異世界で異分子の俺は陰に干渉する

Pisutatio

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10.振り出し

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目が覚めた俺は不思議な事が起きたと思った。
俺昨日は脱走して洞窟で寝なかったっけ?
何で部屋に戻ってきてるんだろ。
え、まさか脱走したの全部夢だった!?
あんなに苦労して外に出たと思ったのに夢オチ!?
あ、最後の方グラディウス様も出てきた気がする。しかも、なんか俺、裸で抱きついてなかった?
じゃあ、夢だな。うん、夢だ。夢じゃないとありえない。俺がグラディウス様にそんなことするなんて。でも、いい夢だったな…。

俺は夢を繰り返し思い出した。
グラディウス様の胸に抱きつき顔を埋める俺。恥ずかしすぎる。
年齢=恋人いない歴の俺は、刺激が強い夢に頭を沸騰させた。
顔が熱い…。
心なしか頭も痛いし体も重いような…。

え?
視線を身体の方へ向けると、グラディウス様がベッド端に座り天蓋の柱にもたれ掛かるようにしながら、書類に目を通していた。
なぜここに。
俺がもぞもぞ動いたので気が付いたのか、グラディウス様は顔をこちらに向けた。

ひぃ。相変わらず顔良っ!

「体調はどうだ?」
「へ、平気。」

グラディウス様は、嘘つけと言いながら手を俺のデコへ持ってくる。
「やはり、熱いな。昨日あんなに濡れて震えていたからな。」
え、ちょっとまって。
「それって、俺の夢なんじゃ…」
「まだ寝ぼけてんのか?俺が迎えに行かなかったらお前今頃死んでたぞ。」
俺は、グラディウス様の手から後退る。
まさか…あの夢は現実で、夢は夢じゃなかったってこと!?
うわぁぁぁ。まじか…。
「お、俺、変なことしてないよな?あんまり覚えてなくて…。」
「変なことって?」
「い、いい!なんでもない!」
夢について話してると思い出してしまって更に熱が顔に集まる。
俺、グラディウス様に何てことを…。
グラディウス様はため息をついた。
「お前は俺の事嫌いだろうが、今は我慢してここにいてくれ。外に出たいときは、俺に言え、護衛をつける。」
だから、俺はここにいちゃいけないんだって。
俺がここにいたら確実にストーリーが変わるし、いつ主人公がこっちに来るか分からない。

え、ちょっとまって?
「今なんて言った?」
「暫くは、ここに留まれ。外に出たいなら…」
「違う違う、その前。」
「お前は俺のことが嫌いだろうが…」
「俺、グラディウス様のこと嫌いなんて言ったっけ?」
「は?お前の俺に対する反応はどう見ても嫌いだろ…」
「嫌いなわけないじゃん!」
あっ。やべ…
食い気味に否定してしまった。
「え?」
「え?」

待って、これ否定したはいいけど、グラディウス様本人に好きです、大好きです、なんて言えるわけなくね!?
「嫌いではない、のか…。じゃあ、さっきからその反応はなんなんだ。」
「あ、えっと。グラディウス様の顔が…」
「俺の顔が?」
「俺の好きな人に似ていて…その…あんまり近寄られると困るというか、俺が意識しちゃうというか…。」

ハハハッ…。
なんだよ、この死にそうな空気は!
「好きな人が、いるのか?」
「え?あ、うん?」
「今でも?」
「今もこれからもずっと好き!俺の愛に終わりはない!」


………………。



なんだよ、黙りこくっちゃって。
めちゃめちゃオタク宣言してしまった。
俺がただ恥ずかしいだけじゃないか。
「…つまり、俺の顔はお前の好みのタイプというわけか?」
「え?まぁ、そうだね?」
好みのタイプというか、好きな人本人ですけどね!?
「そうか。」
グラディウス様は1言返事をして再び黙ってしまった。

ん?どういう空気?
「あ、あれ!さっき言ってた暫くの間ここにいてくれってどういう意味?」
俺はこの気まずい空気を打破すべく質問をした。
「あぁ、お前はまだ魔力のコントロールもできないのに、外にはお前を狙う者たちがいるだろ。それに、魔法に耐性がないからもしもの時、回復魔法をかけることができない。だから、魔力のコントロールと魔法の耐性ができるまでここにいろ。」

魔法の耐性…。
それは初めて聞く内容だった。
ゲームで出てこなかった設定だな…。主人公は、登場してからすぐ魔法を使えていたし、耐性ができてたのか?だから、わざわざ説明しなかったのかな。
「ここにいる間は魔力の訓練と、自分以外の魔力を馴染ませる練習をする。」

確かに、今の状態で1人で外に出て何かに襲われたとき対処できない。1人でも大丈夫なように術を身に付けてからでもいいのか?
すぐ魔法を覚えて出ていけば問題はないのか?
うんー。
俺は今の最善の選択肢がどれか決めかねている。
俺が自然に退場できる道はないのか?

あ、そうだ。

「ここにいる間は俺を騎士団の団員にしてくれないか?」
騎士団の団員であれば、災害時の救援や魔物討伐の遠征へ行く機会があるだろう。
その際に、行方不明かもしくは死亡したとすれば自然に退場できるのでは、と考えた。
ただ、実際にそうなるわけじゃなくて、そうなったと思わせればいい。
我ながらいい案じゃないか?

「あぁ、元からその予定だ。魔法の訓練をするなら騎士団員として訓練に混ざるのが1番いい。」

ナイスすぎる!
流石グラディウス様!
「俺から言っといて何だけど、俺みたいなやつがしかも、公爵家の騎士団に突然入っていいの?他の団員の人になにか言われない?」
「それはないな。なんせ俺は団長だからな。俺に文句言う奴はいない。」

あ、そうだった。そういえば、この人公爵家当主でありながら、団長やってるすごい人だった。

「本当は俺の側近として置くつもりだったのだが。」
「え?いやいやいや、それは駄目でしょう!俺なんか素性の知れない、実力もないやつがそんな役割!」
何いってんだこの人。
側近って仕事のサポートしたり、護衛したりするんだよね?
護衛対象より弱い護衛なんて誰も認めないでしょ!

「その為の、騎士団への配属だ。早く周りのやつに認めてもらうんだぞ。」
まーじで、なんの冗談?
俺なんかの実力が認められるわけない。初日にボコボコにされてパシリにでも使わされるぞ。

「が、頑張るよ?」

グラディウス様は、俺の言葉を聞いて安心したのか、フッと笑みをこぼして俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。


わっ!ちょっと!?その笑顔も反則だけど、それよりも推しに撫でられてるんですけど!?俺今日死ぬ!?
これ、子供相手にはやるけどいい年の自分がやられるのは恥ずかしいもんだな。

「長々と話して悪かったな。騎士団での活動はお前の体調が戻ってからだ。それまでゆっくりしてろ。」
「わ、わかった。」

グラディウス様は、仕事に戻った。
とりあえず、一段落ついた、のか?
俺の心臓は、忘れていた緊張を思い出したかのように鼓動をはやめ、顔に熱を集めた。
汗も全身から吹き出すように出ている。

頭痛いな…。
あ、俺風邪引いてたんだった。
俺は大人しく寝ることにした。



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