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封印のゆらぎと決意の朝
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翌朝、王都にはひんやりとした風が吹いていた。
アリスは開店の準備を進めながら、ふと手を止めた。棚に並んだ水晶玉のひとつ――〈封印感知石〉が淡く赤く光っていた。
「……やっぱり、そう来たか」
それは、十年以上動くことのなかった魔道具だった。強大な魔物が封じられている地――〈北の遺跡〉。そこに異変が起きている証拠だった。
アリスは奥の部屋から、封印に関する古文書を取り出し、ページをめくる。額に手を当て、ため息をつく。
「この時期に、封印が揺らぐなんて……」
そこに、眠たげな顔のリリィが部屋に入ってきた。薄い寝巻きのまま、湯気の立つ紅茶の香りに誘われたらしい。
「おはようございます、アリスさん……。ん? なんか難しそうな顔してる?」
「おはよう。……ちょっと厄介なことになりそうなの」
アリスは机の上の文献を指さした。
「王都から北に離れた遺跡に、古い魔物の封印があるの。私が若い頃に関わった封印なんだけど……最近、その力が不安定になってきてるのよ」
「封印が……解けかけてるってこと?」
リリィの目が丸くなる。
「可能性はあるわ。ただ、完全に解ける前に修復できれば、被害は出ない。でも、下手すれば――この街ごと危険にさらされる」
アリスの目には、一瞬だけ迷いがよぎった。
店を離れれば、リリィをひとり残すことになる。けれど彼女を連れていくには、危険すぎる。
「……行くの?」
リリィがぽつりと聞いた。
「もちろん。でも、今回はあな――」
「わたしも行きます」
アリスの言葉を遮って、リリィが前を向いた。
「危ないのはわかってます。でも、逃げたくない。わたし、魔法を学んでるんです。だったら、何かできることがあるはず……!」
強く握りしめた拳が震えていた。怖さを隠しきれない。それでも、まっすぐに立っていた。
アリスは、数秒だけ黙って彼女を見つめた。そして、笑った。
「成長したわね。……いいわ、連れていく。でも約束して。無理はしないこと。私の指示には絶対に従うこと」
「はい!」
リリィは目を輝かせてうなずいた。
「じゃあ、準備をしましょう。魔法の杖と、外出用のローブ。それから、非常用の薬草も持っていくわ」
「お弁当も入れていいですか?」
「ふふ、それも大事ね」
窓の外に目をやると、雲が切れはじめ、青空がのぞいていた。
それは、嵐の前の静けさかもしれない。それでもアリスとリリィは、しっかりと前を向いていた。
封印の地へ――ふたりの旅が、静かに始まろうとしていた。
アリスは開店の準備を進めながら、ふと手を止めた。棚に並んだ水晶玉のひとつ――〈封印感知石〉が淡く赤く光っていた。
「……やっぱり、そう来たか」
それは、十年以上動くことのなかった魔道具だった。強大な魔物が封じられている地――〈北の遺跡〉。そこに異変が起きている証拠だった。
アリスは奥の部屋から、封印に関する古文書を取り出し、ページをめくる。額に手を当て、ため息をつく。
「この時期に、封印が揺らぐなんて……」
そこに、眠たげな顔のリリィが部屋に入ってきた。薄い寝巻きのまま、湯気の立つ紅茶の香りに誘われたらしい。
「おはようございます、アリスさん……。ん? なんか難しそうな顔してる?」
「おはよう。……ちょっと厄介なことになりそうなの」
アリスは机の上の文献を指さした。
「王都から北に離れた遺跡に、古い魔物の封印があるの。私が若い頃に関わった封印なんだけど……最近、その力が不安定になってきてるのよ」
「封印が……解けかけてるってこと?」
リリィの目が丸くなる。
「可能性はあるわ。ただ、完全に解ける前に修復できれば、被害は出ない。でも、下手すれば――この街ごと危険にさらされる」
アリスの目には、一瞬だけ迷いがよぎった。
店を離れれば、リリィをひとり残すことになる。けれど彼女を連れていくには、危険すぎる。
「……行くの?」
リリィがぽつりと聞いた。
「もちろん。でも、今回はあな――」
「わたしも行きます」
アリスの言葉を遮って、リリィが前を向いた。
「危ないのはわかってます。でも、逃げたくない。わたし、魔法を学んでるんです。だったら、何かできることがあるはず……!」
強く握りしめた拳が震えていた。怖さを隠しきれない。それでも、まっすぐに立っていた。
アリスは、数秒だけ黙って彼女を見つめた。そして、笑った。
「成長したわね。……いいわ、連れていく。でも約束して。無理はしないこと。私の指示には絶対に従うこと」
「はい!」
リリィは目を輝かせてうなずいた。
「じゃあ、準備をしましょう。魔法の杖と、外出用のローブ。それから、非常用の薬草も持っていくわ」
「お弁当も入れていいですか?」
「ふふ、それも大事ね」
窓の外に目をやると、雲が切れはじめ、青空がのぞいていた。
それは、嵐の前の静けさかもしれない。それでもアリスとリリィは、しっかりと前を向いていた。
封印の地へ――ふたりの旅が、静かに始まろうとしていた。
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