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9.悪役令嬢(仮)?
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おはようございます。
なぜか、今日もメルトロー侯爵家のふかふかな馬車に揺られているリーリエです。
こんなにふかふかの馬車に何回も乗ると、この後、乗り合い馬車の硬さにお尻が耐えられなくなりそうで不安です。
「前メルトロー侯爵から、毎日の学院への送迎を命じられています」
馬車の御者さんの言葉にぽっかりお口が開いてしまいました。
いけない、いけない。こんなところをマルトレイ夫人に見られたら、「淑女としてあるまじきお顔です」と怒られてしまいます。
「着きましたよ」
馬車の御者に外から、声を掛けられて慌てて返事して馬車から降りた。
今日もレオナルドは降車に手を貸してくれる。
その度に視線を感じるが、気付かない振りをしている。
レオナルドさんは国から派遣されてる護衛なんだから、わたしが勝手にどうこうすることはできないのよーって心の中で叫びながら。
きっと、平民のくせにあんな立派な馬車であんなにかっこいい護衛を連れてるなんて、生意気だわ!とか思われてるに違いない。
定番のヒロインいじめが始まりそうで、憂鬱になる。
今日は一昨日と昨日に行われたテスト結果によるクラス分けの発表がある。
一番成績がいい人が集まるのがAクラス、次がBクラス、Cクラスの順になる。
ざまぁされるヒロインにならないためにはAクラスがいい気がするが、攻略対象者がいるのはきっとAクラスで、お近づきにならないためには一緒じゃない方がいい気がする。
ただ、確実に攻略対象者筆頭のライハート殿下と怪しいアンドリューも学年が違う。
色々思うところはあるものの、残念ながら、思った通りのクラスを狙えるような実力はないのだけれど…
マルトレイ夫人の厳しい教えのおかげか、魔法学院の筆記テストは思っていたほど、難しくなかった。
実技は微妙だったが、魔法が使えるようになったばかりだ。
周りはファイアボールだのアクアボールだのと分かりやすくすごかったが、元々聖属性の魔法は派手なものではないし、仕方ないと思う。
指先に魔力を集めて、魔力検査の時の虹色のひかりを思い出して、手のひらに虹色の光の玉を作った。
ただの光で、毒にも薬にもならないものだ。
周りが無言になってしまったのが、本当に居た堪れなかった。
掲示板でクラス割りを確認すると、結局、リーリエのクラスはAクラスだった。
実技がイマイチだったのに、大丈夫なのかしら?
Aクラスになったのが、いいことなのかどうか…
ドキドキしながら、教室に入る。
まだ、比較的早い時間だったので、まばらにしか人がいない。
当然ながら、知り合いは一人もいないので、話す相手もいない。
席は自由なようなので、リーリエは目立たないと思われる一番後ろの窓際の席を確保した。
そこから入ってくる人たちを観察していると、一際綺麗な令嬢が入ってきた。
艶やかなチョコレートブラウンの長い髪にエメラルドのような美しい瞳のその令嬢は、何人かの令嬢に囲まれている。
その中心で上品な笑みを浮かべいる彼女は明らかに別格で、見ただけで上位貴族のご令嬢と分かる。
うわー、お人形さんみたい。スタイルもバツグンだし。
リーリエちゃんはかわいい系美少女だけど、このご令嬢はキレイ系で少し大人っぽい。
こんな完璧な人、本当にいるのね。
リーリエがすっかり見惚れているいると、周囲の生徒たちも彼女に注目している。
「パトリシア・タールセント公爵令嬢よ。相変わらず、お綺麗よね」
「ライハート殿下の婚約者でいらっしゃるのよね?美男美女でお似合いよね。憧れるわ」
耳をダンボにして、噂話を聞いていると、聞き捨てならない話が聞こえてきた。
ライハート殿下の婚約者!
まさか、悪役令嬢(仮)?
あんなに優しそうな人なのに?
やっぱり、本当は悪役じゃない悪役令嬢?
だとすると、わたしがざまぁされるヒロイン決定じゃない?
リーリエは驚きのあまり、まじまじと見つめていたらしく、ふとパトリシアと目が合った。
「あら?あなた、リーリエ様?」
小首を傾げるパトリシアにリーリエは目を瞬かせた。
へ?なんでわたしの名前を?
「聖属性の魔力をお持ちの方ですわよね?」
リーリエが頷くと、嬉しそうに笑うと、空いていたリーリエの隣の席に座った。
「パトリシア・タールセントと申します。よろしくお願いしますね」
「はっはい。リーリエと申します。こちらこそ、よろしくお願いします」
パトリシアの笑顔はとても可憐で、真正面からそれを食らったリーリエは顔を赤くした。
わたしには百合の気はないのよ!でもあまりにも可愛すぎるのよ~!と、リーリエは誰にも何も言われてないのに、必死に心の中で言い訳していた。
なぜか、今日もメルトロー侯爵家のふかふかな馬車に揺られているリーリエです。
こんなにふかふかの馬車に何回も乗ると、この後、乗り合い馬車の硬さにお尻が耐えられなくなりそうで不安です。
「前メルトロー侯爵から、毎日の学院への送迎を命じられています」
馬車の御者さんの言葉にぽっかりお口が開いてしまいました。
いけない、いけない。こんなところをマルトレイ夫人に見られたら、「淑女としてあるまじきお顔です」と怒られてしまいます。
「着きましたよ」
馬車の御者に外から、声を掛けられて慌てて返事して馬車から降りた。
今日もレオナルドは降車に手を貸してくれる。
その度に視線を感じるが、気付かない振りをしている。
レオナルドさんは国から派遣されてる護衛なんだから、わたしが勝手にどうこうすることはできないのよーって心の中で叫びながら。
きっと、平民のくせにあんな立派な馬車であんなにかっこいい護衛を連れてるなんて、生意気だわ!とか思われてるに違いない。
定番のヒロインいじめが始まりそうで、憂鬱になる。
今日は一昨日と昨日に行われたテスト結果によるクラス分けの発表がある。
一番成績がいい人が集まるのがAクラス、次がBクラス、Cクラスの順になる。
ざまぁされるヒロインにならないためにはAクラスがいい気がするが、攻略対象者がいるのはきっとAクラスで、お近づきにならないためには一緒じゃない方がいい気がする。
ただ、確実に攻略対象者筆頭のライハート殿下と怪しいアンドリューも学年が違う。
色々思うところはあるものの、残念ながら、思った通りのクラスを狙えるような実力はないのだけれど…
マルトレイ夫人の厳しい教えのおかげか、魔法学院の筆記テストは思っていたほど、難しくなかった。
実技は微妙だったが、魔法が使えるようになったばかりだ。
周りはファイアボールだのアクアボールだのと分かりやすくすごかったが、元々聖属性の魔法は派手なものではないし、仕方ないと思う。
指先に魔力を集めて、魔力検査の時の虹色のひかりを思い出して、手のひらに虹色の光の玉を作った。
ただの光で、毒にも薬にもならないものだ。
周りが無言になってしまったのが、本当に居た堪れなかった。
掲示板でクラス割りを確認すると、結局、リーリエのクラスはAクラスだった。
実技がイマイチだったのに、大丈夫なのかしら?
Aクラスになったのが、いいことなのかどうか…
ドキドキしながら、教室に入る。
まだ、比較的早い時間だったので、まばらにしか人がいない。
当然ながら、知り合いは一人もいないので、話す相手もいない。
席は自由なようなので、リーリエは目立たないと思われる一番後ろの窓際の席を確保した。
そこから入ってくる人たちを観察していると、一際綺麗な令嬢が入ってきた。
艶やかなチョコレートブラウンの長い髪にエメラルドのような美しい瞳のその令嬢は、何人かの令嬢に囲まれている。
その中心で上品な笑みを浮かべいる彼女は明らかに別格で、見ただけで上位貴族のご令嬢と分かる。
うわー、お人形さんみたい。スタイルもバツグンだし。
リーリエちゃんはかわいい系美少女だけど、このご令嬢はキレイ系で少し大人っぽい。
こんな完璧な人、本当にいるのね。
リーリエがすっかり見惚れているいると、周囲の生徒たちも彼女に注目している。
「パトリシア・タールセント公爵令嬢よ。相変わらず、お綺麗よね」
「ライハート殿下の婚約者でいらっしゃるのよね?美男美女でお似合いよね。憧れるわ」
耳をダンボにして、噂話を聞いていると、聞き捨てならない話が聞こえてきた。
ライハート殿下の婚約者!
まさか、悪役令嬢(仮)?
あんなに優しそうな人なのに?
やっぱり、本当は悪役じゃない悪役令嬢?
だとすると、わたしがざまぁされるヒロイン決定じゃない?
リーリエは驚きのあまり、まじまじと見つめていたらしく、ふとパトリシアと目が合った。
「あら?あなた、リーリエ様?」
小首を傾げるパトリシアにリーリエは目を瞬かせた。
へ?なんでわたしの名前を?
「聖属性の魔力をお持ちの方ですわよね?」
リーリエが頷くと、嬉しそうに笑うと、空いていたリーリエの隣の席に座った。
「パトリシア・タールセントと申します。よろしくお願いしますね」
「はっはい。リーリエと申します。こちらこそ、よろしくお願いします」
パトリシアの笑顔はとても可憐で、真正面からそれを食らったリーリエは顔を赤くした。
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