転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

文字の大きさ
120 / 153

第百十八話 貴族

しおりを挟む
 ガイウスたちが教室内に入ると、すれ違う女子たちの嬌声が次々に上がった。

「あっ!おはようガイウス君、マックス君」
「おはよう!ガイウス君にマックス君」
「おはよう、ガイウス君!あとついでにマックス」

「まったく!何でいつもガイウスの名前が先なんだ?誰か一人でも俺の名を先に呼ぼうって奴はいないのかよ?」

 マックスはクラスの女子たち皆に聞こえるように、大声で言った。

 すると女子たちは途端に一致団結し、マックスに対して罵りの言葉を一斉に浴びせかけた。

 曰く、顔が違う、スタイルが違う、性格が違う等々、中でも極め付けは家柄が違うというものであった。

 彼女たちの言う通り、確かにガイウスの家柄は極め付きといってもいいほどに良かった。

 シュナイダー家は貴族でこそないものの、ヴァレンティン共和国きっての名家であり、その声望は諸外国にまで轟くほどであった。

 というのも、ガイウスの祖父まで実に五代に渡って内閣閣僚を実力によって輩出し、現当主にしてガイウスの父であるロンバルド・シュナイダーも現在、ヴァレンティン共和国が保有する数多の属州の中でも最も重要度の高い要衝、ここエルムールの属州副長官という要職に就いていた。

「家柄持ち出されちゃ、もう反撃できないよ。ガイウスの家はヴァレンティン全体でも最強クラスの家柄なんだからな」

 マックスのふて腐れ気味の言葉に、ガイウスが反論した。

「そんなことはないだろう?だってうちは別に貴族じゃないしさ」

 するとマックスは、大げさに両手を広げて肩をすくめて見せた。

「なあに言ってんだか。ヴァレンティンでは貴族制なんて、とっくの昔に形骸化しちまってるっていうの。まあ一応制度としてはまだあるにはあるが、実態はせいぜい一地方領主ってところだろ。それもヴァレンティンの都市部は全て市民に開放されているから、貴族が持っている土地は全部田舎で、資産価値なんてほぼ無いに等しいって話だ。だから貴族より金持ちな非貴族なんていくらでもいるってわけだ。ていうかその筆頭がお前ん家だろうが」

 マックスの早口な長広舌に、ガイウスはゆったりとした口調で再反論した。

「とはいっても貴族は貴族だろう。金の有る無しはともかく、家の格式としては向こうの方が上だろうよ」

「ないない。そんな風に思っているのは、当の貴族連中の中でも少数派な位だぜ。ましてや市民はもう皆そんな風には思っちゃいないよ。その証拠にほら、隣のクラスにいる貴族の奴、えーと、名前なんていったっけ。まあいいや、そいついつも手下を数人従えて偉そうにしているけど、他の皆は全然相手にしてないっていうぜ。しかもその手下たちってのも、その貴族の使用人の子たちらしくって、仕方なく付き従っているって話らしいしな」

「ふうん、そんな奴が隣のクラスにいたのか」

「えっ!お前、あいつのこと知らなかったのかよ!?」

「そういうお前だって、そいつの名前忘れてるじゃないか」

「そうなんだよなあ~、いつも威張っているのは何度も見てるんだけど、周りもぜんぜん相手にしてないせいか、何ていうかそいつ、悪役としても地味っていうか、小物感たっぷりっていうか、存在感が無いんだよなあ~。だから名前すらも憶えてないんだよなあ~。なんていったっけなあ~、たしか、サ、サマ、サラ?いやカラ?あっ!思い出した!」

 マックスはようやく思い出せたことに興奮し、教室の外まで響き渡るような大きな声を出した。

「あの馬鹿貴族!バランスっていうんだった!」

 すると突然、教室のドアが激しい音を立てて乱暴に開け放たれた。

「誰だ今言ったのは!?このバランス様を馬鹿貴族だと!?絶対に赦さんぞ!!」

 その時ガイウスは、この火の粉がきっと自分にも降り掛かるであろうことを確信した。

 そのためガイウスは大きく深いため息を吐きつつ瞑目し、ゆっくりと身体ごと後ろに倒して、天を仰いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

学生学園長の悪役貴族に転生したので破滅フラグ回避がてらに好き勝手に学校を魔改造にしまくったら生徒たちから好かれまくった

竜頭蛇
ファンタジー
俺はある日、何の予兆もなくゲームの悪役貴族──マウント・ボンボンに転生した。 やがて主人公に成敗されて死ぬ破滅エンドになることを思い出した俺は破滅を避けるために自分の学園長兼学生という立場をフル活用することを決意する。 それからやりたい放題しつつ、主人公のヘイトを避けているといつ間にかヒロインと学生たちからの好感度が上がり、グレートティーチャーと化していた。

処理中です...