【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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114 増援

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「お・ま・え・ら・に・ん・げ・ん・き・ら・い」


 怪物が再び舌を伸ばし、攻撃を仕掛けてきた。


 その長く薄気味悪い舌は、ジトー侯爵目掛けて飛んできた。


 ジトー侯爵はそれを華麗なステップで躱す。


「リリーサ、飛び込むぞ!」


 ジトー侯爵の号令により、両者が抜刀して怪物目掛け突進を仕掛けた。


 怪物はそれを見て慌てて舌を戻すと、瞬時に上空へと飛び上がった。


「なに!?」


 怪物の予想外の素早い動きに、リリーサが唸った。


 だがすぐに方向転換し、両者ともに再度の斬撃を繰り出そうと怪物の着地点へと殺到する。


 その瞬間、怪物の身体から放射状に液体が噴出された。


 ジトー侯爵が叫ぶ。


「退避!!」


 ジトー、リリーサ共に瞬時に急ブレーキを掛け、と同時に左右に大きく飛び退った。


 ギリギリで怪物から放射された液体を躱して着地したリリーサが叫ぶ。


「こいつ!身体全体から毒を排出出来るのか!」


 すると反対側に着地したジトー侯爵が、液体によってドロドロと溶けている床を見ながら、冷静に言った。


「どうやらそのようだが、毒というよりも、溶解液と言った方がよさそうだな」


「何にしろ、やりづらいわね」


 リリーサが舌打ちをする。


 と、その時怪物が口を開いた。


「お・ま・え・ら・ひ・き・ょ・う」


 反射的にリリーサが顔を上げ、怪物を見下ろして睨みつけた。


「あん?」


「お・ま・え・ら・ふ・た・り・お・で・ひ・と・り」


「はん!そんなのこっちの知ったことじゃないわよ。文句があるなら仲間でも何でもよんだらいいじゃない」


 すると怪物がニンマリと嗤った。


「そ・う・す・る」


 怪物はそう言い終えた瞬間、突然何事かを大声で叫びだした。


 リリーサは思わず耳をふさいだ。ジトー侯爵も同じである。


 何故ならばそれは、あまりにも凄まじい大音声であり、部屋全体がビリビリと震えるほどであったからだった。


 その断末魔の叫びを連想させる大声がようやく終わると、イライラした様子でリリーサが言った。


「急にバカでかい声で叫んで!何なのよ!」


 だがそう言い終えた瞬間、リリーサの顔色が変わった。


 ジトー侯爵も同じく真剣な表情となって、壁の一点を見つめている。


 するとその壁が、突如として黒く滲み出した。


「気をつけろ。何かが、来る!」


 ジトー侯爵が危険を知らせるシグナルを発した。


 リリーサが真剣な表情でうなずく。


 その瞬間、大きくなった壁の黒いシミから、何かがニュルッと抜け出してきた。


 リリーサがその様子を見て、気味悪げに言った。


「壁を抜けられるの?何者なのよ、一体」


 それはゆっくりと、その異様な姿を現わしはじめた。


 まずは二本の腕がニュルッと現れた。


 だがその腕は二本とも右腕であった。


 すると、その下からもう一本現れた。


 それもまた、右腕であった。


「え?なに?」


 リリーサがそれを見て、いぶかしげに呟いた。


 次いでゆっくりと肩口から身体が出てきた。


「うげ。完全に化け物じゃん」


 リリーサがそう言うには訳がある。


 その化け物には顔が二つあったのだ。


 正確には首が二本、身体から生えていて、それぞれ別の顔を持っていたのだった。


 一方は赤みがかった顔をし、もう一方は青ざめていた。


 そしてさらにゆっくりと、左側も見えてきた。


 だがこれはある意味予想通りであった。


「顔が二つに、腕が六本。でも脚は普通に二本なのね」


 リリーサが呆れた様子でそう言った。


 ジトー侯爵も予想外の相手に、困惑気味に応じた。


「どうやらそのようだな。しかし、それにしても不気味な……」


 するとその化け物の赤ら顔の方が、ニヤリと笑って口を開いた。


「ジャイロ、俺を呼んだか?」


 青ざめた顔が怪物に向かって、明快な言葉で言った。


 すると怪物が嬉しそうに答えた。


「よ・ん・だ・シ・ズ・マ・が・き・て・お・で・う・れ・し・い」


「そう、それはよかった。それで、この者たちが敵なのかな?」


 赤ら顔が言う。


「そ・う・こ・い・つ・ら・て・き」


 すると二つの顔が同時にニヤッと不敵に笑った。


 するとリリーサが不機嫌な顔をして、ぶっきらぼうに言った。


「おい、お前。ずいぶんとしっかり話せるみたいじゃないか」


 リリーサの問いに赤ら顔が答える。


「お初にお目に掛かる。わたしはシズマ。こちらはジャイロと申す。よろしくお見知りおきを」


「必要ない。お前等はすぐにぶっ倒す!」


「これはこれは。ずいぶんと威勢の良いお嬢さんだ。だが礼儀がなっていませんね?」


「はん!礼儀とは、相手によって為すものだ。お前たちには不要!ただ倒すのみだ!」


「いけませんね。相手を見て態度を変えるというのは。感心しませんよ」


「うるさい。問答無用だ!」


 リリーサは不愉快そうに言い捨てると、シズマに向かって剣を構えるのであった。
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