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76 大魔導師と剣豪
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「見えた!あれだな」
馬車のおじさんが、夜半にもかかわらず立ち上る右前方の土煙を見て言った。
騎馬隊は、俺たちが走る道の右隣の道を走っている。
俺はうなずき、言葉を返した。
「そう!あれを追って!ただし気付かれないように」
「了解だ。もうすぐこの道との合流地点だ。合流したら、その後ろにつけるぜ」
おじさんはそう言うと、手綱を振るい少しだけ速度を上げた。
そして、しばらくして右隣の道と合流するや、前方を走る騎馬隊の後方につけた。
よし。いい感じの距離感だ。
途中から合流しているだけに、相手もこの馬車が尾行しているとは思わないだろう。
しかしそれにしても、メイデン王子は何処へ行くつもりなのだろうか?
この道は、さっき俺たちが歩いて来た道だ。
まあ帰るときには便利だけど、向かっている先は何処なのか?
俺がそう首を傾げていると、横でリリーサが腰を浮かした。
「まさか……」
リリーサは愕然とした顔で前方を眺め見ている。
心なしか青ざめているようにも見えるが。
俺は不思議に思い、眉根を寄せてリリーサに尋ねた。
「どうかした?何か顔色悪いように見えるけど」
するとリリーサが、険しい顔で俺を見た。
「気付かない?この先には、マールの屋敷があるのよ」
そこで初めて俺は愕然とした。
そうだ!
そりゃあ来た道を進んでいるんだから、この先にあるのはマール邸じゃないか!
まさか、メイデン王子の目的は。
「まさか、マール邸にリリーサを襲いに行くつもりか!?」
「たぶんそうよ!わたしがマールのところに居ることを何かの方法で知ったんだわ!だから!」
「これから夜襲をかけようってわけか!」
俺は険しい表情で前方を睨んだ。
黒い騎馬隊の遙か先に、白亜のマール邸が浮かび上がってきた。
マール邸の近くには、他に屋敷はない。
かなり広大な敷地を王女のマールが有しているためだ。
確定だ。
メイデン王子の目的は、間違いなくマール邸。
そして、その中にいると思っているであろうリリーサだ。
だがリリーサは今、俺の隣にいる。
リリーサを避難させるか?
いや、避難しろと言って大人しく避難するリリーサではない。
「リリーサ!頭に血を昇らせて突っ込むことだけは止めてくれよ?俺がきっちりバックアップするから、冷静に戦うんだ」
するとリリーサが、普段だったら俺の言い回しに文句の一つも言いそうなものだが、時が時だけに素直にうなずいた。
「わかったわ!わたしが前衛。貴方が後衛でいいのね?」
「ああ!ただし初手は俺からだ。その後に左から攻めてくれ」
「わかった!左ね」
リリーサが力強くうなずいた。
すると、馬車のおじさんが俺たちの会話を聞いて驚きの表情を浮かべながら振り向いた。
「おい、坊主たち!何をしでかす気だ?」
俺は手っ取り早く説明した。
「この先にあるのはマール王女の屋敷なんだ。メイデン王子はそこに攻め込もうとしている」
「な!なんだと!?王子と王女ってことは兄弟じゃないか!」
「そうだ。俺たちはそれを阻止したい。だからマール邸の前までいったら、俺たちを降ろしておじさんには避難してほしいんだ!」
「ちょっと待て!お前たちはどうするんだ!?」
「決まっている!戦うのさ!」
「た、戦うってお前」
「大丈夫。俺は大魔導師、こちらは剣豪だからね」
俺はそう言ってリリーサに向かってウインクした。
するとリリーサが笑みを浮かべ、ウインクし返した。
「そうよ。わたしたちなら大丈夫。おじさんはすぐに引き返してね」
「しかし」
躊躇するおじさんに、俺は懐から金貨を取り出して見せた。
「これ、馬車代。乗せてくれてありがとう。さあ手を出して」
「いや、そんな大金受け取れるかよ」
「いいから」
「ダメだダメだ!」
俺は肩をすぼめた。
だがおじさんの隙を突いて、ポケットの中に素早く金貨をねじ込んだ。
「おい!いらねえって言っているだろ!」
だがその時、前方の騎馬隊がついにマール邸に到着した。
「おじさん!前見て!」
おじさんは俺に言われた通りに、前を見た。
するともう目の前にはマール邸に到着して布陣を開始している騎馬隊が迫っていた。
おじさんは驚き、慌てて手綱を引いた。
馬が甲高いいななきを上げて、馬車が止まった。
「おじさんありがとう!気をつけて帰ってね!」
俺はそう言って馬車から飛び降りた。
リリーサも同じタイミングで、馬車から飛び降りた。
「おじさんありがとう!本当に助かったわ!」
「おい!お前たち!」
だがおじさんは、俺たちを心配して立ち去らなかった。
俺は仕方なしに馬の手綱を取って思いっきり引っ張った。
「お、おい!」
リリーサも気付いて同じように反対側から馬の手綱を引っ張る。
そのことで俺たちは、馬の進路を変える事に成功した。
そして最後に手綱をしならせ、馬の首の当たりを叩いた。
すると馬はゆっくりとではあるが歩き始めた。
「おい!本当に大丈夫なのか!」
俺はリリーサと連れ立ち、自信たっぷりな顔で言ったのだった。
「問題ないよ!俺たち、最強だから!」
馬車のおじさんが、夜半にもかかわらず立ち上る右前方の土煙を見て言った。
騎馬隊は、俺たちが走る道の右隣の道を走っている。
俺はうなずき、言葉を返した。
「そう!あれを追って!ただし気付かれないように」
「了解だ。もうすぐこの道との合流地点だ。合流したら、その後ろにつけるぜ」
おじさんはそう言うと、手綱を振るい少しだけ速度を上げた。
そして、しばらくして右隣の道と合流するや、前方を走る騎馬隊の後方につけた。
よし。いい感じの距離感だ。
途中から合流しているだけに、相手もこの馬車が尾行しているとは思わないだろう。
しかしそれにしても、メイデン王子は何処へ行くつもりなのだろうか?
この道は、さっき俺たちが歩いて来た道だ。
まあ帰るときには便利だけど、向かっている先は何処なのか?
俺がそう首を傾げていると、横でリリーサが腰を浮かした。
「まさか……」
リリーサは愕然とした顔で前方を眺め見ている。
心なしか青ざめているようにも見えるが。
俺は不思議に思い、眉根を寄せてリリーサに尋ねた。
「どうかした?何か顔色悪いように見えるけど」
するとリリーサが、険しい顔で俺を見た。
「気付かない?この先には、マールの屋敷があるのよ」
そこで初めて俺は愕然とした。
そうだ!
そりゃあ来た道を進んでいるんだから、この先にあるのはマール邸じゃないか!
まさか、メイデン王子の目的は。
「まさか、マール邸にリリーサを襲いに行くつもりか!?」
「たぶんそうよ!わたしがマールのところに居ることを何かの方法で知ったんだわ!だから!」
「これから夜襲をかけようってわけか!」
俺は険しい表情で前方を睨んだ。
黒い騎馬隊の遙か先に、白亜のマール邸が浮かび上がってきた。
マール邸の近くには、他に屋敷はない。
かなり広大な敷地を王女のマールが有しているためだ。
確定だ。
メイデン王子の目的は、間違いなくマール邸。
そして、その中にいると思っているであろうリリーサだ。
だがリリーサは今、俺の隣にいる。
リリーサを避難させるか?
いや、避難しろと言って大人しく避難するリリーサではない。
「リリーサ!頭に血を昇らせて突っ込むことだけは止めてくれよ?俺がきっちりバックアップするから、冷静に戦うんだ」
するとリリーサが、普段だったら俺の言い回しに文句の一つも言いそうなものだが、時が時だけに素直にうなずいた。
「わかったわ!わたしが前衛。貴方が後衛でいいのね?」
「ああ!ただし初手は俺からだ。その後に左から攻めてくれ」
「わかった!左ね」
リリーサが力強くうなずいた。
すると、馬車のおじさんが俺たちの会話を聞いて驚きの表情を浮かべながら振り向いた。
「おい、坊主たち!何をしでかす気だ?」
俺は手っ取り早く説明した。
「この先にあるのはマール王女の屋敷なんだ。メイデン王子はそこに攻め込もうとしている」
「な!なんだと!?王子と王女ってことは兄弟じゃないか!」
「そうだ。俺たちはそれを阻止したい。だからマール邸の前までいったら、俺たちを降ろしておじさんには避難してほしいんだ!」
「ちょっと待て!お前たちはどうするんだ!?」
「決まっている!戦うのさ!」
「た、戦うってお前」
「大丈夫。俺は大魔導師、こちらは剣豪だからね」
俺はそう言ってリリーサに向かってウインクした。
するとリリーサが笑みを浮かべ、ウインクし返した。
「そうよ。わたしたちなら大丈夫。おじさんはすぐに引き返してね」
「しかし」
躊躇するおじさんに、俺は懐から金貨を取り出して見せた。
「これ、馬車代。乗せてくれてありがとう。さあ手を出して」
「いや、そんな大金受け取れるかよ」
「いいから」
「ダメだダメだ!」
俺は肩をすぼめた。
だがおじさんの隙を突いて、ポケットの中に素早く金貨をねじ込んだ。
「おい!いらねえって言っているだろ!」
だがその時、前方の騎馬隊がついにマール邸に到着した。
「おじさん!前見て!」
おじさんは俺に言われた通りに、前を見た。
するともう目の前にはマール邸に到着して布陣を開始している騎馬隊が迫っていた。
おじさんは驚き、慌てて手綱を引いた。
馬が甲高いいななきを上げて、馬車が止まった。
「おじさんありがとう!気をつけて帰ってね!」
俺はそう言って馬車から飛び降りた。
リリーサも同じタイミングで、馬車から飛び降りた。
「おじさんありがとう!本当に助かったわ!」
「おい!お前たち!」
だがおじさんは、俺たちを心配して立ち去らなかった。
俺は仕方なしに馬の手綱を取って思いっきり引っ張った。
「お、おい!」
リリーサも気付いて同じように反対側から馬の手綱を引っ張る。
そのことで俺たちは、馬の進路を変える事に成功した。
そして最後に手綱をしならせ、馬の首の当たりを叩いた。
すると馬はゆっくりとではあるが歩き始めた。
「おい!本当に大丈夫なのか!」
俺はリリーサと連れ立ち、自信たっぷりな顔で言ったのだった。
「問題ないよ!俺たち、最強だから!」
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