13 / 91
第十二話 男たちの正体
しおりを挟む
「ちいっ!」
ユリアの元へと必死に駆け寄るガイウスの目に、もう一人の護衛が四人の黒ずくめの男たちによって倒される姿が飛び込んできた。
そのためガイウスは魔法の有効射程距離外にもかかわらず、仕方なしにその場に立ち止まり、両手を前へと勢いよく突き出した。
「届いてくれよ、アクア!」
言うなり、ガイウスの両手から凄まじい勢いの水流が噴き出した。
それは前回暴漢を倒した時のような指先から出る細長い水流ではなく、大きなプールを満たすために巨大な排水口から噴き出す時のような、爆発的に高圧で大量の水流であった。
(これなら届くはずだ)
ガイウスは凄まじい勢いの水流を噴き出しているため、その反動で後ろに倒れそうになるのを必死に両足でしっかと大地を踏みしめて耐えつつ、その行方を願いをこめて見守った。
(当たれー!)
すると、ガイウスの心の叫びが天に通じたのか、水流は四人の敵の内もっとも手前にいた者を見事に直撃した。
「よしっ!」
ガイウスは一旦魔法を解除し、再び敵に近づくために脱兎のごとく駆け出した。
だがその途中で、敵のある異変に気付いた。
というよりも、敵の様子に変化がないことに気が付いた。
それはガイウスにとっては、とても信じられない光景だった。
なぜならガイウスの放った魔法は、確実に敵に当たったことを先ほどはっきりと確認していた。
それにもかかわらず様子に変化がないとは、どういうことか。
(まさか、あれが効いていないのか!?)
ガイウスは焦燥の色を顔に滲ませながら必死に短い足をフル回転させ、敵の一群に向かってさらに駆け寄っていく。
(だめだ!やっぱりまったく効いていない!どうやらこの前の奴らとは、レベルが違うようだな)
そうこうする内に、ようやくガイウスは有効射程距離圏内に入った。
(今度のは、さっきとは違うぞ)
ガイウスは内心で闘志を高めつつ、ゆっくりと走る速度を落としていく。
そしてしばらくしてついに立ち止まり、四人の男たちと近距離で対峙した。
「なるほどね。この前の奴らとはだいぶ雰囲気違うね」
ガイウスの言葉に、先ほど先頭で魔法を受け止めたと思われる小太りな男が応じた。
「ふん、話には聞いていたが、本当に随分と小さい子供なんだな」
「まあね。それよりあんたたち何者?どうやら只者じゃあなさそうだけど」
「さて、何者だと思うかね?」
「ダロス王国内の、どっかの貴族の回し者、ってところかな?」
ガイウスがそう言い放った途端、黒ずくめの男たちに明らかな動揺の色が見えた。
彼はその様子を見て取ると、満足げな表情を浮かべる。
そして四人の男たちを下から睥睨しつつ、さらに言葉を連ねた。
「前の連中は単に雇われただけのチンピラだったのだろうけど、あんたたちは違うね。その貴族に仕えるれっきとした武官ってところだろ?」
男たちはさらなる動揺を一瞬垣間見せたものの、次の瞬間には皆一斉に顔の表情をスッと見事に消し去った。
ガイウスはその様子も油断なく見て取り、彼らの力量を推し量る。
(やるね。こいつら、相当訓練積んでるな。たぶん……って言うかなんで俺そんなことが判るんだ?もしかして俺って、前世では自衛隊にでもいたのか?それとも警察?もしくは内閣情報調査室?)
ガイウスは自らの断片的な前世の記憶を辿ろうとしたが、今はそのような場合でないことを思い出した。
そのため彼は、再度男たちを睥睨して、言った。
「つまり、あんたらを倒して口を割らせれば、黒幕の正体が判るってわけだ」
「貴様、一体何者だ?」
ガイウスは不敵な笑みを浮かべる。
そして相手をちょっと小馬鹿にするように両手を大きく横に広げて肩をすぼめ、小首を横にちょっと傾げた。
「さて、何者だと思うかね?」
ユリアの元へと必死に駆け寄るガイウスの目に、もう一人の護衛が四人の黒ずくめの男たちによって倒される姿が飛び込んできた。
そのためガイウスは魔法の有効射程距離外にもかかわらず、仕方なしにその場に立ち止まり、両手を前へと勢いよく突き出した。
「届いてくれよ、アクア!」
言うなり、ガイウスの両手から凄まじい勢いの水流が噴き出した。
それは前回暴漢を倒した時のような指先から出る細長い水流ではなく、大きなプールを満たすために巨大な排水口から噴き出す時のような、爆発的に高圧で大量の水流であった。
(これなら届くはずだ)
ガイウスは凄まじい勢いの水流を噴き出しているため、その反動で後ろに倒れそうになるのを必死に両足でしっかと大地を踏みしめて耐えつつ、その行方を願いをこめて見守った。
(当たれー!)
すると、ガイウスの心の叫びが天に通じたのか、水流は四人の敵の内もっとも手前にいた者を見事に直撃した。
「よしっ!」
ガイウスは一旦魔法を解除し、再び敵に近づくために脱兎のごとく駆け出した。
だがその途中で、敵のある異変に気付いた。
というよりも、敵の様子に変化がないことに気が付いた。
それはガイウスにとっては、とても信じられない光景だった。
なぜならガイウスの放った魔法は、確実に敵に当たったことを先ほどはっきりと確認していた。
それにもかかわらず様子に変化がないとは、どういうことか。
(まさか、あれが効いていないのか!?)
ガイウスは焦燥の色を顔に滲ませながら必死に短い足をフル回転させ、敵の一群に向かってさらに駆け寄っていく。
(だめだ!やっぱりまったく効いていない!どうやらこの前の奴らとは、レベルが違うようだな)
そうこうする内に、ようやくガイウスは有効射程距離圏内に入った。
(今度のは、さっきとは違うぞ)
ガイウスは内心で闘志を高めつつ、ゆっくりと走る速度を落としていく。
そしてしばらくしてついに立ち止まり、四人の男たちと近距離で対峙した。
「なるほどね。この前の奴らとはだいぶ雰囲気違うね」
ガイウスの言葉に、先ほど先頭で魔法を受け止めたと思われる小太りな男が応じた。
「ふん、話には聞いていたが、本当に随分と小さい子供なんだな」
「まあね。それよりあんたたち何者?どうやら只者じゃあなさそうだけど」
「さて、何者だと思うかね?」
「ダロス王国内の、どっかの貴族の回し者、ってところかな?」
ガイウスがそう言い放った途端、黒ずくめの男たちに明らかな動揺の色が見えた。
彼はその様子を見て取ると、満足げな表情を浮かべる。
そして四人の男たちを下から睥睨しつつ、さらに言葉を連ねた。
「前の連中は単に雇われただけのチンピラだったのだろうけど、あんたたちは違うね。その貴族に仕えるれっきとした武官ってところだろ?」
男たちはさらなる動揺を一瞬垣間見せたものの、次の瞬間には皆一斉に顔の表情をスッと見事に消し去った。
ガイウスはその様子も油断なく見て取り、彼らの力量を推し量る。
(やるね。こいつら、相当訓練積んでるな。たぶん……って言うかなんで俺そんなことが判るんだ?もしかして俺って、前世では自衛隊にでもいたのか?それとも警察?もしくは内閣情報調査室?)
ガイウスは自らの断片的な前世の記憶を辿ろうとしたが、今はそのような場合でないことを思い出した。
そのため彼は、再度男たちを睥睨して、言った。
「つまり、あんたらを倒して口を割らせれば、黒幕の正体が判るってわけだ」
「貴様、一体何者だ?」
ガイウスは不敵な笑みを浮かべる。
そして相手をちょっと小馬鹿にするように両手を大きく横に広げて肩をすぼめ、小首を横にちょっと傾げた。
「さて、何者だと思うかね?」
26
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる