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31.王宮のパーティー③

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 レオナルド様の後ろで、扇子でバカの頭をスコーンとぶっ叩きたい衝動と戦っていると、ザワザワとした会場が少し静かになった。

「ギルバート、何をしている」
 大きな声ではないのに、その声に皆がベルナルド王太子殿下の前に道を開ける。

「いや、これはその」
 流石のギルバートでも酷いことを言ったことは自覚があるらしい。
 だからこそ、部屋に連れ込んで内密に話をしようとしていたのだから。

 でも、ほんのちょっと思い通りにいかなかっただけで、すぐにキレて周りが見えなくなってボロを出すあたり愚かとしか言いようがない。

 周りは既にギルバートの発言を聞いていて、あまりの酷さに眉を顰めている。

「ギルバート、モントレート侯爵令嬢に何を言ったんだい?」
 口調は穏やかだが、目はこっちが凍りついてしまいそうなほど冷たい。
 
「えっ…」
 口をぱくぱくと動かすだけで、言葉にならない。

「言えないようなことを言ったのか?パーティーという公共の場で」
 ベルナルド王太子の目が細められて益々冷たさが増していく。

「レオナルド、ギルバートは何を言ったのかな」
 答えられないギルバートからレオナルドに目線を向けた。

「ジュリア嬢に側妃にしてやるなどとふざけたことを仰られてましたよ」
 レオナルド様の目は射殺さんばかりに鋭くギルバートを睨みつけている。

「まさかジュリア嬢にそんなことを?」
 王太子殿下は態とらしいくらい驚いた様子で目を見開いた。

「そもそもそんなこと許されるわけないだろう。お前のその頭は飾りなのか?我が国では結婚後三年子どもができなくて初めて側妃が認められる」
 ギルバートはポカンとした顔をして、冷たい表情の王太子殿下を見ている。

 あれは絶対知らなかった顔だ。
 アホだから、王族、高位貴族なら知っていて当たり前のことが頭から抜け落ちていたのだろう。
 言われたことが耳から耳に通り抜けて、最初から覚えていないのか。

 わたくしも言われたことがあまりにも馬鹿馬鹿しくて腹が立ったから、そのことにすぐに思い至らなかったけど…

「それとも、その予定があるのか?」

 側妃を娶るということは自分が王太子、国王になるつもりだと言ったことになる。
 
 ギルバート、終わったな。

「えっ…いや、え?」
 会話についていけてないのか、目を白黒させてまともに答えることができない。

 ギルバートには相当不味い発言だったことが理解できてないらしい。

「ギルバートを拘束しろ。国王と王太子を廃そうとした疑いがある」
 ベルナルド王太子殿下の凛とした声に、会場の隅に控えていた騎士が未だ意味が分からず呆然としたままのギルバートを素早く拘束した。

「牢へ連れて行け」

「へっ?あっ兄上?はっ放せ!俺は王子だぞ!こんなこと許されるわけない!父上!母上!」
 ギルバートが国王陛下夫妻を見るが、陛下は苦々しい顔をしていて、王妃様は関わりたくないとばかりに目を逸らしている。
 往生際悪く抵抗して、口を塞がれて引き摺られて退場して行く。

「そこの女も共犯の疑いがある。一緒に連れて行け」
 形勢が悪いと判断したのか、逃げ出そうとしていたエレナも拘束され連れ出されて行く。

「いや!放して!わたしは関係ないわ!ギルが勝手に言ったたけ」
 煩く騒ぐエレナはこれまた口を塞がれて出て行った。

 
 始まって間がなかったパーティーは混沌としたまま中止された。

 会場にいた者たちは驚きながらも、第二王子が王位簒奪を目論み拘束されたというニュースを家に持ち帰る為に素早く王宮を後にしていった。


 わたくしもその流れに乗って、一緒に王宮を出たかったけれど、王太子殿下に残るように言われてしまった。

 あれよあれよという間にギルバートが反逆者として捕らえられたけれど、これはわたくしがきっかけということになるのかしら?
 あのおバカなギルバートが王位簒奪なんて考えて行動するわけない。
 そんなことは王太子殿下も分かっていての捕縛劇。
 こんなことに関わりたくないんだけど。
 本当に切実に帰りたい。
 

 お父様、お母様、レオナルド様と共に客室に案内されて、王太子殿下を待つことになった。
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