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第四十一話 開宴
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1
「おい貴様ら!レイダムの援軍が、今にもここエスタに到着しつつあると言うのに、我が国の援軍はいまだ影も形も見えないとはどういうわけだ!」
ローエングリン教皇国第七軍団軍団長バルク・ゴルコス将軍の怒声が、本陣幕舎内に鳴り響いた。
でっぷりと肥え太った体躯の上に、ガマガエルのような顔が乗っているという特異な容姿の上、声まで同じような濁声で怒鳴り散らしているため、本陣幕舎内の不快指数は極めて高い数値を弾き出しており、御付の近衛兵や給仕役の少年兵たちの顔にはうんざりとした表情が浮かんでいた。
しかし、将軍の傍らにいるレノンのみは一人涼しい顔つきで、将軍のお説ごもっともといった風情で、目を閉じながらうなずきつつ聞いていた。
だがそんなレノンには一切構わず、ゴルコスは怒りの独演会を続ける。
「まったく、なにを考えておるのだ教皇庁の者どもは!レイダム軍は休暇中の二軍団を緊急招集してここエスタに向けて進軍しておるというではないか!今エスタ東岸に布陣しておる奴らと合わせれば、三軍団だぞ!それを我が第七軍団だけで迎え撃てと言うつもりなのか、奴らは!」
そこで一息ついたゴルコスの間隙をぬって、すかさずレノンが神妙な顔つきで発言した。
「さても面妖なことでございます。わたくし将軍閣下の命を受け、再三再四首都オーディーンへ援軍要請を致しておりますが、いまだ返事は、梨の礫でございます。我が軍は常に四軍団が休息しておりますれば、全四軍団とは言わないまでも、せめてレイダム同様二軍団は緊急招集の上、援軍として派遣していただかなくてはここエスタの地を守ることなど到底出来ませぬのに」
「当然だ!三軍団を相手に一軍団のみで戦うなど、正気の沙汰ではない!一万五千対五千だぞ!さすがのわしでもどうにも出来ん!こんなことはそこらで洟を垂らしておる童でも分かるようなことだというのに、何故それが首都の連中には分からんのだ!」
するとそこへ、急使が飛び込んできた。
「ただ今、エスタ東岸に大きな砂塵が巻き上がっております!おそらくレイダムの援軍が到着したと思われます!」
「なんだと!」
ゴルコスは叫ぶなり、巨体を揺すってあわてて幕舎の外に出た。そして背後からレノンが差し出した遠眼鏡を構えて、エスタ東岸を覗き見た。
「なんということだ!レイダムの奴ら、なんと早い!早すぎるぞ!それに比べて我が軍は……レノンよ!今一度援軍要請を!いやお前自身が出向け!そして必ず援軍を引き連れてまいれ!よいな!」
「はっ!将軍閣下のご命令、確かにこのレノンが承りました。必ずや援軍を引き連れて参りますゆえ、どうかそれまでご辛抱を」
そう言って深々と頭を下げたレノンの顔には、恐ろしく引き歪んだ笑顔が張り付いていた。
2
「レイダムの援軍が到着したか」
ロンバルドは、エスタ南岸の監視団本部にそびえ立つ見張り塔から遠く川向こうの東岸を眺めつつ、深く嘆息した。
傍らのシェスターは先程から右手を軽く握って口元にあて、伏し目がちに沈思黙考していたが、ロンバルドの言葉に反応してようやく重い口を開いた。
「ええ、そのようです。ですが、それに対してローエングリンはいまだ援軍が現れておりません。これは一体どういうことでしょうか?今回の一件を仕組んだのがローエングリン側だとすれば、真っ先に援軍が到着するのは、ローエングリン軍のはずです。しかし一向にその姿を見せず、先にレイダム軍が到着するとは……」
「仕組んだのがレノンなのか、教皇なのか、はたまた別の誰かなのかは判らぬが、ローエングリン側であることは間違いないと思ったのだが。いずれにしても、このままでは三対一だ。よほどのことがない限り、レイダム連合王国側が苦もなく勝利するだろう。ローエングリン教皇国側になにか不測の事態でも起きたということなのだろうか……」
「もしくはなにか秘策でもあるのか」
「秘策か。どんな秘策が考えられると思う?」
「皆目、見当も付きませんね。三対一の状況を覆すなんてのは、そう簡単に出来っこないですからね」
「そうだな。戦争の優劣は、ほとんど数で決まると言っていい。稀に優れた戦術家の奇策で覆ることはあるが、そんなことはあくまで稀にしか起こらない。大概、大軍は寡兵に勝るものだ」
そこでシェスターは何かを思いついたのか、一瞬ハッとした表情を浮かべ、次いでなぜか苦笑をしつつロンバルドに問いかけた。
「それでは、魔導師はどうですか?魔法士の場合は、幾ら熟練の手練れであっても精々百人力というところですが、魔導師ならば千人力位の力を持つものがいると聞いていますが?」
シェスターの問いかけに、ロンバルドもなぜか少し気まずそうに答えた。
「まあそうだが、それでも千人力だろう?一万の兵力差を覆せるものではないさ。それがいかに伝説級の大魔導師であったとしてもだ」
「確かに。さすがにどのような大魔導師であっても、一万の差はいかんともしがたいですね。しかし、それではローエングリンの秘策がいかなるものなのか、それともなにか不測の事態でも起きたのか、ふたを開けてみるまでは分かりませんね」
「残念ながらそのようだな。こうなっては、事態の推移を見守るしかない」
ロンバルドは視線をシェスターから再び見張り塔の窓に移し、眼下に広がる到着したばかりのレイダムの援軍が陣形を整えつつある様を見て、また一つ嘆息した。
3
緊急の援軍要請のため、首都オーディーンへ向かって陣を発ったはずのレノンが、エスタよりわずか一Kほど西にある小高い丘の上から悠長にエスタを眺めていた。
【注】一キルクルはおよそ一キロメートル
「そろそろ頃合いだな、カルミスよ」
すると突然、レノンの右肩辺りの空間が蜃気楼のように揺らめいた。
そしてゆらゆらと揺れるその何もない空間から、姿なき声が応えた。
「それでは計画を、発動いたします」
レノンは満足そうにうなずいた。
「楽しみにしているぞ」
「それではこれにて……」
空間の揺らめきは徐々に収束していき、終いにはただの空間へと戻った。
「楽しみだな。実に楽しみなことだ。シュナイダーも、ゴルコスも、レイダムの奴らも皆……」
レノンは軽く舌なめずりをして、ほくそ笑んだ。
しかしその笑みは次第に小さな笑い声となり、次いでその声は徐々に大きくなっていくと、遂には高らかな哄笑となった。
4
「うん?あれはなんだ?霧なのか?」
ロンバルドたちはレノンの動向を探ろうと、ローエングリンの陣営前に来ていた。
そこで西の方角から迫り来る、真っ白な霧のようなものを遠くに発見した。
それは大変広範囲に広がっており、渦を巻きながら非常に早い速度でローエングリン陣に迫ってきていた。
「違う!これは、魔法だ!」
ロンバルドが叫んだのもつかの間、瞬く間にそれはローエングリン陣を白く包み込み、さらにアルターテ川の上を滑って、対岸のレイダム軍までを覆い尽くした。
「魔法!これがですか?」
手を伸ばせば届く距離にいるはずのロンバルドが、ぼんやりとしか見えないくらいの濃い霧の中で、シェスターが叫んだ。
「そうだ。前に一度見たことがある。これは、魔法で作り出された霧だ!」
「もしや毒霧じゃないでしょうね?」
「それは大丈夫だ。身体に害はない、と思う」
「と思う、じゃ困るんですがね。でもどうやら大丈夫みたいですね。問題なく呼吸できてますし」
「どうやらそのようだ」
するとシェスターが、はっとした顔をして気づいた。
「そういえば軍事衝突が起こった当日は、とても深い霧に包まれていたと言っていませんでしたか?もしやあの日の濃霧も――」
「恐らくそうだろう。ならば、この後何かが起きるはずだ!」
「ええ。そうなるでしょうね。しかし一体、なにが起きるのか」
ロンバルドたちは濃霧の中で、十分ほどのじりじりとした時間を過ごした。
すると、にわかに視界が開けてきた。
「うん?霧が薄くなってませんか?」
「そのようだ。まったく、一体なにがしたいんだか」
その時、アルターテ川を挟んだ東岸のレイダム陣から、突然幾条もの眩い光線が天に向かって立ち昇った。
初めは十本ほどの光線だったが、時間がたつにつれ本数を増し、いつの間にやら巨大な光の球体となってエスタ全体を包み込んだ。
当然、ロンバルドたちも眩い光の真っ只中にいた。
「今度は光か!一体なんなんだ!全く見えん!いるのかシェスター?」
「ここにいます。と言っても、見えないでしょうがね」
「こんな時にも落ち着いているとは、大したものだ。さすがだな」
「いやいや、これでも内心かなり動揺していますよ。こんな光は初めて見ましたからね。先程の霧同様に、この光も魔法で生み出されたものですかね?」
「わからん。だがどうやらこの光も霧と同様、身体に害はなさそうだ」
「本当になにがしたいんですかね。ああ、どうやらこの光も消えそうですよ」
シェスターの言葉通り、光は次第に勢いを失っていった。そして完全に失われていた視界が徐々に戻ってきた。
すると対岸の光が発生した付近から、突如として悲鳴が上がった。
悲鳴は初め数人が上げたものであったが、すぐに十人二十人と増えていき、瞬く間に百人二百人と連鎖的に増えていった。
そして遂には、阿鼻叫喚と表現するにふさわしい物凄い数の男たちの悲鳴でエスタは包まれた。
ロンバルドたちは慌てて東岸を振り向き、そして『それ』を見た。
次の瞬間、『それ』は途轍もない大音声で天に向かい、突然啼いた。
それは、聞く者全ての心胆を寒からしめる啼声であった。
ロンバルドは恐怖で打ち震えながらも必死で声を絞り出し、ようやく『それ』の名前を口にした。
「千年竜!」
今エスタで、恐怖の宴の幕が、切って落とされようとしていた。
「おい貴様ら!レイダムの援軍が、今にもここエスタに到着しつつあると言うのに、我が国の援軍はいまだ影も形も見えないとはどういうわけだ!」
ローエングリン教皇国第七軍団軍団長バルク・ゴルコス将軍の怒声が、本陣幕舎内に鳴り響いた。
でっぷりと肥え太った体躯の上に、ガマガエルのような顔が乗っているという特異な容姿の上、声まで同じような濁声で怒鳴り散らしているため、本陣幕舎内の不快指数は極めて高い数値を弾き出しており、御付の近衛兵や給仕役の少年兵たちの顔にはうんざりとした表情が浮かんでいた。
しかし、将軍の傍らにいるレノンのみは一人涼しい顔つきで、将軍のお説ごもっともといった風情で、目を閉じながらうなずきつつ聞いていた。
だがそんなレノンには一切構わず、ゴルコスは怒りの独演会を続ける。
「まったく、なにを考えておるのだ教皇庁の者どもは!レイダム軍は休暇中の二軍団を緊急招集してここエスタに向けて進軍しておるというではないか!今エスタ東岸に布陣しておる奴らと合わせれば、三軍団だぞ!それを我が第七軍団だけで迎え撃てと言うつもりなのか、奴らは!」
そこで一息ついたゴルコスの間隙をぬって、すかさずレノンが神妙な顔つきで発言した。
「さても面妖なことでございます。わたくし将軍閣下の命を受け、再三再四首都オーディーンへ援軍要請を致しておりますが、いまだ返事は、梨の礫でございます。我が軍は常に四軍団が休息しておりますれば、全四軍団とは言わないまでも、せめてレイダム同様二軍団は緊急招集の上、援軍として派遣していただかなくてはここエスタの地を守ることなど到底出来ませぬのに」
「当然だ!三軍団を相手に一軍団のみで戦うなど、正気の沙汰ではない!一万五千対五千だぞ!さすがのわしでもどうにも出来ん!こんなことはそこらで洟を垂らしておる童でも分かるようなことだというのに、何故それが首都の連中には分からんのだ!」
するとそこへ、急使が飛び込んできた。
「ただ今、エスタ東岸に大きな砂塵が巻き上がっております!おそらくレイダムの援軍が到着したと思われます!」
「なんだと!」
ゴルコスは叫ぶなり、巨体を揺すってあわてて幕舎の外に出た。そして背後からレノンが差し出した遠眼鏡を構えて、エスタ東岸を覗き見た。
「なんということだ!レイダムの奴ら、なんと早い!早すぎるぞ!それに比べて我が軍は……レノンよ!今一度援軍要請を!いやお前自身が出向け!そして必ず援軍を引き連れてまいれ!よいな!」
「はっ!将軍閣下のご命令、確かにこのレノンが承りました。必ずや援軍を引き連れて参りますゆえ、どうかそれまでご辛抱を」
そう言って深々と頭を下げたレノンの顔には、恐ろしく引き歪んだ笑顔が張り付いていた。
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「レイダムの援軍が到着したか」
ロンバルドは、エスタ南岸の監視団本部にそびえ立つ見張り塔から遠く川向こうの東岸を眺めつつ、深く嘆息した。
傍らのシェスターは先程から右手を軽く握って口元にあて、伏し目がちに沈思黙考していたが、ロンバルドの言葉に反応してようやく重い口を開いた。
「ええ、そのようです。ですが、それに対してローエングリンはいまだ援軍が現れておりません。これは一体どういうことでしょうか?今回の一件を仕組んだのがローエングリン側だとすれば、真っ先に援軍が到着するのは、ローエングリン軍のはずです。しかし一向にその姿を見せず、先にレイダム軍が到着するとは……」
「仕組んだのがレノンなのか、教皇なのか、はたまた別の誰かなのかは判らぬが、ローエングリン側であることは間違いないと思ったのだが。いずれにしても、このままでは三対一だ。よほどのことがない限り、レイダム連合王国側が苦もなく勝利するだろう。ローエングリン教皇国側になにか不測の事態でも起きたということなのだろうか……」
「もしくはなにか秘策でもあるのか」
「秘策か。どんな秘策が考えられると思う?」
「皆目、見当も付きませんね。三対一の状況を覆すなんてのは、そう簡単に出来っこないですからね」
「そうだな。戦争の優劣は、ほとんど数で決まると言っていい。稀に優れた戦術家の奇策で覆ることはあるが、そんなことはあくまで稀にしか起こらない。大概、大軍は寡兵に勝るものだ」
そこでシェスターは何かを思いついたのか、一瞬ハッとした表情を浮かべ、次いでなぜか苦笑をしつつロンバルドに問いかけた。
「それでは、魔導師はどうですか?魔法士の場合は、幾ら熟練の手練れであっても精々百人力というところですが、魔導師ならば千人力位の力を持つものがいると聞いていますが?」
シェスターの問いかけに、ロンバルドもなぜか少し気まずそうに答えた。
「まあそうだが、それでも千人力だろう?一万の兵力差を覆せるものではないさ。それがいかに伝説級の大魔導師であったとしてもだ」
「確かに。さすがにどのような大魔導師であっても、一万の差はいかんともしがたいですね。しかし、それではローエングリンの秘策がいかなるものなのか、それともなにか不測の事態でも起きたのか、ふたを開けてみるまでは分かりませんね」
「残念ながらそのようだな。こうなっては、事態の推移を見守るしかない」
ロンバルドは視線をシェスターから再び見張り塔の窓に移し、眼下に広がる到着したばかりのレイダムの援軍が陣形を整えつつある様を見て、また一つ嘆息した。
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緊急の援軍要請のため、首都オーディーンへ向かって陣を発ったはずのレノンが、エスタよりわずか一Kほど西にある小高い丘の上から悠長にエスタを眺めていた。
【注】一キルクルはおよそ一キロメートル
「そろそろ頃合いだな、カルミスよ」
すると突然、レノンの右肩辺りの空間が蜃気楼のように揺らめいた。
そしてゆらゆらと揺れるその何もない空間から、姿なき声が応えた。
「それでは計画を、発動いたします」
レノンは満足そうにうなずいた。
「楽しみにしているぞ」
「それではこれにて……」
空間の揺らめきは徐々に収束していき、終いにはただの空間へと戻った。
「楽しみだな。実に楽しみなことだ。シュナイダーも、ゴルコスも、レイダムの奴らも皆……」
レノンは軽く舌なめずりをして、ほくそ笑んだ。
しかしその笑みは次第に小さな笑い声となり、次いでその声は徐々に大きくなっていくと、遂には高らかな哄笑となった。
4
「うん?あれはなんだ?霧なのか?」
ロンバルドたちはレノンの動向を探ろうと、ローエングリンの陣営前に来ていた。
そこで西の方角から迫り来る、真っ白な霧のようなものを遠くに発見した。
それは大変広範囲に広がっており、渦を巻きながら非常に早い速度でローエングリン陣に迫ってきていた。
「違う!これは、魔法だ!」
ロンバルドが叫んだのもつかの間、瞬く間にそれはローエングリン陣を白く包み込み、さらにアルターテ川の上を滑って、対岸のレイダム軍までを覆い尽くした。
「魔法!これがですか?」
手を伸ばせば届く距離にいるはずのロンバルドが、ぼんやりとしか見えないくらいの濃い霧の中で、シェスターが叫んだ。
「そうだ。前に一度見たことがある。これは、魔法で作り出された霧だ!」
「もしや毒霧じゃないでしょうね?」
「それは大丈夫だ。身体に害はない、と思う」
「と思う、じゃ困るんですがね。でもどうやら大丈夫みたいですね。問題なく呼吸できてますし」
「どうやらそのようだ」
するとシェスターが、はっとした顔をして気づいた。
「そういえば軍事衝突が起こった当日は、とても深い霧に包まれていたと言っていませんでしたか?もしやあの日の濃霧も――」
「恐らくそうだろう。ならば、この後何かが起きるはずだ!」
「ええ。そうなるでしょうね。しかし一体、なにが起きるのか」
ロンバルドたちは濃霧の中で、十分ほどのじりじりとした時間を過ごした。
すると、にわかに視界が開けてきた。
「うん?霧が薄くなってませんか?」
「そのようだ。まったく、一体なにがしたいんだか」
その時、アルターテ川を挟んだ東岸のレイダム陣から、突然幾条もの眩い光線が天に向かって立ち昇った。
初めは十本ほどの光線だったが、時間がたつにつれ本数を増し、いつの間にやら巨大な光の球体となってエスタ全体を包み込んだ。
当然、ロンバルドたちも眩い光の真っ只中にいた。
「今度は光か!一体なんなんだ!全く見えん!いるのかシェスター?」
「ここにいます。と言っても、見えないでしょうがね」
「こんな時にも落ち着いているとは、大したものだ。さすがだな」
「いやいや、これでも内心かなり動揺していますよ。こんな光は初めて見ましたからね。先程の霧同様に、この光も魔法で生み出されたものですかね?」
「わからん。だがどうやらこの光も霧と同様、身体に害はなさそうだ」
「本当になにがしたいんですかね。ああ、どうやらこの光も消えそうですよ」
シェスターの言葉通り、光は次第に勢いを失っていった。そして完全に失われていた視界が徐々に戻ってきた。
すると対岸の光が発生した付近から、突如として悲鳴が上がった。
悲鳴は初め数人が上げたものであったが、すぐに十人二十人と増えていき、瞬く間に百人二百人と連鎖的に増えていった。
そして遂には、阿鼻叫喚と表現するにふさわしい物凄い数の男たちの悲鳴でエスタは包まれた。
ロンバルドたちは慌てて東岸を振り向き、そして『それ』を見た。
次の瞬間、『それ』は途轍もない大音声で天に向かい、突然啼いた。
それは、聞く者全ての心胆を寒からしめる啼声であった。
ロンバルドは恐怖で打ち震えながらも必死で声を絞り出し、ようやく『それ』の名前を口にした。
「千年竜!」
今エスタで、恐怖の宴の幕が、切って落とされようとしていた。
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