【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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100 予想外の登壇者

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 ヴァルカ王。


 リリーサの父にして、メリッサ王国の最高位者。


 リリーサ暗殺未遂事件を越える大罪となれば、この人物にまつわる事件しか有り得ない。


 どうやら俺のこの推理は当っているらしい。


 あの傲慢なメラルダ夫人が、一点を見つめてワナワナと震えている。


 クランド男爵は、その娘を驚愕の表情でもって見つめている。


「やっぱりか。リリーサ暗殺未遂事件と平行して、ヴァルカ王に対する事件も起こしていたんだな!?」


 俺はひときわ大きな声を出し、威嚇するように問い詰めた。


 だがメラルダ夫人は、一点を見つめたまま動かない。


 すると、まったく予想もしなかった方角から凜とした声が響き渡った。


「その通りだ」


 俺がびっくりして振り向くと、そこには相変わらずのダンディーな出で立ちに身を包んだジトー侯爵が佇んでいたのだった。


「ジトー侯爵!?」


 俺が反射的にその名を呼ぶと、ジトー侯爵はゆっくりと近付いてきながら言った。


「やあ、アリオン。ご苦労だったな」


「どうしてここが!?」


「わたしの部下たちは、あらゆるところに網を張っているのでね。それにあれだけ派手に大騒ぎすれば何事か起きているとご近所の方たちも思うさ」


「まあ、確かに。色々なところで大騒ぎしていたかも」


 俺が頭をかきながら言うと、ジトー侯爵が微笑みながら言った。


「そういうことだ」


 ジトー侯爵は俺の横で立ち止まると、メラルダ夫人たちを見下ろした。


 そして冷厳な色合いの声音でもって言ったのだった。


「メラルダ夫人、貴方を逮捕する。罪状はわかっているな?」


 メラルダ夫人はプイッと顔を背けて無言を貫いた。


「黙秘か。まあいい、尋問については後でゆっくりとさせてもらう。クランド男爵も拘束させてもらうぞ。文句はあるまい?」


 クランド男爵も何も言わなかった。


 そのためジトー侯爵は同意と判断し、軽く後ろを振り向いた。


「連れて行け」


 ジトー侯爵が命令を下すや、数人の男たちが突如姿を現わした。


 そして皆、足音を立てずにやってきて、メラルダ夫人たちを引き連れて消えていった。


 部屋には俺とジトー侯爵だけが残された。


「大手柄だ。よくやってくれた」


 ジトー侯爵が俺を褒める。


 かなり照れる。


 だが俺には聞きたいことがある。


 にやけそうになるのをぐっとこらえて、俺はジトー侯爵に問い掛けた。


「ヴァルカ王の事件っていうのは、もしや暗殺されたってこと?」


 ジトー侯爵は首を横に静かに振った。


「いや、王はご無事だ。もっとも命に別状はないという意味でだが」


「ということは怪我を?」


「うむ。現在療養中であられる」


 ジトー侯爵は苦悶の表情を浮かべて言った。


「そっか。不幸中の幸いだったね。それでその実行犯は捕まったの?」


「いや、残念ながら逃がした。何人かの骸は転がっていたが、主犯格と思われる者は取り逃がした。そのため我らは色々なところに内偵を入れていたのだ」


「その骸から、何か情報は取れたの?」


「何も。身元が知れそうなものは、当然のことながら何もなかった。ただ一つの目撃情報を除いては、だが」


 ただ一つの目撃情報?


「それはどんな目撃情報だったの?」


 ジトー侯爵はそこで一度大きく息を吸い込み、静かにゆっくりと吐き出した。


 そしてジッと俺の顔を見つめて言ったのだった。


「逃げおおせた主犯格は、子どもだったというものだ」


 え!?


 マジで!?


 俺は驚愕の表情を浮かべて、顔の前で両手を振った。


「いや!違う違う!それ、俺じゃないよ!」


 俺は全力で否定した。


 それによって余計に怪しくなるとか考える間もなく、全力で。


 するとジトー侯爵がニヤリと微笑んだ。


「安心しろ。わたしも今は疑っていない」


 ホッ。


 俺はひとまず胸をなで下ろした。


 だが。


「今は疑っていないって言った?」


 ジトー侯爵は微笑みながらうなずいた。


「ああ。以前は疑っていた。それこそ君と出会ったときは、正に犯人だとな」


 俺は初めて会った時のことを思い返した。


 うん。


 そりゃ、疑うわ。


 だって俺みたいに強力な子どもなんて、そうそういないし。


 俺は納得しつつも、ジトー侯爵に問い掛けた。


「よく俺のことを泳がせたね?正直自分で振り返って見て、こんなに容疑者に近い奴はいないと思うくらいだよ」


 ジトー侯爵はフッと笑った。


「以前に言ったと思うが、わたしはこう見えて人を見る目はあるつもりだ。そのわたしの目が、この子は違うと言っていた」


「おかげで俺は逮捕されずに済んだわけだ」


 俺はふうと大きく息を吐き出した。


 そして眉根を寄せて厳しい顔付きとなり、俺はジトー侯爵に改めて問うたのだった。


「だけどそうなると、じゃあその子どもは誰だ?ってことになるね?」
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