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第百十七話 マクシミリアン・バーガー
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1
「ひどいよエル、いきなり噛み付くなんて」
ガイウスは計画的に植林された林の中を真っ直ぐに縦断する石畳で綺麗に舗装された美しい並木道を歩きながら、その足元を悠然とした足取りで闊歩しているエルに向かって、泣きそうな顔で抗議した。
だが対するエルは、どこ吹く風と素知らぬ顔であった。
「生意気な口を利くお前が悪い。わしとて朝っぱらからお前の大して旨くもない足など噛みとうはないわい」
「基本的に俺は、暴力反対なんだからね。今後は多少腹を立ててもいきなり噛み付くような真似はしないでよ。まずは言葉で言ってもらわないと、言葉で」
ガイウスは強い口調でエルに念を押した。
エルは、さも面倒くさそうな素振りをする。
「あ~わかった、わかった。ほれ、もうすぐ林が切れる。わしはもう行くぞい」
そう言うとエルは、軽い身のこなしでサッと林の中へ分け入ってしまった。
残されたガイウスは一つ大きなため息を吐くと、気分を変えるためか立ち止まり、両手を大きく横に広げて深呼吸をした。
2
「おはよう、ガイウス!」
林を抜けて開けた道に出た途端、明るく元気な男の子の声が、ガイウスの背中に降り注がれた。
ガイウスはその声の主が誰であるのか、一声聞いただけですぐに判ったため、振り向きもしなかった。
「おはよう、マックス。今日も朝から元気だな」
ガイウスは、マックスことマクシミリアン・バーガーの底抜けの明るさに少々苦笑気味に挨拶を返した。
マックスは屈託の無い笑顔を浮かべながらガイウスに近づき、ポンと肩をたたいた。
「お前は相変わらず暗いな。もっと明るくならないと駄目だぜ?」
「無理。俺はお前とは違う」
ガイウスは少々食い気味に否定した。
マックスは明るい微笑をその顔に貼り付けたまま、両手を広げて肩をすくめた。
「やれやれ、なんでこんな暗い奴が女の子たちにめちゃくちゃもてるのか。世の中ってのは理不尽だよなあ~」
「なに言ってるんだ。お前だって女の子にもてるじゃないかよ」
「自分がめちゃくちゃもてるってところは全然否定しないんだな。さすがだ、ガイウス。まっ、それはいいとして俺はそんなにもてないよ。こんなに明るくて元気なのに、少なくともお前の十分の一ももてていない。なぜだ!?」
「知るか」
「お前が俺の十倍以上もてるってところも否定しないんだな。やっぱりさすがだ、ガイウス。まっ、それはそれとして、なぜかといえば、お前がクールだと女子に思われているからだ!」
「それは、暗いとは違うのか?」
「ふふん、甘いなガイウス。暗いとクールは似て非なるものなのさ」
「ほう、そうなのか」
「そうなのだ。ところが女子たちは何を勘違いしたのか、ただ暗いだけのお前をクールでかっこいいと思い込んでいるわけだ。つまり、女子たちは錯覚しているだけなんだよ」
「で?」
「うん?」
「いや、だから、錯覚だからどうだと言うんだ?」
「いや、別にどうもしないが?」
「なんだそれ」
「ふふん、やっぱり甘いなガイウス。俺は基本的に適当なんだよ。知らなかったのか?」
「いや、知ってた。まじめにお前の話を聞いていた俺が馬鹿だったよ」
「その通り。どうやらこの勝負、俺の勝ちのようだな!」
「勝負ってなんだよ。本当に適当な奴だな、まったく」
「ふふん、でも結構楽しかったろ?こうやって話している内に学校にも着いたし、退屈な通学路を楽しい会話によって明るいものにする俺って、えらい奴だと思わない?」
「ああ、えらいえらい」
ガイウスは完全な棒読みでそう言うと、彼らが通う学び舎の門を潜った。
「ひどいよエル、いきなり噛み付くなんて」
ガイウスは計画的に植林された林の中を真っ直ぐに縦断する石畳で綺麗に舗装された美しい並木道を歩きながら、その足元を悠然とした足取りで闊歩しているエルに向かって、泣きそうな顔で抗議した。
だが対するエルは、どこ吹く風と素知らぬ顔であった。
「生意気な口を利くお前が悪い。わしとて朝っぱらからお前の大して旨くもない足など噛みとうはないわい」
「基本的に俺は、暴力反対なんだからね。今後は多少腹を立ててもいきなり噛み付くような真似はしないでよ。まずは言葉で言ってもらわないと、言葉で」
ガイウスは強い口調でエルに念を押した。
エルは、さも面倒くさそうな素振りをする。
「あ~わかった、わかった。ほれ、もうすぐ林が切れる。わしはもう行くぞい」
そう言うとエルは、軽い身のこなしでサッと林の中へ分け入ってしまった。
残されたガイウスは一つ大きなため息を吐くと、気分を変えるためか立ち止まり、両手を大きく横に広げて深呼吸をした。
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「おはよう、ガイウス!」
林を抜けて開けた道に出た途端、明るく元気な男の子の声が、ガイウスの背中に降り注がれた。
ガイウスはその声の主が誰であるのか、一声聞いただけですぐに判ったため、振り向きもしなかった。
「おはよう、マックス。今日も朝から元気だな」
ガイウスは、マックスことマクシミリアン・バーガーの底抜けの明るさに少々苦笑気味に挨拶を返した。
マックスは屈託の無い笑顔を浮かべながらガイウスに近づき、ポンと肩をたたいた。
「お前は相変わらず暗いな。もっと明るくならないと駄目だぜ?」
「無理。俺はお前とは違う」
ガイウスは少々食い気味に否定した。
マックスは明るい微笑をその顔に貼り付けたまま、両手を広げて肩をすくめた。
「やれやれ、なんでこんな暗い奴が女の子たちにめちゃくちゃもてるのか。世の中ってのは理不尽だよなあ~」
「なに言ってるんだ。お前だって女の子にもてるじゃないかよ」
「自分がめちゃくちゃもてるってところは全然否定しないんだな。さすがだ、ガイウス。まっ、それはいいとして俺はそんなにもてないよ。こんなに明るくて元気なのに、少なくともお前の十分の一ももてていない。なぜだ!?」
「知るか」
「お前が俺の十倍以上もてるってところも否定しないんだな。やっぱりさすがだ、ガイウス。まっ、それはそれとして、なぜかといえば、お前がクールだと女子に思われているからだ!」
「それは、暗いとは違うのか?」
「ふふん、甘いなガイウス。暗いとクールは似て非なるものなのさ」
「ほう、そうなのか」
「そうなのだ。ところが女子たちは何を勘違いしたのか、ただ暗いだけのお前をクールでかっこいいと思い込んでいるわけだ。つまり、女子たちは錯覚しているだけなんだよ」
「で?」
「うん?」
「いや、だから、錯覚だからどうだと言うんだ?」
「いや、別にどうもしないが?」
「なんだそれ」
「ふふん、やっぱり甘いなガイウス。俺は基本的に適当なんだよ。知らなかったのか?」
「いや、知ってた。まじめにお前の話を聞いていた俺が馬鹿だったよ」
「その通り。どうやらこの勝負、俺の勝ちのようだな!」
「勝負ってなんだよ。本当に適当な奴だな、まったく」
「ふふん、でも結構楽しかったろ?こうやって話している内に学校にも着いたし、退屈な通学路を楽しい会話によって明るいものにする俺って、えらい奴だと思わない?」
「ああ、えらいえらい」
ガイウスは完全な棒読みでそう言うと、彼らが通う学び舎の門を潜った。
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