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第百十二話 帰還の途
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「ふう、なんとかうまく誤魔化せましたね」
「ああ。なんとか、な」
二人は安堵の吐息を漏らしつつ、エルムール政庁入り口前の大階段をゆっくりと降りていた。
「それにしても、ロトス君はもう故郷に帰りつけただろうか」
ロンバルドは、エスタで出会った好漢の行方が気になり、シェスターに問いかけた。
「我々があの後エスタに舞い戻り、事後処理を始めたその日に彼は帰国の途に着きましたから、もうすでに故郷に辿り着いているんじゃないですかね」
「この後、彼がゴルコス死亡の責任を取らされないよう、注意してくれ」
「もちろんです。ローエングリン教皇国にいる外交官に、その旨厳重に伝えておきます」
「ああ、よろしく頼む」
「それにしてもエスタは当分の間、以前と同じく中立地として周辺七カ国による共同監視団が駐留することで決着がつきましたが、レイダム王家の王位継承問題はこれからです」
「ああ、それにその裏でうごめいているであろうあの男……」
「ローエングリンのレノン司教ですね」
すると突然、二人の足元から声がした。
「それと、千年竜じゃ。そのことを忘れてはいかんぞ」
声をかけたのは、普通の猫サイズに縮小して二人に近づいて来たエルであった。
ロンバルドは慌てふためき、声をひそめてエルに注意した。
「エル様、困ります。まだ街中ですから、声を出さないようにしてください」
エルは仕方ないといった風情で一度小首をかしげると、承知の意味で「にゃあ」と猫の鳴き声で答えた。
ロンバルドはシェスターと顔を見合わせ、互いに疲れた表情でうなづきあった。
「しかしそれにしても、どうやら今後忙しくなりそうだな」
「ええ、そうなるでしょうね。ですが、その前に今日のところは一旦帰宅して英気を養いましょう。審議官の奥様も、さぞやご心配でおいででしょう。それに、可愛いお子様もお待ちですよ」
「そうだな。そうしよう。今度ばかりは、さすがに疲れ果てたよ」
「同感です」
そう言うなりシェスターはロンバルドに向き直り、うやうやしく敬礼をした。
「では、わたしはここで失礼します。また明日、お会いしましょう」
ロンバルドもシェスターに対して向き直り、ゆっくりとした動作で右手を上げた。
「本当に今回はご苦労だった。お互いに、ゆっくり休むとしよう」
「はい。それでは」
シェスターは返事をするなり、わずかに首を下に向けてエルに正対すると、軽く会釈をしてしばしの別れを告げた。
そして鍛えられた軍人がするような、きびきびとした動作でくるっとすばやく反転し、足早に階段を降り終えるや、夕日が沈みかけた西の方角に向かって静かに立ち去っていった。
残されたロンバルドは一つ大きな深呼吸をすると、首を大きく横に傾けてエルを見た。
「では、われわれも行きましょうか」
ロンバルドは小声でエルに向かってそう言うと、ゆっくりとした足取りで東に向かって階段を降りはじめた。
ようやくロンバルドは、最愛の妻エメラーダと愛息ガイウスの待つ安らぎの我が家へと、帰還の途についた。
「ああ。なんとか、な」
二人は安堵の吐息を漏らしつつ、エルムール政庁入り口前の大階段をゆっくりと降りていた。
「それにしても、ロトス君はもう故郷に帰りつけただろうか」
ロンバルドは、エスタで出会った好漢の行方が気になり、シェスターに問いかけた。
「我々があの後エスタに舞い戻り、事後処理を始めたその日に彼は帰国の途に着きましたから、もうすでに故郷に辿り着いているんじゃないですかね」
「この後、彼がゴルコス死亡の責任を取らされないよう、注意してくれ」
「もちろんです。ローエングリン教皇国にいる外交官に、その旨厳重に伝えておきます」
「ああ、よろしく頼む」
「それにしてもエスタは当分の間、以前と同じく中立地として周辺七カ国による共同監視団が駐留することで決着がつきましたが、レイダム王家の王位継承問題はこれからです」
「ああ、それにその裏でうごめいているであろうあの男……」
「ローエングリンのレノン司教ですね」
すると突然、二人の足元から声がした。
「それと、千年竜じゃ。そのことを忘れてはいかんぞ」
声をかけたのは、普通の猫サイズに縮小して二人に近づいて来たエルであった。
ロンバルドは慌てふためき、声をひそめてエルに注意した。
「エル様、困ります。まだ街中ですから、声を出さないようにしてください」
エルは仕方ないといった風情で一度小首をかしげると、承知の意味で「にゃあ」と猫の鳴き声で答えた。
ロンバルドはシェスターと顔を見合わせ、互いに疲れた表情でうなづきあった。
「しかしそれにしても、どうやら今後忙しくなりそうだな」
「ええ、そうなるでしょうね。ですが、その前に今日のところは一旦帰宅して英気を養いましょう。審議官の奥様も、さぞやご心配でおいででしょう。それに、可愛いお子様もお待ちですよ」
「そうだな。そうしよう。今度ばかりは、さすがに疲れ果てたよ」
「同感です」
そう言うなりシェスターはロンバルドに向き直り、うやうやしく敬礼をした。
「では、わたしはここで失礼します。また明日、お会いしましょう」
ロンバルドもシェスターに対して向き直り、ゆっくりとした動作で右手を上げた。
「本当に今回はご苦労だった。お互いに、ゆっくり休むとしよう」
「はい。それでは」
シェスターは返事をするなり、わずかに首を下に向けてエルに正対すると、軽く会釈をしてしばしの別れを告げた。
そして鍛えられた軍人がするような、きびきびとした動作でくるっとすばやく反転し、足早に階段を降り終えるや、夕日が沈みかけた西の方角に向かって静かに立ち去っていった。
残されたロンバルドは一つ大きな深呼吸をすると、首を大きく横に傾けてエルを見た。
「では、われわれも行きましょうか」
ロンバルドは小声でエルに向かってそう言うと、ゆっくりとした足取りで東に向かって階段を降りはじめた。
ようやくロンバルドは、最愛の妻エメラーダと愛息ガイウスの待つ安らぎの我が家へと、帰還の途についた。
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