【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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61 他の候補者

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「まあね」

 俺はリリーサと顔を見合わせ、うなずきあってからそう答えた。

 ジトー侯爵は満足げに微笑んだ。

「やはりか。つまりわたしはその黒幕候補だったというわけだ」

「当たり」

 俺は簡潔に答えた。

 ここであまり冗長に語る意味はない。

 するとジトー侯爵がすかさず問い掛けてきた。

「他に候補はいるのか?」

「もちろんいるよ。貴方の次には、ゼルバ候を調べようかと思っていた」

 ジトー侯爵はうんうんとうなずきながら言った。

「ゼルバか。他にはいるか?」

「最後はキーファー侯爵を調べるつもりだった」

「それで最後か?」

「そう」

「つまりわたしを含めた三人の王弟が、黒幕候補だったというわけだ。いい線をついている」

 ジトー侯爵はそう言うとうつむき、目を細めて考え込んでいるようだった。

 俺はしばらくその様子をジッと見つめ、待っていた。

 だがジトー侯爵は考え込んだままであったので、俺は我慢しきれずに問い掛けた。

「貴方が思う、他の候補者はいるかな?」

 するとジトー侯爵はうつむいたまま、すかさず答えた。

「いないな。他はかなり線が薄いだろう。わたしでもその二人を疑う。無論、わたしは候補から外させてもらっている」

「当然だね。それで、どちらがより怪しいと思う?」

 ジトー侯爵は少し考えてから答えた。

「現時点ではわからない。二人とも黒幕とするには不足するところがある」

「というと?」

 俺の即座の問い掛けに、ジトー侯爵もすかさず答えた。

「ゼルバは先年の落馬事故で車いすの身だ。無論、黒幕なら動けずとも出来るが、この間見舞いに行ったときの様子では、そのようなことを画策できそうな気力は感じられなかった。だがそれはキーファーも似たようなものだ。あれは生まれつきの病弱でな。やはりそのような気力があるとは到底思えない」

 するとそこでジトー侯爵が笑い出した。
 
 俺は驚き、リリーサと顔を見合わせると、ジトー侯爵がすぐに種明かしをしてくれた。

「いや、すまん。突然笑い出して。いやなに、二人ともが黒幕には不十分だとすると、わたしが候補の一番手になってしまうと思ってね。それで笑ってしまったんだよ」

「ああ、それで」

「そう。君がわたしをまず最初に調べようとしたのも、実のところそれでなんじゃないのか?」

 なるほど。これは都合が良いかも。

 実際のところは、ネルヴァがゼルバ候を先に調べていたから引き続き調べることになり、俺が余った二人の中から調べやすそうなジトー侯爵を調査することになったわけだけど、彼がそう思ったんなら話は合わせておいたほうがいいな。

「まあそうだね。二人とも屋敷に籠もって外に出ていないらしいし、貴方が一番調べやすかったっていうのもあるけどね」

 するとジトー侯爵が大いにうなずいた。

「なるほどな。ようやく納得できたよ」

「そう言うって事は、今まで納得していなかったの?」

「まあな。わたしからすれば、心外なことだったからな」

「容疑者扱いしていたことは謝るよ」

 するとジトー侯爵は、さっと手を振り言った。

「いや、いい。リリーサのためにしてくれたことだ。ならば問題ない」

「よかった。それなら協力してほしいんだけど」

「無論、協力は惜しまないが、わたしに何をして欲しいのだ?」

 俺は思いきって切り出した。

「ゼルバ候とキーファー候に会いたい」

 ゼルバ候とキーファー候は、今ネルヴァとレイナが調べている。

 だけどおそらく直接会って調べているわけじゃない。

 それだと調査に時間がかかってしまうだろう。

 だけど直接会って調べることが出来たら、こんなに都合の良いことはないはずだ。

 ジトー侯爵はニヤリと笑い、俺に言った。

「なるほどな。わたしと一緒に行けば中に入れて、直接調べられると思ったか」

「今さっき見舞いに行ったって聞いたからね。中に入ることは可能でしょ?」

「確かに言ったな」

 ジトー侯爵はそう言うと、大いに笑った。

 そして俺を見据え、言ったのだった。

「いいだろう。では明日にでも行くとしよう」

「ありがとう。どうやったら入り込めるか、悩んでいたところなんだよ」

「ははは。そうか」

 ジトー侯爵は愉快そうに笑った。

 だがしばらく笑うと、笑みを見せつつ俺に言った。

「それでは明日、またわたしの家を訪ねてきてくれ。一緒に行こう」

「そうさせてもらうよ」

「うむ。では今日のところは帰るとしよう。明日はゼルバの屋敷でいいのかな?」

 ジトー侯爵の問いに、俺は勢いよくうなずいた。

 ジトー侯爵は俺にうなずき返すと、スッと立ち上がった。

「ではリリーサ、今日は会えて嬉しかった」

「わたしもよ。おじ様」

 ジトー侯爵はリリーサと別れの挨拶を終えると、俺に向き直った。

「ではな」

「じゃあ明日」

 ジトー侯爵はうなずくと、颯爽と去っていった。

 俺は扉の向こうでジトー侯爵がマールと話しているのを聞きながら、リリーサに向き直った。

「話を合わせてくれてよかった」

 俺が声を潜めてそう言うと、リリーサは顔を近づけて来て、同じく小声で言ったのだった。

「まだおじ様の嫌疑は、完全には晴れていないのね?」
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