【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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83 不倫

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「ふ、不倫ですってーーーー!!」

 リリーサが屋敷内全体に轟くほどの叫び声を上げた。

 俺は慌てて口元に指を当てて言った。

「しーーーっ!マールに聞こえたらどうするんだ?あの子には聞かれたくはないだろう?」

 するとリリーサが何とか叫び声は収めるも、さも汚ないものを見るような目でメイデンを見下ろした。

「なんて奴!汚らわしい!」

 リリーサは悪鬼羅刹もかくやという表情で吐き捨てるように言った。

 俺は一つため息を吐くと、リリーサをなだめるために言ったのだった。

「ちょっと待ってよ。とりあえず話を聞こうじゃないか。一応大人には大人の事情が……」

 俺がそこまで言うと、遮るようにしてリリーサが怒鳴った。

「何が大人の事情よ!そんなの聞きたくないわ!ただただ汚らわしいっ!」

 リリーサが少女特有の潔癖さを発揮し、断を下した。

 俺はこれは話にならないと思い、とりあえず黙った。

 リリーサは憤怒の形相でもってメイデンを睨みつけながら、フーッフーッと気が立った猫のような荒い呼吸をしている。

 だが一応暴力を振るわないのはよかった。

 俺は一呼吸置くと、再び口を開いたのだった。

「尋問は俺がするから、リリーサは別室にいてよ」

 するとリリーサがすかさず反発した。

「何でよ!?」

「リリーサが尋問には向かないからだよ」

「何ですって!?」

「ほら、そうやってすぐに感情を剥き出しにするだろう?それじゃあ尋問は出来ないよ。尋問っていうのは、冷静沈着にするものだ。だから俺がやる。いいね?」

 俺は優しく教え諭すように言った。

 するとリリーサが、ようやく気持を収めたのか素直に従ってくれた。

「わかったわよ。じゃあここはあんたに任せるわ」

 リリーサは多少不満そうに口を尖らせてはいたものの、そう言って隣の部屋へと去っていった。

 俺はホッと一つ安堵のため息を吐いた。

 すると、それはメイデンも同じだったらしい。

 細く長い息を吐き出した。

 そして全ての息を吐き出し終えると、俺に向かって言ったのだった。

「お前、何者だ?あのじゃじゃ馬を押さえ込めるとは、只者じゃあるまい」

 俺は軽く首を横に倒して、肩をすぼめた。

「別に。ただの大魔導師さ」

 するとメイデンが、フッと息を吐き出した。

「ただの大魔導師か。ふん、自分に対して大の付いた称号で言うとはな。馬鹿か、それとも大物か……お前、どっちなんだ?」

「そんなの自分で判断しなよ。大人なんだしさ」

「ふん、生意気な奴だ」

「そうだね。でも、命の恩人かもよ?あのままいったらリリーサは、問答無用であんたのことを殺していたかもしれないよ」

「ふん、恩に着せようってつもりか?」

「別にそういうわけじゃないけどさ。出来れば素直に色々と吐いてくれると助かるとは思っているよ」

 するとメイデンが顔を歪めて言ったのだった。

「こうなったら、もう言い逃れは出来まい。なら、知っていることを話してやるさ」

「そう。それは大いにありがたいね。で、メラルダ夫人だけど、あんたがアルト公になったら、キーファー侯爵と離縁して、あんたと再婚する約束でもしていたのかな?」

 メイデンはゆっくりと首を横に振った。

「いいや、そういう具体的なことは何一つ言わん女だ」

「なるほどねえ~。徹底的に慎重なんだな」

「そうだな。あいつはそういう女だ」

 俺はそこで、大いなる疑問をぶつけてみることにした。

「あのさあ、メラルダ夫人って何処がいいの?俺も一回会ったことはあるんだけど、良さが全然わかんないんだけど」

 するとメイデンがフンと荒く鼻から息を吐き出した。

「さあな。俺もよくわからん」

 俺はいぶかしげに眉根を寄せた。

「わからんって、あんたはメラルダ夫人と不倫関係だったんだろ?だったら何がしかの魅力を感じて、そうなったんじゃないの?」

 メイデンは口の端を大いに歪めた。

「わからんのだ。気付けばそういう関係になっていた。今もって何故そうなったのか、俺自身わかっていないのだ」

 俺は片眉をピンと跳ね上げた。

「何それ?そんなことあるの?じゃあ何、魅力はないのに不倫関係を結んでいたっていうの?」

「関係を結んで以降は別だ。俺が言っているのはそうなった時のことだ」

 俺は相当に難しい顔をしていたに違いない。

 何故なら頭をフル回転させて考えていたからだ。

 だがそうしてもなおよく判らなかった。

 大人って……。

「その、そういう関係になってからは多少なりと魅力は感じてたってことでいいんだね?」

「そうだな」

「でもその前、最初の段階で、そういう関係になった経緯がよくわからないと」

「そうだ」

「でもさあ、自分のことでしょ?覚えていないって……」

 俺はそこでハタと気付いた。

「もしかして、薬とか魔法とかを掛けられたってことは?」

 するとメイデンが重々しくうなずいた。

「ああ。今思えばそうだったような気がする。もっとも確証はまったくないんだがな」
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