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第二話 目覚め
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1
ヴァレンティン共和国きっての名家であるシュナイダー家の邸宅は、共和国の交易の要衝たる属州エルムールのほぼ東端にある。
広大な敷地を、成人男性の背丈の三倍はあるかという白くて高い塀で囲い、南に開いた門構えのみ漆黒に染め、見る者を威圧するかのごとき厳かな雰囲気を醸し出していた。
敷地内には多くの花や木々が美しく彩られており、四季折々に楽しめる工夫がなされている。
邸宅の前面中央にはとても大きな噴水彫刻があるのだが、これだけの物は大きさといい意匠といい、共和国内においても二つと無い代物であり、来訪者たちの羨望の対象となっていた。
そして肝心の邸宅はと言うと、地上三階立てで五十を越す部屋数を誇る邸宅、というよりは宮殿と言ったほうがふさわしいほどの威容であった。
その宮殿と見紛うばかりの邸宅内の一室で、今新たな生命が芽吹いた。
その赤子は、この館の主であると同時にいずれはヴァレンティン共和国をも背負って立つといわれる俊英ロンバルド・シュナイダーと、メリッサ大陸東部に広大な領土を持つレイダム連合王国きっての大貴族、リップシュタット侯爵家の令嬢エメラーダとの間に生を受けるという、大変に幸運な星の下に生まれた。
とても柔らかそうな純白の肌着にその身を包み、母エメラーダや使用人たちの慈愛に満ちた視線を受けながら、赤子は心地よさげに籠の中で寝ていた。
そこへ、この館の主にして赤子の父親であるロンバルドが、勢いよく室内に飛び込んできた。
「生まれたか!」
従僕の一人が、――(旦那様お静かに)――という警告の意味で、一つ大きな咳払いをした。
ロンバルドはそれに気づき、勢いよかった歩を緩め、居住まいを正してゆっくりとベッドへと近づく。
彼はベッド脇の籠の中にいる小さな命を一瞬目にして相好を崩しかけたが、すぐにベッドに横たわる妻に向き直ってまずはねぎらいの言葉をかけた。
「よくがんばったな」
妻は満面の笑みを浮かべながら、「赤ちゃんを抱いてあげて」と言った。
ロンバルドは初めてのことでもあり、どうしていいか判らず一瞬たじろいだが、意を決して赤子を抱き上げた。
そして、「かわいいものだな」と言った。
「ええ。そうね。元気な男の赤ちゃん。あなたの跡取りね」
「そうだな。それにしても我が子と思うと、たまらなく愛しく思えるのだな」
その時、赤子のまぶたがゆっくり開いた。
ロンバルドは興奮気味にそのことを妻に報告する。そして再び赤子に向き直るなり、遂に開いた我が子の吸い込まれそうなほど黒くて深い瞳を凝視した。
すると、赤子の瞳が急激に収束した。ロンバルドには、それは赤子が驚いたように思えた。
赤子は次いで怯えるような眼差しを向けたかと思うと、なにやら考え込むような目をしたように見える。
ロンバルドはその様子に驚き、だいぶ長く考え込んだ。
だが結局のところロンバルドはかぶりを振り、気のせいだと思うことにした。
そして再び妻に向き直り、「やっぱりかわいいな」と言い、相好を崩した。
2
(誰だ?こいつ)
彼が目覚めたとき、見知らぬ男が彼の瞳を覗き込んでいた。
(見たことのない顔だ。一体何者だ?)
彼はその考えを当の本人にぶつけようと声をかけようとした。
だが、出来なかった。
いや、声は出た。
だが言葉にならなかった。
彼の声帯は、うめき声とも泣き声とも判別がつかないような声しか出せず、目の前の男と意思疎通をすることは叶わなかった。
彼は大層驚き、慌てふためいた。
そしてとりあえず横たわる身体を起こして周囲を覗こうとした。
だが、その望みも叶わなかった。
彼の身体は、ほんの僅かですらも動くことはなかった。
彼はそこで、或る考えに至った。
それは、大変に恐ろしい考えであった。
その考えとは、事故かなにかに突然遭遇してしまい、身体が不自由になってしまったという絶望的なものだった。
彼は目の前が真っ暗になったような感覚に襲われ、あまりの衝撃に意識を失いかけた。
(なんてことだ!最悪だ。信じられない)
だがここで、彼はもう一つの可能性に思い至った。
(いや待てよ。これは麻酔が効いているだけじゃないのか?手術のために全身麻酔をして、それがまだ解けていないだけじゃないのか?)
彼は、この考えを積極的に採用した。
なぜならば、そうでもしないと彼の神経が持たなかったからである。
そしてそこで、ようやく彼は少し落ち着きを取り戻した。
彼は、数少ない自由になる部位である眼球を、目一杯動かして周囲を見渡した。
(見たことない部屋だ。というより、なんだこの部屋は。手術室でもなければ病室でもない。普通の部屋じゃないか。いや普通の部屋じゃない。滅茶苦茶豪華な部屋だ。一流ホテルのスウィートルームかなにかか?)
彼は再び大いに混乱した。
だが、彼がどんなに頭を働かせても、現状をうまく説明できる考えは思い浮かばなかった。
すると、彼を覗き込んでいた男が、耳慣れない言語で傍らの何者かに語りかけた。
(外国語?じゃあここは外国なのか?)
もはや彼を取り巻く状況は、彼の理解を大きく逸脱していた。
(だめだ。まったく状況がわからない。頭がおかしくなりそうだ。いやそれとも、俺の頭は既におかしくなっちまってでもいるのだろうか?)
すると彼の脳裏に、さらなる疑問がよぎった。
(ちょっと待ってくれ!そんなことより俺は――)
それは彼を、さらに絶望の淵へと追い落とすものだった。
(俺は一体――誰なんだ!?)
3
「ガイウス?……ガイウス?……あら、こんなところにいたのね。目を離すとすぐにどこかへ行ってしまうんだから」
エメラーダは口では文句を言いながらも、顔には母親の慈愛に満ちた笑顔が浮かんでいる。
彼女がふと窓の外を見ると、寒風が吹き荒れていた。
エメラーダは愛息を大事そうにその豊かな胸に抱きかかえると、燃え盛る暖炉の前の繊細にして優美な作りの豪勢な揺り椅子にゆっくりと腰を下ろした。
シュナイダー家に待望の嗣子が誕生してから、早半年の月日が流れていた。
(ああ暖かい。それにしてもガイウスとはね。随分と厳めしい名前をつけてくれたもんだ)
当館の主にして赤子の父ロンバルドは、長い時間をかけて熟考した結果、愛息にガイウスと名づけていた。
その名は、およそ二百年前にシュナイダー家が窮地に陥った際、当主として才覚を発揮して見事難局をしのいだというシュナイダー家中興の祖から拝借したものであった。
現在のところシュナイダー家は順風満帆といった家勢ではあったが、いつどんなことが起きるか知れないとの思いから、ロンバルドは赤子にこの名を授けていた。
(まあいいか。どうせ元の自分の名前も覚えていないことだしな)
ガイウスは、半ば自嘲気味に思った。
この世に転生して半年が過ぎたが、いまだ彼は自らが何者であったのか思い出せてはいない。
彼には前世の記憶がまったくなく、自分が誰で、一体どんな人生を送ったのか。
彼はまったく覚えていなかった。
だが記憶とは別に、知識などはそのままだった。
そのため彼は、自らの知識を総動員して思考した。
彼自身の操る言語は、間違いなく日本語だった。
そのため自分は日本人であろうということがわかった。
次に自分の知識量から判断するに、若者ではなく壮年と呼ぶべき年齢だったのではないかと思い至った。
だが判ったことはそれくらいであった。
いや、前世について判ったのはそれくらいだったが、彼が転生したこの世界については色々と判明した。
まずこの世界は、一見すると中世ヨーロッパ風の趣があるが、よく見るとだいぶ違っていた。
材質や様式など、彼の知識にはないものがあり、明らかに別世界であると思わせた。
だが人種については、ほぼ同じであった。
言語こそは聞いたことのないものであったが、姿かたちはまったく一緒と言って差し支えなかった。
しかもこの家の住人たちは多少肌が浅黒くはあったが、黒髪に黒目と、日本人といわれても納得してしまう容貌であった。
そのため、この世界はまったくの別世界だとも思えるし、と同時にもしかすると未来の地球なのではないかとも思えた。
結局、今のところどちらが正解であるかは判断できないため、彼はこの件を保留とした。
次にシュナイダー家のことであるが、どうやらこの家は相当に裕福であろうと彼は結論づけた。
まだ全ての部屋を見たわけではなく、また材質や様式などの違いはあるが、豪華さというものには共通項があり、別世界の住人であった彼からしてもこの屋敷の作りは相当な金額がかかっていると思われた。
また、彼の今世での両親であるロンバルドとエメラーダは、何十人もの使用人たちにかしずかれる大変に恵まれた生活を日々送っていた。
(大人の知識を持って生まれ変わるなんていうのは誰もが一度は夢見ることだし、ましてやこれほどの金持ちの家に生まれ変わったんだから悪くはない。まあ悪くはないんだが、出来れば記憶を持って生まれ変わりたかったな)
ガイウスは室内を探索するために、先ほどまで散々四つんばいで歩き回っていたことで少々疲れていた。
そんな彼の様子を、エメラーダは注意深く見ていた。
「あら、ガイウスったら、お寝むかしら?」
外国の言葉であっても、半年も周囲の者の会話に耳を傾けていれば、誰でも或る程度の内容は理解できるようになる。
ガイウスは、すでにこの世界の言語をほぼ習得していた。
とはいっても発声器官はいまだ発育不足であり、まだ会話をすることは出来なかったが――
(正解。出来ればベッドに運んでもらえるとありがたい)
エメラーダは、そんなガイウスの心の声が聞こえたかのようにゆっくりと立ち上がった。
「ベッドでゆっくりおねんねしましょうね」
(これまた正解。実に気の利く母親だ。やっぱりこいつは、悪くないな)
ガイウスはベッドに横たわったわずか数秒後、あっさりと深い眠りに落ちた。
エメラーダは、そんなガイウスにおやすみのキスをしながら言った。
「どうか、良き夢を」
ヴァレンティン共和国きっての名家であるシュナイダー家の邸宅は、共和国の交易の要衝たる属州エルムールのほぼ東端にある。
広大な敷地を、成人男性の背丈の三倍はあるかという白くて高い塀で囲い、南に開いた門構えのみ漆黒に染め、見る者を威圧するかのごとき厳かな雰囲気を醸し出していた。
敷地内には多くの花や木々が美しく彩られており、四季折々に楽しめる工夫がなされている。
邸宅の前面中央にはとても大きな噴水彫刻があるのだが、これだけの物は大きさといい意匠といい、共和国内においても二つと無い代物であり、来訪者たちの羨望の対象となっていた。
そして肝心の邸宅はと言うと、地上三階立てで五十を越す部屋数を誇る邸宅、というよりは宮殿と言ったほうがふさわしいほどの威容であった。
その宮殿と見紛うばかりの邸宅内の一室で、今新たな生命が芽吹いた。
その赤子は、この館の主であると同時にいずれはヴァレンティン共和国をも背負って立つといわれる俊英ロンバルド・シュナイダーと、メリッサ大陸東部に広大な領土を持つレイダム連合王国きっての大貴族、リップシュタット侯爵家の令嬢エメラーダとの間に生を受けるという、大変に幸運な星の下に生まれた。
とても柔らかそうな純白の肌着にその身を包み、母エメラーダや使用人たちの慈愛に満ちた視線を受けながら、赤子は心地よさげに籠の中で寝ていた。
そこへ、この館の主にして赤子の父親であるロンバルドが、勢いよく室内に飛び込んできた。
「生まれたか!」
従僕の一人が、――(旦那様お静かに)――という警告の意味で、一つ大きな咳払いをした。
ロンバルドはそれに気づき、勢いよかった歩を緩め、居住まいを正してゆっくりとベッドへと近づく。
彼はベッド脇の籠の中にいる小さな命を一瞬目にして相好を崩しかけたが、すぐにベッドに横たわる妻に向き直ってまずはねぎらいの言葉をかけた。
「よくがんばったな」
妻は満面の笑みを浮かべながら、「赤ちゃんを抱いてあげて」と言った。
ロンバルドは初めてのことでもあり、どうしていいか判らず一瞬たじろいだが、意を決して赤子を抱き上げた。
そして、「かわいいものだな」と言った。
「ええ。そうね。元気な男の赤ちゃん。あなたの跡取りね」
「そうだな。それにしても我が子と思うと、たまらなく愛しく思えるのだな」
その時、赤子のまぶたがゆっくり開いた。
ロンバルドは興奮気味にそのことを妻に報告する。そして再び赤子に向き直るなり、遂に開いた我が子の吸い込まれそうなほど黒くて深い瞳を凝視した。
すると、赤子の瞳が急激に収束した。ロンバルドには、それは赤子が驚いたように思えた。
赤子は次いで怯えるような眼差しを向けたかと思うと、なにやら考え込むような目をしたように見える。
ロンバルドはその様子に驚き、だいぶ長く考え込んだ。
だが結局のところロンバルドはかぶりを振り、気のせいだと思うことにした。
そして再び妻に向き直り、「やっぱりかわいいな」と言い、相好を崩した。
2
(誰だ?こいつ)
彼が目覚めたとき、見知らぬ男が彼の瞳を覗き込んでいた。
(見たことのない顔だ。一体何者だ?)
彼はその考えを当の本人にぶつけようと声をかけようとした。
だが、出来なかった。
いや、声は出た。
だが言葉にならなかった。
彼の声帯は、うめき声とも泣き声とも判別がつかないような声しか出せず、目の前の男と意思疎通をすることは叶わなかった。
彼は大層驚き、慌てふためいた。
そしてとりあえず横たわる身体を起こして周囲を覗こうとした。
だが、その望みも叶わなかった。
彼の身体は、ほんの僅かですらも動くことはなかった。
彼はそこで、或る考えに至った。
それは、大変に恐ろしい考えであった。
その考えとは、事故かなにかに突然遭遇してしまい、身体が不自由になってしまったという絶望的なものだった。
彼は目の前が真っ暗になったような感覚に襲われ、あまりの衝撃に意識を失いかけた。
(なんてことだ!最悪だ。信じられない)
だがここで、彼はもう一つの可能性に思い至った。
(いや待てよ。これは麻酔が効いているだけじゃないのか?手術のために全身麻酔をして、それがまだ解けていないだけじゃないのか?)
彼は、この考えを積極的に採用した。
なぜならば、そうでもしないと彼の神経が持たなかったからである。
そしてそこで、ようやく彼は少し落ち着きを取り戻した。
彼は、数少ない自由になる部位である眼球を、目一杯動かして周囲を見渡した。
(見たことない部屋だ。というより、なんだこの部屋は。手術室でもなければ病室でもない。普通の部屋じゃないか。いや普通の部屋じゃない。滅茶苦茶豪華な部屋だ。一流ホテルのスウィートルームかなにかか?)
彼は再び大いに混乱した。
だが、彼がどんなに頭を働かせても、現状をうまく説明できる考えは思い浮かばなかった。
すると、彼を覗き込んでいた男が、耳慣れない言語で傍らの何者かに語りかけた。
(外国語?じゃあここは外国なのか?)
もはや彼を取り巻く状況は、彼の理解を大きく逸脱していた。
(だめだ。まったく状況がわからない。頭がおかしくなりそうだ。いやそれとも、俺の頭は既におかしくなっちまってでもいるのだろうか?)
すると彼の脳裏に、さらなる疑問がよぎった。
(ちょっと待ってくれ!そんなことより俺は――)
それは彼を、さらに絶望の淵へと追い落とすものだった。
(俺は一体――誰なんだ!?)
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「ガイウス?……ガイウス?……あら、こんなところにいたのね。目を離すとすぐにどこかへ行ってしまうんだから」
エメラーダは口では文句を言いながらも、顔には母親の慈愛に満ちた笑顔が浮かんでいる。
彼女がふと窓の外を見ると、寒風が吹き荒れていた。
エメラーダは愛息を大事そうにその豊かな胸に抱きかかえると、燃え盛る暖炉の前の繊細にして優美な作りの豪勢な揺り椅子にゆっくりと腰を下ろした。
シュナイダー家に待望の嗣子が誕生してから、早半年の月日が流れていた。
(ああ暖かい。それにしてもガイウスとはね。随分と厳めしい名前をつけてくれたもんだ)
当館の主にして赤子の父ロンバルドは、長い時間をかけて熟考した結果、愛息にガイウスと名づけていた。
その名は、およそ二百年前にシュナイダー家が窮地に陥った際、当主として才覚を発揮して見事難局をしのいだというシュナイダー家中興の祖から拝借したものであった。
現在のところシュナイダー家は順風満帆といった家勢ではあったが、いつどんなことが起きるか知れないとの思いから、ロンバルドは赤子にこの名を授けていた。
(まあいいか。どうせ元の自分の名前も覚えていないことだしな)
ガイウスは、半ば自嘲気味に思った。
この世に転生して半年が過ぎたが、いまだ彼は自らが何者であったのか思い出せてはいない。
彼には前世の記憶がまったくなく、自分が誰で、一体どんな人生を送ったのか。
彼はまったく覚えていなかった。
だが記憶とは別に、知識などはそのままだった。
そのため彼は、自らの知識を総動員して思考した。
彼自身の操る言語は、間違いなく日本語だった。
そのため自分は日本人であろうということがわかった。
次に自分の知識量から判断するに、若者ではなく壮年と呼ぶべき年齢だったのではないかと思い至った。
だが判ったことはそれくらいであった。
いや、前世について判ったのはそれくらいだったが、彼が転生したこの世界については色々と判明した。
まずこの世界は、一見すると中世ヨーロッパ風の趣があるが、よく見るとだいぶ違っていた。
材質や様式など、彼の知識にはないものがあり、明らかに別世界であると思わせた。
だが人種については、ほぼ同じであった。
言語こそは聞いたことのないものであったが、姿かたちはまったく一緒と言って差し支えなかった。
しかもこの家の住人たちは多少肌が浅黒くはあったが、黒髪に黒目と、日本人といわれても納得してしまう容貌であった。
そのため、この世界はまったくの別世界だとも思えるし、と同時にもしかすると未来の地球なのではないかとも思えた。
結局、今のところどちらが正解であるかは判断できないため、彼はこの件を保留とした。
次にシュナイダー家のことであるが、どうやらこの家は相当に裕福であろうと彼は結論づけた。
まだ全ての部屋を見たわけではなく、また材質や様式などの違いはあるが、豪華さというものには共通項があり、別世界の住人であった彼からしてもこの屋敷の作りは相当な金額がかかっていると思われた。
また、彼の今世での両親であるロンバルドとエメラーダは、何十人もの使用人たちにかしずかれる大変に恵まれた生活を日々送っていた。
(大人の知識を持って生まれ変わるなんていうのは誰もが一度は夢見ることだし、ましてやこれほどの金持ちの家に生まれ変わったんだから悪くはない。まあ悪くはないんだが、出来れば記憶を持って生まれ変わりたかったな)
ガイウスは室内を探索するために、先ほどまで散々四つんばいで歩き回っていたことで少々疲れていた。
そんな彼の様子を、エメラーダは注意深く見ていた。
「あら、ガイウスったら、お寝むかしら?」
外国の言葉であっても、半年も周囲の者の会話に耳を傾けていれば、誰でも或る程度の内容は理解できるようになる。
ガイウスは、すでにこの世界の言語をほぼ習得していた。
とはいっても発声器官はいまだ発育不足であり、まだ会話をすることは出来なかったが――
(正解。出来ればベッドに運んでもらえるとありがたい)
エメラーダは、そんなガイウスの心の声が聞こえたかのようにゆっくりと立ち上がった。
「ベッドでゆっくりおねんねしましょうね」
(これまた正解。実に気の利く母親だ。やっぱりこいつは、悪くないな)
ガイウスはベッドに横たわったわずか数秒後、あっさりと深い眠りに落ちた。
エメラーダは、そんなガイウスにおやすみのキスをしながら言った。
「どうか、良き夢を」
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