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24.ヒロイン大ピンチ!
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まず扉から入って来たのは、リーリエと年の変わらない何だか印象の薄い若い男。
その後に続いて入って来たのが、二十代の厳つい護衛らしき男と三十代の金髪碧眼の、この場所には場違い感満載の高そうな真紅のドレスを着た美女。
美女はこの何もない簡素な部屋が全く似合わない高貴な雰囲気を纏っていて、リーリエにはその顔に見覚えがあることに気づいた。
あのゾワってした人!
学院祭の日、ライハート殿下とパティが案内していた人!
隣国からの見学者だって言ってたけど…
王子であるライハート殿下自ら案内していたのだから、恐らく、王族かそれに準ずるような人で間違いない。
リーリエを見るその碧の瞳に喜色が見えて、ゾワっと、鳥肌が立つのを感じる。
一歩近づかれる度に一歩下がって行く。
気がつくと、壁際まで追い詰められている。
「あなた、クラウディオの娘でしょう?」
「クラウディオ…?」
一瞬、女が何を言っているのか分からなくて、その名を反芻する。
「クラウディオ・メルトローよ!」
女がイライラしたように大声を出して、リーリエの顔の横の壁にドンっと手をついた。
「ひぃっ」
そのあまりの迫力に引き攣ったような声が漏れる。
壁ドン!
憧れのシチュエーションだったけど、これじゃない!
壁ドンで嬉しいのは、好きな人限定!
焦って考えようとして、なかなか考えが纏まらない。
メルトロー、メルトロー、メルトロー侯爵!
クラウディオって、わたしのお父さんだっていう人の名前!
頷きそうになったものの、少し考える。ここでそうだと答えても良いのだろうか。
もし、父親に恨みを持っているなら、娘も憎いのかもしれない。
殺される可能性がグッと増す。
美女は武術に長けているようには見えないから、何とかできるかもしれないが、まだ男が二人もいるし、他にもいるかもしれない。
逃げられる気がしない。
「素直に認めなさいよ。既に調べはついてるのよ。毎日メルトロー侯爵家の馬車で送迎されてるってね」
リーリエが答えを戸惑っていると、不快そうに眉を顰める。
「それにしても、その瞳の色、その鼻と唇の形、クラウディオにそっくり」
リーリエの頬を撫でると、不気味に微笑む。
悲鳴をあげそうになるが、その常軌を逸したような目に恐怖を覚えて、声にならない。
「やっぱり生きていたのね」
まだ答えていないのに、彼女の中ではリーリエがクラウディオの娘であると事実として確定したらしく、恍惚とした表情でリーリエを見つめている。
「クラウディオはどこにいるの?」
女は優しげな声で訊いてくるが、恐怖は増すばかりだ。
どこって死んでるから!
これって、死んでるって言うと用無しで殺されるパターンじゃないの!?
かと言って、適当なことを言うと、嘘だって分かった時にどんな目に合うのか…
どっちを答えても、碌なことになりそうにない。
リーリエが答えられずにいると、またイライラしてきたのか女の顔から不気味な笑みが消えていく。
「クラウディオが死んだと聞かされて、わたくしがどんな気持ちだったか分かる?」
いや、知らないよ!
本当に死んでるし!
この人は何?お父さんのことが好きだった?
両親が駆け落ちした理由はまさかの危なそうなこの人?
回らない頭で、ようやく考えがそこに行き着いた。
「何とか言いなさいよ!わたくしのクラウディオをどこにやったのよ!」
何も答えないリーリエに、いよいよ我慢できなくなったのか、金切声をあげて、手を振り上げた。
殴られる!咄嗟に目を瞑ると、左の頬から耳にかけて痛みが走るのと同時にバシンという音が響き渡った。
「クラウディオとそっくりな顔を傷つけたくはないのよ。でも、そのピンクなんて下品な色の髪は切ってもいいかしら」
叩かれた頬を呆然と手で押さえていると、女がリーリエの髪を引っ張る。
怖い!この人絶対狂ってる!
女は厳つい男から短剣を受け取るとリーリエの髪を掴み、剣を近づける。
顔の側に剣がある恐怖で動けずにいるリーリエ。
怖い怖い怖い!
助けて!
「レオナルドさん!」
リーリエが目を瞑って、その名を叫んだ時、バーンという大きな音と共に扉が吹っ飛んだ。
その後に続いて入って来たのが、二十代の厳つい護衛らしき男と三十代の金髪碧眼の、この場所には場違い感満載の高そうな真紅のドレスを着た美女。
美女はこの何もない簡素な部屋が全く似合わない高貴な雰囲気を纏っていて、リーリエにはその顔に見覚えがあることに気づいた。
あのゾワってした人!
学院祭の日、ライハート殿下とパティが案内していた人!
隣国からの見学者だって言ってたけど…
王子であるライハート殿下自ら案内していたのだから、恐らく、王族かそれに準ずるような人で間違いない。
リーリエを見るその碧の瞳に喜色が見えて、ゾワっと、鳥肌が立つのを感じる。
一歩近づかれる度に一歩下がって行く。
気がつくと、壁際まで追い詰められている。
「あなた、クラウディオの娘でしょう?」
「クラウディオ…?」
一瞬、女が何を言っているのか分からなくて、その名を反芻する。
「クラウディオ・メルトローよ!」
女がイライラしたように大声を出して、リーリエの顔の横の壁にドンっと手をついた。
「ひぃっ」
そのあまりの迫力に引き攣ったような声が漏れる。
壁ドン!
憧れのシチュエーションだったけど、これじゃない!
壁ドンで嬉しいのは、好きな人限定!
焦って考えようとして、なかなか考えが纏まらない。
メルトロー、メルトロー、メルトロー侯爵!
クラウディオって、わたしのお父さんだっていう人の名前!
頷きそうになったものの、少し考える。ここでそうだと答えても良いのだろうか。
もし、父親に恨みを持っているなら、娘も憎いのかもしれない。
殺される可能性がグッと増す。
美女は武術に長けているようには見えないから、何とかできるかもしれないが、まだ男が二人もいるし、他にもいるかもしれない。
逃げられる気がしない。
「素直に認めなさいよ。既に調べはついてるのよ。毎日メルトロー侯爵家の馬車で送迎されてるってね」
リーリエが答えを戸惑っていると、不快そうに眉を顰める。
「それにしても、その瞳の色、その鼻と唇の形、クラウディオにそっくり」
リーリエの頬を撫でると、不気味に微笑む。
悲鳴をあげそうになるが、その常軌を逸したような目に恐怖を覚えて、声にならない。
「やっぱり生きていたのね」
まだ答えていないのに、彼女の中ではリーリエがクラウディオの娘であると事実として確定したらしく、恍惚とした表情でリーリエを見つめている。
「クラウディオはどこにいるの?」
女は優しげな声で訊いてくるが、恐怖は増すばかりだ。
どこって死んでるから!
これって、死んでるって言うと用無しで殺されるパターンじゃないの!?
かと言って、適当なことを言うと、嘘だって分かった時にどんな目に合うのか…
どっちを答えても、碌なことになりそうにない。
リーリエが答えられずにいると、またイライラしてきたのか女の顔から不気味な笑みが消えていく。
「クラウディオが死んだと聞かされて、わたくしがどんな気持ちだったか分かる?」
いや、知らないよ!
本当に死んでるし!
この人は何?お父さんのことが好きだった?
両親が駆け落ちした理由はまさかの危なそうなこの人?
回らない頭で、ようやく考えがそこに行き着いた。
「何とか言いなさいよ!わたくしのクラウディオをどこにやったのよ!」
何も答えないリーリエに、いよいよ我慢できなくなったのか、金切声をあげて、手を振り上げた。
殴られる!咄嗟に目を瞑ると、左の頬から耳にかけて痛みが走るのと同時にバシンという音が響き渡った。
「クラウディオとそっくりな顔を傷つけたくはないのよ。でも、そのピンクなんて下品な色の髪は切ってもいいかしら」
叩かれた頬を呆然と手で押さえていると、女がリーリエの髪を引っ張る。
怖い!この人絶対狂ってる!
女は厳つい男から短剣を受け取るとリーリエの髪を掴み、剣を近づける。
顔の側に剣がある恐怖で動けずにいるリーリエ。
怖い怖い怖い!
助けて!
「レオナルドさん!」
リーリエが目を瞑って、その名を叫んだ時、バーンという大きな音と共に扉が吹っ飛んだ。
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