【完結】もしかしてヒロインなのでしょうか?断固拒否ということで

桃田みかん

文字の大きさ
10 / 32

9.悪役令嬢(仮)?

しおりを挟む
 おはようございます。
 なぜか、今日もメルトロー侯爵家のふかふかな馬車に揺られているリーリエです。
 こんなにふかふかの馬車に何回も乗ると、この後、乗り合い馬車の硬さにお尻が耐えられなくなりそうで不安です。

「前メルトロー侯爵から、毎日の学院への送迎を命じられています」
 馬車の御者さんの言葉にぽっかりお口が開いてしまいました。
 いけない、いけない。こんなところをマルトレイ夫人に見られたら、「淑女としてあるまじきお顔です」と怒られてしまいます。



「着きましたよ」
 馬車の御者に外から、声を掛けられて慌てて返事して馬車から降りた。
 今日もレオナルドは降車に手を貸してくれる。

 その度に視線を感じるが、気付かない振りをしている。
 レオナルドさんは国から派遣されてる護衛なんだから、わたしが勝手にどうこうすることはできないのよーって心の中で叫びながら。

 きっと、平民のくせにあんな立派な馬車であんなにかっこいい護衛を連れてるなんて、生意気だわ!とか思われてるに違いない。

 定番のヒロインいじめが始まりそうで、憂鬱になる。



 今日は一昨日と昨日に行われたテスト結果によるクラス分けの発表がある。
 一番成績がいい人が集まるのがAクラス、次がBクラス、Cクラスの順になる。

 ざまぁされるヒロインにならないためにはAクラスがいい気がするが、攻略対象者がいるのはきっとAクラスで、お近づきにならないためには一緒じゃない方がいい気がする。
 ただ、確実に攻略対象者筆頭のライハート殿下と怪しいアンドリューも学年が違う。

 色々思うところはあるものの、残念ながら、思った通りのクラスを狙えるような実力はないのだけれど…

 マルトレイ夫人の厳しい教えのおかげか、魔法学院の筆記テストは思っていたほど、難しくなかった。
 実技は微妙だったが、魔法が使えるようになったばかりだ。
 周りはファイアボールだのアクアボールだのと分かりやすくすごかったが、元々聖属性の魔法は派手なものではないし、仕方ないと思う。
 
 指先に魔力を集めて、魔力検査の時の虹色のひかりを思い出して、手のひらに虹色の光の玉を作った。
 ただの光で、毒にも薬にもならないものだ。

 周りが無言になってしまったのが、本当に居た堪れなかった。


 掲示板でクラス割りを確認すると、結局、リーリエのクラスはAクラスだった。
 
 実技がイマイチだったのに、大丈夫なのかしら?
 Aクラスになったのが、いいことなのかどうか…

 ドキドキしながら、教室に入る。
 まだ、比較的早い時間だったので、まばらにしか人がいない。
 当然ながら、知り合いは一人もいないので、話す相手もいない。

 席は自由なようなので、リーリエは目立たないと思われる一番後ろの窓際の席を確保した。

 そこから入ってくる人たちを観察していると、一際綺麗な令嬢が入ってきた。
 艶やかなチョコレートブラウンの長い髪にエメラルドのような美しい瞳のその令嬢は、何人かの令嬢に囲まれている。
 その中心で上品な笑みを浮かべいる彼女は明らかに別格で、見ただけで上位貴族のご令嬢と分かる。

 うわー、お人形さんみたい。スタイルもバツグンだし。
 リーリエちゃんはかわいい系美少女だけど、このご令嬢はキレイ系で少し大人っぽい。
 こんな完璧な人、本当にいるのね。

 リーリエがすっかり見惚れているいると、周囲の生徒たちも彼女に注目している。

「パトリシア・タールセント公爵令嬢よ。相変わらず、お綺麗よね」
「ライハート殿下の婚約者でいらっしゃるのよね?美男美女でお似合いよね。憧れるわ」
 耳をダンボにして、噂話を聞いていると、聞き捨てならない話が聞こえてきた。

 ライハート殿下の婚約者!
 まさか、悪役令嬢(仮)?
 あんなに優しそうな人なのに?
 やっぱり、本当は悪役じゃない悪役令嬢?
 だとすると、わたしがざまぁされるヒロイン決定じゃない?

 リーリエは驚きのあまり、まじまじと見つめていたらしく、ふとパトリシアと目が合った。

「あら?あなた、リーリエ様?」
 小首を傾げるパトリシアにリーリエは目を瞬かせた。

 へ?なんでわたしの名前を?

「聖属性の魔力をお持ちの方ですわよね?」
 リーリエが頷くと、嬉しそうに笑うと、空いていたリーリエの隣の席に座った。

「パトリシア・タールセントと申します。よろしくお願いしますね」
「はっはい。リーリエと申します。こちらこそ、よろしくお願いします」
 パトリシアの笑顔はとても可憐で、真正面からそれを食らったリーリエは顔を赤くした。

 わたしには百合の気はないのよ!でもあまりにも可愛すぎるのよ~!と、リーリエは誰にも何も言われてないのに、必死に心の中で言い訳していた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

悪役令息の婚約者になりまして

どくりんご
恋愛
 婚約者に出逢って一秒。  前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。  その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。  彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。  この思い、どうすれば良いの?

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...