【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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43 王宮へ

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 方針は決まった。

 そのため俺たちは今、夜中にも関わらず、すでに馬上の人となっていた。

 王女であるリリーサ所有の緊急連絡用の高速馬にまたがり、一路王宮へと急いでいたのだ。

 馬も高速なら、道も高速だ。

 この道は各自治州に何かあった場合に備え、緊急連絡用として芝生が綺麗に敷き詰められた特別な道だった。

 しかも王宮まではほぼ一直線であり、最速で王宮までたどり着けるようになっていた。

 だがしかし……。

 俺は悪戦苦闘していた。

 乗馬の練習はこれまでに何度かしていたものの、これほどの高速移動は初めてだった。

 しかも道幅が、ほとんどのところでかなり狭い。

 これは、もし仮に自治領が敵に落とされた場合、この道を使って進軍されないためであるらしい。

 道幅が狭ければ大軍を運ぶには不便であり、また途中の橋は容易に落とせるように出来ているんだそうだ。

 なるほど、よくできている。

 だが馬に不慣れな俺にとっては、この道幅の狭さはかなりの難敵だった。

 なにせ夜中である。

 視界が暗く、高速で走り去る中、すぐ脇を石の壁が迫り来るのは恐怖以外の何物でもない。

 そのため俺は、馬にほとんどしがみつくようにして乗っていたのだった。

「ほら、どうしたのよアリオン!もっと飛ばしなさいよ!」

 俺の後ろからリリーサが煽ってくる。

「飛ばしてるよ!これでも全力だ!」

 俺は必死に言い返す。

「え~?これで~?」

 リリーサがわざと挑発的に言ってきた。

「なんだよ!俺はそんなに馬に乗ることに慣れてないんだからしょうがないじゃないか!」

 俺がそう言った途端、馬が突然よれた。

 俺は慌てて手綱を操り、なんとか軌道修正した。

「馬が疲れてるようよ。止まらないうちに回復魔法を掛けてあげて」

 リリーサが後ろから声を掛けてくる。

 うるさいな。わかってるよ。

 俺は意識を右手に集中した。

「ヒール」

 俺が呪文名を唱えると、緑色の光が放たれ、馬体を優しく包み込んだ。

 すると、馬の速度が突然上がった。

 どうやら完全回復したようだ。

 当然だ。俺の魔法だからな、効果てきめんなはずだ。

 すると後ろから感心したようにリリーサが言った。

「へえ~、さすがねえ~。魔法に関してだけは本当に凄いわ」

 『だけ』のところだけ強めに言っていたような気がするが、まあいい。褒められたと思っておこう。

 ついでといってはなんだが、俺は俺自身にも『ヒール』をかけた。

 そうして俺は気分も身体もリフレッシュし、さらに駆けていくのであった。



 しばらくするとリリーサは俺の後ろに付いているのに飽きたらしい。

 道幅が広くなったところでさっさと俺を追い抜いて行った。

 そして先頭を行くレイナを一目散に追いかけていった。

 すると最後尾のネルヴァがするすると上がってきた。

 俺は馬の高速移動にもだいぶ慣れてきたのか、後ろを振り返ってネルヴァに話しかけた。

「ネルヴァ、王宮に潜伏した後はどうしようか?」

 ネルヴァが苦笑しつつ言う。

「そうですねえ、貴方の方針は、方針とは名ばかりの行き当たりばったりですからねえ」

「いや、でもそんな俺の方針にネルヴァたちも乗ったじゃないか。確かに行き当たりばったりなのは認めるけどさ」

「まあそうですね。あのままでは王女様はメイデン王子のところに突撃しかねませんでしたからね」

「そうだよ。それを回避するための方便じゃないか」

「ええ。ですが王宮に到着し、ファルカン様かマール様のお屋敷に潜伏してからのことはまったく考えていませんからね」

「だから今それを考えようって言っているんじゃないか」

「つまり作戦案を練ろうと言うわけですか」

「まあそんなところだけど、俺は王宮なんて行ったことないからさ、どうしたらいいかまったく見当も付かないんだよ」

「そうですねえ。まあ王女様は放っておいて大丈夫でしょう」

 俺は驚いた。

 放っておく?リリーサを?

「マズいんじゃない?さすがにリリーサを放っておいたら、それこそ下手したらメイデン王子のところに突撃しちゃうんじゃないかな?」

「大丈夫だと思いますよ。リリーサ王女は、ファルカン王子やマール王女と大層仲がよろしいですからね。しばらくの間ならば放っておいても、ずっと一緒に遊んでいると思いますので」

 なるほど。

 それなら納得だ。

「じゃあ後は俺たちで手分けして調べるって感じなのかな?」

「そうですね。わたしはとりあえずメイデン王子を調べようと思います。首謀者はまず間違いなくメイデン王子でしょうし、これまでもわたしが調べてきましたから引き続きという事で」

 納得。

「レイナは直前までゼルバ候を調べていましたので、これも引き続きという事で良いと思います」

 これまた納得。

「なので貴方には、ジトー侯爵かキーファー侯爵のどちらかを調べていただこうと思うのですが?」

 放蕩三昧のジトー侯爵か、病弱なキーファー侯爵か。

「なら俺はジトー侯爵を調べてみようと思う」

「ほう、何故ですか?」

「俺はあまりこういうのは慣れてないでしょ?だから簡単な方が良いかなって思って」

「何故ジトー侯爵の方が簡単だと思われたんですか?」

「キーファー侯爵はほとんど家の中にいて出歩かないでしょ?それだと家の中に潜入する必要が出て来る。だけどこれは難しいと思う。でもジトー侯爵は遊び人で出歩きまくっているんでしょ?だったらこっちの方がやりやすいんじゃないかと思ったんだ」

 するとネルヴァが満面に笑みを浮かべた。

「いいと思います。ぜひそれで行きましょう」

「うん!じゃあそれで!」

 俺も朗らかな笑みをネルヴァに返した。

 そうして俺たちは、ようやく方針と言えそうなものを定めた。

 そしてメリッサ王国の華の首都、アクアマリンの中心部に位置する、謀略渦巻く王宮を目指すのであった。
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