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第百二話 古代タミール族
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1
「ロンバルドと、その部下のシェスターも知っておるぞ」
「シェスター……」
ガイウスは、何度かこの屋敷を訪れたことのあるシェスターの顔を思い浮かべた。
「うむ、色々あってな。エデンの森で出会ったのじゃ」
ガイウスはそこで、幼少期に読んだことのあるメリッサ大陸に伝わるおとぎ話に出てくる一説を思い出した。
「エデンの森?あっ!じゃあエル様って、もしかしておとぎ話に出てくるあの黒猫!?」
「ロンバルドの奴は神話じゃと言うておったが、今度はおとぎ話か。まあ別にどっちでもよいが、わしがそのエル様じゃ!」
「あれ、おとぎ話じゃなかったのか。と言うことは、エデンの森も実在する!?」
「さっきもそう言うたであろう。ロンバルドたちとは、エデンで出会ったのじゃと」
「なんでまた、そんなところで」
「じゃから、色々とあったと言うておろう。千年竜が現れて大暴れしたり――」
ガイウスは反射的に大声を上げた。
「せ、千年竜!?せ、千年竜も実在するの!?」
ガイウスの息せき切った質問に、エルは大きくかぶりを振り、やれやれといった仕草を見せた。
「面倒じゃが、一から説明してやろう。そのかわり、お前も包み隠さずこのわしに話せよ?」
エルはそう言うと、ロンバルドたちと遭遇した事件について、滔々と語り始めた。
2
ロンバルドたちは千年竜の暴虐から逃れるため、アルターテ川を渡って西へと逃れた。
エスタの西岸、ローエングリン教皇国側には、茫漠とした草原地帯が果てしなく広がっている。
この地は、かつてこの辺り一帯から勃興し、ついにメリッサ大陸の半分をその支配下に治めたという古代民族タミールからその名をとり、タミール草原と呼ばれている。
かつて、と言うのは現在この地を領しているのが無論ローエングリン教皇国であり、古代タミール族ではないからである。
では古代タミール族は、どうなってしまったのか?
その答えを知る者は、誰一人としていなかった。
なぜならば、古代タミール族はローエングリンに滅ぼされた訳ではなく、彼の国が勃興するその遥か以前に、忽然と歴史からその姿を消してしまったからだった。
誰知らず、何処かへと消え去った謎の古代民族。
残ったのは、各地に点在する極わずかな文明の残滓だけ。
そのわずかな残滓から類推するに、彼らは自然崇拝であった。
彼らは、様々な自然的な物の中に神々を見出し、尊崇の対象として、恐れをもって奉った。
燦々と大地を照りつける太陽。
夜の闇に煌々と煌めく月や、星々。
そして茫洋たる草原に、唐突に現れ出でる鬱蒼とした常緑樹の森。
ここルーグの森も、かつて古代タミール族が神々の住まう神聖なる地として崇め奉った場所であった。
しかし古代タミール族が歴史から忽然と姿を消した後は、古文献にその足跡が僅かに記されているのみであり、この地を行き交う人々にとっては、単に広大な草原を渡る途中の休憩地としてしか認識されなかった。
そして今また、このルーグの森を訪れる者たちがいた。
ロンバルドたち、である。
彼ら一行は偶然にこの森に辿り着き、かつて神々が宿ると考えられていた荘厳なる木々を、思い思いに見上げた。
「ロンバルドと、その部下のシェスターも知っておるぞ」
「シェスター……」
ガイウスは、何度かこの屋敷を訪れたことのあるシェスターの顔を思い浮かべた。
「うむ、色々あってな。エデンの森で出会ったのじゃ」
ガイウスはそこで、幼少期に読んだことのあるメリッサ大陸に伝わるおとぎ話に出てくる一説を思い出した。
「エデンの森?あっ!じゃあエル様って、もしかしておとぎ話に出てくるあの黒猫!?」
「ロンバルドの奴は神話じゃと言うておったが、今度はおとぎ話か。まあ別にどっちでもよいが、わしがそのエル様じゃ!」
「あれ、おとぎ話じゃなかったのか。と言うことは、エデンの森も実在する!?」
「さっきもそう言うたであろう。ロンバルドたちとは、エデンで出会ったのじゃと」
「なんでまた、そんなところで」
「じゃから、色々とあったと言うておろう。千年竜が現れて大暴れしたり――」
ガイウスは反射的に大声を上げた。
「せ、千年竜!?せ、千年竜も実在するの!?」
ガイウスの息せき切った質問に、エルは大きくかぶりを振り、やれやれといった仕草を見せた。
「面倒じゃが、一から説明してやろう。そのかわり、お前も包み隠さずこのわしに話せよ?」
エルはそう言うと、ロンバルドたちと遭遇した事件について、滔々と語り始めた。
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ロンバルドたちは千年竜の暴虐から逃れるため、アルターテ川を渡って西へと逃れた。
エスタの西岸、ローエングリン教皇国側には、茫漠とした草原地帯が果てしなく広がっている。
この地は、かつてこの辺り一帯から勃興し、ついにメリッサ大陸の半分をその支配下に治めたという古代民族タミールからその名をとり、タミール草原と呼ばれている。
かつて、と言うのは現在この地を領しているのが無論ローエングリン教皇国であり、古代タミール族ではないからである。
では古代タミール族は、どうなってしまったのか?
その答えを知る者は、誰一人としていなかった。
なぜならば、古代タミール族はローエングリンに滅ぼされた訳ではなく、彼の国が勃興するその遥か以前に、忽然と歴史からその姿を消してしまったからだった。
誰知らず、何処かへと消え去った謎の古代民族。
残ったのは、各地に点在する極わずかな文明の残滓だけ。
そのわずかな残滓から類推するに、彼らは自然崇拝であった。
彼らは、様々な自然的な物の中に神々を見出し、尊崇の対象として、恐れをもって奉った。
燦々と大地を照りつける太陽。
夜の闇に煌々と煌めく月や、星々。
そして茫洋たる草原に、唐突に現れ出でる鬱蒼とした常緑樹の森。
ここルーグの森も、かつて古代タミール族が神々の住まう神聖なる地として崇め奉った場所であった。
しかし古代タミール族が歴史から忽然と姿を消した後は、古文献にその足跡が僅かに記されているのみであり、この地を行き交う人々にとっては、単に広大な草原を渡る途中の休憩地としてしか認識されなかった。
そして今また、このルーグの森を訪れる者たちがいた。
ロンバルドたち、である。
彼ら一行は偶然にこの森に辿り着き、かつて神々が宿ると考えられていた荘厳なる木々を、思い思いに見上げた。
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