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初めての魔法授業
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午前の光が店の奥の作業室に差し込む。
今日は特別に、店を休みにした。机の上にはノートと羽ペン、見慣れない鉱石や草花が並んでいる。
「さあ、今日から本格的に魔法の授業を始めるわよ、リリィさん」
アリスの宣言に、リリィは少し緊張した面持ちで背筋を伸ばした。
「はい。……よろしくお願いします」
小さな手がぎゅっとペンを握る。
「まずは、魔法の基本。魔法は、“想い”と“式”で成り立ってる。意志の力と、それを形にする手順ね」
「……詠唱するだけじゃ、だめなんですか?」
「詠唱はあくまで“型”よ。大事なのは、自分の中で“なにを、どうしたいか”がはっきりしていること」
アリスは手のひらを広げ、小さく光の粒を浮かべた。
「たとえば、これは“あかり”。暗闇を照らすという意思が、形になったもの」
「すごい……。でも、私はまだできそうにない……」
「焦らなくていいのよ。まずは、気配を感じてみて。周囲の“流れ”に耳を澄ませて」
リリィは目を閉じ、静かに呼吸を整える。しばらくの沈黙――。
「……何か、冷たい風が……?」
「それ。それが“魔力の流れ”よ。いい感覚ね。そこに、自分の想いを少しだけ重ねていくの」
アリスの声に導かれ、リリィは震える手で呪文を口にした。
「《イルミナ》……」
ふっと、指先に淡い光が灯った。かすかに揺れて、すぐに消えた。
「……できた?」
「ええ。すごいじゃない、初めてでここまで形になるなんて」
リリィは目を丸くし、そのあと、ほっと息を吐いた。
「緊張で手が震えて……でも、ちょっと楽しかったかも」
「それなら上出来。魔法って、本来はそういうものよ。楽しいって思える心が、一番の力になるの」
アリスはにっこりと微笑む。
「じゃあ次は、少しだけ応用。光を“集めて”、ひとつの形にする魔法に挑戦してみましょう」
午後の日差しの中で、授業は続いた。
詠唱に苦戦したり、光が爆ぜてリリィが転びそうになったり。そのたびに、二人の笑い声が店の奥に響いた。
夕暮れが近づくころ、リリィは小さな光の蝶を生み出すことに成功していた。
「……きれい」
光の蝶はひらひらと宙を舞い、部屋を一周して消えた。
「もう、立派な魔法使いの卵ね」
アリスがそう言うと、リリィは照れくさそうに俯いた。
「わたし、ずっと……魔法を“しなさい”って言われるだけだったから。教えてくれるの、嬉しい」
その言葉に、アリスの胸が少しだけ痛んだ。
――押しつけられる魔法じゃなく、自分の意思で学ぶ魔法。それを、リリィに教えてあげたい。
「明日も、続けましょうね。もっとたくさんの魔法を」
「はい!」
夕日が差す窓辺に、またひとつ、“日常”の魔法が芽生えていた。
今日は特別に、店を休みにした。机の上にはノートと羽ペン、見慣れない鉱石や草花が並んでいる。
「さあ、今日から本格的に魔法の授業を始めるわよ、リリィさん」
アリスの宣言に、リリィは少し緊張した面持ちで背筋を伸ばした。
「はい。……よろしくお願いします」
小さな手がぎゅっとペンを握る。
「まずは、魔法の基本。魔法は、“想い”と“式”で成り立ってる。意志の力と、それを形にする手順ね」
「……詠唱するだけじゃ、だめなんですか?」
「詠唱はあくまで“型”よ。大事なのは、自分の中で“なにを、どうしたいか”がはっきりしていること」
アリスは手のひらを広げ、小さく光の粒を浮かべた。
「たとえば、これは“あかり”。暗闇を照らすという意思が、形になったもの」
「すごい……。でも、私はまだできそうにない……」
「焦らなくていいのよ。まずは、気配を感じてみて。周囲の“流れ”に耳を澄ませて」
リリィは目を閉じ、静かに呼吸を整える。しばらくの沈黙――。
「……何か、冷たい風が……?」
「それ。それが“魔力の流れ”よ。いい感覚ね。そこに、自分の想いを少しだけ重ねていくの」
アリスの声に導かれ、リリィは震える手で呪文を口にした。
「《イルミナ》……」
ふっと、指先に淡い光が灯った。かすかに揺れて、すぐに消えた。
「……できた?」
「ええ。すごいじゃない、初めてでここまで形になるなんて」
リリィは目を丸くし、そのあと、ほっと息を吐いた。
「緊張で手が震えて……でも、ちょっと楽しかったかも」
「それなら上出来。魔法って、本来はそういうものよ。楽しいって思える心が、一番の力になるの」
アリスはにっこりと微笑む。
「じゃあ次は、少しだけ応用。光を“集めて”、ひとつの形にする魔法に挑戦してみましょう」
午後の日差しの中で、授業は続いた。
詠唱に苦戦したり、光が爆ぜてリリィが転びそうになったり。そのたびに、二人の笑い声が店の奥に響いた。
夕暮れが近づくころ、リリィは小さな光の蝶を生み出すことに成功していた。
「……きれい」
光の蝶はひらひらと宙を舞い、部屋を一周して消えた。
「もう、立派な魔法使いの卵ね」
アリスがそう言うと、リリィは照れくさそうに俯いた。
「わたし、ずっと……魔法を“しなさい”って言われるだけだったから。教えてくれるの、嬉しい」
その言葉に、アリスの胸が少しだけ痛んだ。
――押しつけられる魔法じゃなく、自分の意思で学ぶ魔法。それを、リリィに教えてあげたい。
「明日も、続けましょうね。もっとたくさんの魔法を」
「はい!」
夕日が差す窓辺に、またひとつ、“日常”の魔法が芽生えていた。
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