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60 犯人像
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「あら?アリオン、もう戻ったの?」
リリーサが、そろりそろりと部屋に入ってきた俺を目ざとく速攻で見つけて、声を掛けてきた。
俺は少し気まずそうに返事をする。
「ん、まあね」
「どうしたの?何かあるの?」
もじもじする俺の背中を、誰かが小突く。
俺が仕方なく前に出ると、その男が俺の背後からすっと現れた。
「おじ様!?」
リリーサが思わず驚きの声を上げた。
「やあ、リリーサ!久しぶりだね」
ジトー侯爵は両手を大きく広げ、リリーサに近付いていく。
リリーサも立ち上がり、ジトー侯爵の元へ。
そして二人は久方ぶりの抱擁を交わしたのだった。
「おじ様!どうしてここへ?」
「アリオン君に連れられてね」
何が連れられてだよ。
強引に来たくせに。
「それじゃあ、おじ様の嫌疑は晴れたのね?」
リリーサがジトー侯爵の肩越しに俺に問い掛ける。
俺は辺りを、首を巡らして確認する。
「その前にマールは?」
「部屋でお勉強の時間。家庭教師にビシビシと鍛えられているところよ」
俺は納得すると、先程の質問に答えた。
「ほとんどね。後はジトー侯爵の財務状況を調べれば、シロ確定かな」
するとリリーサが当然のように首を傾げた。
「財務状況?何それ、どういうこと?」
すると今度はジトー侯爵が答えた。
「ジトー侯爵がお金に困っていないことがわかれば、問題ないからね」
「ああ。そういうことね。それで財務状況か」
「そう。だから誰かにそれをやってもらおうと思っているんだけど、この件で動いているのは俺だけだから、ちょっと困っている。一応一人心当たりがあるんで、その人に頼んでみようと思っているんだ」
俺は、『俺だけ』というところにアクセントを強くもっていった。
それというのも、ネルヴァたちの存在を隠しておきたいからだった。
それをリリーサにわかってもらおうと『俺だけ』の部分を自然な感じで強調したのだが。
リリーサが『うん?』って感じで軽く首を傾げた。
だがリリーサはすぐに勘づいたのか、言った。
「そう。それならその件はアリオンに任すわ」
よかった。たぶん気付いてくれた。
俺はホッと安堵の息を漏らした。
するとジトー侯爵が俺の顔を見て何やら不敵に笑った。
こっちにも勘づかれたかな?
でもまあいいさ。
何かを隠しているのがバレたとしても、何を隠しているのかわからなければ問題ない。
俺はジトー侯爵に微笑み変えした。
するとジトー侯爵がスッと俺から視線を外し、リリーサと向き合った。
「それにしても心外だな。リリーサ、お前もわたしを疑っていたのか?」
リリーサはすかさず笑みを見せて答えた。
「いいえ。でもアリオンが疑っている以上、わたしが口を出すことじゃないもの。彼が気の済むまで調べればいいことかなって思ったの」
「確かにな」
「それで、おじ様はわたしに何を聞きにいらしたの?」
「久しぶりにお前の顔を見たいと思って来ただけさ。だが、出来れば暗殺未遂事件について詳しく聞きたい」
「それを聞いてどうなさるの?」
「無論、アリオンと協力して犯人を捕らえるつもりだ」
「わかったわ」
リリーサはあっさりと了承すると、ソファーに戻って腰掛けた。
俺とジトー侯爵もソファーに座り、じっくりとあの時のことについて、二人で説明したのだった。
「それでどうかしら?おじ様には犯人に心当たりがあるかしら?」
俺とリリーサの説明に嘘は無い。
ただしネルヴァ、レイナの登場に関しては伏せた。
リリーサは俺が何を隠そうとしているのか正確に理解し、話を合わせてくれた。
だからその部分以外に隠し事はない。
するとジトー侯爵がおもむろに口を開いた。
「まず、メイデン王子だろうな」
俺はリリーサと顔を合わせてうなずいた。
この容疑者は我々とピッタリ一致する。
「やっぱり。ジトー侯爵もそう思うんだね?」
「まずメイデンで間違いあるまい。それだけの私兵を動かしてリリーサを襲うなどというのはな。あいつは頭が切れるタイプではないが、こと軍事に関してだけは才がある。あまり人望があるわけではないのだが、一定の軍人からの評価は高いのだ。故にそれだけの私兵を集めることが可能だというわけだ」
「なるほど。確かに百人以上はいたし。そうか、その線からしても犯人はメイデン王子か」
「うむ。間違いなかろう。それにしても、逆恨みにもほどがあるな」
ここで俺はあることに気づき、ジトー侯爵におもむろに尋ねた。
「ちょっと聞きたいんだけど、リリーサもメイデンも貴方にとっては姪と甥になるわけだけど」
するとジトー侯爵が俺にみなまで言わせず、答えた。
「メイデンには思い入れはない。幼い頃より慕われた覚えもないし、可愛がった記憶もないからな」
するとリリーサが無駄に胸を張り、あごをツンと上げて自慢げな表情となった。
面倒臭い。放っておこう。
「ならリリーサに付くってことだね?」
俺の問いに、ジトー侯爵はすかさず答えた。
「もちろんだ。だが……」
ジトー侯爵はそこで一旦言葉を句切ると、俺とリリーサの顔をジロリと見回して言ったのだった。
「これはメイデン一人の仕業ではないだろう。先程も言ったがあいつは頭が切れるタイプではない。故にこういったことを端から計画できるタイプの男でもないということだ。つまり他に黒幕がいる。お前たちが探しているのもその黒幕なのだろう?」
リリーサが、そろりそろりと部屋に入ってきた俺を目ざとく速攻で見つけて、声を掛けてきた。
俺は少し気まずそうに返事をする。
「ん、まあね」
「どうしたの?何かあるの?」
もじもじする俺の背中を、誰かが小突く。
俺が仕方なく前に出ると、その男が俺の背後からすっと現れた。
「おじ様!?」
リリーサが思わず驚きの声を上げた。
「やあ、リリーサ!久しぶりだね」
ジトー侯爵は両手を大きく広げ、リリーサに近付いていく。
リリーサも立ち上がり、ジトー侯爵の元へ。
そして二人は久方ぶりの抱擁を交わしたのだった。
「おじ様!どうしてここへ?」
「アリオン君に連れられてね」
何が連れられてだよ。
強引に来たくせに。
「それじゃあ、おじ様の嫌疑は晴れたのね?」
リリーサがジトー侯爵の肩越しに俺に問い掛ける。
俺は辺りを、首を巡らして確認する。
「その前にマールは?」
「部屋でお勉強の時間。家庭教師にビシビシと鍛えられているところよ」
俺は納得すると、先程の質問に答えた。
「ほとんどね。後はジトー侯爵の財務状況を調べれば、シロ確定かな」
するとリリーサが当然のように首を傾げた。
「財務状況?何それ、どういうこと?」
すると今度はジトー侯爵が答えた。
「ジトー侯爵がお金に困っていないことがわかれば、問題ないからね」
「ああ。そういうことね。それで財務状況か」
「そう。だから誰かにそれをやってもらおうと思っているんだけど、この件で動いているのは俺だけだから、ちょっと困っている。一応一人心当たりがあるんで、その人に頼んでみようと思っているんだ」
俺は、『俺だけ』というところにアクセントを強くもっていった。
それというのも、ネルヴァたちの存在を隠しておきたいからだった。
それをリリーサにわかってもらおうと『俺だけ』の部分を自然な感じで強調したのだが。
リリーサが『うん?』って感じで軽く首を傾げた。
だがリリーサはすぐに勘づいたのか、言った。
「そう。それならその件はアリオンに任すわ」
よかった。たぶん気付いてくれた。
俺はホッと安堵の息を漏らした。
するとジトー侯爵が俺の顔を見て何やら不敵に笑った。
こっちにも勘づかれたかな?
でもまあいいさ。
何かを隠しているのがバレたとしても、何を隠しているのかわからなければ問題ない。
俺はジトー侯爵に微笑み変えした。
するとジトー侯爵がスッと俺から視線を外し、リリーサと向き合った。
「それにしても心外だな。リリーサ、お前もわたしを疑っていたのか?」
リリーサはすかさず笑みを見せて答えた。
「いいえ。でもアリオンが疑っている以上、わたしが口を出すことじゃないもの。彼が気の済むまで調べればいいことかなって思ったの」
「確かにな」
「それで、おじ様はわたしに何を聞きにいらしたの?」
「久しぶりにお前の顔を見たいと思って来ただけさ。だが、出来れば暗殺未遂事件について詳しく聞きたい」
「それを聞いてどうなさるの?」
「無論、アリオンと協力して犯人を捕らえるつもりだ」
「わかったわ」
リリーサはあっさりと了承すると、ソファーに戻って腰掛けた。
俺とジトー侯爵もソファーに座り、じっくりとあの時のことについて、二人で説明したのだった。
「それでどうかしら?おじ様には犯人に心当たりがあるかしら?」
俺とリリーサの説明に嘘は無い。
ただしネルヴァ、レイナの登場に関しては伏せた。
リリーサは俺が何を隠そうとしているのか正確に理解し、話を合わせてくれた。
だからその部分以外に隠し事はない。
するとジトー侯爵がおもむろに口を開いた。
「まず、メイデン王子だろうな」
俺はリリーサと顔を合わせてうなずいた。
この容疑者は我々とピッタリ一致する。
「やっぱり。ジトー侯爵もそう思うんだね?」
「まずメイデンで間違いあるまい。それだけの私兵を動かしてリリーサを襲うなどというのはな。あいつは頭が切れるタイプではないが、こと軍事に関してだけは才がある。あまり人望があるわけではないのだが、一定の軍人からの評価は高いのだ。故にそれだけの私兵を集めることが可能だというわけだ」
「なるほど。確かに百人以上はいたし。そうか、その線からしても犯人はメイデン王子か」
「うむ。間違いなかろう。それにしても、逆恨みにもほどがあるな」
ここで俺はあることに気づき、ジトー侯爵におもむろに尋ねた。
「ちょっと聞きたいんだけど、リリーサもメイデンも貴方にとっては姪と甥になるわけだけど」
するとジトー侯爵が俺にみなまで言わせず、答えた。
「メイデンには思い入れはない。幼い頃より慕われた覚えもないし、可愛がった記憶もないからな」
するとリリーサが無駄に胸を張り、あごをツンと上げて自慢げな表情となった。
面倒臭い。放っておこう。
「ならリリーサに付くってことだね?」
俺の問いに、ジトー侯爵はすかさず答えた。
「もちろんだ。だが……」
ジトー侯爵はそこで一旦言葉を句切ると、俺とリリーサの顔をジロリと見回して言ったのだった。
「これはメイデン一人の仕業ではないだろう。先程も言ったがあいつは頭が切れるタイプではない。故にこういったことを端から計画できるタイプの男でもないということだ。つまり他に黒幕がいる。お前たちが探しているのもその黒幕なのだろう?」
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