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第百十八話 貴族
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ガイウスたちが教室内に入ると、すれ違う女子たちの嬌声が次々に上がった。
「あっ!おはようガイウス君、マックス君」
「おはよう!ガイウス君にマックス君」
「おはよう、ガイウス君!あとついでにマックス」
「まったく!何でいつもガイウスの名前が先なんだ?誰か一人でも俺の名を先に呼ぼうって奴はいないのかよ?」
マックスはクラスの女子たち皆に聞こえるように、大声で言った。
すると女子たちは途端に一致団結し、マックスに対して罵りの言葉を一斉に浴びせかけた。
曰く、顔が違う、スタイルが違う、性格が違う等々、中でも極め付けは家柄が違うというものであった。
彼女たちの言う通り、確かにガイウスの家柄は極め付きといってもいいほどに良かった。
シュナイダー家は貴族でこそないものの、ヴァレンティン共和国きっての名家であり、その声望は諸外国にまで轟くほどであった。
というのも、ガイウスの祖父まで実に五代に渡って内閣閣僚を実力によって輩出し、現当主にしてガイウスの父であるロンバルド・シュナイダーも現在、ヴァレンティン共和国が保有する数多の属州の中でも最も重要度の高い要衝、ここエルムールの属州副長官という要職に就いていた。
「家柄持ち出されちゃ、もう反撃できないよ。ガイウスの家はヴァレンティン全体でも最強クラスの家柄なんだからな」
マックスのふて腐れ気味の言葉に、ガイウスが反論した。
「そんなことはないだろう?だってうちは別に貴族じゃないしさ」
するとマックスは、大げさに両手を広げて肩をすくめて見せた。
「なあに言ってんだか。ヴァレンティンでは貴族制なんて、とっくの昔に形骸化しちまってるっていうの。まあ一応制度としてはまだあるにはあるが、実態はせいぜい一地方領主ってところだろ。それもヴァレンティンの都市部は全て市民に開放されているから、貴族が持っている土地は全部田舎で、資産価値なんてほぼ無いに等しいって話だ。だから貴族より金持ちな非貴族なんていくらでもいるってわけだ。ていうかその筆頭がお前ん家だろうが」
マックスの早口な長広舌に、ガイウスはゆったりとした口調で再反論した。
「とはいっても貴族は貴族だろう。金の有る無しはともかく、家の格式としては向こうの方が上だろうよ」
「ないない。そんな風に思っているのは、当の貴族連中の中でも少数派な位だぜ。ましてや市民はもう皆そんな風には思っちゃいないよ。その証拠にほら、隣のクラスにいる貴族の奴、えーと、名前なんていったっけ。まあいいや、そいついつも手下を数人従えて偉そうにしているけど、他の皆は全然相手にしてないっていうぜ。しかもその手下たちってのも、その貴族の使用人の子たちらしくって、仕方なく付き従っているって話らしいしな」
「ふうん、そんな奴が隣のクラスにいたのか」
「えっ!お前、あいつのこと知らなかったのかよ!?」
「そういうお前だって、そいつの名前忘れてるじゃないか」
「そうなんだよなあ~、いつも威張っているのは何度も見てるんだけど、周りもぜんぜん相手にしてないせいか、何ていうかそいつ、悪役としても地味っていうか、小物感たっぷりっていうか、存在感が無いんだよなあ~。だから名前すらも憶えてないんだよなあ~。なんていったっけなあ~、たしか、サ、サマ、サラ?いやカラ?あっ!思い出した!」
マックスはようやく思い出せたことに興奮し、教室の外まで響き渡るような大きな声を出した。
「あの馬鹿貴族!バランスっていうんだった!」
すると突然、教室のドアが激しい音を立てて乱暴に開け放たれた。
「誰だ今言ったのは!?このバランス様を馬鹿貴族だと!?絶対に赦さんぞ!!」
その時ガイウスは、この火の粉がきっと自分にも降り掛かるであろうことを確信した。
そのためガイウスは大きく深いため息を吐きつつ瞑目し、ゆっくりと身体ごと後ろに倒して、天を仰いだ。
「あっ!おはようガイウス君、マックス君」
「おはよう!ガイウス君にマックス君」
「おはよう、ガイウス君!あとついでにマックス」
「まったく!何でいつもガイウスの名前が先なんだ?誰か一人でも俺の名を先に呼ぼうって奴はいないのかよ?」
マックスはクラスの女子たち皆に聞こえるように、大声で言った。
すると女子たちは途端に一致団結し、マックスに対して罵りの言葉を一斉に浴びせかけた。
曰く、顔が違う、スタイルが違う、性格が違う等々、中でも極め付けは家柄が違うというものであった。
彼女たちの言う通り、確かにガイウスの家柄は極め付きといってもいいほどに良かった。
シュナイダー家は貴族でこそないものの、ヴァレンティン共和国きっての名家であり、その声望は諸外国にまで轟くほどであった。
というのも、ガイウスの祖父まで実に五代に渡って内閣閣僚を実力によって輩出し、現当主にしてガイウスの父であるロンバルド・シュナイダーも現在、ヴァレンティン共和国が保有する数多の属州の中でも最も重要度の高い要衝、ここエルムールの属州副長官という要職に就いていた。
「家柄持ち出されちゃ、もう反撃できないよ。ガイウスの家はヴァレンティン全体でも最強クラスの家柄なんだからな」
マックスのふて腐れ気味の言葉に、ガイウスが反論した。
「そんなことはないだろう?だってうちは別に貴族じゃないしさ」
するとマックスは、大げさに両手を広げて肩をすくめて見せた。
「なあに言ってんだか。ヴァレンティンでは貴族制なんて、とっくの昔に形骸化しちまってるっていうの。まあ一応制度としてはまだあるにはあるが、実態はせいぜい一地方領主ってところだろ。それもヴァレンティンの都市部は全て市民に開放されているから、貴族が持っている土地は全部田舎で、資産価値なんてほぼ無いに等しいって話だ。だから貴族より金持ちな非貴族なんていくらでもいるってわけだ。ていうかその筆頭がお前ん家だろうが」
マックスの早口な長広舌に、ガイウスはゆったりとした口調で再反論した。
「とはいっても貴族は貴族だろう。金の有る無しはともかく、家の格式としては向こうの方が上だろうよ」
「ないない。そんな風に思っているのは、当の貴族連中の中でも少数派な位だぜ。ましてや市民はもう皆そんな風には思っちゃいないよ。その証拠にほら、隣のクラスにいる貴族の奴、えーと、名前なんていったっけ。まあいいや、そいついつも手下を数人従えて偉そうにしているけど、他の皆は全然相手にしてないっていうぜ。しかもその手下たちってのも、その貴族の使用人の子たちらしくって、仕方なく付き従っているって話らしいしな」
「ふうん、そんな奴が隣のクラスにいたのか」
「えっ!お前、あいつのこと知らなかったのかよ!?」
「そういうお前だって、そいつの名前忘れてるじゃないか」
「そうなんだよなあ~、いつも威張っているのは何度も見てるんだけど、周りもぜんぜん相手にしてないせいか、何ていうかそいつ、悪役としても地味っていうか、小物感たっぷりっていうか、存在感が無いんだよなあ~。だから名前すらも憶えてないんだよなあ~。なんていったっけなあ~、たしか、サ、サマ、サラ?いやカラ?あっ!思い出した!」
マックスはようやく思い出せたことに興奮し、教室の外まで響き渡るような大きな声を出した。
「あの馬鹿貴族!バランスっていうんだった!」
すると突然、教室のドアが激しい音を立てて乱暴に開け放たれた。
「誰だ今言ったのは!?このバランス様を馬鹿貴族だと!?絶対に赦さんぞ!!」
その時ガイウスは、この火の粉がきっと自分にも降り掛かるであろうことを確信した。
そのためガイウスは大きく深いため息を吐きつつ瞑目し、ゆっくりと身体ごと後ろに倒して、天を仰いだ。
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