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75 馬車屋
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「あった!まだやってる!」
俺は角を左に曲がった途端に見える店の灯りに、歓喜の声を上げた。
だがよく見るとそれは飲み屋の点す灯りであり、馬車屋のそれではなかった。
「違った!飲み屋だった」
「馬車屋はその先よ!」
俺はリリーサの言葉を受けて走り続け、飲み屋の脇を通り抜けた。
その際、俺たちのあまりの勢いに、飲み屋で飲んでいる客たちがざわめいたものの、当然気にはしなかった。
だがやはり馬車屋へ到達するも、既に店は閉店していたのだった。
「ダメだ!やってない!」
俺が完全に閉まった状態の馬車屋を見て、嘆息の声を上げた。
リリーサもがっかりした声で言った。
「どうしよう!わたしたちの足じゃ追いつけないわよ?」
「参った!どうしよう!」
すると飲み屋で飲んでいた男が不審げな視線を俺たちに浴びせながら、声を掛けてきた。
「おい、どうした坊主たち」
俺は焦った様子で言った。
「馬車に乗りたいんだ!だけど閉まっていて」
「そうなの!おじさん、馬車屋の人ってこの中に住んでいるのか知っている?」
リリーサの問いに、おじさんが少し困ったような顔をした。
「まあ、住んではいるな、確かに」
俺はそれを聞き、意を決して大声を出した。
「すみませーーーん!!!」
するとあまりの大声に飲み屋で飲んでいる人たちがわらわらと出てきた。
だが肝心の馬車屋からは、俺の大声に驚いた馬のいななく声が聞こえたものの、人間の反応はまったくなかった。
するとおじさんが耳を押さえつつ、困り顔で言った。
「おい、いきなり大声を出さなくったって聞こえているよ」
「いや、おじさんに聞かせたいわけじゃなくて」
「馬車屋に聞かせたいんだろう?」
「そう。そうなんだ」
するとおじさんが心なしか胸を張ったような気がする。
「だったらもう聞こえているよ」
俺は軽く首を傾げた。
リリーサも同様に首を傾げている。
するとおじさんが、ニヤリと笑って言ったのだった。
「俺が馬車屋のおじさんだからな」
俺はリリーサと顔を合わせると、勢い込んで言った。
「乗せて!!!」
「何処へ行くつもりなんだ?」
その時、通りの先を騎馬隊の先頭が駆け抜けていった。
俺はそれを見て、すかさず言った。
「場所は決まってない!あの騎馬隊と馬車を尾行してほしいんだ!」
するとおじさんの目がキラーンと輝いた。
そしておじさんは俺が指さす先を見た。
そこには凄い勢いで駆け抜ける騎馬隊。
そして煌びやかな装飾の壮麗な馬車が通りの先を通り過ぎていったところであった。
「あれを尾行だと?面白いじゃねえか!よし、乗せてやるぜ!」
おじさんはそう言うと、素早い動きで馬車屋の中へと入っていった。
そしてすかさず馬車屋の扉を開け放った。
「こっちだ。乗りな!」
おじさんの声に俺たちは即座に反応した。
馬車屋の中に素早く入り込むと、もう既に馬に乗っているおじさんの後ろに引かれたキャビンへと乗り込んだ。
「乗ったな?ならさっさと出発するぜ!でないと置いていかれちまうからな」
おじさんは俺たちがうなずくのを確認すると、すかさず手綱を振るった。
すると馬がゆっくりと動き出す。
そして馬車屋の外へと歩み出たところで、野次馬とかした飲み屋の客に向かっておじさんが言ったのだった。
「おい、後の戸締まり頼んだぜ!」
するとすかさず酔客たちが応じた。
「あいよ!任せときな!」
おじさんはそれを聞くや、力強く手綱を振るった。
だがその方角は騎馬隊とは反対の方向であった。
「ちょっとおじさん!逆だよ!」
するとおじさんがすかさず答えた。
「あの道は途中で大曲りするんだよ。そんでこの先の道と合流するんだ。だからこっちの方が近道なんだ」
なるほど。
確かに来る途中、大きく曲がった気がする。
ここはおじさんに任せた方がよさそうだ。
「わかった!おじさん、頼んだよ!」
「任せろ!」
おじさんはそう応えると、またも力強く手綱を振るった。
すると馬車が勢いよく車輪を回転させて前へと力強く進んだ。
おじさんはさらに手綱を強く振るう。
そうして馬車は、あっという間に最高速度へと到達したのであった。
「行き先はわからないんだな?」
おじさんが軽く振り向いて俺たちに問う。
「わからない!何処へ向かうのかを知りたいんだ!」
「わかった。ところであの馬車に乗っている奴が誰かは知っているのか?」
「知っている!メイデン王子だ!」
俺がそう答えると、おじさんの顔が驚きの表情へと変わった。
だがその表情は次第に愉悦の表情へと移り変わった。
そしておじさんは言ったのだった。
「ますます面白えじゃねえか!振り落とされないようにしっかり捕まっていろよ!」
俺は角を左に曲がった途端に見える店の灯りに、歓喜の声を上げた。
だがよく見るとそれは飲み屋の点す灯りであり、馬車屋のそれではなかった。
「違った!飲み屋だった」
「馬車屋はその先よ!」
俺はリリーサの言葉を受けて走り続け、飲み屋の脇を通り抜けた。
その際、俺たちのあまりの勢いに、飲み屋で飲んでいる客たちがざわめいたものの、当然気にはしなかった。
だがやはり馬車屋へ到達するも、既に店は閉店していたのだった。
「ダメだ!やってない!」
俺が完全に閉まった状態の馬車屋を見て、嘆息の声を上げた。
リリーサもがっかりした声で言った。
「どうしよう!わたしたちの足じゃ追いつけないわよ?」
「参った!どうしよう!」
すると飲み屋で飲んでいた男が不審げな視線を俺たちに浴びせながら、声を掛けてきた。
「おい、どうした坊主たち」
俺は焦った様子で言った。
「馬車に乗りたいんだ!だけど閉まっていて」
「そうなの!おじさん、馬車屋の人ってこの中に住んでいるのか知っている?」
リリーサの問いに、おじさんが少し困ったような顔をした。
「まあ、住んではいるな、確かに」
俺はそれを聞き、意を決して大声を出した。
「すみませーーーん!!!」
するとあまりの大声に飲み屋で飲んでいる人たちがわらわらと出てきた。
だが肝心の馬車屋からは、俺の大声に驚いた馬のいななく声が聞こえたものの、人間の反応はまったくなかった。
するとおじさんが耳を押さえつつ、困り顔で言った。
「おい、いきなり大声を出さなくったって聞こえているよ」
「いや、おじさんに聞かせたいわけじゃなくて」
「馬車屋に聞かせたいんだろう?」
「そう。そうなんだ」
するとおじさんが心なしか胸を張ったような気がする。
「だったらもう聞こえているよ」
俺は軽く首を傾げた。
リリーサも同様に首を傾げている。
するとおじさんが、ニヤリと笑って言ったのだった。
「俺が馬車屋のおじさんだからな」
俺はリリーサと顔を合わせると、勢い込んで言った。
「乗せて!!!」
「何処へ行くつもりなんだ?」
その時、通りの先を騎馬隊の先頭が駆け抜けていった。
俺はそれを見て、すかさず言った。
「場所は決まってない!あの騎馬隊と馬車を尾行してほしいんだ!」
するとおじさんの目がキラーンと輝いた。
そしておじさんは俺が指さす先を見た。
そこには凄い勢いで駆け抜ける騎馬隊。
そして煌びやかな装飾の壮麗な馬車が通りの先を通り過ぎていったところであった。
「あれを尾行だと?面白いじゃねえか!よし、乗せてやるぜ!」
おじさんはそう言うと、素早い動きで馬車屋の中へと入っていった。
そしてすかさず馬車屋の扉を開け放った。
「こっちだ。乗りな!」
おじさんの声に俺たちは即座に反応した。
馬車屋の中に素早く入り込むと、もう既に馬に乗っているおじさんの後ろに引かれたキャビンへと乗り込んだ。
「乗ったな?ならさっさと出発するぜ!でないと置いていかれちまうからな」
おじさんは俺たちがうなずくのを確認すると、すかさず手綱を振るった。
すると馬がゆっくりと動き出す。
そして馬車屋の外へと歩み出たところで、野次馬とかした飲み屋の客に向かっておじさんが言ったのだった。
「おい、後の戸締まり頼んだぜ!」
するとすかさず酔客たちが応じた。
「あいよ!任せときな!」
おじさんはそれを聞くや、力強く手綱を振るった。
だがその方角は騎馬隊とは反対の方向であった。
「ちょっとおじさん!逆だよ!」
するとおじさんがすかさず答えた。
「あの道は途中で大曲りするんだよ。そんでこの先の道と合流するんだ。だからこっちの方が近道なんだ」
なるほど。
確かに来る途中、大きく曲がった気がする。
ここはおじさんに任せた方がよさそうだ。
「わかった!おじさん、頼んだよ!」
「任せろ!」
おじさんはそう応えると、またも力強く手綱を振るった。
すると馬車が勢いよく車輪を回転させて前へと力強く進んだ。
おじさんはさらに手綱を強く振るう。
そうして馬車は、あっという間に最高速度へと到達したのであった。
「行き先はわからないんだな?」
おじさんが軽く振り向いて俺たちに問う。
「わからない!何処へ向かうのかを知りたいんだ!」
「わかった。ところであの馬車に乗っている奴が誰かは知っているのか?」
「知っている!メイデン王子だ!」
俺がそう答えると、おじさんの顔が驚きの表情へと変わった。
だがその表情は次第に愉悦の表情へと移り変わった。
そしておじさんは言ったのだった。
「ますます面白えじゃねえか!振り落とされないようにしっかり捕まっていろよ!」
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