転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第百四十五話 痕跡

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 1


「ば、化け物か!」

 アルベルトは、必死に喉を振り絞って声を出した。

 その後背からは女生徒たちの金切り声が至る所から噴出し、ホテルのスイートルームを思わす豪華な部屋は、すぐに悲鳴によって満たされた。

「参ったな。こいつは、魔獣よりもたちが悪そうだぞ」

 ジョディーは皮膚がどろどろと溶け落ちていく化け物を、顔をしかめて眺めながら言った。

 そしてしばらくの間、皆黙って化け物の変化を眺め、ようやくほとんどの皮膚が流れ落ちて本来の姿をあらわにした頃、バランスが苦々しげに顔を歪めて言った。

「どうやら、我々が太刀打ちできる相手ではなさそうだ」

 アルベルトはその声を上の空で聞きながら、またも必死に声を絞り出した。

「こいつは、悪魔なのか?」


 それは羊のような巻角を頭から生やし、狼のように突き出た口をし、さらに全身に濃く黒い体毛を生やした姿で現れた。

 悪魔は、太古より人間があまねく恐れおののいてきた姿形でもって、彼らの前に今、現れた。


 2


「くそっ!どこにもいないぞ!?」

 ガイウスは巨大な筐から脱出に成功すると、全速力で飛び立ち、元いた場所へと戻っていた。

 しかしそこには延々と広がる草原のみがあり、クラスメイトたちなど人っ子一人見当たらなかった。

(確かに、この辺のはずなんだが)

 ガイウスは首をめぐらして周囲を見晴るかすも、人はもちろん、どんな生き物の影すら見当たらなかった。

「まさか、みんな魔獣に……」

 ガイウスは最悪の事態を想像してしまい、愕然とした表情をその顔に浮かべた。

 しかしガイウスは草むらを見て、すぐに思い直した。

 それというのも、もし魔獣に襲われてクラスメイトたちが全滅してしまったのだとしたら、血痕などの何らかの痕跡が残っているはずであり、それがまったく見当たらないとなれば、そのような出来事はおこっていないと思われたからだった。

(だがここにいないということは、魔獣に襲われたためにこの場から逃げたと考えるのが妥当な線だな)

 ガイウスは自分の考えに何度も小刻みにうなずくと、中腰となって丹念に地面を調べ始めた。

「これは……」

 ガイウスは、魔法で造られた人口の芝が、一定の方向に皆少し傾いているのを見て取った。

(なるほどな。自然の芝と違ってこの人口の芝は、一度踏みつけると元のようには戻らないのか。ということは、この傾いた芝の先にみんながいる、ということだ)

 ガイウスはすぐさま軽く浮き上がり、芝目をしっかりと読みながら超低空飛行を開始した。

 そしておよそ二十分ほども飛び続けた頃、前方にドーム状の建物が見えてきた。

 ガイウスは、直感的にこのドームを怪しんだ。

(俺が閉じ込められていた筐と違って、今度はドームかよ)

 ガイウスは怪しみながらも、仲間と一刻も早く合流するため、ドームへ向けて全速力で飛行した。
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