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88 金切り声
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俺は暗闇に紛れて腰をかがめ、いつ何時屋敷に異変が起こってもいいように待ち構えていた。
すると、すぐに待ち望んでいた甲高い怒鳴り声が、再び闇夜に響き渡った。
来た!
俺はすかさず警備員を見た。
すると、予想通り彼らは屋敷を振り返っている。
今だ!
俺は反射的に飛び出した。
そしてすかさず両腕を構えて、最速の魔法を繰り出したのだった。
「雷撃戦槍」
俺が呪文名を唱えるや、電光石火の雷が走った。
雷は両腕から放たれ、左右の警備員に正確に当たった。
警備員たちは一瞬のうちに雷に打たれ、ガクンガクンと身体を震わせ、地面に崩れ落ちた。
俺はその倒れ伏す二人の間を素早く駆け抜け、邸内へと侵入したのだった。
「よし!第一関門突破だ!」
俺はすかさず屋敷の裏口ドアを見つけ、駆け寄った。
そして一旦屋敷の壁に背中を合わせ、辺りを警戒した。
「よし、誰もいない」
俺はゆっくりと首を伸ばし、裏口ドアに施された嵌め込み式のガラスから、屋敷の中をのぞき込んだ。
「ここは台所か?人気はないようだな。よし、行ける」
俺はそう判断すると、素早くドアノブを回して扉を開け、中に身体を滑り込ませた。
そしてゆっくりとドアを閉めると、暗い室内を眺め見た。
「やはり台所か。なるほどね、ここは勝手口ってことか」
俺は独りごちると、いつまでもこんなところにいる意味はないとばかりに素早く足を繰り出し、台所を出ようとした。
だがその時、微かに話し声が聞こえた。
しかしその声はかなり遠くであったため、俺は慎重でありながらも首を廊下にスッと出した。
すると廊下の遠くの方で、誰かが複数人に指示を出しているようだった。
「何らかの部隊か?もしやマール邸に乗り込むつもりじゃないだろうな?」
俺は眉根を寄せて、その可能性について考えた。
「有り得るな。メラルダ夫人がメイデン王子捕縛の報を聞き、ヒステリーを起こして奪還を試みるよう指示を出した、なんて筋書きは充分有り得る話だ」
俺はひとまずそこで様子を見ようとした。
本当にマール邸へ乗り込むつもりなのかを探ろうと思った。
だが男たちはすぐさま何らかの指示を受けて、方々に散ってしまった。
急に静まりかえった廊下を見つめ、俺はこうなったら最奥部にいるであろうメラルダ夫人の元へ行こうと決意した。
それというのも、ここで色々と考えあぐねていても仕方がないと思ったからだ。
どうせここまで来たのだから、思い切って踏み込む以外にないと思ったわけだ。
よし、そうと決まれば話は早い。
直接メラルダ夫人のところへおもむき、直に話をきいてやろうじゃないか。
俺は力強く一歩前へと足を踏み出したのだった。
「どういうことなの!?」
メラルダ夫人が従者に向かって金切り声を上げている。
「メイデンが捕まるなんて!それは本当のことなの!?」
従者は額に大粒の汗をかき、それをハンカチでいそいそと拭いながら答えた。
「は、はい。どうやらそのようでございます。メイデン王子殿下の配下の者が、一人なんとか敵の目を盗みほうほうの体で当館にやって参りまして、必死の思いで報告したことにございますれば、間違いはないかと」
「まずいわ。まさかそんなことになるなんて」
メラルダ夫人は焦りのためか、あちらに行ったりこちらに行ったりと、落ち着きなく右往左往していた。
そこへ、屈強な体格の男たちが整然と隊列を組んでメラルダ夫人の前へと現れた。
「およびでございますか?」
先頭の男が威儀を正して言う。
メラルダはその男の顔を見るや、ほっと一つ息を吐いた。
「おお、トリスト。待っていたぞ」
トリストと呼ばれた男は、厳めしい顔つきのまま深く一礼した。
「は。どのようなご用でしょうか?」
「うむ。とりあえずはわたしを護れ。全部隊を動員してこの館を護るのじゃ」
「館をでございますか?」
「うむ。侵入者が来るやもしれん。わたしを護ってたもれ!」
メラルダ夫人が叫ぶように言う。
そこへメラルダ夫人が驚愕する人物の声が、広い室内全体へと響き渡った。
「なるほどね。まずは自分を護れか。女性らしいっちゃ女性らしいのかもな」
「何者!」
メラルダ夫人が叫ぶ。
その視線の先に現れたのは、当然のことながら俺であった。
「先程はどうも」
俺のちょっと軽めの挨拶に不快感を持ったのか、それとも別の理由か、メラルダ夫人は眉根を強く寄せて睨み付けてきた。
「先程?誰ぞ、お前は!」
ああ、なるほどね。
俺の顔をまったく覚えていなかったってことか。
俺は居住まいを正すと、あらためて自己紹介をするのであった。
「俺はアリオン=レイス。今日、ジトー侯爵と一緒にこの館を訪ねた者だけど?」
すると、すぐに待ち望んでいた甲高い怒鳴り声が、再び闇夜に響き渡った。
来た!
俺はすかさず警備員を見た。
すると、予想通り彼らは屋敷を振り返っている。
今だ!
俺は反射的に飛び出した。
そしてすかさず両腕を構えて、最速の魔法を繰り出したのだった。
「雷撃戦槍」
俺が呪文名を唱えるや、電光石火の雷が走った。
雷は両腕から放たれ、左右の警備員に正確に当たった。
警備員たちは一瞬のうちに雷に打たれ、ガクンガクンと身体を震わせ、地面に崩れ落ちた。
俺はその倒れ伏す二人の間を素早く駆け抜け、邸内へと侵入したのだった。
「よし!第一関門突破だ!」
俺はすかさず屋敷の裏口ドアを見つけ、駆け寄った。
そして一旦屋敷の壁に背中を合わせ、辺りを警戒した。
「よし、誰もいない」
俺はゆっくりと首を伸ばし、裏口ドアに施された嵌め込み式のガラスから、屋敷の中をのぞき込んだ。
「ここは台所か?人気はないようだな。よし、行ける」
俺はそう判断すると、素早くドアノブを回して扉を開け、中に身体を滑り込ませた。
そしてゆっくりとドアを閉めると、暗い室内を眺め見た。
「やはり台所か。なるほどね、ここは勝手口ってことか」
俺は独りごちると、いつまでもこんなところにいる意味はないとばかりに素早く足を繰り出し、台所を出ようとした。
だがその時、微かに話し声が聞こえた。
しかしその声はかなり遠くであったため、俺は慎重でありながらも首を廊下にスッと出した。
すると廊下の遠くの方で、誰かが複数人に指示を出しているようだった。
「何らかの部隊か?もしやマール邸に乗り込むつもりじゃないだろうな?」
俺は眉根を寄せて、その可能性について考えた。
「有り得るな。メラルダ夫人がメイデン王子捕縛の報を聞き、ヒステリーを起こして奪還を試みるよう指示を出した、なんて筋書きは充分有り得る話だ」
俺はひとまずそこで様子を見ようとした。
本当にマール邸へ乗り込むつもりなのかを探ろうと思った。
だが男たちはすぐさま何らかの指示を受けて、方々に散ってしまった。
急に静まりかえった廊下を見つめ、俺はこうなったら最奥部にいるであろうメラルダ夫人の元へ行こうと決意した。
それというのも、ここで色々と考えあぐねていても仕方がないと思ったからだ。
どうせここまで来たのだから、思い切って踏み込む以外にないと思ったわけだ。
よし、そうと決まれば話は早い。
直接メラルダ夫人のところへおもむき、直に話をきいてやろうじゃないか。
俺は力強く一歩前へと足を踏み出したのだった。
「どういうことなの!?」
メラルダ夫人が従者に向かって金切り声を上げている。
「メイデンが捕まるなんて!それは本当のことなの!?」
従者は額に大粒の汗をかき、それをハンカチでいそいそと拭いながら答えた。
「は、はい。どうやらそのようでございます。メイデン王子殿下の配下の者が、一人なんとか敵の目を盗みほうほうの体で当館にやって参りまして、必死の思いで報告したことにございますれば、間違いはないかと」
「まずいわ。まさかそんなことになるなんて」
メラルダ夫人は焦りのためか、あちらに行ったりこちらに行ったりと、落ち着きなく右往左往していた。
そこへ、屈強な体格の男たちが整然と隊列を組んでメラルダ夫人の前へと現れた。
「およびでございますか?」
先頭の男が威儀を正して言う。
メラルダはその男の顔を見るや、ほっと一つ息を吐いた。
「おお、トリスト。待っていたぞ」
トリストと呼ばれた男は、厳めしい顔つきのまま深く一礼した。
「は。どのようなご用でしょうか?」
「うむ。とりあえずはわたしを護れ。全部隊を動員してこの館を護るのじゃ」
「館をでございますか?」
「うむ。侵入者が来るやもしれん。わたしを護ってたもれ!」
メラルダ夫人が叫ぶように言う。
そこへメラルダ夫人が驚愕する人物の声が、広い室内全体へと響き渡った。
「なるほどね。まずは自分を護れか。女性らしいっちゃ女性らしいのかもな」
「何者!」
メラルダ夫人が叫ぶ。
その視線の先に現れたのは、当然のことながら俺であった。
「先程はどうも」
俺のちょっと軽めの挨拶に不快感を持ったのか、それとも別の理由か、メラルダ夫人は眉根を強く寄せて睨み付けてきた。
「先程?誰ぞ、お前は!」
ああ、なるほどね。
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