転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

文字の大きさ
15 / 153

第十四話 究極のアクア

しおりを挟む
「一斉にかかるぞ。油断するなよ」

 リーダーは低いドスの効いた声でそう言うと、股を大きく開いて思い切り腰を落とした。

 他の二人も追随し、腰を深く落として身構えた。

(一斉攻撃とはいっても、完全に同時ってわけじゃない。ならばいけるはずだ)

 ガイウスもまた一斉攻撃に備え、腰を落として体勢を整えた。

「かかれっ!」

 リーダーの掛け声と共に、男たちは一斉に駆け出した。

「アクア!」
 
 ガイウスは左手をかざして、爆流を正面の小太りの男目掛けて放った。

 小太りの男はすかさず立ち止まり防御壁を自らの前面に展開するも、先ほどよりも距離を詰めていたこともあって、爆流の威力によって後ろで支える者もろとも後方に激しく吹き飛ばされた。

 だが残る二人は構わず、爆流を避けるように左右両側から猛然とガイウスへと襲い掛かる。

 ガイウスは小太りの男たちが吹き飛んだのを確認すると爆流を止め、二人の突進に対して交互に目をり、距離を測った。

(左のリーダーの方が、速い!)

 ガイウスはほんの数歩リーダーの方が先んじているのを確認すると、先ほどの必殺技を再び放つため、かざしてある左手はそのままに、右手をさりげなく自らの胸の前に持ってくると、右手の人差し指を一本突き出し、リーダーの喉元あたりに照準を合わせた。

(くらえっ!)

 ガイウスは裂帛れっぱくの気合を込めて、必殺技を放つ。

 この必殺技を、はっきりと目で捕らえられる者など、まずいない。それというのもガイウスのいう必殺技の正体とは、限界まで水流を圧縮し、目に見えないほどに細くしたレーザービームのような「究極のアクア」だったからだ。

 だがその標的たる男は、なんとそれを予期していたかのように大きく横に弾けるように飛ぶことで、見事にかわした。

(なにっ!?)

 だが彼の回避運動は非常に大きなものであり、すぐさま反撃に移れるという訳ではなかった。

 そのためガイウスは、「究極のアクア」をかわされたことにショックを受けつつも、すぐさま気持ちを切り替えて標的をもう一人の男へと移した。

 背中の直刀をすでに抜き放って迫るその男の喉元を、ガイウスは眼光鋭く捉えると、すかさず「究極のアクア」を放つ。

「ごふっ!」

 男はリーダーと違って「究極のアクア」の存在に気付いていなかったため、喉に直撃を喰らい、もんどりうって地面に倒れこんだ。

 ガイウスは男を倒したことを確認すると、すかさずリーダーへと向き直り、次弾を放とうと身構えるも、彼はすでに立ち上がって臨戦態勢を整えていたため、諦めた。

「なるほど。極限まで細く圧縮したアクアとはな。見事なものだ」

 リーダーはひどく感心した様子で言った。

「だがそれよりも驚くべきことは、貴様が無詠唱魔法の使い手であるという事だ」

 リーダーの言葉を聞き、小太りの男は飛び上がらんばかりに驚きの声を上げた。

「なっ!?無詠唱!?こんな子供がですか?」

「お前も見ていただろう?お前への攻撃のときはわざわざ大きな声で「アクア」と叫んでいたが、俺たちへの攻撃の時にはこの小僧、無言だった。つまり大声で叫んでいたのはカムフラージュだったという訳だ」

「脳内詠唱ではなく、無詠唱……こんな、こんな子供が」

「ああ、恐るべき子供だ」

 ガイウスはそこで一つ大きなため息を漏らし、次いで観念したように言った。

「ばれたか。まあしょうがないかな、何度も見せちゃったしね」

「観念したかね。ではおとなしく捕まってくれるとありがたい」

「うん?気絶させるんじゃなかったの?」

「気が変わった。貴様も連れて行くことにする」

「いやだね」

「だろうな。だが連れて行く。貴様についてわかったことが三つある」

「なんだ?」

 リーダーは不敵な笑みを浮かべる。

「まず一つ目だが、貴様はアクアしか使えんのだろう?」

 ガイウスは内心の動揺を悟られまいと必死に無表情を装いつつ言った。

「二つ目は?」

 だがリーダーは、ガイウスの表情がほんのわずか曇ったのを見逃さなかった。

「やはりな」

「なにがやはりだ。別に俺はあんたの言うことを肯定したわけじゃないぜ」

「そうか。まあいいだろう。では続けて二つ目だが」

 リーダーはそこで、ちらっと倒れ伏す仲間を見た。

 仲間は息苦しそうに喉を押さえてはいるものの、命に別状はなさそうだった。

 それを見たリーダーは、小刻みに何度もうなずきながら言った。

「二つ目は、貴様には人を殺した経験もなければ、殺す度胸もないということだ」

 これにはガイウスも、衝動的に反応してしまった。

「あるさ!別に人を殺すことなんて恐くないぜ!」

 だがガイウスは言ったそばから後悔した。

(やっちまった!こんなのどう聞いたって、ただの強がりじゃないか!)

 案の定リーダーは、大声で笑い出した。

「いや失敬。先ほどまでとあまりにも態度が違うのでな。では気を取り直して三つ目を言おう」

 リーダーはそこで一旦言葉を区切り、こぼれていた笑みを完全に消し去った。

「三つ目は、手の内が判った以上、貴様はもはや敵ではないということだ」

 ガイウスは歯軋はぎしりをしてリーダーの言葉を聞いた。

(くそっ!他に打つ手はないのか。アクアの他の使い方はないか)

「さて、それではおしゃべりはこのくらいにしよう。おい、サポートを頼む」

 リーダーは小太りの男にそう指示すると、今度は初手から背中の直刀を素早く抜き放った。

 そして刀の握りをカチャリと音を立てつつ反転させる。

「殺しはせん。とはいえかなりの痛みを伴うことになるが、それは我慢してもらおう」

 言うなり、リーダーはとてつもない速度でガイウス目掛けて突進を仕掛けた。

(くそっ!手の内が、無い!)

 ガイウスは「究極のアクア」と爆流とを交互に繰り出し必死の抵抗を試みるも、内心ではもはや観念していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

学生学園長の悪役貴族に転生したので破滅フラグ回避がてらに好き勝手に学校を魔改造にしまくったら生徒たちから好かれまくった

竜頭蛇
ファンタジー
俺はある日、何の予兆もなくゲームの悪役貴族──マウント・ボンボンに転生した。 やがて主人公に成敗されて死ぬ破滅エンドになることを思い出した俺は破滅を避けるために自分の学園長兼学生という立場をフル活用することを決意する。 それからやりたい放題しつつ、主人公のヘイトを避けているといつ間にかヒロインと学生たちからの好感度が上がり、グレートティーチャーと化していた。

処理中です...