【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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46 マール王女

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 俺たちはゆっくりとマール王女の居館へと近付いていった。

 すると門衛たちが俺たちに気付き、ざわめいた。

 だが構わずリリーサを先頭にして俺たちは進んだ。

 すると、門衛の一人がリリーサに気付いたようだ。

 他の門衛たちに耳打ちしている。

 すると一人の門衛が通用門を通じて中へと入っていった。

 他の門衛たちは居住まいを正し、俺たちを待ち構えるた。

 そして俺たちがわずかという距離に来ると、門衛たちが一斉に敬礼したのだった。

「ご苦労様。夜分に悪いんだけど、マールに会いたいの。通してくれるかしら?」

 リリーサが馬上から、あごをツンと上げて言った。

 まあ王女様だから当然って言えば当然なんだけど、偉そうではあるな。

 俺がそんなことを思っていると、門衛の一人がかしこまって言った。

「は!ただいま!」

 するとそれを合図に正門がゆっくりと開け放たれた。

 リリーサは満足げにうなずくと、ゆっくりと手綱を操った。

 そして俺たちは静かにマール邸へと入っていったのであった。


 俺たちは正門を通過すると中庭を真っ直ぐに進み、居館へとたどり着いた。

 居館には先程の門衛がすでに連絡を入れていたため、玄関の所に執事やらなんやらがズラッと並んでいた。

 リリーサが先頭で到着すると、一人の男が手綱を預かった。

 リリーサは慣れた様子で馬から下りると、執事に向かって言ったのだった。

「マールはいるわね?」

 執事はうやうやしく頭を垂れた。

「はい。もちろんでございます。ささ、どうぞこちらへ」

 俺は一連のやり取りを、少々ボーッと眺めていた。

 すると俺の足下に男が近付いてきた。

「うん?なに?」

 思わず言った俺に、男がにこりと微笑んだ。

「手綱をお預かりいたしたく」

「あ、ああ。そうか。そうだよね」

 俺は男に手綱を渡し、馬から下りた。

 見るとネルヴァたちはすでに降りている。

 リリーサに至ってはすでに屋敷の中だ。

 俺はネルヴァたちに含み笑いをされつつも、慌てて屋敷の中へと入っていった。


 屋敷の中に入ると、俺はそれなりに驚いた。

 豪華だ。

 さすがに王女の居館だけはある。

 だがそれほど驚かなかったのは、ここ数ヶ月の宮殿暮らしのせいだろう。

 何せ、宮殿内の豪華さといったら、ここと同じくらいだ。

 というか、ここまでくるとどちらの方が豪華かなんて、俺には判断が付かない。

 そういう素養がないからな。

 特に絵とか彫刻なんてものは、まるでわからない。

 シャンデリアなんかは、まあ大きい方が豪華なんじゃないかな?くらいなもんだ。

 俺はそんなことをつらつらと考えながら、案内の通りに歩いた。

 すると先頭のリリーサが突如大きな声を出した。

「マール!」

 見ると、小さな女の子が駆け寄り、リリーサに飛びついた。

 リリーサはその女の子を見事にキャッチするや、その子を掴まえてくるくると回転しだした。

 おお、やっぱ力があるな。

 女の子が小さいといっても、振り回すのは結構大変だろうに。

 というか、そんなことはどうでもいい。

 あの女の子が、件のマール王女か。

 うん。リリーサによく似ている。

 正直、リリーサを小さくコンパクトにしたらこの子になるんじゃないかというくらいだ。

 実に可愛らしい。

 可憐な少女といったところだな。

「アリオン!何をボーッと見ているのよ。紹介するからこっちに来なさいよ」

 リリーサが不審げに俺を見ている。

 いや、別に変な目で見ていたわけではない。

 断じて違うぞ。

 俺はそんなことを思いつつも、慌ててリリーサに駆け寄った。

 するとリリーサが笑顔に戻り、マール王女に俺を紹介してくれた。

「マール、こちらはアリオン=レイス。大魔導師よ」

 するとマールが目を爛々と輝かせた。

「大魔導師!じゃあネルヴァのお弟子さんなのかしら?」

 すると、俺が答えようとするよりも先にリリーサが答えた。

「そうよ。ちなみに剣術の師匠はわたしよ!ね?」

 リリーサが笑顔で俺に振ってきた。

 俺は一瞬地獄の特訓の日々を頭の中で反芻させたものの、すぐに打ち消し、笑顔を作った。

「そうだね。一応今はリリーサに教わっているね」

 本当の師匠はレイナのはずだが、まあ確かに今はリリーサに教わっているか。

 するとマールが、途端におやっという顔をした。

「あら、お姉様。この方、王家の方なの?」

 王家?俺が?

 俺が不審がっていると、リリーサがちょっと慌てたような素振りをして答えた。

「う、ううん。そうじゃないけど、友達なのよ。だから対等に話しをすることを許しているのよ」

 ああ、なるほど。タメ口が気になったのか。

 そりゃそうか。リリーサは王女だもんな。普通は敬語だ。

 ネルヴァたちだって敬語を使っているくらいだからな。

 そりゃあ俺みたいなのが、タメ口使っていたら気になるよな。

 だがマールの反応は意外なものだった。

「そうなのね!じゃあわたしもそれでいいかしら?ねえお姉様」

 うん?どういうこと?

 するとリリーサが笑顔でうなずいた。

「ええ。いいんじゃない」

 するとマールが満面の笑みで俺を見た。

 そして言ったのだった。

「やった~!じゃあわたしたちも今日から友達ね。よろしくアリオン!」

 へ?

 え~と~……俺はどうしたら?

 俺は思わずネルヴァを見た。

 ネルヴァは楽しそうに笑っている。

 次にレイナを見る。

 以下同文。

「あ、ああ。じゃあよろしく」

「うん!わたしのことはマールって呼んでね!」

「あ、ああ。わかったよ、マール」

 すると実に屈託のない笑顔でマールが笑いかけてきた。

 俺はとまどいつつも、精一杯の笑顔を作り、笑い返すのであった。
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