転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第七十話 痕跡

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 1


「良い感じのホテルだね」

 ガイウスは、木目を基調とした落ち着いた色合いの部屋に入ると、一目で気に入った。

 するとアベルがその脇をすり抜け、ベッドへ一目散に駆け寄り、ダイブした。

「すっごい、ふかふかだ~」

 アベルは純白の掛け布団に顔をうずめながら、気持ちよさそうに言った。

「では坊ちゃま、こちらの部屋でよろしいでしょうか?」

「うん。僕はアベルとこの部屋に泊まることにするよ」

 ガイウスはロデムルにそう返事をすると、カルラがすかさず割り込んできた。

「なに言ってんだい。お前はあたしと同部屋だよ。何せ修行はまだ終わっちゃいないんだからね」

 ガイウスはくるっと反転してカルラに背を向けるなり、ひどくうんざりした表情となった。

 ロデムルは、そんなガイウスに対して同情を禁じえないではなかったが、カルラに対して逆らうわけもなかった。

「それでは坊ちゃま、わたくしはアベルと隣の部屋に参りますが、御用の際は何なりとお申し付けください」

 ロデムルはそう言うと、アベルを促して隣室へ静かに移っていった。

 ガイウスは名残惜しそうに手を振るアベルに、ドアが閉まるまで笑顔で手を振り返し、ドアが閉まったことを確認すると同時に、カルラに向き直った。

「まあ、まだ覚えていない魔法もあるし、これでいいや」

「ふん。それもそうだが、それよりもお前さんが取り逃がしたシグナスを、今後どう追いかけるかが肝心だよ。話に夢中で逃げられるなんざ、つくづく情けない男だねえ、まったく!」

 ガイウスはシグナス逃走の件をぶり返され、再び後ろを振り返り、うんざりした顔をした。


 2


「見事なもんだね。痕跡となりそうなもんは、きれいさっぱりなくなってるよ」

 翌日、ガイウスはカルラと共にシグナスが先ほどまで住んでいた家を探り当て、非合法な方法で侵入することに成功していた。

 だがその部屋の中は、一切の家財道具のない空き室のような状態となっていた。

「これは魔法で運び去ったのかな?」

「そうだろうね。一箇所に集めた物を一旦次元の狭間に落としておいて、後で別の場所で開いて取り出すという特殊高級魔法があるからねえ。おそらくそれを使ったんだろうが、元々大して物を置いていなかったんじゃないかねえ。この部屋には、あまりにも生活臭といったものが無さ過ぎる」

「確かに、物をきれいに運び去ったといっても、そこで生活をしていたら普通それなりに痕跡は残るもんだからね」

「こいつは実にシグナスらしいね。あいつは昔から、いるんだかいないんだか判らないような奴でね。とにかく自分の存在を、消そう消そうとする奴だったんだよ」

「カルラと真逆だね」

「はんっ!あたしゃ別に自己主張してる訳じゃないさ。ただお前たちがだらしが無いだけじゃないか!」

 カルラは一息にそこまで言うと一拍置き、ため息混じりに呟くように言った。

「それにしても、これは困ったことになったねえ。これじゃあ後を追おうにも、方策が立たないじゃないか」

 カルラはお手上げといった様子で、あきらめの表情を浮かべた。

 するとガイウスが、突然なにやらパッと明るい顔つきとなって言った。

「そうだ!ならシグナスの捜索は後回しにして、先にアベルを彼の村まで送っていってあげようよ」
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