転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第六十九話 前世の記憶

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 1


「さすがに、それはないと思うがねえ」

 カルラはひどく険しい顔つきとなって言った。

 ガイウスは半ば思いつきで言ったこととはいえ、案外当たっているかも知れないと、なにやら漠然と感じていた。

「その処分した十三冊は、間違いなく本物の偽書だったの?」

「本物の偽書っていうのも変な感じだがね、間違いなくプロメテウスが作ったものだったよ」

「ねえ、どうして間違いないって確信がもてるの?」

「さっきも言ったがね、偽書には魔力が封じ込められているんだよ。で、その魔力には個々の術者ごとの色ってもんがあってね。だから間違えることはないのさ。あの時処分した十三冊には、全てプロメテウスの色がくっきりとついていたんだからね」

「じゃあ、ザンギと一緒に燃えちゃった偽書も?」

「ああ、プロメテウスの色だったよ」

「ということは、プロメテウスが生きているかどうかはともかくとして、後十二冊あるってことにならない?」

「残念だがそうなるね」

「残りの十二冊、シグナスが持っていると思う?」

「おそらくは、な」

 カルラはそう言うと、窓の外を眺めてなにやら遠い目をした。

 ガイウスはその姿を見て、テーベの美しい町並みを眺めているのか、それとも過去の遠い記憶を呼び覚ましているのかと考えたものの、聞いたところで答えないだろうと思い、聞くのをやめた。


 2


 しばらくすると、ホテルの手配を済ませたロデムルが戻ってきた。

「では、一旦宿で腰を落ち着けるとしようかね」

 カルラはそう言うと、ずいぶんと重そうに腰を上げた。

 その様子を見てガイウスは、寝ているアベルを優しく起こした。

 アベルは眠い目をこすり、ボーッとした表情を見せるも、ガイウスに手を引かれておとなしく階下へと向かった。

 ロデムルはすでに階下において食事の会計を済ませていたため、一番最後に階段を下りた。

 途中、ガイウスは後ろを歩くロデムルに向かって声をかけた。

「ねえ、どんなホテル?」

「このレストラン同様、瀟洒な佇まいのホテルでございます。大変清潔ですし、部屋の造りもなかなか豪奢でございました。坊ちゃまのお気に召すといいのですが」

 ロデムルの恐縮した物言いに、ガイウスは破顔一笑した。

「僕は汚くってもたいがい大丈夫だよ。だって僕の部屋なんて年中散らかっていて、足の踏み場もないくらいだしね」

 するとロデムルが、怪訝な表情を浮かべた。

「あの、お部屋の掃除が行き届いておりませんでしたでしょうか?」

 ロデムルの反応を見て、ガイウスはようやく自分が口を滑らせてしまったことに気付いた。

(まずった!今のは完全に前世の記憶だ。ここはとにかく誤魔化さないと)

「い、いやそんなことはないよ!冗談、冗談だよ。そんなの冗談に決まっているじゃないか。やだなあ」

 ガイウスは慌てて誤魔化し、自らの発言を必死で打ち消そうとした。

 するとその様子を階下から眺めていたカルラが、鼻でせせら笑った。

「ふふん。馬鹿だねえ」

 ガイウスは頬を引きつらせつつ、ただ黙ってカルラの横を通り過ぎた。
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