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8.魔法学院入学式②

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 入学式が始まる直前に無事、会場入りできたリーリエは、ここまで案内をしてくれたアンドリューにお礼を言って、後ろの方の空いている席に座った。
 
 アンドリューと一緒に会場に入った時、一瞬周囲がざわついたが、気のせいだと思っておこう。

 遅刻するよりは目立ってないはず…



 学院長の話が長くて、多くの人がぼーっとしたりあくびを噛み殺しているところに、突然、女生徒のキャーっという歓声が響き渡った。

 その黄色い歓声に、リーリエの肩がビクッと跳ねる。
 早起きして、迷子になってたくさん歩いたリーリエは少しうとうとと仕掛かったところだったのだ。

 何があったのかと慌てて前を見ると、いつの間にか学院長の話は終わり、生徒会長が壇上に立っている。
 輝く金髪に碧眼のキラキラと輝く美男子で、物語の王子様そのままのような風貌だった。

「ライハート殿下よ」
「やっぱりカッコいいわね」
 あちこちから、そんな声が聞こえてくる。

 ライハート殿下。
 確か第二王子殿下よね。
 そうか、二年生に在学してるのね。
 王子様なんて、攻略対象者のあるあるじゃない。関わりにならないように、気をつけないと。


 ん?ん~?ちょっと待って。
 この人、どっかで見たことがある。
 絵姿とかじゃなくて…

 あっ!!
 危うく大きな声を出しそうになったのを、慌てて口を手で押さえる。

 食堂のお客さん!
 服装とかはみんなと同じなのに、顔がすごく綺麗で、何となく上品だった少年。
 いつも体格のいいお兄さんと一緒だったから、きっと貴族のご子息がお忍びで来てるんだろうなと思ってたけど、まさか王子様だったとは!

 リーリエが働いていた食堂は人気があって、時々貴族の人もお忍びでやって来ていたから、今まで不思議には思ってなかった。

 髪の色が違うけど、顔は一緒だ。

 まずい。何で既に知り合ってるの。
 
 いや、こっちは覚えてるけど、向こうはただの食堂の従業員を覚えてるわけない。
 うん、きっとそう。
 これから、関わらなゃ大丈夫。
 

「この学校で学んだことは将来、糧となりきっと役立つことと思う。その為にもこの学校にいる間は身分に捉われず、共に学んでいこう」
 俯いて考えているうちに、気づけば、ライハートの挨拶が終わっていて、会場は割れんばかりの拍手と歓声で盛り上がっている。
 笑顔でその歓声に応えて、舞台を降りて行った。

「明日、明後日で筆記と実技テストを行い、クラス分けを行います。今日はこれで終了といたします」
 まだ、会場内がざわつく中、先生が魔力で声を拡声して、連絡を行っている。

 これで、入学式が終わりということらしい。

 前の席の人からぞろぞろと退場して行くので、後ろの席に座っていたリーリエは最後の方に会場を出ることになった。


「リーリエちゃん」
 誰かに呼ばれて、振り向くとアンドリューが手を振っている。ライハート殿下の横で!

 何で話しかける!?

 まさかライハート殿下の前で、アンドリューがわたしに声を掛けてくるなんて!
 思わず、目を眇める。

 聞かなかった振りできる?いや、もう振り向いてしまった。
 さすがにさっき助けてもらった先輩を無視はできない。
 それによく考えれば、ガルレンって侯爵家で魔法庁長官と同じ名前だ。

「あれ?なんか睨まれてる?」
 アンドリューは可笑しそうに笑いながら、態とらしく首を傾げている。

「いえ、睨んでませんよ。目が悪いからそう見えてしまうのかもしれません」
 本当は目はいいけど、メガネを掛けてるのだから、これで通るはず。

「それならいいけど」
 声が震えている。

 この人は笑い上戸なのか。
 リーリエが白い目で見ると、堪えきれなくなったのか、吹き出した。

「あー、やっぱり、リーリエちゃん面白い」
 ケラケラ笑うアンドリューを信じられないようなものを見るような目でライハートが見た。

「リーリエ嬢って、聖属性持ちの?アンドリュー、知り合いなのか?」
 リーリエとアンドリューを見比べて、戸惑ったような顔をしている。

 ライハートの言葉にリーリエの米神がぴくりと反応した。

 聖属性ってだけで、存在を認識されてる!

「迷子になってるところをここまで連れてきてあげたんだよ。ねっ」
 アンドリューがニコニコと同意を求めてくる。

「はい。その節は大変お世話になり、ありがとうございました。迎えが来ておりますので、これで失礼いたします」
 これ以上、印象に残らないように、とっとと退散しよう。

 背中にアンドリューの笑い声を聞きながら、会場を後にした。
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