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第二十六話 光柱
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「てめえ、なんで俺の名前がザンギだと知っていやがるんだ!?」
ガイウスに自らの本当の名前を言われた『悪魔』は、途端に怒りと疑念の入り混じった凶相となり、先程までと比べて明らかに下卑た物言いとなって叫んだ。
「ザンギだと?アスタロト公爵ではないのか?」
魔導師カリウスが呆然とした表情で呟いた。
『悪魔』は半身の体勢のまま、ギロリとカリウスを睨みつけた。
「ああそうさ、俺の名はザンギだ。なあに、久しぶりの人間界なんでね、ちょっとからかってやろうと思っただけよ。だが言っておくが、俺は低級悪魔なんかじゃねえぞ。まあ最高級とはいかないまでも、高級の部類には充分に入るんだからな」
ザンギの言い分を聞いて、ガイウスが大声で笑い出した。
「よく言うぜ。なにが高級だよ。せいぜい中級がいいところのくせによ」
ガイウスの嘲りの言葉に、ザンギは激昂した。
「だからてめえは一体何者なんだよ!!俺は、お前みたいな奴に会ったことなんてねえぞ!!」
ガイウスは、軽く小首を傾げた。
「ん~、まっ、それは置いといて~」
「ふざけるな!置いておけるものか!」
「いや~、実は俺もよく判らないんだよねえ~。とっさに口をついて出ちゃっただけなんだよ~」
「ふざけたことばかり言いやがって!ぶっ殺してやる!!」
ザンギは巨体を揺るがし、凶悪な面相でガイウスに詰め寄る。
だが対するガイウスは、まったく恐れる素振りも見せず、余裕の笑みをこぼしている。
「それは困るな。それに、お前の相手は俺じゃないんだ」
ガイウスがそう告げた瞬間、大広間の高い天井にポツッと一つ小さな穴が開き、一条の光が差し込んだ。
光はザンギの頭頂部を煌々と明るく照らしたかと思うと、次第にその数が増えていき、瞬く間に幾条もの光のシャワーとなってザンギの全身を包み込んだ。
「な、なんだこの光は!?」
ザンギが不審げにそう言った瞬間、凄まじい轟音と共に天井が粉々に吹き飛び、と同時に光のシャワーが収束して一本の巨大な光柱となって襲い掛かった。
「ぐっ!ぎっ!ぐうう……」
ザンギは、声にならないうめき声を上げた。
だが光柱は、さらにその輝きを増してザンギに降り注ぐ。
ザンギはついに光柱の圧力に負け、膝を屈して床にへたり込んだ。
これまで事態の成り行きをおとなしく見ていたジェイドは、光に包まれたザンギを凝視し、その体表面に現れた異変を発見する。
「なんだ?皮膚が、溶けているのか?」
ジェイドの言うとおり、ザンギの体表面では無数の気泡が浮かび上がっては弾け飛ぶという現象が繰り返し起こっていた。
それは皮膚全体を焼け爛れたような状態とし、ついにはその気泡が集積して塊となって床にぼとぼとと落ち始めた。
そして、もはや苦しそうな表情すら作れぬほどに皮膚という皮膚は流れ落ち、全身の筋肉があらわとなった。だがそれでは終わらず、ついにはその筋肉ですら床に流れ落ちて、内から白い骨が浮き彫りとなった。
光柱は、最後の仕上げとばかりに、そこでさらに輝度を増した。
その輝きはあまりにも凄まじいものであったため、誰の目にもザンギの姿は白く見えなくなった。
「す、凄い光だ!みな目をつぶれ!」
ジェイドは言うなり、すぐさま両腕でもって自らの顔を厳重に覆い隠して顔を背けた。
他の者らも皆一斉に顔を覆い、顔を後ろに向けて光から逃れた。
しばしの時が流れ、ジェイドが恐る恐る両腕の隙間から覗き込むと、そこには断末魔の叫びすら上げられずに消滅したザンギの亡骸と思しき残骸と、悠然と佇むガイウスの姿があった。
ガイウスに自らの本当の名前を言われた『悪魔』は、途端に怒りと疑念の入り混じった凶相となり、先程までと比べて明らかに下卑た物言いとなって叫んだ。
「ザンギだと?アスタロト公爵ではないのか?」
魔導師カリウスが呆然とした表情で呟いた。
『悪魔』は半身の体勢のまま、ギロリとカリウスを睨みつけた。
「ああそうさ、俺の名はザンギだ。なあに、久しぶりの人間界なんでね、ちょっとからかってやろうと思っただけよ。だが言っておくが、俺は低級悪魔なんかじゃねえぞ。まあ最高級とはいかないまでも、高級の部類には充分に入るんだからな」
ザンギの言い分を聞いて、ガイウスが大声で笑い出した。
「よく言うぜ。なにが高級だよ。せいぜい中級がいいところのくせによ」
ガイウスの嘲りの言葉に、ザンギは激昂した。
「だからてめえは一体何者なんだよ!!俺は、お前みたいな奴に会ったことなんてねえぞ!!」
ガイウスは、軽く小首を傾げた。
「ん~、まっ、それは置いといて~」
「ふざけるな!置いておけるものか!」
「いや~、実は俺もよく判らないんだよねえ~。とっさに口をついて出ちゃっただけなんだよ~」
「ふざけたことばかり言いやがって!ぶっ殺してやる!!」
ザンギは巨体を揺るがし、凶悪な面相でガイウスに詰め寄る。
だが対するガイウスは、まったく恐れる素振りも見せず、余裕の笑みをこぼしている。
「それは困るな。それに、お前の相手は俺じゃないんだ」
ガイウスがそう告げた瞬間、大広間の高い天井にポツッと一つ小さな穴が開き、一条の光が差し込んだ。
光はザンギの頭頂部を煌々と明るく照らしたかと思うと、次第にその数が増えていき、瞬く間に幾条もの光のシャワーとなってザンギの全身を包み込んだ。
「な、なんだこの光は!?」
ザンギが不審げにそう言った瞬間、凄まじい轟音と共に天井が粉々に吹き飛び、と同時に光のシャワーが収束して一本の巨大な光柱となって襲い掛かった。
「ぐっ!ぎっ!ぐうう……」
ザンギは、声にならないうめき声を上げた。
だが光柱は、さらにその輝きを増してザンギに降り注ぐ。
ザンギはついに光柱の圧力に負け、膝を屈して床にへたり込んだ。
これまで事態の成り行きをおとなしく見ていたジェイドは、光に包まれたザンギを凝視し、その体表面に現れた異変を発見する。
「なんだ?皮膚が、溶けているのか?」
ジェイドの言うとおり、ザンギの体表面では無数の気泡が浮かび上がっては弾け飛ぶという現象が繰り返し起こっていた。
それは皮膚全体を焼け爛れたような状態とし、ついにはその気泡が集積して塊となって床にぼとぼとと落ち始めた。
そして、もはや苦しそうな表情すら作れぬほどに皮膚という皮膚は流れ落ち、全身の筋肉があらわとなった。だがそれでは終わらず、ついにはその筋肉ですら床に流れ落ちて、内から白い骨が浮き彫りとなった。
光柱は、最後の仕上げとばかりに、そこでさらに輝度を増した。
その輝きはあまりにも凄まじいものであったため、誰の目にもザンギの姿は白く見えなくなった。
「す、凄い光だ!みな目をつぶれ!」
ジェイドは言うなり、すぐさま両腕でもって自らの顔を厳重に覆い隠して顔を背けた。
他の者らも皆一斉に顔を覆い、顔を後ろに向けて光から逃れた。
しばしの時が流れ、ジェイドが恐る恐る両腕の隙間から覗き込むと、そこには断末魔の叫びすら上げられずに消滅したザンギの亡骸と思しき残骸と、悠然と佇むガイウスの姿があった。
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