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1部 中学生時代
夏休み
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今日は終業式だった。
愁也の学校は夏祭りが終わった次の日が終業式だ。
つまり明日から楽しい楽しい夏休み。
実質今日の昼から夏休みだ。
正直助かった。
瑞希と会うのが気まずかった。
この前のキス事件の次の日より会うのが気まずかった。
だってあんなに約束したのに、愁也は途中で帰ってしまったのだから。
瑞希に会わせる顔がない。
でも、明日から瑞希と学校で会うことはない。
今日さえ我慢すればいい。
きっと瑞希も時間が空いたら夏祭りの件は忘れてくれるだろう。
とりあえず今は色んな意味で瑞希と距離を置く方がいい。
というか、今までが一緒に居すぎたんだ。
幼馴染みがいつも一緒にいないといけない法律なんてないんだ。
愁也はそう考えながら歩き登校していた。
学校の校門までやってきた。
愁也は教室に入りたくないなぁと思っていた。
でも、今日学校に行かないという選択肢はありえない。
なぜなら、夏休みの関連のプリントや通知表などは今日配られる。
もし愁也が学校を休んでしまったら、そのプリントは瑞希に預けられるだろう。
そうなったら、瑞希と顔を合わせないといけない口実を作ってしまう。
だから、行きたくなくても今日だけは休めない。
愁也はチャイムがなるギリギリまで教室に入るのはやめようと思い、歩く歩調を緩めた。
すると、後ろから肩を叩かれた。
愁也は瑞希じゃない事を祈り振り返る。
肩を叩いたのは透だった。
透は何故か怒っていた。
「愁也、なんで昨日は途中で帰った?」
いつも優しい透が珍しく怒っていた。
「そんなに怖い顔するなよ。かっこいい顔が台無しだぞ」
愁也はおどけた調子で言う。
「今は真面目に聞いてるんだ」
透は睨んでくる。結構迫力があった。
「二人っきりにしてやったんだ。むしろ感謝して貰いたいね」
「そんな事するくらいなら、最初から来ないで欲しかった」
透は淡々と言う。
愁也はその言葉にショックを受けた。
やっぱり、あの時透は愁也の事を邪魔だと思ってたのかもしれない。
「それは悪かったよ。来年からは最初からついてこないようにするから」
「だから、なんでそうなるんだ? 来年も三人で一緒に行けばいいだろ。俺は愁也が黙って途中でいなくなったから怒ってるんだ」
透の声がだんだんと大きくなる。
周りが二人の険悪な雰囲気に気付き始めた。
「透が応援してくれと言ったんだろ」
「ああ言ったさ。でも、あんな事してくれとは頼んでない」
「じゃあどうすればいいんだよ! 応援しろってどういう意味なんだ?」
愁也がそう言うと透は黙り込んだ。
そして、少し考え込んでる様子だった。
でも透は、その間も愁也から目を逸らさなかった。
「分かった。じゃあもう応援しなくていい」
「つまり、邪魔するなと言いたい訳だ」
「なんでそんなひねくれた受け取り方をするんだよ」
透は呆れ返ったような物言いだった。
そりゃ透には愁也の気持ちは分からないだろう。
頭もいいし、スポーツ万能だし、顔もいい。そんな男が愁也みたいなひねくれ者の考えを分かるわけない。
透には劣等感という言葉の意味を本当に理解できるかも疑わしい。
「とにかく俺は透の邪魔はしない。それでいいだろう?」
愁也はいい加減話を終わらせようとする。
そもそも透とケンカする意味が分からない。
愁也は、透から目を逸らし、教室へ向かおうとする。
すると、透がゆっくり口を開いた。
「あの後、愁也が帰って来なかったから、瑞希は凄く落ち込んでいた。泣いていたよ」
愁也は黙り込む。何だか胸が痛い。
「俺は瑞希を悲しませるような奴は絶対に許せない。例えそれが愁也だとしても」
透は愁也を睨みながら言う。
透が瑞希の事を本気で好きという気持ちが愁也にも十二分に伝わってきた。
「思い返せば、昔から透はそうだったよな」
愁也は思い出を語るように呟く。
「俺が瑞希を泣かせたら、いつも透が慰めていた」
透は真剣な顔つきで愁也の話を聞く。
「これからもお前が瑞希を守ってやれよ」
愁也は少し寂しそうな笑顔で透に笑い掛ける。
透は愁也のその笑顔を見て、なんとも言えないような複雑な顔をしていた。
愁也はその顔を見届けると、透に背を向け自分の教室へと向かっていった。
愁也はチャイムと同時に教室に入る。
そして、なるべく瑞希と目を合わせないようにして席に座った。
愁也は瑞希の方を見れなかった。
見るのが怖かった。
いったい瑞希は今、どんな顔をしているだろう?
怒っているかな?
それとも、寂しそうな顔をしているかな?
気になって集中できない。
本当、今日が終業式で良かったよ。
授業なんかこの状態で聞けるわけない。
愁也はその後も、瑞希から必死に視線を逸らし続けた。
そして、見事に一回も目線が重なる事なく、終業式は無事に終了した。
そして夏休みが始まった。
今年は瑞希がいない夏になりそうだった。
☆
予想通り今年の夏は瑞希には会わなかった。
そもそも瑞希は塾の夏期講習と吹奏楽部の練習で忙しかった。
透も塾と部活で忙しかった。
愁也は相変わらず山本君達と遊んでいた。
山本君は色んな遊びを思いつく。
そのほとんどがアホらしい遊びだった。
例えば、じゃんけんで負けた人が、立ち読みしたら怒られる事で有名な本屋で敢えて立ち読みする罰ゲームを考えたり(山田君が実行した)
例えば、じゃんけんで負けた人が、綺麗な女店員さんに向かって「Hな本はどこにありますか?」と聞かないといけない罰ゲームを考えたり(山田君が実行した)
例えば、夜の学校のプールに忍び込み遊んでいたら、警備員に見事に見つかってしまい追いかけられたり(山田君一人捕まってしまい、後日みんなで怒られてしまった)
自転車で日本一周を本気で計画していた時は、山本君は天才なのか、はたまた、ただの馬鹿なのか分からなかった。
たぶん、ただの馬鹿の方だけど。
そんなこんなで夏休みは過ぎていく。
山本君達と遊ぶのはそれなりに楽しかった。
でも、これだけ遊んでいると心配になるのが宿題だ。
今年は瑞希に手伝って貰うという裏技は使えない。
自分一人でするしかないのだ。
愁也は苦戦していた。
この夏、自分がいかに瑞希に甘えていたのか、嫌という程分かった。
瑞希のお節介は偉大だった。
しっかりしないといけない。
もう瑞希に頼るのはよそう。
自分がだらしないから、瑞希がお節介してくるんだ。
瑞希離れしないとな。
そう決意して、溜まってる宿題と格闘した夏の日だった。
愁也は悪戦苦闘しながら、なんとか山のように溜まっていた宿題を終わらす目処が立った。
一時は、なぜ人は勉強するのか?という哲学的な事を考えてしまう程、愁也は追い込まれていたが、なんとか自分の力で乗り切った。
そんなある日、宿題も終わりそうなので、残り少ない夏休みを目一杯楽しもうとラストスパートをかけるように遊んでいた。
この日も山本君が発案したくだらない遊びで遊んでいた。
遊びはくだらなければくだらない程面白かった。
そんなくだらない遊びを満喫して、家に帰ろうとしているとバッタリ瑞希の姉ちゃんと出くわした。
瑞希の姉ちゃんは三歳年上の女子高校生である。
顔は瑞希を少し大人っぽくした感じなので、一瞬、瑞希と見間違えて驚いてしまった。
瑞希も高校生になったら、こんな風な美人になるのかもしれない。
「あら、愁ちゃんじゃない。久しぶり」
瑞希の姉ちゃんが天使のような笑顔で微笑み声をかけてきた。
瑞希と基本は同じ顔なのに、なんでこんなに美人なのだろう。
はっきり言って好みの顔だ。
だけど、瑞希の姉ちゃんは二年間も付き合ってる彼氏がいる。
愁也はどうやってその彼氏を地球上から抹殺しようか一時期本気で考えていた。
「姉ちゃん、もしかしてデートの帰り?」
愁也は瑞希の姉ちゃんの服装からそう判断した。
すると、瑞希の姉ちゃんは照れたようにはにかんだ。
幸せそうだ。
彼氏め。せいぜい夜道は背中に気をつけるんだな。
「瑞希ね。今、落ち込んでいるのよねー」
「え? なんで?」
瑞希の姉ちゃんが突然そんな事を呟き始めたので、愁也は戸惑う。
「愁ちゃん、心当たりあるの?」
「ないないない全くない」
愁也はもげそうなくらい首を横に振る。
まさか、夏祭りの件をまだ引きずってるわけじゃあるまい。
「どうやらコンクールで失敗したらしいの」
「そうなんだ・・・・・・」
とりあえず自分のせいじゃない事に少し安心した。
本当は安心してはいけないのだろうけど・・・・・・。
「愁ちゃん、慰めてあげてよ」
「えっ。俺が?」
「そう。愁ちゃんが」
瑞希の姉ちゃんは無邪気な顔でなんとも難しい事を頼んできた。
そんな状態の瑞希に今の愁也が言える言葉なんて思いつかない。
「勘弁してよ。俺そういうの苦手なんだよ」
愁也は断る。瑞希を慰めるのは透の役目だ。
「愁ちゃんじゃないと駄目なんだよ」
「えー透に言っておくから、透が慰めてくれるよ」
「だから、透ちゃんじゃ駄目だったから愁ちゃんに頼んでるんでしょう」
瑞希の姉ちゃんも断固して譲らなかった。
「透が駄目だったなら、俺には無理だって」
「愁ちゃんなら、大丈夫よ。愁ちゃんがちょっと顔を見せただけで、瑞希はきっと元気になるわ」
「いやならないって」
「なるよ」
瑞希の姉ちゃんは断言する。
「どうして俺じゃないと駄目なの?」
「それは自分で考えなさい」
瑞希の姉ちゃんは意味深に微笑んだ。
愁也は、本当に勘弁してくれと思った。
瑞希の姉ちゃんは、「今日の夜、瑞希は家にちゃんといるから待ってるよ」と言って自分の家へと消えていった。
そんな事言われても愁也は気が乗らない。
とりあえず、愁也も家に帰る。
自分の部屋に入り、ベッドへ自分の全体重をあずけた。
目を閉じて考えてみる。
もう一回整理してみよう。
瑞希は落ち込んでいる。
それは瑞希が吹奏楽部の大会でミスをしたらしいから。
じゃあ、そのミスをした原因はなんだろう?
ただの練習不足?
そんなのあり得ない。瑞希は人一倍真面目な奴だ。練習で手を抜く事はあり得ないだろう。
やっぱり夏祭りの件を引きずっているのだろうか。
だったら、自分のせいだ。
そこまで考えて、愁也は考えるのを辞めた。
誰のせいでもいい。瑞希が落ち込んでいるなら例えどんな状況でも励ましてあげるべきである。
それが幼馴染みというものだ。
愁也は自然にそれが正しい事だと思った。
愁也はベットから勢い良く飛び出し、隣の家に向かった。
愁也はピンポンを鳴らさずに、瑞希の家に入った。
普通なら非常識だが、幼馴染みだから許される。
愁也は真っ直ぐ二階の瑞希の部屋に向かった。
瑞希の部屋のドアの前に立つ。
とても緊張した。
勢いでここまで来たけど、いざ、瑞希の顔を見るとなると躊躇う。
どんな顔をしていいのか分からない。
愁也は一度深呼吸をした。
大丈夫。なるようになるさ。と思い込み、覚悟を決めた。
ドアをノックする。
中から「はーい」と言う瑞希の高い声が聞こえてきた。
「瑞希。俺だけど入っていいか?」
愁也はドアに向かって言う。
「・・・・・・愁ちゃんなの?」
「そうだ」
瑞希から返事が返って来ない。
でも、ここまで来て何もせずに帰るわけには行かない。
「入るぞ」
愁也は瑞希の返事を待たずドアが開けた。
部屋の隅のベットの上で、瑞希がクッションを抱えたまま、座っていた。
久しぶりに瑞希の顔を見た。
なんとなく決まりが悪い。
愁也は瑞希の机の椅子に腰を掛けて少し距離を取った。
「かのエジソンは言った」
「えっ?」
「失敗は成功の母だと」
瑞希はポカンと口を開けて固まっていた。
「時には努力が報われない時がある。だって人間なんだからしょうがない。また立ち上がって努力すればいいだけの話さ」
「それは誰の言葉?」
瑞希は不思議そうな顔をして言う。
「忘れた」
自分で考えた言葉だったりして。
「愁ちゃん・・・・・・頭大丈夫? 何かあったの?」
何故か逆に心配された。
やっぱり慣れない事はするべきじゃないなぁと思った。
「お前が吹奏楽部の大会でポカして落ち込んでるって姉ちゃんが言ったから来てみたら案外元気そうじゃん」
愁也は口を尖らせながら言う。
「誰が吹奏楽部の大会でポカしたの?」
瑞希はまた不思議そうな顔で聞いてきた。
「いやお前が」
「私? 私は別にポカしてないよ」
「は?」
あれ、話が違うぞお姉様。
「そもそも大会は九月だよ」
「へ?」
お姉様・・・・・・騙しましたね。
「愁ちゃん、私が落ち込んでると思って来てくれたの?」
「いや瑞希の姉ちゃんが・・・・・・あれ? なにこの仕打ち?」
「馬鹿みたいだね」
「なんだと」
愁也は馬鹿と言われて憤慨する。
瑞希はそんな怒った愁也を見て笑う。
声に出していつまでも高い声で笑っていた。
しばらく笑って、今度は突然泣き始めた。
「もう愁ちゃんに嫌われちゃったと思ってた」
「えっ?」
「だって・・・・・・終業式の日、目も合わせてくれないだもん」
瑞希の瞳から涙がとめどなく溢れていた。
愁也は戸惑う。
「怖かった。愁ちゃんに嫌われるのが・・・・・・だから、会うのが怖かった」
瑞希は泣きながら言う。
愁也は瑞希をこんな気持ちにさせていた自分を恥じた。
「俺はどんな事があっても、お前と透だけは嫌いにならないよ」
愁也は真剣に言う。
「本当? 心の中で私の気持ちがうざいとか思ってない?」
「思ってたら、ここには来ないよ」
愁也は瑞希を安心させるように微笑んだ。
すると瑞希は「良かった」と本当に嬉しそうに涙を流したまま笑う。
「愁ちゃんは、やっぱり優しいね」
「俺は別に優しくねぇよ。俺が優しいなら、透は仏様だな」
「愁ちゃんには、友達がいっぱいいるじゃん。それって愁ちゃんが友達を大事にしてる証拠だよ」
瑞希は泣き止んだばかりの赤い目を細めて、柔和に笑う。
「別に普通だよ。男子って単純だから、気が合う奴と自然に一緒にいる。ただそれだけの事さ」
「そうかもしれないけど、愁ちゃんは人を惹き付ける魅力があるんだよ」
「男に好かれる魅力なんかいらないな」
愁也は苦笑いをする。
「違うよ。愁ちゃんは女の子にも人気があるんだよ」
「へ?」
愁也は思わず変な声を上げてしまった。
「愁ちゃんは、可愛いって特に三年生から人気なんだよ」
「えっ!? マジ?」
「でも、私が愁ちゃんの駄目な所をいっぱい流したから、今は人気が下降気味だけど」
「おい!なんて事をしてくれたんだ!!」
せっかく年上の女の子にちやほやされるという夢のシチュエーションが実現できたのに・・・・・・。
「だって愁ちゃんに彼女ができるのが嫌だったから」
「え?」
「ごめんね」
瑞希は小さく頭を下げる。
瑞希の意外な一面を見た感じだった。
「私、焦っていたのかもしれない。愁ちゃんが誰かのものになるのが怖かったの」
「誰かのものって・・・・・・俺は俺だよ」
「だから、あの時、愁ちゃんの気持ちを無視して、強引にキスしてしまった。最低だよね?」
「いや、別に嫌だったとか思ってないけど・・・・・・」
それは本当だ。でも、タイミングがあまりにも悪すぎた。
なんで、よりにもよって透の気持ちを知った後にしてしまったのだろう。
もし順番が逆だったら、どうなっていただろう?
でも、過ぎ去った過去は誰にも変えられない。
「でも、もう私は焦らないよ。いつまでも、待っている。だから、今まで通り愁ちゃんの側にいてもいい?」
瑞希は不安そうな顔で見つめながら愁也の答えを待っているようだった。
「当たり前だろ。だって俺達幼馴染みじゃん。今さら、そんな事気にしてどうするんだよ」
愁也はできるだけ明るい口調で言う。
「ありがとうね愁ちゃん、やっぱり優しいね」
「いや優しくないし、お礼を言うのも変だろ。今まで散々お節介してきた癖に、いきなりそんな殊勝な態度取られてもこっちは困るだろ」
「お節介って。愁ちゃん、今まで私の事そう思ってたの?」
瑞希はお節介してると自覚してなかったらしい。
それは重症だ。
「そうだよ。だから、ここ最近お前がお節介してくれなかったから、心の中がモヤモヤして気持ち悪かったんだ。お前のせいだからな」
愁也はそっぽを向きながら言う。
瑞希は唖然とした顔をした。
「凄い身勝手な言い分でビックリしたよ。でも、やっぱり愁ちゃんらしくて好きだよ」
瑞希はすっかり呆れ返って笑っていた。
「そういう事だ。じゃあ用はなくなったから帰るぞ」
愁也は、椅子から立ち上がって帰ろうとする。
「宿題やった?」
唐突に瑞希が聞いてきた。
「あと数学だけ」
「嘘! それだけ? 誰かに手伝って貰った?」
「お前、俺を馬鹿にし過ぎ。宿題ぐらい一人でやれるわ」
愁也は威張って見せた。
「そうよね。一人でやるのが宿題よね。愁ちゃんのせいで忘れてたわ」
なんとなくだけど、瑞希が少し寂しそうな顔をした気がした。
「数学さ。分からない所があるんだ」
「えっ?」
「だから、教えてくんない?」
愁也はぶっきらぼうに言う。
「しょうがないなぁ。教えてあげるよ」
瑞希は満面の笑みで答えた。
その後、瑞希の部屋で残っていた夏休みの宿題をした。
瑞希の教え方は、やっぱり上手い。
愁也が分かってない所を的確に教えてくれる。
それに瑞希が隣にいると、やっぱり落ち着いた。
恋人でもない、友達でもない、幼馴染みという関係。
この時愁也は、恋とか友情とか関係なく、もう少しだけ、この幼馴染みという関係が続けばいいのにと思うのであった。
愁也の学校は夏祭りが終わった次の日が終業式だ。
つまり明日から楽しい楽しい夏休み。
実質今日の昼から夏休みだ。
正直助かった。
瑞希と会うのが気まずかった。
この前のキス事件の次の日より会うのが気まずかった。
だってあんなに約束したのに、愁也は途中で帰ってしまったのだから。
瑞希に会わせる顔がない。
でも、明日から瑞希と学校で会うことはない。
今日さえ我慢すればいい。
きっと瑞希も時間が空いたら夏祭りの件は忘れてくれるだろう。
とりあえず今は色んな意味で瑞希と距離を置く方がいい。
というか、今までが一緒に居すぎたんだ。
幼馴染みがいつも一緒にいないといけない法律なんてないんだ。
愁也はそう考えながら歩き登校していた。
学校の校門までやってきた。
愁也は教室に入りたくないなぁと思っていた。
でも、今日学校に行かないという選択肢はありえない。
なぜなら、夏休みの関連のプリントや通知表などは今日配られる。
もし愁也が学校を休んでしまったら、そのプリントは瑞希に預けられるだろう。
そうなったら、瑞希と顔を合わせないといけない口実を作ってしまう。
だから、行きたくなくても今日だけは休めない。
愁也はチャイムがなるギリギリまで教室に入るのはやめようと思い、歩く歩調を緩めた。
すると、後ろから肩を叩かれた。
愁也は瑞希じゃない事を祈り振り返る。
肩を叩いたのは透だった。
透は何故か怒っていた。
「愁也、なんで昨日は途中で帰った?」
いつも優しい透が珍しく怒っていた。
「そんなに怖い顔するなよ。かっこいい顔が台無しだぞ」
愁也はおどけた調子で言う。
「今は真面目に聞いてるんだ」
透は睨んでくる。結構迫力があった。
「二人っきりにしてやったんだ。むしろ感謝して貰いたいね」
「そんな事するくらいなら、最初から来ないで欲しかった」
透は淡々と言う。
愁也はその言葉にショックを受けた。
やっぱり、あの時透は愁也の事を邪魔だと思ってたのかもしれない。
「それは悪かったよ。来年からは最初からついてこないようにするから」
「だから、なんでそうなるんだ? 来年も三人で一緒に行けばいいだろ。俺は愁也が黙って途中でいなくなったから怒ってるんだ」
透の声がだんだんと大きくなる。
周りが二人の険悪な雰囲気に気付き始めた。
「透が応援してくれと言ったんだろ」
「ああ言ったさ。でも、あんな事してくれとは頼んでない」
「じゃあどうすればいいんだよ! 応援しろってどういう意味なんだ?」
愁也がそう言うと透は黙り込んだ。
そして、少し考え込んでる様子だった。
でも透は、その間も愁也から目を逸らさなかった。
「分かった。じゃあもう応援しなくていい」
「つまり、邪魔するなと言いたい訳だ」
「なんでそんなひねくれた受け取り方をするんだよ」
透は呆れ返ったような物言いだった。
そりゃ透には愁也の気持ちは分からないだろう。
頭もいいし、スポーツ万能だし、顔もいい。そんな男が愁也みたいなひねくれ者の考えを分かるわけない。
透には劣等感という言葉の意味を本当に理解できるかも疑わしい。
「とにかく俺は透の邪魔はしない。それでいいだろう?」
愁也はいい加減話を終わらせようとする。
そもそも透とケンカする意味が分からない。
愁也は、透から目を逸らし、教室へ向かおうとする。
すると、透がゆっくり口を開いた。
「あの後、愁也が帰って来なかったから、瑞希は凄く落ち込んでいた。泣いていたよ」
愁也は黙り込む。何だか胸が痛い。
「俺は瑞希を悲しませるような奴は絶対に許せない。例えそれが愁也だとしても」
透は愁也を睨みながら言う。
透が瑞希の事を本気で好きという気持ちが愁也にも十二分に伝わってきた。
「思い返せば、昔から透はそうだったよな」
愁也は思い出を語るように呟く。
「俺が瑞希を泣かせたら、いつも透が慰めていた」
透は真剣な顔つきで愁也の話を聞く。
「これからもお前が瑞希を守ってやれよ」
愁也は少し寂しそうな笑顔で透に笑い掛ける。
透は愁也のその笑顔を見て、なんとも言えないような複雑な顔をしていた。
愁也はその顔を見届けると、透に背を向け自分の教室へと向かっていった。
愁也はチャイムと同時に教室に入る。
そして、なるべく瑞希と目を合わせないようにして席に座った。
愁也は瑞希の方を見れなかった。
見るのが怖かった。
いったい瑞希は今、どんな顔をしているだろう?
怒っているかな?
それとも、寂しそうな顔をしているかな?
気になって集中できない。
本当、今日が終業式で良かったよ。
授業なんかこの状態で聞けるわけない。
愁也はその後も、瑞希から必死に視線を逸らし続けた。
そして、見事に一回も目線が重なる事なく、終業式は無事に終了した。
そして夏休みが始まった。
今年は瑞希がいない夏になりそうだった。
☆
予想通り今年の夏は瑞希には会わなかった。
そもそも瑞希は塾の夏期講習と吹奏楽部の練習で忙しかった。
透も塾と部活で忙しかった。
愁也は相変わらず山本君達と遊んでいた。
山本君は色んな遊びを思いつく。
そのほとんどがアホらしい遊びだった。
例えば、じゃんけんで負けた人が、立ち読みしたら怒られる事で有名な本屋で敢えて立ち読みする罰ゲームを考えたり(山田君が実行した)
例えば、じゃんけんで負けた人が、綺麗な女店員さんに向かって「Hな本はどこにありますか?」と聞かないといけない罰ゲームを考えたり(山田君が実行した)
例えば、夜の学校のプールに忍び込み遊んでいたら、警備員に見事に見つかってしまい追いかけられたり(山田君一人捕まってしまい、後日みんなで怒られてしまった)
自転車で日本一周を本気で計画していた時は、山本君は天才なのか、はたまた、ただの馬鹿なのか分からなかった。
たぶん、ただの馬鹿の方だけど。
そんなこんなで夏休みは過ぎていく。
山本君達と遊ぶのはそれなりに楽しかった。
でも、これだけ遊んでいると心配になるのが宿題だ。
今年は瑞希に手伝って貰うという裏技は使えない。
自分一人でするしかないのだ。
愁也は苦戦していた。
この夏、自分がいかに瑞希に甘えていたのか、嫌という程分かった。
瑞希のお節介は偉大だった。
しっかりしないといけない。
もう瑞希に頼るのはよそう。
自分がだらしないから、瑞希がお節介してくるんだ。
瑞希離れしないとな。
そう決意して、溜まってる宿題と格闘した夏の日だった。
愁也は悪戦苦闘しながら、なんとか山のように溜まっていた宿題を終わらす目処が立った。
一時は、なぜ人は勉強するのか?という哲学的な事を考えてしまう程、愁也は追い込まれていたが、なんとか自分の力で乗り切った。
そんなある日、宿題も終わりそうなので、残り少ない夏休みを目一杯楽しもうとラストスパートをかけるように遊んでいた。
この日も山本君が発案したくだらない遊びで遊んでいた。
遊びはくだらなければくだらない程面白かった。
そんなくだらない遊びを満喫して、家に帰ろうとしているとバッタリ瑞希の姉ちゃんと出くわした。
瑞希の姉ちゃんは三歳年上の女子高校生である。
顔は瑞希を少し大人っぽくした感じなので、一瞬、瑞希と見間違えて驚いてしまった。
瑞希も高校生になったら、こんな風な美人になるのかもしれない。
「あら、愁ちゃんじゃない。久しぶり」
瑞希の姉ちゃんが天使のような笑顔で微笑み声をかけてきた。
瑞希と基本は同じ顔なのに、なんでこんなに美人なのだろう。
はっきり言って好みの顔だ。
だけど、瑞希の姉ちゃんは二年間も付き合ってる彼氏がいる。
愁也はどうやってその彼氏を地球上から抹殺しようか一時期本気で考えていた。
「姉ちゃん、もしかしてデートの帰り?」
愁也は瑞希の姉ちゃんの服装からそう判断した。
すると、瑞希の姉ちゃんは照れたようにはにかんだ。
幸せそうだ。
彼氏め。せいぜい夜道は背中に気をつけるんだな。
「瑞希ね。今、落ち込んでいるのよねー」
「え? なんで?」
瑞希の姉ちゃんが突然そんな事を呟き始めたので、愁也は戸惑う。
「愁ちゃん、心当たりあるの?」
「ないないない全くない」
愁也はもげそうなくらい首を横に振る。
まさか、夏祭りの件をまだ引きずってるわけじゃあるまい。
「どうやらコンクールで失敗したらしいの」
「そうなんだ・・・・・・」
とりあえず自分のせいじゃない事に少し安心した。
本当は安心してはいけないのだろうけど・・・・・・。
「愁ちゃん、慰めてあげてよ」
「えっ。俺が?」
「そう。愁ちゃんが」
瑞希の姉ちゃんは無邪気な顔でなんとも難しい事を頼んできた。
そんな状態の瑞希に今の愁也が言える言葉なんて思いつかない。
「勘弁してよ。俺そういうの苦手なんだよ」
愁也は断る。瑞希を慰めるのは透の役目だ。
「愁ちゃんじゃないと駄目なんだよ」
「えー透に言っておくから、透が慰めてくれるよ」
「だから、透ちゃんじゃ駄目だったから愁ちゃんに頼んでるんでしょう」
瑞希の姉ちゃんも断固して譲らなかった。
「透が駄目だったなら、俺には無理だって」
「愁ちゃんなら、大丈夫よ。愁ちゃんがちょっと顔を見せただけで、瑞希はきっと元気になるわ」
「いやならないって」
「なるよ」
瑞希の姉ちゃんは断言する。
「どうして俺じゃないと駄目なの?」
「それは自分で考えなさい」
瑞希の姉ちゃんは意味深に微笑んだ。
愁也は、本当に勘弁してくれと思った。
瑞希の姉ちゃんは、「今日の夜、瑞希は家にちゃんといるから待ってるよ」と言って自分の家へと消えていった。
そんな事言われても愁也は気が乗らない。
とりあえず、愁也も家に帰る。
自分の部屋に入り、ベッドへ自分の全体重をあずけた。
目を閉じて考えてみる。
もう一回整理してみよう。
瑞希は落ち込んでいる。
それは瑞希が吹奏楽部の大会でミスをしたらしいから。
じゃあ、そのミスをした原因はなんだろう?
ただの練習不足?
そんなのあり得ない。瑞希は人一倍真面目な奴だ。練習で手を抜く事はあり得ないだろう。
やっぱり夏祭りの件を引きずっているのだろうか。
だったら、自分のせいだ。
そこまで考えて、愁也は考えるのを辞めた。
誰のせいでもいい。瑞希が落ち込んでいるなら例えどんな状況でも励ましてあげるべきである。
それが幼馴染みというものだ。
愁也は自然にそれが正しい事だと思った。
愁也はベットから勢い良く飛び出し、隣の家に向かった。
愁也はピンポンを鳴らさずに、瑞希の家に入った。
普通なら非常識だが、幼馴染みだから許される。
愁也は真っ直ぐ二階の瑞希の部屋に向かった。
瑞希の部屋のドアの前に立つ。
とても緊張した。
勢いでここまで来たけど、いざ、瑞希の顔を見るとなると躊躇う。
どんな顔をしていいのか分からない。
愁也は一度深呼吸をした。
大丈夫。なるようになるさ。と思い込み、覚悟を決めた。
ドアをノックする。
中から「はーい」と言う瑞希の高い声が聞こえてきた。
「瑞希。俺だけど入っていいか?」
愁也はドアに向かって言う。
「・・・・・・愁ちゃんなの?」
「そうだ」
瑞希から返事が返って来ない。
でも、ここまで来て何もせずに帰るわけには行かない。
「入るぞ」
愁也は瑞希の返事を待たずドアが開けた。
部屋の隅のベットの上で、瑞希がクッションを抱えたまま、座っていた。
久しぶりに瑞希の顔を見た。
なんとなく決まりが悪い。
愁也は瑞希の机の椅子に腰を掛けて少し距離を取った。
「かのエジソンは言った」
「えっ?」
「失敗は成功の母だと」
瑞希はポカンと口を開けて固まっていた。
「時には努力が報われない時がある。だって人間なんだからしょうがない。また立ち上がって努力すればいいだけの話さ」
「それは誰の言葉?」
瑞希は不思議そうな顔をして言う。
「忘れた」
自分で考えた言葉だったりして。
「愁ちゃん・・・・・・頭大丈夫? 何かあったの?」
何故か逆に心配された。
やっぱり慣れない事はするべきじゃないなぁと思った。
「お前が吹奏楽部の大会でポカして落ち込んでるって姉ちゃんが言ったから来てみたら案外元気そうじゃん」
愁也は口を尖らせながら言う。
「誰が吹奏楽部の大会でポカしたの?」
瑞希はまた不思議そうな顔で聞いてきた。
「いやお前が」
「私? 私は別にポカしてないよ」
「は?」
あれ、話が違うぞお姉様。
「そもそも大会は九月だよ」
「へ?」
お姉様・・・・・・騙しましたね。
「愁ちゃん、私が落ち込んでると思って来てくれたの?」
「いや瑞希の姉ちゃんが・・・・・・あれ? なにこの仕打ち?」
「馬鹿みたいだね」
「なんだと」
愁也は馬鹿と言われて憤慨する。
瑞希はそんな怒った愁也を見て笑う。
声に出していつまでも高い声で笑っていた。
しばらく笑って、今度は突然泣き始めた。
「もう愁ちゃんに嫌われちゃったと思ってた」
「えっ?」
「だって・・・・・・終業式の日、目も合わせてくれないだもん」
瑞希の瞳から涙がとめどなく溢れていた。
愁也は戸惑う。
「怖かった。愁ちゃんに嫌われるのが・・・・・・だから、会うのが怖かった」
瑞希は泣きながら言う。
愁也は瑞希をこんな気持ちにさせていた自分を恥じた。
「俺はどんな事があっても、お前と透だけは嫌いにならないよ」
愁也は真剣に言う。
「本当? 心の中で私の気持ちがうざいとか思ってない?」
「思ってたら、ここには来ないよ」
愁也は瑞希を安心させるように微笑んだ。
すると瑞希は「良かった」と本当に嬉しそうに涙を流したまま笑う。
「愁ちゃんは、やっぱり優しいね」
「俺は別に優しくねぇよ。俺が優しいなら、透は仏様だな」
「愁ちゃんには、友達がいっぱいいるじゃん。それって愁ちゃんが友達を大事にしてる証拠だよ」
瑞希は泣き止んだばかりの赤い目を細めて、柔和に笑う。
「別に普通だよ。男子って単純だから、気が合う奴と自然に一緒にいる。ただそれだけの事さ」
「そうかもしれないけど、愁ちゃんは人を惹き付ける魅力があるんだよ」
「男に好かれる魅力なんかいらないな」
愁也は苦笑いをする。
「違うよ。愁ちゃんは女の子にも人気があるんだよ」
「へ?」
愁也は思わず変な声を上げてしまった。
「愁ちゃんは、可愛いって特に三年生から人気なんだよ」
「えっ!? マジ?」
「でも、私が愁ちゃんの駄目な所をいっぱい流したから、今は人気が下降気味だけど」
「おい!なんて事をしてくれたんだ!!」
せっかく年上の女の子にちやほやされるという夢のシチュエーションが実現できたのに・・・・・・。
「だって愁ちゃんに彼女ができるのが嫌だったから」
「え?」
「ごめんね」
瑞希は小さく頭を下げる。
瑞希の意外な一面を見た感じだった。
「私、焦っていたのかもしれない。愁ちゃんが誰かのものになるのが怖かったの」
「誰かのものって・・・・・・俺は俺だよ」
「だから、あの時、愁ちゃんの気持ちを無視して、強引にキスしてしまった。最低だよね?」
「いや、別に嫌だったとか思ってないけど・・・・・・」
それは本当だ。でも、タイミングがあまりにも悪すぎた。
なんで、よりにもよって透の気持ちを知った後にしてしまったのだろう。
もし順番が逆だったら、どうなっていただろう?
でも、過ぎ去った過去は誰にも変えられない。
「でも、もう私は焦らないよ。いつまでも、待っている。だから、今まで通り愁ちゃんの側にいてもいい?」
瑞希は不安そうな顔で見つめながら愁也の答えを待っているようだった。
「当たり前だろ。だって俺達幼馴染みじゃん。今さら、そんな事気にしてどうするんだよ」
愁也はできるだけ明るい口調で言う。
「ありがとうね愁ちゃん、やっぱり優しいね」
「いや優しくないし、お礼を言うのも変だろ。今まで散々お節介してきた癖に、いきなりそんな殊勝な態度取られてもこっちは困るだろ」
「お節介って。愁ちゃん、今まで私の事そう思ってたの?」
瑞希はお節介してると自覚してなかったらしい。
それは重症だ。
「そうだよ。だから、ここ最近お前がお節介してくれなかったから、心の中がモヤモヤして気持ち悪かったんだ。お前のせいだからな」
愁也はそっぽを向きながら言う。
瑞希は唖然とした顔をした。
「凄い身勝手な言い分でビックリしたよ。でも、やっぱり愁ちゃんらしくて好きだよ」
瑞希はすっかり呆れ返って笑っていた。
「そういう事だ。じゃあ用はなくなったから帰るぞ」
愁也は、椅子から立ち上がって帰ろうとする。
「宿題やった?」
唐突に瑞希が聞いてきた。
「あと数学だけ」
「嘘! それだけ? 誰かに手伝って貰った?」
「お前、俺を馬鹿にし過ぎ。宿題ぐらい一人でやれるわ」
愁也は威張って見せた。
「そうよね。一人でやるのが宿題よね。愁ちゃんのせいで忘れてたわ」
なんとなくだけど、瑞希が少し寂しそうな顔をした気がした。
「数学さ。分からない所があるんだ」
「えっ?」
「だから、教えてくんない?」
愁也はぶっきらぼうに言う。
「しょうがないなぁ。教えてあげるよ」
瑞希は満面の笑みで答えた。
その後、瑞希の部屋で残っていた夏休みの宿題をした。
瑞希の教え方は、やっぱり上手い。
愁也が分かってない所を的確に教えてくれる。
それに瑞希が隣にいると、やっぱり落ち着いた。
恋人でもない、友達でもない、幼馴染みという関係。
この時愁也は、恋とか友情とか関係なく、もう少しだけ、この幼馴染みという関係が続けばいいのにと思うのであった。
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