2 / 5
2.アルバートの過去
しおりを挟む
執事とメイド長に伝言を頼んだ後、夫婦の寝室に戻ると布団の中に潜る。
結婚初日からプランBを発動させる羽目になるとは…
シルキード子爵家はセレナがサイファ侯爵家に嫁入りすることになった時点で、三歳年下の妹が継ぐことに決まってしまって、もうその為の教育も始まっている。
白い結婚だからといって、元いた場所には戻れない。
そもそもこの結婚は家と家の契約でもあるのだから。
アルバート様は学園時代、当時の騎士団長の子息、エメルディ公爵家の子息と共に当時の王太子殿下の側近候補として行動を共にしていた。
そこに現れたのが、男爵の庶子で市井育ちのナタリー様。
王太子殿下(当時)にも高位貴族令息の側近候補三人にも婚約者がいたというのに学園ではナタリー様を囲んでいたらしい。
礼儀も礼節も弁えない令嬢のどこがいいのか、さっぱり分からないけれど、顔が可愛らしいのは確かみたいだから、顔、なのかしら?
市井育ちだから男女の距離が近くて気安いって話だし、そこなのかしら?
わたしはアルバート様とは十歳離れているから、学園で一緒になることはなかったし、噂で聞いただけだけど。
なぜかは分からないけど、王太子殿下(当時)と騎士団長(当時)子息、エメルディ公爵子息はわざわざ卒業パーティーで揃って婚約破棄宣言をしたらしい。
ナタリー様を虐めたからとかなんとか。
隣国で流行ってて、お父様にお土産でもらった本を当時読んでて、その本の中とそっくりの出来事で、そな噂を聞いても全く現実感がなくてちょっとだけワクワクしてしまった。
だけど、本の世界より現実はシビアで、そもそも政略の為の婚約者を蔑ろにして、他の女を側に置くなんて許されない。
虐めだなんだって言うけど、王太子殿下(当時)の婚約者だったパールモント公爵令嬢が本気でナタリー様を排除しようと思ったら、既にこの世にナタリー様はいないだろう。
当然のように返り討ちにあい、彼らの有責にて婚約が破棄されることになった。
王太子殿下は王太子の座から下ろされ、離宮に幽閉、騎士団長は息子の失態の為その座を退き、当の本人は辺境の警備に回された。
公爵子息は跡取りから外され地方に飛ばされたという。
この騒動の中心人物ナタリー様は一応、王子妃候補として、王宮で教育をされているらしいが、その後その姿を見た者はいない。
当然のように、何年経っても候補のまま。
王子殿下もナタリー様もこのまま表舞台に出てくることはないという専らの噂だ。
生きてるかどうかすら怪しい気がする。
アルバート様はどうなのかと言えば、たまたまなのか、わざとなのか、卒業パーティーの場にはいなかった。
そもそもアルバート様の元婚約者の侯爵令嬢は一つ年上で、既に卒業されてたから、ナタリー様を虐めようもなかったのだけれど。
ナタリー様を囲んでいたメンバーとして認識されてしまっていたのが問題だったのか、正確なところは分からないが、婚約は解消された。
それでも穏便に解消されたらしく、アルバート様にはこれといった罰もなかった。
その後、元婚約者の侯爵令嬢は外国の高位貴族に嫁いだらしいのだが、アルバート様はそれから十年、結婚しなかった。
サイファ侯爵の一人息子のアルバート様は二十八歳になっていて、いい加減、結婚して後継を残さなければならない。
サイファ侯爵はどうしても血の繋がった自分の子に跡を継がせたかったらしい。
女性関係を除けばアルバート様は優秀だという噂だから、尚更だろう。
そこで問題となるのが、過去の醜聞なのだ。
確かに罪に問われるようなことは何もしていないのだが、なまじ何年も結婚しなかったばかりか恋人を作ることもしなかったことで、ナタリー様のことを今も思っていると、嫌厭されてしまったのだ。
同年代の令嬢はとっくに結婚しているし、年下の令嬢もいくら次期侯爵で見目がよくても、他の人に操を捧げているような男は避けたい。
自分がどれだけ粗雑に扱われるかわかったもんじゃないからね。
事実、アルバート様はあれからずっと女性には塩対応、結婚する気ゼロの雰囲気を醸し出していた。
残ったのは、爵位目当て、お金目当ての下心満載の下位貴族の令嬢だけ。
そんな中、サイファ侯爵が目をつけたのが、シルキード子爵家。
シルキード子爵家は他国との貿易で財を成していて、下手な高位貴族よりも財産をもっているので、お金目当てで動くことはない。
そして、シルキード子爵側にも利があったのだ。
サイファ侯爵領は海に面していて、大きな港がある。
シルキード子爵の新しく商売相手となった島国との貿易は、その港を使用して行っていて、港の使用料を格安にするという条件に飛びついた。
しかし、三歳年下の妹がこの結婚を嫌がった為に、本来なら子爵家を継ぐはずだったセレナにおはちが回ってきたのだ。
自分だけが政略結婚の被害者面をしているのが気に入らない。
「元はと言えばお前のせいだろうが!ばーか!」
枕にボスボスと拳を叩き込んだあと、ふーっと息を吐き出すと、ぎゅっと目を瞑った。
もう考えても仕方ないわ。
これからは好きにさせてもらう!
結婚初日からプランBを発動させる羽目になるとは…
シルキード子爵家はセレナがサイファ侯爵家に嫁入りすることになった時点で、三歳年下の妹が継ぐことに決まってしまって、もうその為の教育も始まっている。
白い結婚だからといって、元いた場所には戻れない。
そもそもこの結婚は家と家の契約でもあるのだから。
アルバート様は学園時代、当時の騎士団長の子息、エメルディ公爵家の子息と共に当時の王太子殿下の側近候補として行動を共にしていた。
そこに現れたのが、男爵の庶子で市井育ちのナタリー様。
王太子殿下(当時)にも高位貴族令息の側近候補三人にも婚約者がいたというのに学園ではナタリー様を囲んでいたらしい。
礼儀も礼節も弁えない令嬢のどこがいいのか、さっぱり分からないけれど、顔が可愛らしいのは確かみたいだから、顔、なのかしら?
市井育ちだから男女の距離が近くて気安いって話だし、そこなのかしら?
わたしはアルバート様とは十歳離れているから、学園で一緒になることはなかったし、噂で聞いただけだけど。
なぜかは分からないけど、王太子殿下(当時)と騎士団長(当時)子息、エメルディ公爵子息はわざわざ卒業パーティーで揃って婚約破棄宣言をしたらしい。
ナタリー様を虐めたからとかなんとか。
隣国で流行ってて、お父様にお土産でもらった本を当時読んでて、その本の中とそっくりの出来事で、そな噂を聞いても全く現実感がなくてちょっとだけワクワクしてしまった。
だけど、本の世界より現実はシビアで、そもそも政略の為の婚約者を蔑ろにして、他の女を側に置くなんて許されない。
虐めだなんだって言うけど、王太子殿下(当時)の婚約者だったパールモント公爵令嬢が本気でナタリー様を排除しようと思ったら、既にこの世にナタリー様はいないだろう。
当然のように返り討ちにあい、彼らの有責にて婚約が破棄されることになった。
王太子殿下は王太子の座から下ろされ、離宮に幽閉、騎士団長は息子の失態の為その座を退き、当の本人は辺境の警備に回された。
公爵子息は跡取りから外され地方に飛ばされたという。
この騒動の中心人物ナタリー様は一応、王子妃候補として、王宮で教育をされているらしいが、その後その姿を見た者はいない。
当然のように、何年経っても候補のまま。
王子殿下もナタリー様もこのまま表舞台に出てくることはないという専らの噂だ。
生きてるかどうかすら怪しい気がする。
アルバート様はどうなのかと言えば、たまたまなのか、わざとなのか、卒業パーティーの場にはいなかった。
そもそもアルバート様の元婚約者の侯爵令嬢は一つ年上で、既に卒業されてたから、ナタリー様を虐めようもなかったのだけれど。
ナタリー様を囲んでいたメンバーとして認識されてしまっていたのが問題だったのか、正確なところは分からないが、婚約は解消された。
それでも穏便に解消されたらしく、アルバート様にはこれといった罰もなかった。
その後、元婚約者の侯爵令嬢は外国の高位貴族に嫁いだらしいのだが、アルバート様はそれから十年、結婚しなかった。
サイファ侯爵の一人息子のアルバート様は二十八歳になっていて、いい加減、結婚して後継を残さなければならない。
サイファ侯爵はどうしても血の繋がった自分の子に跡を継がせたかったらしい。
女性関係を除けばアルバート様は優秀だという噂だから、尚更だろう。
そこで問題となるのが、過去の醜聞なのだ。
確かに罪に問われるようなことは何もしていないのだが、なまじ何年も結婚しなかったばかりか恋人を作ることもしなかったことで、ナタリー様のことを今も思っていると、嫌厭されてしまったのだ。
同年代の令嬢はとっくに結婚しているし、年下の令嬢もいくら次期侯爵で見目がよくても、他の人に操を捧げているような男は避けたい。
自分がどれだけ粗雑に扱われるかわかったもんじゃないからね。
事実、アルバート様はあれからずっと女性には塩対応、結婚する気ゼロの雰囲気を醸し出していた。
残ったのは、爵位目当て、お金目当ての下心満載の下位貴族の令嬢だけ。
そんな中、サイファ侯爵が目をつけたのが、シルキード子爵家。
シルキード子爵家は他国との貿易で財を成していて、下手な高位貴族よりも財産をもっているので、お金目当てで動くことはない。
そして、シルキード子爵側にも利があったのだ。
サイファ侯爵領は海に面していて、大きな港がある。
シルキード子爵の新しく商売相手となった島国との貿易は、その港を使用して行っていて、港の使用料を格安にするという条件に飛びついた。
しかし、三歳年下の妹がこの結婚を嫌がった為に、本来なら子爵家を継ぐはずだったセレナにおはちが回ってきたのだ。
自分だけが政略結婚の被害者面をしているのが気に入らない。
「元はと言えばお前のせいだろうが!ばーか!」
枕にボスボスと拳を叩き込んだあと、ふーっと息を吐き出すと、ぎゅっと目を瞑った。
もう考えても仕方ないわ。
これからは好きにさせてもらう!
12
あなたにおすすめの小説
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
後悔などありません。あなたのことは愛していないので。
あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」
婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。
理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。
証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。
初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。
だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。
静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。
「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」
ついで姫の本気
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。
一方は王太子と王女の婚約。
もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。
綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。
ハッピーな終わり方ではありません(多分)。
※4/7 完結しました。
ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。
救いのあるラストになっております。
短いです。全三話くらいの予定です。
↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。
4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる