転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

文字の大きさ
14 / 91

第十三話 リーダー

しおりを挟む
「異常だな。先ほどの魔法といい、今の言動といい、この子はどうやら、異常なようだ」

 四人の内もっとも後ろにいた、鋭い目つきの長身の男が、静かにぼつぼつと語った。

 すると先ほど先頭でガイウスの魔法を受け止めた小太りの男が、それに反応して後ろを振り返りつつ問いかけた。

「どういう意味ですか?」

「特に深い意味はないさ。ただあまりにも普通とはかけ離れているのでな。そう言ったまでだ」

「たしかに、こいつは普通のガキじゃない」

 そこで男たちのやり取りをそれまで黙って聞いていたガイウスが、やおら話に割って入った。

「やっぱり後ろのあんたがリーダーか。まあ手前の人はリーダーって器じゃなさそうだしね」

「なんだと!?この小僧」

 小太りの男が怒気をはらませた口調でいきり立つと、リーダーと目された男がゆっくりと歩き出して小太りの男の前に一歩踏み出し、左手で男を制しつつ言った。

「推察の通り、私がリーダーだ」

「やっぱりね。ねえ、あんた名前は?おれはガイウス・シュナイダー。あんたの名前を知りたいな」

「問われて、名前を言うと思っているのか?」

「言えるでしょ?どうせ俺のことは殺す気なんだろうし、ユリアは気絶しているみたいだしね」

 ユリアはガイウスの言うとおり、意識を失って草むらに倒れ伏していた。

「貴様を殺す気はない。おとなしく眠っていてさえくれたらな」

「ふうん。本当かなあ。まあ本当なら名前を教えてくれないわけだね。でも相手は子供な訳だし、軽い気持ちでちょっと言っちゃったりしない?」

「…………」

「慎重だねえ。まあそんなだからリーダーなんだろうけどさ。そっちのあんたと違ってね」

 ガイウスは小太りの男を指差し、小馬鹿にするような口調で言った。

 しかし小太りの男はリーダーに制されたためか、先ほどの怒気を収めて冷静さを取り戻していた。

「ふん。なめたガキだ。だがもうその手には乗らん」

(ちっ。落ち着きを取り戻してやがる。あのリーダー、相当な統率力だな。となると、こりゃやっかいだぞ)

 ガイウスは改めて気を引き締め直して事に当たることとした。

「ところでさ。ユリアを誘拐してどうしようっていうの?もちろんあのクラリスって子がらみなんだろうけどさ。目的がわからないんだよなあ。ねえ、そこんところどうなの?」

「さあな。あとでゆっくり考えるがいいさ。さあ、もうおしゃべりはこれくらいにしよう」

(ちっ!やる気か。こっちの武器はアクアだけだっていうのに。しかもすでに一回見せちまってるし。こうなったら手の内を変えてみるしかないな)

 ガイウスはそう腹を決めると、敵の姿をじっと見据えた。

 それと時を同じくしてリーダーが、サッと右手を上げて男たちに合図を送る。

 男たちはその合図を見て瞬時に腰を落とし、今にも飛び掛らんという姿勢となった。

(来るっ!)

 瞬間、ガイウスは両足に力を込めて大地を強く踏みしめると同時に、左手を素早く敵に向けてかざす。

 そしていつものお決まりの文句を、早口でサッとまくし立てた。

「アクアッ!」

 ガイウスが呪文を唱えるや否や、爆流が左手から猛然と噴き出し、小太りの男を直撃する。
 
 だが男は、なにやら前面に半透明な膜のようなものを展開し、もう一人の男が後ろから身体を支えることで、ガイウスの放つ猛烈な爆流攻撃を見事に受け止めた。

「ちっ!防御壁バリアーかよっ!」

 ガイウスが呟いた次の瞬間、別の男が間隙かんげきって凄まじい速度でガイウスのふところへと飛び込んできた。

 男は背中に隠し持っていた短めの直刀ちょくとうを素早く抜き放つと、刀を水平に構え、鋭い胴払いをガイウスのがら空きのわき腹へと打ち込もうとした。

 だが次の瞬間、男の体は大きく後ろへ反り返ったかと思うと、もんどりうって草むらの上へと倒れこんだ。

「がはっ!!」

 男は肺腑はいふの中の空気をあらん限りに吐き出したかと思うと、今度は両手で喉を押さえながらこれ以上ないというくらいに口を大きく開けて、さながら餌を求める鯉の如く、必死の形相で口をパクパクと激しく動かしていた。

「貴様、一体なにをした!?」

 リーダーがうめくように声を絞り出してガイウスに問うた。

 ガイウスは不敵な笑みを浮かべ、ひどく軽い口調で答えた。

「そんなの、必殺技に決まってんじゃん」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...