪を被りますよ。くそ。

 俺がそう心の中で独白すると、突然ネルヴァの表情が真剣なものに変わった。

 見るとレイナも同様であった。

 俺は眉根を寄せ、問い掛けた。

「どうかした?」

 すると二人がほぼ同時にうなずいたのだった。

 俺は緊張し、さらに尋ねた。

「もしかして、暗殺未遂事件の首謀者が判ったとか?」

 すると二人は、大きくうなずいたのだった。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...