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116 激突
しおりを挟む「そうですか。わたしの相手は貴方ですか、王女」
赤ら顔が不敵な笑みを浮かべて言った。
「そうだ。このわたしが十全に切り刻んでやるから、有り難く思え」
すると青ざめた顔が切れ気味に言う。
「偉そうに言うな。人間の分際で」
「あん?お前こそ悪魔の分際で偉ぶるんじゃないわよ」
「悪魔の方が偉いに決まっているだろうが」
するとリリーサがニヤリと笑った。
「ふん、やっぱり悪魔か。まあそれだけしゃべられるってことは、そうだろうとは思ったけど」
すると赤ら顔が微笑みながら言った。
「悪魔だとして、如何する?」
「どうもしない。さっきから言っているだろう。切り刻むのみ!」
そう言い放った途端、リリーサが瞬発的に床を蹴った。
あっという間に間合いを詰め、シズマの目の前までたどり着く。
「喰らえっ!」
リリーサ渾身の斬撃がシズマを横殴りに襲う。
だがシズマは右側の三本の槍でもって、その強烈な斬撃を見事に受けきった。
ガッギィーーーーン!!
凄まじい衝撃音が鳴り響く。
だがすぐさま左側の槍が、リリーサを襲う。
リリーサは咄嗟に右に進路を変え、眼前まで迫り来る槍撃をかわした。
ズザザザーーーッ!
リリーサが足裏で床を擦るようにして、止まる。
「ふんっ!」
リリーサはアゴを上げ、胸をそびやかしてシズマを睨みつけた。
「やるわね。でも勝負はこれからよ!」
リリーサは腰をスッと落とすと前屈みとなり、再び力強く床を蹴ると、シズマ目掛けて飛び込むのであった。
「さて、それではわたしたちも戦うとするかね」
リリーサの熱が籠もっていながらも決して浮かされてはいない戦いぶりを、横目で見ていたジトー侯爵が、多少安堵したのかジャイロに向き直って言った。
「お・で・も・た・た・か・う」
ジャイロが相変わらずの舌足らずで言う。
ジトー侯爵はニヤリと笑い、言った。
「お互いの合意が取れたようだ。それでは始めるとしよう」
するとジャイロが先を取った。
大きく開いた口から分厚い舌が勢いよく飛び出し、ジトー侯爵を襲う。
だがジトー侯爵はそれを素早い動きで左に躱すと、右手に持った剣をすかさず振り下ろした。
スパッ!
あっという間にジャイロの舌が切断された。
ジャイロは瞬時に舌を引いて口の中に戻すと、顔を歪めて身体全体でもだえた。
「い・で・え・え・え・え・え」
見るとジャイロは目に涙を浮かべているようだ。
ジトー侯爵は、リリーサ同様アゴを上げ、胸をそびやかして言ったのだった。
「出来るだけ早めに勝負を決めたいのでね。君の舌を斬らせてもらったよ」
するとジャイロが悔しそうに叫んだ。
「ぐ・っ・そ・ぉ・ぉ・ぉ・ぉ!」
ジャイロはその巨体から想像出来ない素早い動きで突進を仕掛け、あっという間にジトー侯爵に迫った。
ジトー侯爵は瞬時に右方向に飛んで、ジャイロの突進を躱す。
だがその瞬間、ジャイロの左半身からジトー侯爵目掛けて溶解液が放出された。
溶解液がジトー侯爵の眼前に迫る。
その瞬間、ジトー侯爵が裂帛の気合いを込めて呪文名を唱えた。
「ヒートブラスト!」
すると突き出されたジトー侯爵の左腕から、強力な熱風が吹き出された。
熱風は迫り来る溶解液を巻き込みながら突き進み、ジャイロへと襲いかかった。
「ぐ・う・う・う・お!」
ジャイロがあまりの高熱にうめき声を上げた。
ジトー侯爵は華麗に着地するや、再びリリーサのようにアゴを上げて胸をそびやかした。
「どうやら君は熱に弱いようだな。どうするかね?降参するなら命はとらんが?」
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