幻影な彼女

齋藤御春

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生生世世、死神は想い続ける

七不思議

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 桜の花びらが舞い、麗らかな陽射しがさしこむ今日の良き日。ピシッととしたブレザーを羽織り、ネクタイを締めると同時に気も引き締まる。

 新たな門出にふさわしいこの日。私は白城高校に入学する。

 私の家の最寄り駅から電車に揺られ四駅、そこから徒歩で15分辺りのところにそれはある。

 私はここ、白城高校で憧れの彼女と親密な関係を築き、ゆくゆくは人生を共にする伴侶に成る!!という目標を掲げ、期待で胸をいっぱいに膨らませ校門をくぐった。


 昇降口付近に張られているクラス表を見ていると

 「おお、高校に入っても同じクラスじゃぁねえかぁ!良かったぜぇ!」

 私の肩に手を乗せて、ニヤリとした顔でそう言って来たのは、シュンペーであった。

 「ああ、そうだな。」

 私も心底安心した。なかなかに人見知り気質な私は、自分から他者に話しかけられず、周りがグループをつくり、楽しくワイワイしてる中で、目を潤ませてただただ窓の外の雲を見つめ、「あの雲は形がユニークだなぁ、ははっ」などと呟く、独りぼっちの寂しい休み時間を過ごしていたであろう。

シュンペーがいてくれて助かった。

 「俺たちは一緒だがぁ、玉野は別のクラスだなぁ」

 「えぇー!!ウチだけ仲間外れじゃーん!!ずるいー!!」

 玉野がパンパンに頬を膨らませながら拗ねている。何がずるいのかはよくわからんが玉野なら一人でも大丈夫であろう。

 「玉野は明るいし気さくないい奴だからきっとすぐ友達が出来るさ」

 「急に褒めんのやめてよー気持ち悪いんだけど」

 「……」

 慰めてやったのに暴言で返すとは何事か!ビンタをしてやろうかと思ったが、玉野は女なのでやめておいた。決して何十倍の仕返しが恐くてやめたのではない。それだけはハッキリさせておこう。



 
 入学式を終えた後ホームルームまで時間があったので、ボッーとしていると前の席のおカッパ頭の男がこちらに振り返り話しかけてきた。

 「君、オカルト話には興味があるかい?」

 細長く切れ長な目をさらに細め、薄気味悪い笑みを浮かべている。

 「急になんの話だ。私はオカルト話なんぞには興味はない。というか君は何者なんだ?」

 「ああ…これは失礼した。僕の名前は赤池あかいけだよ。よろしく…。」

 ヌッと差し出された手は青白く、全く血の気を感じず、気味が悪く握手をする気にはなれなかった。

 私が握手を無視すると少しムッとした表情をしたが、赤池は気を取り直して話を続けた。
 
 「知ってるかい?君…この白城高校には七不思議があるんだ…。そのうちのひとつに読んだ者の魂を吸い取るという本があるらしいんだ…。」

 「はっ!馬鹿馬鹿しい。そんなものあるわけないだろ。」

 私の完全否定を無視して、彼の口は動き続ける。

 「戦時中の話だ…この白城高校の前身…女子高時代に、あの有名な大作家である天堂院 修羅丸てんどういん しゅらまるが……」

 「いや!待て待て待て待て。なんだその神々しくも恐ろしそうな名前は!?そんな作家聞いた事ないぞ!」

 「君…天堂院 修羅丸を知らないなんて、ぜんぜん本に興味がないんだね…その無知さは恥じた方がいいよ…。」

 ムキッー!なんだコイツは!私に喧嘩を売っているのか!?本に興味がないのは認めるが、そこまで言われる筋合いはない!!

 「まぁ…いいや……続けるね。その天堂院 修羅丸が女子高生の時…」

 (天堂院 修羅丸は女だったのか!?)

「魂を込めて作り上げた一冊の本が存在するらしいんだ…その本は人間から魂を吸い取ることで自我を持ち今もここ白城高校で手に取る者を待っているんだってさ……。」

 「何故、人間の手で作られた本に魂を吸い取ることが出来るのだ?」

 「さあね…これはあくまでも七不思議だからね…。細かいところは気にするもんじゃないよ……。」

 「やはり、胡散臭すぎるぞ。ところで、その本は白城高校のどこにあるんだ?」

 「おっ……興味が湧いたかい…?」

 「決してそういう訳ではない!あまりにもガバガバな七不思議だから、場所くらいは設定されているのかと思ってな!興味がある訳ではないからな!」

 「まぁ…そういうことにしといてあげるよ…。その本は、今使われてるこの校舎じゃなくて、女子高時代に使われていた本校舎の裏にある旧校舎にあるって言われているよ…。」

 赤池がまたも薄気味悪い笑みを浮かべそう言った。





 ホームルームを終えた後の放課後。皆が部活動見学などに行く中、私の足は図書室へ向かっていた。

 決して胡散臭い七不思議に興味がある訳ではないが、ああも私に無知だの、恥じだの言われてしまっては黙って居られない。天堂院なんとかは、有名な作家というのだから図書室にも置いてあるだろう。

 そうして足早に図書室に向かいらドアを開けると、私の心臓はドクンッと大きく脈打った。

 私の視線の先には、垂れた長く艶やかな髪を耳にかけ、夢中で本を読む可憐で美しい女性。


 紛れもなく彼女であった。

  


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