【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

文字の大きさ
101 / 138

101 証言者

しおりを挟む
「そうだ。それが問題なのだ」

 ジトー侯爵は眉根をギュッと寄せて、厳しい表情となった。

「その目撃情報だけど、もっと詳しく教えてくれる?」

 もっとも気になる情報だけに、俺はより詳しく知っておきたかった。

 だがジトー侯爵は苦しそうに首を横に振った。

「残念ながら、主犯格が子どもだったと証言した者は、その場ですぐに事切れてしまったのだ」

「じゃあ、その子どもの特徴とか、背丈とかも判らないってこと?」

「そうだ。ただ子どもだったとだけ言い残して亡くなってしまったのでな」

「証言者はその人だけだったの?他にはいなかったの?」

「いない。わたしたちの部隊が王の間に駆けつけた時には、他の者は皆既に事切れていた」

 そういうことか。

 その人は王の間を護る最後の一人だったというわけだ。

 だがその人も亡くなり、正体は闇の中ってわけか。

「ということは、その主犯格の子どもは、ジトー侯爵たちが駆けつけたことで逃げたわけだ」

「そういうことだ」

「ジトー侯爵たちの部隊は、誰も見ていないんだね?」

 するとジトー侯爵が再び首を横に振った。

「一人見た」

 だがジトー侯爵はすぐに首を横に何度も振った。

「いや、違うな。一人、ではないな。信じられないかもしれないが、人語を操る魔物がいたのだ」

 その時俺の脳裏には、直観的にあいつの顔が思い浮かんだ。

「もしかして、悪魔?」

 ジトー侯爵が驚愕の表情を見せた。

「どうしてわかった?」

 俺は思わず肩をすぼめた。

「さっき会ったばかりなんでね」

「何だと!?何処で会った!?」

 さすがのジトー侯爵が慌てて問い掛けてきた。

「ここで。いや、そもそもはメラルダ夫人の屋敷で会ったんだった」

「ということはメラルダ夫人がこの屋敷に逃げ込む際に、一緒にいた者の中に奴がいたということか?」

「そう。それでここで戦った」

「戦った?悪魔とか?確かに何者かと君が戦闘に至ったという報告は受けたが、その相手があの時の悪魔だったというのか?」

「そう。トリストっていう名前の悪魔だ。丁度そこの庭でやり合ったんだ」

 俺は庭を指さし、言った。

「本当か?そのトリストという悪魔の容貌はどんなものだった?」

「長身で、体格もいい。それに中々の二枚目だった。物腰は柔らかく、紳士を気取っているような感じだったね。だけど途中で口が耳まで裂けて、牛の角みたいなのが一本、右目の上辺りから皮膚を突き破って出てきた」

 するとジトー侯爵が目をスーッと細めた。

「わたしが相対した悪魔と完全に一致するな」

「だろうね。悪魔なんてものが、そんじょそこらにいるとは思えないし」

「そうだな。だが、だとしたらよく無事だったな?わたしの部隊は奴一人に大損害を与えられたのだぞ」

「そうか。ジトー侯爵たちもやり合ったんだ。でも大損害を受けながらも、トリストを退けたんだ?」

「我が国の最精鋭部隊だからな。だがそれでも多くの者たちが亡くなった。それほどの敵だった。それにも関わらず、君はたった一人で退けたというのか?」

 ジトー侯爵が驚愕の表情を浮かべて俺を見る。

 俺はちょっと得意になった。

「まあね~」

「信じられん。わたし自身も奴とは相まみえたが、とても人間が一人で立ち向かえるような相手ではなかったぞ?」

「まあ一応、奥の手があったものでね」

 ジトー侯爵がいぶかしげに首を傾げる。

「奥の手?それは一体、どういったものなのだ?」

「俺のユニークスキルで、『能力コピー』ていうのがあるんだ」

「『能力コピー』?聞いたことがないが、それは一体どのような性質の能力なのだ?」

「文字通り、相手の能力をコピー出来るんだ。だからトリストと戦った際、あいつの能力もコピーしたんだよ」

「な、なんだと?では悪魔の能力を手に入れたと!?」

「そう。とはいっても全部じゃないけどね。この能力は相手が使った能力を受けることでコピー出来るようになるから、使ってない能力はコピー出来ないんだ」

「どんな能力を手に入れたんだ?」

 ジトー侯爵の問いに、俺はニヤリと笑った。

 すると次の瞬間俺の姿がジトー侯爵の視界から消え失せた。

 ジトー侯爵は驚き、戸惑っている。

 そこへ、庭に移動した俺が声を掛けた。

「ジトー侯爵!ここだよ。ここ」

 ジトー侯爵は慌てて俺の方を振り向いた。

 その瞬間、俺は空に向かって勢いよく紅蓮の炎を吹き上げた。

 しばらくして炎の噴出を止めると、俺はジトー侯爵に向かって言った。

「瞬間移動と、この炎。それに無詠唱の能力の三つを、コピーすることに成功したんだ」

 ジトー侯爵は呆れ気味に息を吐き出し、言ったのだった。

「とんでもない奴だな。君という奴は」
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...