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54 魔力とは
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「それは本当か?」
ジトー侯爵が驚きを隠せないといった様子で俺に尋ねた。
俺はそれに苦笑気味に答えた。
「本当みたいだよ。俺もついこの間まで知らなかったんだけどね」
「ついこの間?それ以前はまったく気付いていなかった?」
「ああ。或る人に教えてもらった。俺には神力が備わっているってね。それまではまったくだよ」
するとジトー侯爵が俺の顔を見つめながらうんうんとうなずいた。
「なるほどな。神力が備わっているかどうかは、同じく神力を持つ者でなければ見抜けない。君の周りには神力を纏った者はついぞいなかったのだろう」
「そうみたいだね。実際、神力を纏っている人なんて、ほとんどいないんだろう?」
「そうだな。まずいない。だから君のように生まれつき神力が備わっていたとしても、そのことをしばらく誰も気づけないというのは、決して有り得ないケースではないということだ。だがそれにしても、生まれつき備わっているとはな」
「そんなに珍しいことなのかな?」
「そうだな。そんなケースがあるとは聞いたことがないし、実際君を目の前にしても、そんなことがあるとはいまだに信じ難いくらいだよ」
「そうか。そんなになんだ」
するとそこでジトー侯爵が、俺の考えている隙きを突いて質問してきた。
「ところで、君に神力が備わっていると見抜いた人物は何者かね?」
俺はこの答えを避けた。
「それは言えない。それを言うと色々とわかられてしまうかもしれないからね」
するとジトー侯爵がニヤリと笑った。
「ふむ、君はその者の陣営にいるということだな?」
「さあね。とにかくこの件に関しては、これ以上言わないよ」
するとジトー侯爵が足を組み直しながら、余裕綽々な顔で言った。
「いいだろう。では話を変えよう。これまで、君の圧倒的なまでの神力にとらわれて気付かなかったのだが、どうも魔力を纏っていないように見えるのだが?」
俺はうなずいた。
「そう。俺には魔力がないんだ。これも生まれつきだよ」
ジトー侯爵が興味深そうに俺を見つめている。
「生まれつき神力を備え、その代わりに魔力がまったくないというわけか」
「そうみたいだよ」
ジトー侯爵は首を横に振りつつ、言った。
「これは驚いた。君のようなケースは初耳だよ。神力が生まれつき備わっているのも驚きだが、魔力が生まれつきまったくないのも珍しい。いや、これも聞いたことがないな」
これには俺も驚いた。
「え?生まれつき魔力がない人もいるでしょ?」
ジトー侯爵は緩やかに首を横に振った。
「いや、いないはずだ。ゼロに近いくらい魔力がない者はいる。だがまったくのゼロというものはいないはずだ」
「そうなの?」
「ああ。魔法をまったく使えない者というのは、最低レベルの魔法を使用するための魔力すら持っていないため使えないわけだが、まったくのゼロというわけではないんだ。必要魔力量に達していないというだけでね。ほんのわずか微量ながらも、あることはあるんだよ」
「そうなのか……」
「だが君はわたしが見る限り、まったくのゼロだ。これはやはり聞いたことがないケースなんだ」
ジトー侯爵はそう言って、強く眉根を寄せた。
そして厳しい眼差しのまま俺に言った。
「神力はどれくらいある?」
だがここで、俺は手を振ってジトー侯爵の質問を遮った。
「ちょっと待ってよ。そっちの質問ばかりじゃないか。せめて質問はかわりばんこにしてよ」
するとジトー侯爵が苦笑した。
「そうだな。では君の番だ。なんでも聞いてくれ」
俺は少しだけ考えた。
そして考えをまとめると、問い質した。
「まず、何故貴方がそれほどまでに強いのかを知りたい。世間の評判だと、貴方は若い頃からの生粋の遊び人だって聞いているよ?」
ジトー侯爵は苦笑いをしながらも、少しだけ考え込んだ。
そして俺の目を真っ直ぐに捉えて、言った。
「こう見えて若い頃から修行は人並みにしたんでね。無論、遊びも人並みに覚えたがね」
俺はすかさず言った。
「人並みであれほどのレベルにはならないと思うよ。遊びの方だって人並みじゃ、放蕩者なんて呼ばれないと思うし。どうも怪しいんだよね」
ジトー侯爵が破顔一笑した。
「時の王弟をつかまえて怪しいとはね。君もよく言うな?だが確かにわたしの遊びは人並みではないな。自分で言うのも何だが、相当なものだ」
「でしょ?若い頃から相当に遊んでいた人が、なぜあれほどの強さを得たのか、教えて欲しいんだけど」
するとジトー侯爵が両手を挙げて降参のポーズを取った。
「わかったわかった。遊びも人並み以上なら、修行も人並み以上にやった。それでいいかな?」
「それじゃ納得出来ないよ。貴方の実力は、おそらく剣豪クラスかそれ以上。人並み以上程度でそこまで至れるとは思えないよ」
するとジトー侯爵が一度天井を見上げた。
そして何やら考え込むと、顔を下ろして俺の顔を見据えたのだった。
「ここから先は秘密の話だ。誰にも話さないと約束出来るかな?」
ジトー侯爵が驚きを隠せないといった様子で俺に尋ねた。
俺はそれに苦笑気味に答えた。
「本当みたいだよ。俺もついこの間まで知らなかったんだけどね」
「ついこの間?それ以前はまったく気付いていなかった?」
「ああ。或る人に教えてもらった。俺には神力が備わっているってね。それまではまったくだよ」
するとジトー侯爵が俺の顔を見つめながらうんうんとうなずいた。
「なるほどな。神力が備わっているかどうかは、同じく神力を持つ者でなければ見抜けない。君の周りには神力を纏った者はついぞいなかったのだろう」
「そうみたいだね。実際、神力を纏っている人なんて、ほとんどいないんだろう?」
「そうだな。まずいない。だから君のように生まれつき神力が備わっていたとしても、そのことをしばらく誰も気づけないというのは、決して有り得ないケースではないということだ。だがそれにしても、生まれつき備わっているとはな」
「そんなに珍しいことなのかな?」
「そうだな。そんなケースがあるとは聞いたことがないし、実際君を目の前にしても、そんなことがあるとはいまだに信じ難いくらいだよ」
「そうか。そんなになんだ」
するとそこでジトー侯爵が、俺の考えている隙きを突いて質問してきた。
「ところで、君に神力が備わっていると見抜いた人物は何者かね?」
俺はこの答えを避けた。
「それは言えない。それを言うと色々とわかられてしまうかもしれないからね」
するとジトー侯爵がニヤリと笑った。
「ふむ、君はその者の陣営にいるということだな?」
「さあね。とにかくこの件に関しては、これ以上言わないよ」
するとジトー侯爵が足を組み直しながら、余裕綽々な顔で言った。
「いいだろう。では話を変えよう。これまで、君の圧倒的なまでの神力にとらわれて気付かなかったのだが、どうも魔力を纏っていないように見えるのだが?」
俺はうなずいた。
「そう。俺には魔力がないんだ。これも生まれつきだよ」
ジトー侯爵が興味深そうに俺を見つめている。
「生まれつき神力を備え、その代わりに魔力がまったくないというわけか」
「そうみたいだよ」
ジトー侯爵は首を横に振りつつ、言った。
「これは驚いた。君のようなケースは初耳だよ。神力が生まれつき備わっているのも驚きだが、魔力が生まれつきまったくないのも珍しい。いや、これも聞いたことがないな」
これには俺も驚いた。
「え?生まれつき魔力がない人もいるでしょ?」
ジトー侯爵は緩やかに首を横に振った。
「いや、いないはずだ。ゼロに近いくらい魔力がない者はいる。だがまったくのゼロというものはいないはずだ」
「そうなの?」
「ああ。魔法をまったく使えない者というのは、最低レベルの魔法を使用するための魔力すら持っていないため使えないわけだが、まったくのゼロというわけではないんだ。必要魔力量に達していないというだけでね。ほんのわずか微量ながらも、あることはあるんだよ」
「そうなのか……」
「だが君はわたしが見る限り、まったくのゼロだ。これはやはり聞いたことがないケースなんだ」
ジトー侯爵はそう言って、強く眉根を寄せた。
そして厳しい眼差しのまま俺に言った。
「神力はどれくらいある?」
だがここで、俺は手を振ってジトー侯爵の質問を遮った。
「ちょっと待ってよ。そっちの質問ばかりじゃないか。せめて質問はかわりばんこにしてよ」
するとジトー侯爵が苦笑した。
「そうだな。では君の番だ。なんでも聞いてくれ」
俺は少しだけ考えた。
そして考えをまとめると、問い質した。
「まず、何故貴方がそれほどまでに強いのかを知りたい。世間の評判だと、貴方は若い頃からの生粋の遊び人だって聞いているよ?」
ジトー侯爵は苦笑いをしながらも、少しだけ考え込んだ。
そして俺の目を真っ直ぐに捉えて、言った。
「こう見えて若い頃から修行は人並みにしたんでね。無論、遊びも人並みに覚えたがね」
俺はすかさず言った。
「人並みであれほどのレベルにはならないと思うよ。遊びの方だって人並みじゃ、放蕩者なんて呼ばれないと思うし。どうも怪しいんだよね」
ジトー侯爵が破顔一笑した。
「時の王弟をつかまえて怪しいとはね。君もよく言うな?だが確かにわたしの遊びは人並みではないな。自分で言うのも何だが、相当なものだ」
「でしょ?若い頃から相当に遊んでいた人が、なぜあれほどの強さを得たのか、教えて欲しいんだけど」
するとジトー侯爵が両手を挙げて降参のポーズを取った。
「わかったわかった。遊びも人並み以上なら、修行も人並み以上にやった。それでいいかな?」
「それじゃ納得出来ないよ。貴方の実力は、おそらく剣豪クラスかそれ以上。人並み以上程度でそこまで至れるとは思えないよ」
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