【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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115 シズマとジャイロ

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 剣を構えるリリーサ。

 だが対するシズマは、不敵に笑うのみであった。

 そこへジトー侯爵が声を掛ける。

「熱くなるなリリーサ。お前のよくない癖だぞ」

 するとシズマがさらに両の顔でニヤリと笑った。

 そして赤ら顔がなぶるような視線を二人に送りながら言った。

「ほう、これはこれは。リリーサ王女であらせられたか。これはご無礼いたしました。そして王女をリリーサと呼び捨てにするということは、貴方はジトー侯爵であられる?」

 シズマの問いに、ジトー侯爵が居住まいを正して答えた。

「そうだ。わたしたちのことを知っているということは、事前に襲撃を予想していたということかな?」

 シズマはゆっくりと両の顔を横に振った。

 そして赤ら顔がゆっくりと答えた。

「いいえ、ただ存じ上げていただけのこと。襲撃は予想外」

「ほう。襲撃自体は予想外か。では何故事前に我らのことを知っていたのかな?」

 ジトー侯爵のさらなる問いに、躊躇なく赤ら顔が答えた。

「貴方方が、わたしたちの攻撃対象だったからですよ」

 その瞬間、ジトー、リリーサ共に顔色が変わった。

 だが相変わらず冷静を装ってジトーが言った。

「ほう。わたしたちが君たちの攻撃対象だったというのか。それは何故かな?」

 すると、これもまた何の躊躇もなく赤ら顔が答えた。

「そう聞かされていたからですよ」

「誰に?」

 すかさず問うジトー侯爵。

 だが今度は赤ら顔もすぐに答えたりはしなかった。

「さあて、誰でしょうな?」

 するとジトー侯爵が不敵に笑った。

「なるほど。そこで言葉を濁すか。面白い」

 シズマがいぶかしげな顔をして問うた。

「おや、なにか面白いことを言いましたかね?」

 すかさずジトー侯爵が言った。

「言わなかった。だから面白いのだ」

「おかしなことを仰る。意味がわかりませんが」

 するとジトー侯爵が勝ち誇ったような顔をして答えたのだった。

「何故トリストだと言わなかった?そうすればわたしたちは納得しただろう。だが君はそう言わなかった。何故言わなかったのだろうか?それは、その裏にいる真の依頼者の顔が浮かんだからに他ならない。それ故、君はわたしの問いに言葉を濁したのだ。そうではないか」

 するとシズマの両の顔から笑みが消えた。

「真の依頼者?さあて、それは一体何のことですかな?」

 赤ら顔がとぼけた。

 だが意外なところから声がかかった。

「あ・い・つ・か・あ・の・こ・ど・も」

 その瞬間、赤ら顔が素早くジャイロを叱咤した。

「黙れ!ジャイロ!」

 ジトー侯爵がニヤリと笑う。

「どうやらジャイロも知っているようだな。ならば片方だけで充分ということだ」

 すると今度は青ざめた顔が口を開いた。

「おい、さっさとやってしまおうぜ」

 だがそれに赤ら顔がさも嫌そうに答えた。

「待て。慌てる必要はあるまい」

「もう話すことはないだろうが。いや、そもそも初めから話すような必要なんてなかった。お前が趣味で話していただけだろう。だったらもういい。あのやかましい女の言うとおり、問答無用だ」

 青ざめた顔が、リリーサを見ながら言った。

 するとそれにリリーサが、瞬間的に反発した。

「やかましい女っていうのは、わたしのことか?」

「他に女はいないだろうが」

「そうか。じゃあわたしのことだな。よくわかった。お前はわたしがやる」

 リリーサがシズマを睨み付けて腰を落とした。

 すると、シズマも態勢を整える。

 突然六本の腕が形を変え、鋭い槍のようになった。

「面白い。やってみろよ、女」

 リリーサがギリッという音を立てて歯ぎしりをした。

 それを見て赤ら顔が観念した。

「どうやら楽しい会話はこれまでのようですね」

 それにジトー侯爵が応じた。

「どうやらそのようだな」

 そこでジトー侯爵はリリーサを見た。

 するとリリーサがすかさず答えた。

「あの生意気な口を聞く、二つ顔はわたしがやるわ。もちろん冷静に、しっかりたっぷりと切り刻んでやるわ」

 リリーサがそう言ってウインクした。

 するとジトー侯爵はニヤリと笑い、安心した様子で言ったのだった。

「わかった。ではわたしはジャイロをやろう。どうやらその方が相性的にもよさそうだからな」
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