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初めての魔法と初めての涙
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朝の光がやわらかく差し込む店の奥。アリスはリリィを木の机の前に座らせると、手のひらに乗るほどの小石を一つ置いた。
「まずは、火の魔法。と言っても、ほんの少し、ぽっと灯す程度よ」
「……こんな石、燃やしてどうするの?」
「燃やすんじゃなくて、火を“ともす”の。光を灯す練習。ほら、手をかざして」
リリィは渋々という顔で手をかざした。
魔法陣も杖もいらない。アリスの教えは、いつもシンプルだ。けれど、いくら集中しても、石はぴくりとも反応しない。
「……全然、だめ」
リリィはつぶやくように言い、顔を伏せた。
「最初はそんなものよ。誰でも、最初は火をつけられないし、水も動かせないわ」
「でも……父は言ってた。私には魔力が強すぎて、制御が難しいって。だから、ちゃんと学べって……」
リリィの声には怒りと不安が混ざっていた。表情は険しいままだが、瞳は揺れていた。
「魔力が強いって、悪いことじゃないわ。でも、魔法ってね、“心の状態”がそのまま出るの」
「……心?」
「そう。心がカサついていたり、しぼんでいたりしたら、魔法も上手く出ないのよ。リリィさん、昨日ちゃんと眠れた?」
「……あんまり」
リリィは答えた後、自分の膝を見つめた。
アリスはふっと微笑んで立ち上がると、棚からマグカップを二つ出した。
「じゃあ今日は、魔法はおしまい。代わりに、甘い飲み物にしましょう」
「え……?」
出されたのは、昨日と同じ――ミルクたっぷりのココア。
「砂糖は三杯、ミルクも多め。甘さは、心をほぐす魔法よ」
リリィは、そっとマグカップを持ち上げ、口をつけた。
少し熱かったが、昨日よりも上手に飲めた。
「……美味しい」
「それはよかった」
沈黙がしばらく流れたあと、リリィはぽつりと呟いた。
「……怒らないのね、失敗しても」
「怒る理由なんて、ないもの。誰だって最初はできないし、できるようになっても、時々できない日もあるわ」
その一言が、リリィの何かをほどいたのだろう。
ふいに、ぽろりと涙がこぼれた。
「……っ、なにこれ……なんで……」
リリィは慌てて目をこする。
「泣きたいときは泣けばいいの。魔法使いの特権よ」
「そんなの、知らない……」
震える声でそう返したリリィに、アリスはそっと膝をつき、目線を合わせて言った。
「じゃあ、うちの“新しいルール”にしましょうか。ここでは、泣きたいときは泣いていい」
リリィは目を丸くして、けれどすぐにまた涙がにじんだ。
その涙には、少しだけ安堵の色が混ざっていた。
「まずは、火の魔法。と言っても、ほんの少し、ぽっと灯す程度よ」
「……こんな石、燃やしてどうするの?」
「燃やすんじゃなくて、火を“ともす”の。光を灯す練習。ほら、手をかざして」
リリィは渋々という顔で手をかざした。
魔法陣も杖もいらない。アリスの教えは、いつもシンプルだ。けれど、いくら集中しても、石はぴくりとも反応しない。
「……全然、だめ」
リリィはつぶやくように言い、顔を伏せた。
「最初はそんなものよ。誰でも、最初は火をつけられないし、水も動かせないわ」
「でも……父は言ってた。私には魔力が強すぎて、制御が難しいって。だから、ちゃんと学べって……」
リリィの声には怒りと不安が混ざっていた。表情は険しいままだが、瞳は揺れていた。
「魔力が強いって、悪いことじゃないわ。でも、魔法ってね、“心の状態”がそのまま出るの」
「……心?」
「そう。心がカサついていたり、しぼんでいたりしたら、魔法も上手く出ないのよ。リリィさん、昨日ちゃんと眠れた?」
「……あんまり」
リリィは答えた後、自分の膝を見つめた。
アリスはふっと微笑んで立ち上がると、棚からマグカップを二つ出した。
「じゃあ今日は、魔法はおしまい。代わりに、甘い飲み物にしましょう」
「え……?」
出されたのは、昨日と同じ――ミルクたっぷりのココア。
「砂糖は三杯、ミルクも多め。甘さは、心をほぐす魔法よ」
リリィは、そっとマグカップを持ち上げ、口をつけた。
少し熱かったが、昨日よりも上手に飲めた。
「……美味しい」
「それはよかった」
沈黙がしばらく流れたあと、リリィはぽつりと呟いた。
「……怒らないのね、失敗しても」
「怒る理由なんて、ないもの。誰だって最初はできないし、できるようになっても、時々できない日もあるわ」
その一言が、リリィの何かをほどいたのだろう。
ふいに、ぽろりと涙がこぼれた。
「……っ、なにこれ……なんで……」
リリィは慌てて目をこする。
「泣きたいときは泣けばいいの。魔法使いの特権よ」
「そんなの、知らない……」
震える声でそう返したリリィに、アリスはそっと膝をつき、目線を合わせて言った。
「じゃあ、うちの“新しいルール”にしましょうか。ここでは、泣きたいときは泣いていい」
リリィは目を丸くして、けれどすぐにまた涙がにじんだ。
その涙には、少しだけ安堵の色が混ざっていた。
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